安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>921号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------921号--2017.07.16------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「ニュースから」「そうめん条例」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 このところ続いている「鶏肉の生食」関連の食中毒事件です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■「鶏のたたき」食べた7人食中毒  大阪・東大阪の居酒屋、営
業停止処分

 大阪府東大阪市は9日、同市西鴻池町の居酒屋「一石二鳥」で食
事をした20〜45歳の男女7人が下痢や腹痛などの症状を訴え、
うち5人の便から食中毒菌のカンピロバクターを検出したと発表し
た。市は同店を原因とする食中毒と断定し、同日から2日間の営業
停止を命じた。

 同市によると、6月28日に「鶏のたたき」などを食べた11人
のうち7人が下痢や腹痛の症状を訴えた。4人が病院で受診したが
いずれも入院しておらず、快方に向かっているという。

http://www.sankei.com/west/news/170709/wst1707090036-n1.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「また大阪か」ですが、いつになったら鶏肉を生で提供するのを
やめるのでしょうか。

 次は焼酎の中身が水だったという話。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■中身が水の見本用芋焼酎、サッポロが誤って販売

 サッポロビールは10日、中身が水の見本用の芋焼酎を誤って販
売したと発表した。

 3月に発売した芋焼酎「赤からり芋」(720ミリ・リットル)
の見本品で、用意した48本のうち、18本がすでに販売された可
能性があり、回収を急ぐという。飲んでも、健康への被害はないと
いう。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170710-00050097-yom-bus_all
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「飲んでも健康への被害はない」というのが笑うところです。確
かに、アルコール飲料より水の方がよほど安全です。

 でも、買ってきた焼酎の中身が水だったら、買った方は怒るでし
ょうね。「水でも飲んで我慢しておけ」と言えればよいのですが。

 次は札幌の地下水の話題です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■立ち食いそば店が営業停止 駅の地下水から化学物質

 駅の地下水から化学物質が検出され、立ち食いそば店が営業停止
となりました。

 5日、JR札幌駅の地下水から、化学物質の「テトラクロロエチレ
ン」が検出されました。基準濃度を0.002ほど上回っていますが、
長期間にわたって大量に飲み続けない限り、健康への影響はないと
されています。

 この化学物質は、主にドライクリーニングの溶剤に含まれていま
すが、駅の構内にクリーニング店はなく、原因は分かっていません。

 地下水を飲食用に使っていたホームの立ち食いそば店2店舗は営
業を停止しています。

http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000105049.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 汚染物質の検出にかかわらず、飲食店が水道ではなく地下水を使
うという時点で論外です。水道の費用も払えないような店なら、廃
業あるのみです。

 次はたばこ関連のニュースです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■2017年6月のたばこ販売本数はマイナス11.1%、減退継続中(最新)

 日本たばこ協会は2017年7月14日に同協会公式サイトにおいて、
2017年6月の紙巻きたばこの販売実績を発表した。その発表データ
によれば2017年6月の紙巻きたばこの販売実績は130億本となり、前
年同月比ではマイナス11.1%となった。販売代金はマイナス10.7%
の2820億円を示している。

http://www.garbagenews.net/archives/2064353.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 着実に減ってはきているようです。喫煙者の比率も下がっていま
す。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■2016年の全体喫煙率19.3%、男性は史上初の3割未満・女性はわ
ずかに増加(JT発表)

 JTは2016年7月28日、同社が定点観測的に毎年実施しており、今
年は2016年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」の結果を発
表した。

 それによると2016年5月時点における全国の喫煙率は19.3%とな
り、前年比で0.6%ポイントのマイナスとなったことが分かった。

 これは計測値として確認が可能な値の中では2014年分・2015年分
に続き、3年目の2割を切る形となる。男女別では男性が1.3%ポイ
ント減少の29.7%となり、観測を始めた1965年以降初めて3割を切
った。一方で女性は0.1%ポイント増の9.7%を示している

http://www.garbagenews.net/archives/2182215.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ようやく20%を下回っています。飲食店の禁煙に反対している
人たちは、この20%の人のために、ガラガラの喫煙席を維持した
いのでしょうか。

 あるいは禁煙席もない店では、20%を相手にして、残りの80
%は捨てるつもり?

