安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>9号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
---------------------------------------9号--2000.01.05------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

    「お酒とアルコール」
    「日本酒」
    「ワイン」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 お正月ということで、お酒の話を少し書きます。

 酒を分類すると、「醸造酒」と「蒸留酒」とにわかれます。

 「醸造酒」は原料を仕込んで、アルコール醗酵させたもので、日
本酒、ビール、ワインなどがそうです。アルコール分は比較的低く、
原料に由来するアルコール以外の成分も多く含んでいます。

 「蒸留酒」は醸造酒を原料に、いったん加熱して、蒸発した成分
を集めたものです。このとき、アルコール濃度は上がり、揮発性で
ない成分は入ってきませんので、ストレートで飲むと、ヘビーな酒
になります。おおざっぱに言って、日本酒→焼酎、ビール→ウィス
キー、ワイン→ブランデーといった具合に、もとの醸造酒によって
種類が違ってきます。

 原料はブドウなどの果物、米などの穀物が多いのですが、特殊な
ものとしては、竜舌蘭から作るテキーラなどというものもあります。
ポリネシアで広く飲まれる「カヴァ」というものは、アルコールで
はなく、酩酊作用のあるアルカロイドを含む樹液だそうです。

 酒は一般に、糖を含む溶液中で酵母が繁殖すると、糖を食べてア
ルコールと二酸化炭素を作る、「アルコール醗酵」がおこることで、
作ります。

 酵母自体はどこにでもいるので、糖の多い果汁などは簡単にアル
コール醗酵をおこします。ジュース類でビンの蓋が飛んだり、紙パ
ックが破裂したりするのは、このときに出来る二酸化炭素のせいで
す。

 通常の酒作りでは、この二酸化炭素は空気中に逃げて行きますが、
密閉容器で醗酵させて、二酸化炭素を逃がさないようにすると、ビ
ールのように、二酸化炭素を含み、飲むときに発泡する酒ができま
す。

 お酒についての問題は何と言っても、毒性のある「アルコール」
を含むことです。

 「イッキのみ」による、「急性アルコール中毒」は毎年、結構死
者を出しています。さらに飲酒運転による事故死を考えると、死者
の数はかなり大きくなるはずです。おそらく、全ての食べ物の中で、
最も危険なものです。

 また、慢性の「アルコール依存症」による、いろんな問題点も、
みなさんご存知のとおりです。

 健康と安全を考えるなら、「お酒」の類は一切避けるべきです。

 といってしまってはおしまいなのですが、結構酒好きの私として
は、なんとか弁護したいところです。

 適度なアルコールの摂取が健康にプラス、というデータはいくつ
もあるようです。でも、必ず「適度」ということがついてきます。

 アルコールが脳機能をマヒさせ、「酒が酒を呼ぶ」ことを考える
と、この「適度ならよい」ということも、信用できないと思います。

 「酒なくて何の人生」といいます。それでも飲みたい人は、自己
責任で、リスクを背負って飲むべきものでしょう。「イッキのみ」
をすすめる、などというのは犯罪行為ですし、飲めない人に酒をす
すめるのも、避けたいものです。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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 路傍のケミスト、グレガリナさんから、以下のメールをいただき
ました。MSG(グルタミン酸Na)についての補足ですので、その
まま引用します。

---〔↓引用はじめ〕-----------------------------------------

90年ぐらい前、池田菊苗が昆布のうまみ成分がグルタミン酸である
ことを見つけ、味の素という会社を造りました。当時は化学合成し
ており、発酵法になったのは20年ほど前であったと記憶してます。
したがって、記載は誤りです。
一般には光学分割は困難なのですが、グルタミン酸Naは例外的に簡
単です。Lを析出させると母液はD過多となりますが、水溶液を加
熱するとDL体にラセミ化するので、結局、Lだけを造ることが出
来るのです。

---〔↑引用おわり〕-----------------------------------------

 化学合成法では、ラセミ体(LとDの混合物)のグルタミン酸の
分割が困難だと書いたのですが、ご指摘では意外と簡単だったよう
です。おわびして訂正します。

 それではどうして、醗酵法に変わったかというと、これは単純に
コストの問題であったようです。

 グレガリナさんは、「農薬のお話」というサイトを運営している、
化学の専門家の方です。URLは以下のとおりです。

http://members.tripod.co.jp/gregarina/

 安心!?食べ物情報のページからもリンクしています。

 それから、ポカチューさんのサイト

http://member.nifty.ne.jp/pokatyu/index.html

 にもリンクしました。ポカチューさんは食品メーカーで開発にか
かわっている方ですが、ユニークなメールマガジンを発行されてい
ます。以下はいただいたメールから。

---〔↓引用はじめ〕-----------------------------------------

それと、実は私もメールマガジンを発行しております。
「週刊」食っちゃえ!というやはり食品がらみのものなんですが・
・・(笑)
自分の開発しているジャンルにはタッチしないように気をつけ、も
っぱらコンビニやスーパーの新製品を食べて批評するものです。

