安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>794号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------794号--2015.01.25------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「ニュースから」「海苔の色落ち」

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---〔話題〕-------------------------------------------------

 まずはこんなニュースから。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 生後9カ月の子どもがいる母親の46%が、鶏卵を含むパンなど
の食品を子どもに与えていないことが、19日に公表された環境省
の子どもの健康に関する大規模調査の結果で明らかになった。牛乳
などの乳製品も53%が与えていなかった。

 卵や乳製品は、アレルギーを引き起こす可能性がある物質(アレ
ルゲン)とされる。調査に関わった国立成育医療研究センター(東
京)の大矢幸弘アレルギー科医長は「アレルゲンとされる食品の食
べ始めが遅い傾向がある。遅らせた影響は、今後の調査で明らかに
したい」としている。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/article/140267
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 調査結果は今までの情報からすると、原因物質への接触が遅いほ
ど、アレルギーを持つ率が高まる、というものになりそうに思いま
す。

 もしそうなら、早く多くの人に知らせてあげたいものです。

 次は「機能性表示食品」について、着々と進んでいるようです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

機能性表示食品のガイドライン(案)について

2015年1月16日掲載

 平成27年1月14日に開催された規制改革会議にて、機能性表示食
品に関するガイドラインの概要が提示され、その資料が内閣府HPに
掲載されております。

■機能性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)の概要

 本資料はあくまで概要であり、ガイドラインそのものではありま
せんが、これが基本となることは間違いありません。

 4月からのスタートに向けて、正式なガイドラインの発表が待た
れます。

http://www.89ji.com/kinousei/7267/
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ここで紹介されているのが、次のような内容です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■機能性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)の概要

消費者庁食品表示企画課

(1)適切な機能性表示の範囲

ア)対象食品

 食品全般を対象とするが、対象外となる食品の考え方は以下のと
おりとする。

1.特別用途食品、栄養機能食品と重複することはできない。

2.アルコールを含有する飲料(アルコールを含有する食品を含む。)
を対象外とする。

3.国民の栄養摂取の状況からみてその過剰な摂取が国民の健康の
保持増進に影響を与えているものとして健康増進法施行規則第11条
第2項で定める栄養素(脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類
(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)、
ナトリウム)の過剰な摂取につながる食品は対象外とする ※ 。

※「過剰な摂取」の考え方について、当該食品を通常の食事に加え
て摂取すること及び同種の食品に代替して摂取することにより、当
該栄養素の1日当たりの摂取量が、厚生労働大臣が定める食事摂取
基準で定められている目標量を上回ってしまう等、当該栄養素を必
要以上に摂取するリスクが高くなる場合をいう。なお、届出に当た
って、過剰な摂取につながらないとする理由を付記するものとする。

イ)可能な機能性表示の範囲

 保健の目的が期待できる旨の表示の範囲は、健康の維持及び増進
に役立つ、又は適する旨(疾病リスクの低減に資する旨を除く。)
を表現するものであり、例えば、次に掲げるものであることとし、
明らかに医薬品と誤認されるおそれのあるものであってはならない
こととする。

1.容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ


2.身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役
立つ旨

3.身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的
でない体調の変化の改善に役立つ旨

※1 「診断」「予防」「治療」「回復」「緩和」「処置」等の医
学的な表現は使用できない。

※2 身体の特定の部位に言及した表現は可能である。

※3 特定保健用食品で認められている範囲内の表現は可能である
(疾病リスク低減表示を除く)。

※4 医学的及び栄養学的な観点から十分に評価され、広く受け入
れられている評価指標を用いる。なお、主観的な指標によってのみ
評価可能な機能性の表示についても対象となり得るが、その指標は
日本人において妥当性が得られ、かつ、学術的に広くコンセンサス
が得られたものとする。

認められない表現例としては、以下のものが考えられる。

1.疾病の治療効果又は予防効果を暗示する表現

(例)糖尿病の人に、高血圧の人に 等

2.健康の維持及び増進の範囲を超えた、意図的な健康の増強を標
ぼうするものと認められる表現

(例)肉体改造、増毛、美白 等

3.科学的根拠に基づき実証されていない機能性に関する表現

(例)限られた免疫指標のデータを用いて身体全体の免疫に関する
機能があると誤解を招く表現、in vitro試験や動物を用いたin vivo
試験で実証された根拠のみに基づいた表現、抗体や補体、免疫系の
細胞などが増加するといったin vitro試験やin vivo試験で科学的
に実証されているが、生体に作用する機能が不明確な表現 等