 20%をすっぱり切り捨てれば、利益があがることは間違いない
ところです。

 最後はこんな「事件」です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■食塩中毒で1歳女児死なす=容疑で元保育施設経営者を逮捕−岩
手県警

 盛岡市の認可外保育施設で2015年8月、預かっていた女児を
食塩中毒で死なせたとして、岩手県警は11日、傷害致死容疑で施
設を経営していた吉田直子容疑者(33)=同市北飯岡=を逮捕し
た。「塩を混ぜた液体を飲ませたが、害を与えるつもりはなかった」
と容疑を一部否認している。

 逮捕容疑は同月17日午前10時半〜18日午前0時5分ごろ、
施設で預かっていた市内の下坂彩心ちゃん=当時(1)=に、塩を
混ぜた液体を飲ませ食塩中毒で死亡させた疑い。

 県警によると、彩心ちゃんは18日未明に父親に引き取られたが、
体調が悪化して市内の病院に搬送され、同日午前4時45分ごろに
死亡した。事件当時、施設内には吉田容疑者と彩心ちゃんの2人し
かいなかったという。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017071101085&g=soc
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 保育所で塩を与えたとしても、そんなに簡単に死ぬほどの状態に
なるのか?という疑問を禁じ得ません。

 今のところ断言できる根拠は何もありませんが、私の感想はこれ
は「甲山事件」の再来だ、冤罪の匂いが強い、というものです。

 とりあえず、次のような情報を見ても、保育所で「食塩を与えて
死亡させる」可能性は限りなく低いと思います。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■乳児が危険?食塩中毒の実態は

 さて今回、幼い命を奪ったとされる「食塩中毒」ですが、食塩の
とりすぎで中毒になるとは、どういうことなのでしょうか?調べた
ところ、少し古い研究ですが、イギリスで今回のようなケースを複
数例調べた論文を見つけました。

□食塩中毒になるのは、ほとんどが赤ちゃん

 イギリスで1993年以前の15年間で報告された300件の中毒例(事
故によるものは除く)のうち、食塩が原因と強く疑われた12人のケ
ースが調べられました。

 年齢は、12人のうち11人が0歳児(生後1か月半から9か月)であ
り、1人が3歳半でした。

 生後まもない赤ちゃんがほとんどを占めた理由として、論文は主
に2点をあげています。

※赤ちゃんは、体内の過剰な物質を排出する腎臓の機能が成熟して
いない

※過剰な塩分により喉(のど)が渇いても、自力では水を飲めない

□食塩中毒の「症状」と「原因」は

 食塩中毒になった子どもが病院を受診したきっかけの多くは嘔吐
(ものを吐く)でした。ほかに、下痢や成育不良が見られたケース
もありました。発作や硬直、昏睡(こんすい)などの症状もみられ
ました。

 また多くが「喉の渇き」に苦しめられており、診察した医師のひ
とりは「病院に来るたびに、まるで魚のように水を飲んだ」と記録
しています。

 これらの症状は、いちどに大量の食塩をとったことで、体内でナ
トリウムの濃度が過剰に上がったこと(高ナトリウム血症)が原因
と見られます。

 高ナトリウム血症は、場合によっては命に関わります。論文で調
べた12人のケースでも、残念ながら2人が命を落としました。

□食塩の量はどのくらい?

 心配なのは、通常の生活のなかで、赤ちゃんが食塩中毒になる可
能性があるのか?ということですよね。

 論文では、食塩中毒を起こした赤ちゃんは、少なくとも10g程度
の食塩(小さじ2杯分)を与えられていたと見ています。

 小さじ2杯というと少ないように聞こえますが、実際にはかなり
多量です。例えば紅茶などに入れてみると、とてもではないですが
塩辛くて飲めません。

 「離乳食の味付けで、砂糖と塩をまちがえた」などのミスがあっ
たとしても、通常の調理法の範囲であれば、食塩中毒になるほどの
量が赤ちゃんがとってしまう可能性は少なそうです。(もちろん、
与えすぎには注意)

 ではなぜ、12人もの子どもが中毒を起こしたのか。

 論文は食塩中毒の背景に、親などによる虐待があったとしていま
す。

 食塩中毒を起こした赤ちゃんの親に対して行われた聞き取りでは、
12人中7人の親が「中毒にすることを目的に、意図的に食塩を多く
与えていた」と告白しました。

 中には、バナナジュースなど味が強い液体に食塩を溶かし、わざ
わざ飲みやすくして与えていたケースや、栄養を与えるためのチュ
ーブを利用していたケースもあったといいます。

https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/20170713-00073205/
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「親による虐待」「意図的、持続的な食塩の過剰投与」がなけれ
ば、こんな症状にはならない、と言っています。

 つまり、保育所で一度与えた程度では死なない、ということです。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「そうめん条例」
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 こんなニュースがありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■そうめん発祥の地」奈良県桜井市で、「そうめん条例」が可決さ
れました

 そうめん発祥の地とされる奈良県桜井市の市議会が2017年6月19
日、同市の特産品「三輪そうめん」の普及、促進を目的とする条例
案を可決した。7月7日に施行する。