---〔↑引用おわり〕-----------------------------------------

 サンプルのメールマガジンを見せていただきましたが、結構あや
しげなものでも、まじめに食べてみて、批評する、というコンセプ
トで、実に楽しく読ませていただきました。

 開発者の観点、化学者の観点、など、いろいろな角度からの情報
も紹介していきたいと思います。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「日本酒」 その2
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【添加物】

 あるメーカーから、日本酒の仕様書をもらったら、添加物のらん
に、「乳酸」と書いてありました。これにはちょっと驚いたのです
が、実はほとんどの日本酒の製造時には、乳酸を使用しています。

 でも、メーカー自身にも普通、「添加物」という意識はないので、
問題にされることはありません。件のメーカーは正直すぎたので、
こちらも驚いたのです。

 酒を仕込む際には、最初に「酒母」というものをつくります。米
麹を仕込んで、酒の醗酵に必要な酵母などの微生物を繁殖させたも
のなのですが、伝統的な手法では、さまざまな工程を経て、乳酸菌
が優勢になるように仕込みます。乳酸が多くなると、乳酸菌自身も
繁殖しにくくなり、酸に強い酵母が独占的に繁殖するようになりま
す。

 まだ微生物の存在ということも知られていない江戸時代に、この
ような技術を確立した、というのは驚異的なことです。近年では、
この工程を簡略化して、あらかじめ乳酸を添加しておく、「速醸元」
(本当は「元」に「酉」偏がつくのですが、変換できなかったので、
このように表記しておきます。以下同じ。)が主流になっています。

 厳密に言うと、「速醸元」を使用している酒は、添加物として、
乳酸を使用していることになる、というのが、最初の話の理由です。

【山廃仕込み】

 CMでときどき見かける、「山廃」とか、「生元」とかいうのは、
この「速醸元」ではないことを主張しています。「生元づくり」の
工程で必要な、「山おろし」という作業を省略したのが「山廃仕込」
です。

 ただ、工程としては伝統的なステップを踏んでいるとしても、微
生物制御には現代の知識を動員するのですから、本質的な差はない、
と思います。

 近代以前の日本酒は、今のものより、はるかに酸味、雑味が強い、
超辛口のものだったと想像されているようです。驚異的な技術とは
いうものの、今のようには微生物制御ができきれなかったはずだか
らです。

【日本酒度、アルコール分】

 甘口、辛口を測るのに、「日本酒度」と呼ばれる表示があります
が、これは酒の比重を測ります。酸の多い酒は比重が重く、辛口に
なり、糖の多い酒は比重が軽く、甘口になります。

 酒は「アルコール醗酵」によって作りますが、この醗酵は糖をア
ルコールと二酸化炭素に分解します。原料の糖は果汁などには豊富
に含まれますが、米から酒を造るためには、米のでんぷんを糖に分
解しなければなりません。

 日本酒では、「米麹」を使用しますが、これは米に麹カビを繁殖
させたものです。このカビが出す酵素によって、でんぷんを糖に分
解する、「糖化」という作用をさせます。

 日本酒の醸造は、「糖化」と「アルコール醗酵」が同時に進行し
ていく、「並行複醗酵」と呼ばれる醗酵形式になります。この結果
日本酒は醸造酒としては最高度のアルコール分を含む酒になります。

 18%を越えるアルコールを含む原酒ができるのですが、私たち
が普通に飲むものは14〜5%です。この差は何かというと、アル
コール分の調整のため、「加水」しているのです。要するに水で薄
めるわけです。

【搾りと貯蔵】

 仕込みが終わると、搾って酒粕と酒に分離します。この搾りの工
程も、機械によってかなり違います。古くて能率の悪い機械で搾っ
ている酒蔵から出る酒粕は、大手メーカーのものと違って、ふかふ
かしていて、味もとてもよいものです。ぺしゃんこになった酒粕し
か知らない人が見ると、びっくりされます。

 搾りの工程は、できた「もろみ」を袋に入れて、重ねてプレスし
ます。袋は布製で、目は粗いので、最初は白く濁った酒がひとりで
に出てきます。そのうち、酒粕の成分で目が詰まって、あまり出て
こなくなりますが、それからプレスすると、今度は酒粕で酒粕がろ
過されて、透明な酒が出てきます。

 この最初に出て来る部分だけをいただいたことがありますが、そ
の場で飲むと、極めて美味でした。しかも、自家栽培の米で仕込ん
だ純米吟醸酒でしたから、何とも贅沢な話です。(自慢^^;)

 搾った酒はタンクで不純物を沈殿させ、熟成させます。このとき、
タンクを冷やして低温で熟成させると、普通のものより、すっきり
とした、冷で飲むのに適した味になるそうです。最近はこういうも
のが人気だといっていました。

 火入れはこの熟成前と、ビン詰め時に2度するのが普通です。火
入れを全くしない「生酒」や熟成前の火入れをしない「生貯蔵酒」
というのも、近頃の好みを反映して出来てきた商品です。