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150114/item2.pdf
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 金儲けのネタにはなるでしょうが、これで幸せになる人はいない
のではないかと思います。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「海苔の色落ち」
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 こんなニュースがありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門をめぐ
り、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は22日付の決定で、開門
するまで国に制裁金を支払うよう命じた佐賀地裁の判断を支持した
福岡高裁決定について、国の抗告を棄却した。一方、開門した場合
に制裁金支払いを命じた長崎地裁の判断を支持した同高裁決定に対
する国の抗告も、同日付で棄却した。

 これにより、国への制裁金命令が確定。国は開門するまでは漁業
者に、開門した場合は干拓地営農者に、制裁金を支払わなければな
らない。国は佐賀地裁決定を受け、既に漁業者への支払いを始めて
いる。農水省によると、これまでに約9100万円が支払われた。

 国は、司法判断によって開門と開門禁止という相反する義務が課
されているため国の意思だけではいずれも履行できないと主張し、
制裁金を認めるべきではないと訴えていた。

 第2小法廷は決定で、相反する義務を負ったことに左右されるこ
となく、国の意思のみで履行できると指摘。ただ、開門の可否につ
いての判断は示さなかった。

 同事業をめぐっては2010年12月、3年以内の開門を命じた福岡高
裁判決が国の上告断念によって確定。一方、長崎地裁は13年11月、
営農者らの申請を認めて開門差し止めを命じる仮処分決定を出した。

 国が開門しなかったため、開門賛成派の漁業者らは国に制裁金を
支払わせる「間接強制」を佐賀地裁に申し立てた。同地裁は昨年4
月の決定で、2カ月以内に開門しなければ漁業者側に1日49万円を支
払うよう命令。福岡高裁も同6月、「開門は第三者の協力や同意を
必要とするものではない」として、国の不服申し立てを退けた。

 一方、営農者らも開門した場合に制裁金を支払わせる間接強制の
申し立てをし、長崎地裁は同月の決定で1日49万円の支払いを命令。
福岡高裁もこれを支持していた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150123-00000098-jij-soci
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 全く馬鹿げた事態になっていて、最高裁で大人の対応をしてくれ
るものと思っていましたが、最高裁は法律論で逃げてしまいました。

 法律的にはたぶんこれで正解なのでしょうが、国の財産は国民の
財産という視点が抜けています。無駄な出費を防ぐことも大切でし
ょうに。

 そもそもが「海苔の色落ち」問題を、諫早湾干拓事業のせいだ、
と騒いだことが始まりです。

 ところが、最近、瀬戸内海でも同様の事態になっているという報
道がありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 瀬戸内海で、栄養不足のため養殖ノリが色落ちする被害や漁獲高
の減少が深刻化していることから、環境省は来年度から、瀬戸内海
で本格的な水質調査に乗り出す方針を固めた。かつての深刻な公害
から立ち直った瀬戸内海だが、近年は漁業者やノリ養殖業者から
「海が痩せた」との声が上がる。原因はどこにあり、解決策はある
のか。かつての豊かな海を取り戻すべく、模索が続いている。

 「黒々していて元気いっぱいだが、またいつ色落ちが始まるかわ
からない」。全国5位(2010年度)の養殖ノリ生産量を誇る香
川県の高松市沖でノリ養殖を営む地浜秀生さん(55)=同市浜ノ
町=は、海面に敷かれた網にびっしりと生えたノリに笑顔を見せる
が、不安が頭から離れない。

 「平成25年1月30日 少し色落ち」。地浜さんが毎日欠かさ
ず収穫量や水質などを記入する日誌には、色落ちが始まった時期が
記録されている。地浜さんの網で色落ちが目立ち始めたのは00年
ごろ。例年、収穫は12月中旬ごろから3月まで続くが、近年では
1月に色落ちが始まり、以降の収穫をあきらめてしまうこともある。