 施行日の7月7日は、全国乾麺協同組合連合会が「七夕・そうめん
の日」と定めている。七夕の織姫と彦星にあやかり、そうめんを糸
に見立て「芸事(機織)が上手になるよう」食べていたのが起源だ
とされる。

 「三輪そうめん」の普及、促進を図りたいという桜井市の願いは
はたして叶うのか。ツイッターでは、「そうめん」条例の可決が反
響を呼んでいる。

■正式名称は「桜井市三輪素麺の普及の促進に関する条例」

 「三輪素麺は、現在から 1200年余り前、飢饉に苦しむ民を救う
ため、保存食として小麦を挽いて棒状に練り乾燥させたものが時を
経て苧環(おだまき)の糸のような細く白い素麺として誕生したも
のであり、公卿の日記や女官たちの手記によると平安時代以降、宮
中や貴族の間で、七夕に食する風習があったとされている」

 桜井市議会が6月19日に可決した「桜井市三輪素麺の普及の促進
に関する条例」は、こんな書き出しで始まる。三輪そうめんは代々、
手延べ製法で受け継がれ、日常の食卓に並ぶ他、伝統行事や贈答品
で用いられてきた。市議会は三輪そうめんのPR活動に打って出ると
同時に、食べる習慣を広め、伝統文化の理解と地域経済の活性化を
図るとした。

 農林水産省の米麦加工食品生産動態等統計調査(2009年度)によ
ると、奈良県は手延べそうめんの年間生産量(小麦粉使用量)で兵
庫県(2万117トン)、長崎県(1万3566トン)に次いで3位(3669ト
ン)で、「揖保乃糸」の名産地、たつの市を有する兵庫県と比べて
約6分の1だった。

 農林水産省の食品産業動態調査(2017年4月)によると、16年全
体の手延べそうめんの生産量(小麦粉使用量)は4万6070トンで、
13年の5万3724トンから右肩下がりを続けている。発祥の地として
は、この状況に黙っていられるはずがない。「そうめん」条例は19
日、全会一致で可決された。

http://j-town.net/tokyo/news/localnews/244937.html?p=all
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 とりあえずできることはあまり多くなくて、七夕の日に保育園で
そうめんを食べる、という企画があったそうです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 そうめん発祥の地とされる桜井市の「三輪そうめん普及促進条例」
が7日施行された。市立の4保育所でこの日、給食に三輪そうめん
が提供され、子どもたちが笑顔で味わった。

 条例は市議会が6月19日、消費が伸び悩む三輪そうめんを食べ
る習慣を広めようと可決。市や事業者は普及を進め、市民に協力を
呼び掛けている。

http://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20170707-OYTNT50267.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 何度か書いたことがあると思いますが、奈良県での「三輪素麺」
の生産量は意外と低く、かつてはほとんどが島原産の素麺を「三輪
素麺」として売っていました。

 その後、産地偽装だという批判があり、改善をしていたはずです
が、奈良県での生産が増えたのかというと、そうでもなくて2009年
の統計では、以下のような生産量になっています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■乾めん類の都道府県別生産量

資料出所:農林水産省/米麦加工食品生産動向
    (単位:小麦粉使用トン/シェア%)
    手延べそうめん、手延べうどんを抜粋しています。

2009(平成21年)

道府県 生産量 シェア
兵庫県 20,117 44%
長崎県 13,566 29%
奈良県 3,669 8%
香川県 2,817 6%
徳島県 2,664 6%

http://www.shimabara-soumen.com/article/14800426.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 兵庫県の生産量が多いのは「揖保乃糸」です。かつては長崎と奈
良の生産量が「三輪素麺」として売られていましたが、現在では長
崎県産はほとんどが独自ブランドで「島原素麺」として売られてい
るそうです。

 それで結局、奈良県産は全体の8%程度という生産量になってい
ます。

 この間の経緯についての報告がありましたので紹介しておきます。
「三輪素麺」に関する部分のみ抜粹していますので、全体はリンク
先をごらんください。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■地域における特産品を取り巻く課題
−「揖保乃糸」と「三輪素麺」を事例として−

石川 和男

2) 1980年代における三輪素麺の危機

 1980年代はじめには、手延素麺は播州80万箱(1箱は18kg)、島
原60万箱、小豆島23万箱、三輪8万箱が4大産地であり、岡山6万箱、
淡路4万箱、徳島、四日市、熊本の各2万箱が続き、全国で186万箱
が生産されていた。