 火入れをした酒は品質が安定し、かなり長期の保存に耐えます。
しっかりと熟成し、火入れをした日本酒が出まわるのは、この冬に
仕込んだ酒では、夏場以降、来年の冬にはこの酒が出まわっている
のが普通です。

 生酒の類は冷蔵して、できるだけ早く飲んでください。すぐに味
が変わってきます。

【杜氏】

 酒蔵では伝統的に、「杜氏」と呼ばれる専門職の人が醸造にかか
わります。酒蔵の経営者は、酒作りそのものには関係しないのが普
通でした。

 杜氏というのは、冬に農作業のできない地方からの出稼ぎで、近
畿地方では「丹波杜氏」、東北では「南部杜氏」が有名です。

 最近では「四季醸造」のひろがりや、その他の事情もあって、杜
氏という制度そのものが間もなく滅びる運命にあるようです。

 和歌山では、酒蔵の従業員の若い女性が杜氏の仕事をしている所
もありますし、私の見学したところでは、まだ30代の社長が、杜
氏のおじさんの弟子をしていました。将来は自分だけの技術で、酒
つくりに取り組むのだそうです。

 こんな話を聞くと、すぐに応援したくなります。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「ワイン」 その1
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【ワイン工場】

 山梨県のワイン工場へ行ったときの話です。

 ブドウは収穫されるとすぐに、ワイン工場に持ち込まれます。工
場では、ベルトコンベアに投入して、実と枝?を機械でわけ、すぐ
にブドウ果汁を作ってしまいます。

 ブドウは日本では、基本的に生で食べるものと同じ品種です。生
食用の方がずいぶんと高く売れるのですが、房を整えたりする手間
が大変なので、手の回らない分はワイン用になるのだそうです。

 ワインの仕込みは日本酒と違って、極めて簡単な工程です。白ワ
インはブドウの皮を取ってから仕込みますが、赤は醗酵のある時期
まで、皮といっしょに仕込むのです。

【亜硫酸】

 ワイン作りに欠かせないものとして、「亜硫酸塩」があります。
これは「酸化防止剤」として表示されますが、醗酵の課程では、他
にもいろいろな働きがあるようで、ぶどう果汁を仕込む際に添加す
るのが普通です。

 「亜硫酸無添加」のワインを作ってもらっていたのですが、赤ワ
インでは、無添加だとなかなか濁りがとれない、といっていました。

 また、すぐに飲んでしまう、「安物」のワインは無添加で十分製
造可能ですが、いわゆる「年代もの」になる高級ワインでは、亜硫
酸による酸化防止は、不可欠なものです。

 亜硫酸の毒性については、あまり聞いたことがありません。ずい
ぶん以前から、伝統的に使用されているものなので、心配せずに飲
んでかまわないと思っています。たぶん、亜硫酸よりもアルコール
の方が危険でしょう。

【添加しているもの】

 意外と知られていないのですが、国産のワインでは必ず、醸造時
に「加糖」しています。簡単に言って、砂糖を入れているのです。

 これは別に甘くするためではなく、アルコールの元にするためで
す。アルコールは原料中の糖分から作られますが、大雑把にいって、
果汁の場合、糖度の半分のアルコール度数になるのです。

 20%の糖を含む果汁から、10%のアルコール濃度のワインが
できますが、日本では糖度20%のぶどうはできません。

 なぜできないか、という話はややこしいので省略しますが、とに
かく日本のぶどうでは、そのままではまともなワインはできないの
は事実です。

 フランスではこういった「加糖」は禁止されていますが、ドイツ
などでは普通に行われています。フランス人に言わせると、ドイツ
のワインは偽物だそうですが、ドイツ人に言わせると、フランスの
ビールは偽物だそうですから、お互い様、というわけです。

 それから、たんぱく分解酵素(プロテアーゼ)の添加も普通に行
われています。

 亜硫酸無添加、ということに全く意味がないとは思いませんが、
無添加ワインでも、このような製造上の苦労はいろいろあるのです
から、単純に「無添加だから良い」という評価をくだせるものでは
ないようです。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 新年おめでとうございます。2000年問題も大過なく経過して
いるようですが、私の家では小さな問題が発生しました。

 ビデオデッキの「Gコード予約」ができなくなってしまったので
す。

 まあ、私はビデオの予約なんか、元からできませんので、あまり
関係はありませんが。

 正月はやはりつい飲んでしまいます。私は幸い、肝臓が悪くなる
ほどは、飲めないのですが、こういうときには、やはり「酒は健康
に悪い」と実感します。

 そこで今回の話になったわけですが、健康に悪いのがわかってい
ても飲むのは、よほど意思が弱いか、健康よりも大事なことがある
と思っているか、どちらかなのでしょう。

 少なくとも、「健康に悪い」ということと、「飲んではいけない」
ということとは、等価ではないと思います。

 タバコは上の子が生まれた20年前にやめましたが、酒はやめら
れそうにありません。ほどほどにはしたいと思っているのですが。

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