 香川県によると、00年度に9億7900万枚あった生産量は昨
年度には3億5500万枚まで激減。ガソリン価格の高騰やノリ単
価の下落なども相まって、地元に所属する養殖業者も最盛期だった
30年前の約20業者から9業者に。仲間たちは見切りをつけて養
殖から手を引いた。地浜さんは「色落ちの原因調査は長年要望して
きた。科学的な調査で原因や対策を明らかにしてほしい」と期待を
寄せた。
http://mainichi.jp/feature/news/20150106k0000m040143000c.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 さすが毎日新聞、以前から諫早湾干拓事業が海苔の色落ちの原因
だと主張してきたのに、それに矛盾する事態であることも認識でき
ていないようです。

 2つの場所で同じ現象が起こったとき、共通する原因があるのだ
ろうと考えるのが普通の推論です。諫早湾干拓事業は有明海にしか
存在しませんので、少なくとも主要な原因ではない、という以外に
理解のしようがありません。

 実際、専門家は干拓事業が原因などとは考えていないようです。

 以下に引用するのは、佐賀県の専門家が香川県で講演した内容で
す。非常に長いので一部だけ紹介します。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------
平成22年度 香川県ノリ色落ち改善技術開発検討会 学術講演

「栄養塩添加技術に関する知見と佐賀県での実施状況」 佐賀県有明
水産振興センター副所長 川村嘉応氏

■「栄養塩添加技術に関する知見と佐賀県での実施状況」

 佐賀県では、昔から施肥を行っておりまして、昭和36年当時は、
協和発酵の「ノリフード」という肥料剤を使っておりました。さら
に今では考えられないのですが、塩安(塩化アンモニウム)を河川
に投入して、拡散する方法も行っておりました。佐賀県の場合は、
河口のすぐ入口のところから海苔漁場がありますので、自然には乱
暴なことですが、非常に効率的というか理にかなった方法だったと
思います。

 なぜこれをやめたのかといいますと、やはり河川の環境負荷の問
題です。植物プランクトンが多いときには施肥効果は期待できない
ですし、塩安はものすごく水温を下げますので、他の生物に与える
影響が小さくないということで、私が佐賀県に入った昭和55年当
時には、もう行われていなかったようです。昭和59年の頃には完
全に中止していました。この方法は、昭和50年代の前半までの数
年間しか行われていなかったと記憶しています。

(略)

 話は飛びますが、平成10年から佐賀県では、新しい施肥の方法
を試みることになりました。そのためにもう一度、いろいろな生物
への影響を確かめなければならないということで、塩安とか硫安を
入れて、生物への生残に及ぼす影響試験をしています。

 この図は24時間での生残ですけど、高濃度レベルでも生物に影
響はありませんでした。LD50で示していますけど、メナダをは
じめ、こういう有明海産の生物に対しての影響実験をしております。
500ppmという超高濃度であれば死にますが、実際にはこんな
高レベルになることはないので自然海域での影響はないと考えてい
ます。

(略)

 こういう実験をしまして、平成10年からいよいよ始まるわけで
す。なぜ、平成10年に始まったかと申しますと、平成4年までは、
うきうき法で施肥を行っていましたが、その後、一時的に色落ち被
害がなくなったものですから、うきうき法で施肥を続ける意味がな
くなり、それで止めようということになったんです。

 ところが、平成10年秋に極端な色落ちがあり、海底耕耘をやろ
うとか、いろいろ話をしたのですが、それでもどうしようもなくて、
ついに平成10年から新しい方法で施肥をすることになりました。

 その時には、先ほどの結果や過去の経験等を生かして、まずは硫
安で始めたわけですが、皆さんご存知のように、硫安よりもよく溶
けることと、硫安そのものが製造中止になったことなどから、途中
から硝安に変わりました。ただ硝安は保管が問題で爆発物ですから、
保管については大変気を遣っております。

(略)

 栄養添加の時期ですが、とにかく色調が低下して生産が不毛にな
ると判断した時に、きちんと計画書を出していくことです。「色落
ち板」を作りまして、2.5はここですが、ここまで色落ちしたと
ころではじめて「色落ち」と判断します。

 施肥条件の1つは色落ちですので、それが2.5以上になったら
施肥しても良いですよということです。平成18年から色落ち板を
漁業者に配っておりまして、とにかく「色調が低下しないと施肥は
できませんよ」と決めて行っております。