 この頃、三輪素麺の業界では、1983年4月からの産地表示を巡っ
て混乱が起こっていた。

 それは三輪素麺の大半が長崎県島原産に依存しており、1983年春
以降、島原産は「三輪ブランド」として販売できなくなったためで
あった。

 さらに産地を牽引する大手卸売業者2社が正反対の対応をしたた
め、これをめぐる利害、思惑も渦巻き、業界の混迷は深まることと
なった。

 1982年当時、三輪素麺としての年間販売量は、約60万箱であった。
このうち約50万箱は島原産であり、三輪での生産は約8万箱であっ
たことから、約6倍の規模にもなっていた。

 三輪素麺は、12月から翌年1〜3月に早朝5時から生産活動をする
重労働である。そして、熟成や手延には独特の勘と経験が必要であ
り、生産は零細な農家がその大半を担っていた。このため、産地の
卸売業者は、1960年頃から急増した需要を補うため、長崎県島原地
方の農家に技術指導し、生産奨励をしてきた経緯があった。

 島原では労働力が豊富にあり、同地の素麺生産業者は360業者で
年間60万箱を生産していた。当時の三輪素麺工業協同組合に所属し
ていた 160業者、8万箱を大きく引き離していたため、三輪素麺は
卸売業者主導型製品となった。

 しかし、食品の品質表示基準により、手延素麺の産地表示も規制
されることとなった。この基準は、当初の1980年施行から3年間猶
予されたが、ついに 1983年4月から実施され、三輪素麺の主力であ
る島原産は、三輪ブランドでは販売できなくなった。

 そのため、産地卸売業者大手の一方の旗頭「池利」では、桜井市
大泉に年産5万箱の大型工場を 1982年10月に完成させた。もう一方
の旗頭「三輪そうめん山本」では、自社ブランドで販売し、三輪ブ
ランドにこだわらない方針を採用することとした。そして、1982年
夏からは「三輪ブランド」を消し、「やまもとの素麺」など自社ブ
ランドで販売を開始した。

 年間販売量は双方とも17万箱の産地大手の卸売業者2社が正反対
の対応をとることを表明したこともあり、産地表示問題が一気に表
面化した。

 ただ、他の産地卸売業者(8社)は、三輪産地で生産を増やすの
が基本ではあるが、自社工場を建設するには建設費がかかり、人手、
コスト高で採算が難しいという問題を抱えていた。さらに自社ブラ
ンドで販売する知名度不足が懸念材料となっていた。こうした突然
ではないが、期限を決められた課題への対応について、2大卸売業
者が正反対の方向で動き出したことは、新たな規制以上に地域には
深刻な課題を投げかけたといえる。

 産地卸売業者である両旗頭の対応については、三輪素麺工業協同
組合は、三輪産地の育成を第一に考え、産地表示を契機として生産
面で三輪産地の浮上を図ることになった。

 反対に自社ブランドを立ち上げた産地の卸売業者では、顧客は製
品品質が本位であるとし、独自ブランドでの販売が顧客を欺かない
と考えた。

 他方、1982年10月に産地卸売業者10社で結成した奈良県三輪素麺
産地商友会は、三輪産地の振興を定款に謳い、これに反する動きに
対しては除名で対応することとした。また大半の加盟業者は、自社
工場を建設して対応した。

 他方、播州素麺産地は、三輪そうめん山本の自社ブランドは社名
に「三輪そうめん」が入っていることを問題視し、自社ブランドで
も産地表示の義務づけを農林水産省に働きかけた。

 このため、山本もこれに対抗する必要に迫られたため、産地協調
に傾いた。三輪地域での 2社の主たる卸売業者による対応の相違は、
地域が一体となって、他地域からの攻勢や当該地域での生産者との
関係継続について一石を投げたといえる。

 現在では、1980年代の状況から30年以上経過しているが、やはり
顧客を正面に据えた上で、三輪素麺というブランドを死守してきた
ことが、需要が減少する現在でもまだいくらかなりとも光明が差し
ている要因といえる。

3) 原産地表示問題の再浮上

 先に取り上げた 1980年代の問題発生以降、産地表示の問題は、
他地域の製品などでもしばしば取り上げられるようになった。奈良
県では、2002年8月に「三輪素麺」の産地表示問題で実態調査をし
た結果、県外産を「三輪素麺」として販売していた事業者が 13存
在していたことがわかった。ただ、その後は改善され、改正JAS法
(農林物資規格化・品質表示適正化法)によって指示を行う必要が
ある事業者はなかったことを公表した。