 色落ちをすべてなくしてしまうのはなかなか難しいのですが、色
落ちに対する施肥の役割、効果というのは、栄養塩のレベルを上げ
て色落ちを回復させるだけではなくて、雨が降るまでのしばらくの
間、色落ちで漁業者が諦めてしまわないように心を繋ぎとめるとこ
ろにもあるように思います。

 それから、色落ちしたノリに対する施肥の一つの効果として「酸
処理」があります。といいますのも、酸処理をしていない頃に色落
ちすると、いわゆる「白腐れ」が発生したり細菌が付いたり、ある
いは「アカグサレ病」や「壺状菌病」が出たりして、葉体自体がボ
ロボロになりますので、そこに施肥をしても効くわけがないんです。

 しかし酸処理をすれば、細菌の増殖は止まりますし、アカグサレ
病なども止まるわけですから、栄養塩が来ればすぐに色が元に戻る
状態にあるわけです。

 昔は、色落ちしてしまえば放棄して何もしませんので、糸状細菌
などが付いて汚くなっていたのですが、酸処理をするようになって
からは、もちろん酸処理剤の中にリンや窒素が入っているのかも知
れませんが、このようにして葉体の活性を上げることができるよう
になりましたので、施肥の効果が上がり、雨が降るまでの繋ぎの役
目ができているということです。

(略)

 問題点として、今後、生物・環境への影響に関する研究を行う必
要があるということです。

 それから、環境六法の平成11年度版に照らすと、法律上、硝安
とか硫安は、有機物質のD分類に該当するので違反ということです。
施肥とか酸処理は、産業廃棄物で出ているものだからダメだとは言
えないらしく、海上保安部もきちんと取り締まりをしませんが、や
はりこの辺は気になります。

 技術的な問題としては、漁業者のモラルです。いわゆる「過剰施
肥」のコントロールです。今回も漁師側からは「施肥の許可を」と
言うわけですが、基準に則して実施していますので、施肥の許可を
したくても「それはできませんよ」と言った時に、漁業者と施肥自
粛の話をしなければなりません。漁業者にはそういった意識を持っ
てもらいたいと思っています。

http://www.kagawa-u.ac.jp/setouchi/index-20110127.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 海苔の色落ちの原因は栄養塩の不足であり、それには施肥で対応
というのが基本線のようです。

 「施肥」というのはイメージが悪いのか、「栄養塩添加技術」と
いうそうです。最後の方にはこの他に「酸処理」にも言及されてい
ます。

 これについて、以下のサイトではかなり疑問視されています。個
人のサイトで、「素朴な疑問」と称していますが、なかなか面白い
内容です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■素朴な疑問-海苔の不作

 養殖している海苔の出来が悪いのは近くに○○が出来たせいだ!」
と耳にしました。何故だかとても気になって、少し調べてみました。

 ○○に入るもので有名なのは有明海の諫早湾干拓の堤防がありま
すが、その他にも発電所や下水道の浄水場などがあるようです。

 そして幾つか疑問というか、分からないことが出てきました。

 まずは有明海ですが、漁師の方たちが「海苔の出来が悪くなった
のは堤防のせいだ!水門を開けろ!」と抗議の海上デモをしている
のをテレビで見ました。 しかし…水門はずっと閉まったままにも
かかわらず、海苔の出来は常に悪いわけではなく、とても出来の良
い年もあるようです。 本当に堤防だけのせいなのでしょうか?

 私が近所の噂のようにして耳にしたのは「下水道の浄水場のせい
だ!」というものです。

 下水道の汚い水をきれいにした後、海や川に戻す前に消毒のため
に使われる薬剤(たいていの家庭に有るハイターなどの漂白剤と同
じものです。除菌もできるとCMしていますね。)が悪いというの
です。確かに悪そうな感じがします。 ただ、濃度は水道水よりも
かなり薄いようです。

 度重なる抗議を受け、薬剤を使うのを止めて紫外線消毒に切り替
えたそうです。もう海苔を傷めそうな物は流されなくなりました。
それでも「浄水場のせい!」と抗議は続いているようです。 何だ
か不思議です。

 ボチボチと気が向いたときにネットで関係の有りそうな物を拾い
読みしたり、本を読んだりして知ったのは、場所によって海の中の
環境がとても悪くなっていることです。 以前は海藻が生い茂る海
中林だった所が、今では海藻の一本も生えることの出来ない磯焼け
を起こしているというのです。

 今頃、何を寝ぼけたことを!とは思いますが、高度経済成長時代
に環境破壊や公害病が多発したために規制が厳しくなり、空気も水
も綺麗になったと思っていたので、磯焼けの寒々とした海中の写真
を見たときは気持ちが沈んでしまって…。

 原因と考えられる事は幾つも有るようです。 今まで知らなかっ
たことを知ることで、さらに気持ちが沈んでいきます。

 ただ、私の近く海に関しては、出来はともかく海苔の養殖も行わ
れていますし、何より閉鎖性水域ということもあり富栄養化による
水質悪化の方が心配されているようです。

 そのうちに「どうも何かが引っ掛かる。変なものを何度も見てい
るような気がする…。」何に違和感を持っているのかに気付くのに、
結構時間がかかってしまいました。プランクトンだったのです。

■素朴な疑問-プランクトン

 海苔の養殖時期(10月〜3月くらい。寒い季節です)には、水産
試験場や漁協などが「のり漁場の栄養塩調査結果」を公開していま
す。そこで割と頻繁に目にするコメントが「××地区では珪藻プラ
ンクトンが高密度で発生しています。」というもので、プランクト
ンが発生している××地区では栄養塩の濃度がとても低く、「プラ
ンクトンの発生は見られません」というときは栄養塩の濃度は十分
なようです。

 海苔もプランクトンも成長するには海水中の栄養塩(窒素とリン)
が必要ですし、体が小さいプランクトンの方が海水の状態に素早く
反応すると考えられるので、プランクトンが増えると栄養塩が減る
のは当然でしょう。栄養塩の奪い合いに負けて海苔の出来が悪くな
るのも当たり前な気がします。

 プランクトンが増える→栄養塩が減る→プランクトンがいなくな
る→栄養塩が増える→プランクトンが増える→… とグルグル回っ
ているような気がします。

 プランクトンの大発生さえ起きなければ、窒素もリンも十分に有
る豊かな海のはずなのです。

 夏の方が降水量は多く、山で作られた栄養分が川を下って海に供
給される量も多いと思われます。それに対して、冬は降水量が少な
く川の水量も減るので栄養分の補給が少なくなりますが、その代わ
りに海水の塩分濃度は安定します。

 寒い方が適している種類や、塩分濃度の安定が必要な種類のもの
もいるのでしょうが、一般的にプランクトンや微生物などは、水温
の高い夏の方が活発に活動します。光合成をする植物プランクトン
なら日差しが強い方が効率がいいので、これも夏の方がいいでしょ
う。

 なぜ冬に…??

■素朴な疑問-酸処理剤

 海苔を養殖する方法など全く知らなかったので、これも調べてみ
ました。

 色々と手間も体力も要りそうで、大変そうです。 養殖の段階ご
とに、やらなければならない作業があるようですが 「酸処理」 と
いうものに引っ掛かってしまいました。

 酸処理とは、黒海苔の網に混入する青海苔や、病気の原因になる
バクテリアを殺すために、pH2程度の酸性の液に海苔網ごと漬ける
ことのようです。 黒海苔が青海苔やバクテリアに比べて酸に強
い性質を利用していて、1980年頃にほぼ確立された方法だそうで、
これにより海苔の収穫量?が向上したらしいです。

 海苔の養殖には欠かせないものとなっていることが分かりました。

 ところが、この酸処理に用いられる酸処理剤 (活性剤とも呼ば
れている) の成分が奇妙なのです。

 メーカーや製品により成分に違いが有るようですが、ハッキリし
た組成は探し出せませんでした。割合は分かりませんが、成分とし
ては下記のような物のようです。

主成分(有機酸):クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸
その他の成分:塩化アンモニウム、リン酸ナトリウム、アミノ酸液

 最初、なぜ主成分が有機酸なのかが理解できませんでした。

 海で使用するもので、単純に酸に対する耐性の差を利用するだけ
ならば、塩酸が最も海の環境に影響が少ないはずです。 pH値が同
じならば、取扱上での危険性も同じと考えていいと思います。 皮
膚に付くと痛いです。目に入るととんでもなく痛いそうです。すぐ
に大量の水で洗い流して下さい。