 1980年代前半の産地表示の問題から時間が経過し、やはりこのよ
うな問題が起こるのは世の常かもしれない。

 2004年には長崎県の素麺生産量は1万5千トンとなり、全国の約3
割に達し、揖保乃糸のブランドが中心である兵庫県の2万トンに迫
る状況となっていた。

 長崎県西有家町と隣接する有家町に集中する生産者は、これまで
三輪の下請けとなっていたため、正確な生産量さえ不明であった。
ただ、2002年に牛肉などの偽装表示問題が発生した。これにより、
食品の原産地表示が厳格化され、三輪へは販売できなくなった。

 そこで地元の生産者111人は、2002年12月、結集して販売会社
「素兵衛屋」と統一ブランド「手延素麺島原」を立ち上げた。主に
薄力粉を使用する揖保乃糸は、一定期間寝かせなければちょうどよ
いコシが出ない。顧客にとっては、1年以上経過した「古物(ひね
もの)」が食べ頃とされるが、島原産は製造直後からコシがあるの
で寝かせる必要はなく、小麦の香りが飛ばないうちに食べられる。

 素兵衛屋は順調に売上を伸ばし、2004年には黒字化したといわれ
る。この島原の生産業者の対応は、大手製造業者などに依存した体
質では、いつの日にか販売先(市場)を喪失していく可能性を示唆
している。

 生産が軌道に乗り、品質が安定した際には、やはり自社ブランド
や地域ブランドを立ち上げる取り組みをしなければならないだろう。

 素麺産業では、零細経営が多い地方の産地は、高齢化の波にも襲
われている。手延素麺は工程が多く、早朝3時半に起きて夕方6時頃
まで働きづめとなる。

 後継者不在のために三輪側の言い値でしか販売できず、割に合わ
ないという嘆きも聞かれ、毎年数人の業者が休廃業するという事態
にもなっていた。

 このように原産地の問題だけではなく、これまで生産を担ってき
た生産者の健康や事業承継問題など、多層に亘る問題が素麺だけで
はなく、全国各地の特産品には襲いかかっているといえよう。

http://www.senshu-u.ac.jp/~off1009/PDF/160820-geppo637,638/smr637-ishikawa.pdf
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「三輪素麺」のブランド維持に対する対応が二つに分かれた、と
ありますが、「三輪そうめん山本」の自社ブランドで三輪そうめん
以外のものを売る、というのはさすがにインチキです。

 現在は産地偽装状態はほぼ解消されているようですが、はたして
どこまで本当なのか、疑いを持っていたりします。

 さて、三輪素麺のような「産地ブランド」が、日欧EPAで保護
の対象になる、というニュースがありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■日欧、産地ブランドを保護=チーズなど71品目公表−農水省

 日本と欧州連合(EU)が大枠合意した経済連携協定(EPA)
には、産地ブランドを相互に保護する「地理的表示(GI)」の仕
組みが盛り込まれた。知名度のある農林水産品の輸出を促す一方、
悪質な偽ブランドは摘発の対象となり、紛らわしい商品名は変更を
迫られる可能性がある。

 農林水産省は11日、EUが保護を求めている欧州産のチーズや
ハム、オリーブ油、菓子など71品目(酒類は除く)を公表した。
チーズでは「カマンベール・ド・ノルマンディ」(フランス)や
「ゴルゴンゾーラ」「パルミジャーノ・レッジャーノ」(ともにイ
タリア)など日本でも知名度のある品目が並ぶ。

 3カ月間意見を募り、知的財産として日本国内で保護できるかど
うかを判断する。EUも今後、日本が保護を求めている「神戸ビー
フ」や「西尾の抹茶」など31品目で同様の手続きを進める。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017071101152&g=eco
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 相互に保護するのは当然のことですが、日本側の産地ブランドが
インチキだらけ、などという事態にならないように願いたいですね。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 FOOCOM.NETから手紙がきたので、会費の請求かと思って読んでみ
ると、今年で会費の請求はなくなり、会員向けメールマガジンも来
年で停止するということでした。私はずっと会費を払っていたので、
ちょっと残念な気がしますが、発展的解消であってほしいと思いま
す。(FOOCOM.NETのサイトは運営を続けます。)

 松永さん、森田さんがそれぞれ手紙を書いてくれていますが、読
むと、ネット上での活動の難しさが伝わってきます。初めから「無
償」を前提として、無償ではできないことはやらない、と決めてい
た私なんかは気楽なものなのですが。

 ついでに言うと、「有料メールマガジンはジャーナリストの墓場」
なんだそうです。結構儲かるので、つい読者サービスを優先してし
まい、結果としてはジャーナリストの則を踏み外す(嘘つきになっ
てしまう)ということだそうです。そういう人は私も何人も知って
います。ここでも無償が一番だと言えると思います。

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