 どうも”塩酸”というと 「とても危険で恐い物。食べ物に使う
なんてとんでもない!」 と思われていることが有機酸を使うこと
になった理由の1つのようです。 pH2の塩酸って薄いと感じるので
すが…。

 それに対して、pH2の有機酸は濃いと思います。 弱い酸なので
たくさん溶かさなければいけません。

 一口に有機酸と言っても、上記のように数種類を混合して使用し
ていて、組成も分からないため、ここからは一番多く使われている
と思われるクエン酸に絞ってみます。

 クエン酸はスポーツ飲料などにも使われている食品添加物です。
「体にいい物」 と受け取られていますが、何にでも限度というも
のがあります。 pH2なら塩酸とかクエン酸とかは関係なく飲めま
せん! 口や食道の粘膜を傷める恐れがあります。 胃は…胃液
がpH1.8〜2の塩酸なので、ほんの少しなら大丈夫かも…。

 身近な物で酸性の強い物としては、お酢やレモン汁がpH2.5くら
いです。 pH2.0の液の酸の濃度は、これらの約3倍になりますので、
とても飲めるような物では無いことが分かっていただけると思いま
す。

 もし、海苔への残留性を心配するのならば、塩酸は何の足しにも
ならないので残留することは無いと思います。 クエン酸は海苔に
とってもプランクトンにとっても効率のよい栄養源となるので吸収
します。人の体に対しても”良い物”ですし、問題は無いでしょう。

 逆に、クエン酸で問題になるのは有機物による汚染です。 海の
環境汚染の指標の一つであるCOD(化学的酸素消費量)を高くしま
す。 つまり有機物の多い、汚れた海にしてしまいます。

■素朴な疑問-水産庁の次官通達

 「有機酸は20日ほどで水と二酸化炭素に分解されるので、環境へ
の影響はほとんど無い」 と考えられたことと、塩酸のイメージが
良くないこともあって、1984年に 「酸処理剤は有機酸を使うよう
に」 との通達が水産庁から出された結果、酸処理には有機酸しか
使えなくなってしまいました。

 変だと思いませんか? クエン酸の水溶液を作っても20日で分解
などしません。 海水中にいる微生物たちが栄養として利用するこ
とで水と二酸化炭素に分解していくのです。 結果的に微生物を増
やします。

 何故、水産庁がこのような通達を出すことにしたのか推察(邪推?)
してみました。

 海苔養殖をしている方からは 「酸処理を許可してほしい!」 と
強い要望がある。(塩酸を使用している人達がいた。)

→海苔を買い付ける問屋や商社などから 「塩酸なんか使った物は
買わない」 と反発が出た。

→塩酸ではイメージが悪く、消費者に知られると、海苔だけでなく
水産庁のイメージも悪くなる。

→有機酸なら、皆に都合が良く、全て丸く収まる!

→有機物汚染? そんなこと知ったことでは無いね。皆さんが望ん
だ通りにしましたよ!

こんな所でしょうか…。

 上記の通達では窒素やリンについては触れていませんが、窒素
(塩化アンモニウム) や リン (リン酸ナトリウム) など栄養
塩まで入っています。 酸処理剤に窒素やリンを加えるなど、考え
もしなかったのでしょう。

 海苔の栄養になるように加えたのでしょうが、海苔が取り込むよ
りもずっと多くが海水中に出ていくと思います。

 窒素やリンの濃度も環境汚染の指標に含まれます。 ますます海
を汚しているような感じがするのですが…。

■塩酸とクエン酸の違い

 酸処理剤のところで 「pH2の塩酸は薄いと感じる」 と書きまし
たので、少し言い訳をします。

 ほとんどの方が 「塩酸は恐い」 と感じらているのは当然です。
市販されている塩酸の濃度は約37%で、とても危険な物です。 薬
局やスーパーで簡単に手に入るクエン酸とは訳が違います。
 (補足 : 薄めて濃度を調節した塩酸も市販されています。)

 それに対してpH2の塩酸の濃度は0.036%ですので、約1000倍に薄
めた物になります。 何となく薄いような気がしませんか…?

 pH2の酸性溶液を作るためには、きれいな中性の水に溶かす場合、
塩酸は上記したように0.036%、クエン酸は2.3%の濃度が必要です。
かなり濃度に差が有ります。

 弱アルカリ性(pH8.3)で色々な物が溶け込んでいる海水を使っ
てpHを2まで下げようとしたら、どれくらいの量が必要なのかは私
には分かりません。

 また、これらの酸性の液を中性まで中和しようとした場合、必要
なアルカリ分は塩酸を1とすると、クエン酸では37必要になります 
弱アルカリ性の海に酸性の液を使うことで何か影響が出るとしたら、
塩酸の方が影響は小さいはずです。

 小学校の理科の実験で 「塩酸も水酸化ナトリウム液もとても危
ない物ですが、同じ濃度、同じ量を混ぜると、ただの塩水になりま
す。これを乾燥させて出来た白い物は塩化ナトリウム、つまり食塩
です。不思議ですね〜。」 と教わった記憶があります。

 塩酸(HCl)は強酸で電離定数はきわめて大きく、水中ではほと
んどH+とCl-に解離しています。 どちらも海水中にはとてもたく
さんあります。 ほんの少しの量を加えるだけで、簡単にpHを下げ
ることができ、また簡単に中和することが出来ます。

 酸処理に塩酸を使えば、あまった液も水酸化ナトリウムで中和す
れば、ただの塩水なので海に捨てても OK!だと思うのですが、ど
うでしょう?

 クエン酸は弱酸で電離定数が小さく、水中に溶けてもH+を少しし
か出しませんのでpHを下げるためにはたくさんの量が必要になりま
す。また中和しようとすると出し惜しみしていたH+を小出しにして
くるので、その分多くのアルカリ分を必要とします。

 たとえ中和しても有機分は残っているので、前述したように有機
物汚染となり、微生物のエサになります。

 この2種類の酸の工業的な製造方法を比べると、塩酸は、食塩水
を電気分解して、水酸化ナトリウムを製造する際の副産物である塩
素と水素を反応させ、生成した塩化水素を水に溶かすことによって
製造されています。 原料は食塩水です。

 これに対してクエン酸は、デンプンや糖を麹カビの一種で発酵さ
せて作られています。

 乱暴な言い方をすれば、「塩水と水飴では、どちらが海を汚しま
せんか?」 となります。

(略)

■まとめ

 冬にプランクトンが大量発生する理由が分からず、酸処理剤の影
響かもしれないと思い始めたものの、本当の事は分かりません。な
んだか海苔の不作よりもプランクトンのことが気になってしまって、
調べ始めた頃とは興味の向く方向がずれてしまいました。

とりあえず、考えたことをまとめてみます。

 1.プランクトンの大量発生には酸処理剤(有機酸)の影響がある。

 2.有機酸ではなく塩酸を使用すればプランクトンは増えない。

 3.窒素やリンの濃度はプランクトンの発生量を左右する。

 4.プランクトンの成長や増殖には微量の金属も必要

http://alizarin.eco.coocan.jp/contents.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 農業や漁業で、○○が原因だ!と騒ぎだしたら、大抵はカネが目
的です。行政や大企業(電力会社とか…)がターゲットになります。

 和歌山県でも似たような事件があり、「梅の不作は発電所のせい
だ!」とやったのです。ところが関西電力御坊火力発電所は石油を
炊くタイプで、コスト高のためふだんは稼働せず、高需要期の調整
用だったのですね。

 専門家からも否定されて討ち死にしています。このところの原発
問題のせいでこの発電所も頑張って稼働しているでしょうから、ま
た言い出すのではないかと楽しみにしています。余談ですみません。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 紀州加太休暇村というところに行ってきました。目の前が海で、
近くに友ヶ島が見えます。友ヶ島というのは近い方から地ノ島、沖
ノ島とあり、その向こうは淡路島です。ここに巨大吊橋を建設して、
高速道路と新幹線を通す、という計画(だけ)があります。明石海
峡大橋をはるかに超える、世界一の吊橋になるそうですが、私が生
きているうちには実現しないでしょうね。島の真上を高架橋が通り、
その向こうに巨大な吊橋が見えるという光景を想像してきました。

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