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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------72号--2001.03.25------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」
「保存料の検査」(Q&A)
「食品検査」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 例によって、ご指摘のメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 放射性ヨウ素の半減期は、8年ではありません。8日です。一昨
年の東海村の臨界事故でも環境に放出された放射能は、主に放射性
ヨウ素でした。半減期は8日ですから、約2ヶ月で1%以下、約3
ヶ月で0.1%以下になります。あの臨界事故は9月末ですから年
末には、仮に食べ物に残っていても無視できる量になっていました。
ところが、茨城産のさつま芋や干し芋は、嫌われてました。半減期
8年ですと、今でもほとんど残っていることになります。

 また、チェルノブイリの事故でも、短期的には放射性ヨウ素が問
題となりました。それに汚染された子供たちに何が起きているのか、
改めて述べる必要もないと思います。長期的にはセシウム137による
汚染です。この放射能は半減期30年です。チェルノブイリの事故
は86年に起きていますから、そのほとんどが残っていることにな
ります。事故で放出されたセシウム137は、ガンマ線という放射
線を出して崩壊せずに残っていることになります。
 
「半減期が長いと、放射能として強いように思うのは、全くの誤解
です。人間の健康にとって問題なのは、半減期の短い、すぐに核分
裂を起こす物質なのです。」

 この言い方は単純化しすぎていると思います。プルトニウム24
0の半減期は6600年、プルトニウム239は2万4000年で
す。放射性ヨウ素の8日、セシウム137の30年にに較べて長い
半減期です。

 しかしプルトニウムは理論的には約2kgで全人類にガンを起こ
させうるほど毒性の強い放射能(放射性物質)です。この強い毒性
は、プルトニウムがアルファー(α)線という放射線を出すからで
す。α線は、原子核、中性子2ヶに陽子2ケのヘリウムの原子核が
飛んでくる放射線です。こんなに重い、エネルギーの高いものです
から他の物質、例えば遺伝子などにぶつかれば、それを電離し壊す
力が強い。逆に目の前にあっても大気やビニールなどが間にあれば、
そちらと反応して人体には無害です。α線は紙一枚で遮蔽できます。
ちなみに、ビルに設置されている煙探知機には、アメリシウムとい
うα線をだす放射能が密閉されて使われています。α線検知器との
間に煙が入ると、α線が煙に吸収され検知数が減りますから、それ
で煙が出た、火事と警報する仕組みです。

 つまり、このプルトニウムは微粉末などの形で、呼気や食べ物か
ら体内に入り定着した時に、周囲の細胞組織、例えば肺の細胞を傷
つけガンなどを起こす。それが問題なわけです。

 事故が起きて、放射能が出た場合、当初は半減期の短い放射能を
浴びないようにする、放射性ヨウ素を摂取しないようにするために
ヨウ素剤を飲んで甲状腺を満杯にしておくなどの対策が有効で必要
です。しかし長期的には半減期の長い、つまり環境中に残留する放
射能から如何に身を守るのかが問題になるのではないでしょうか。

 半減期の長短は、対策の立て方や優先順位には関係するでしょう
が、その放射能(放射性物質)の毒性、健康への影響には直接には
関係しないのではないでしょうか。

「人間の健康にとって問題なのは、半減期の短い、すぐに核分裂を
起こす物質」というのは単純化しすぎていると思います。
 
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 8日と8年じゃ、えらい違いです。(8しかあっていない)うろ
覚えで書いちゃだめだってば。m(__)m

 事実関係はこのメールのとおり、ということで、お詫びして訂正
します。

 プルトニウムはここにも書かれているように、放射能による害な
のですが、放射能として表示すると、大したことがないようになっ
てしまうので、「毒物」扱いされることが多いようです。その辺に
放置してあっても、どうということはないが、食べるとすぐに死に
至る、という点では、毒物というほうが確かにぴったりです。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.保存料の有無を調べる検査機器は流通しているのでしょうか?
もしあるようでしたら教えて頂けないでしょうか?

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A.これは意外に難しいと思います。私は見たことはないですね。
まず、「保存料」というもの全てを自動的に検出する、ということ
は不可能です。どのようなものが「保存料」として使われているか、
わからないからです。

 農薬検査なんかでも、同じことがいえます。農薬として許可され
ていない物質を使った場合、まさかそんなものを使っているとは思
わないので、分析してもなかなかバレない、ということもあるよう
です。

 ようするに、検査機器で検査する、という場合、ターゲットとな
る物質は、あらかじめ特定されている必要があるのです。

 通常、このような食品添加物の検査は、検査機関に依頼しますが、
依頼するとき、必ず検査する物質を聞かれます。

 このとき申請しなかった物質については、検査結果は感知しませ
んので、アッと驚く物質が使われていた場合、気付かないことは大
いにあり得ます。

 分析機器を購入して、自分でやるのも、不可能ではないので、生
協などでも、規模の大きいところでは、自前で検査室を設けたりし
ているようです。このような場合、それなりの教育を受けた技術者
を雇用します。

 いずれにせよ、素人に歯が立つ領域ではないと思いますので、専
門家に依頼することになります。

 保健所などの附属機関で、食品検査を受け付けてくれるところは、
ある程度の都市なら、必ずあると思いますので、そこに依頼するの
がいちばん簡単と思います。

 1検体、1物質あたりいくら、という料金が普通です。「保存料
を検査してください」というと叱られます。「ソルビン酸とパラオ
キシ安息香酸を検査してください。」というふうに頼みます。これ
で2物質分の料金になります。

 料金の単価は、公共機関なら安いのですが、このような事情で、
費用は結構かかります。個人的にやる、というものではないでしょ
う。

 メーカーなどが、証明用に、検査結果を持ってくることがありま
すが、このときは日本食品分析センターとかいうところのものが多
いようです。ここは大変単価が高い、という話でした。

 ガスクロマトグラフィーなどという機器を使うのですが、何度聞
いても、目に見えないどころか、電子顕微鏡でも見えない、極小の
分子を特定し、その量を測る、ということが、どうしてできるのか、
実に不思議なものです。

 専門家にとっては簡単なことなのでしょうが、感覚的にはなかな
かついていけないものがありますね。まあ、しかるべき機関の出し
た検査結果は信用するしかない、というところです。

 それから、最近は「保存料」なしで、保存効果を高める添加物、
というものもいろいろとあります。中にはソルビン酸より、安全性
の疑わしいものもあるのではないか、という気もしますので、保存
料を使用していない、ということだけでは安心できないと思います。

 検査というのは、メーカーの言っていることが信用できるかどう
かの目安として、利用するのが妥当な方法と思います。最初に言い
ましたが、悪意をもってインチキすることはいくらでもできますの
で、やっぱりメーカーとの信頼関係が一番大切です。

(「ソルビン酸は使っていません」と言っておいて、安息香酸を使
う、などという手口です。私は「化学調味料は使っていません」と
言って、こんぶエキスを使うのも、同罪と思っています。)

 私が仕入れ担当をしていたときには、やはりメーカーの人間を見
ました。偉そうなことをいう人、大げさな表現をする人がだいたい
怪しいです。真面目にやっている人はみんな謙虚で、控えめな言い
方をするものです。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「食品検査」
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 「Q&A」の話題の続きです。

 食品を検査に出すときは、まず検査機関をどうするか、というこ
とになります。ある程度のメーカーだと、社内で検査体制をもって
いることが多いのですが、部外での検査も必要です。

 そうすると、公的な機関が良い、ということで、私は市立の衛生
研究所をよく利用していました。これは保健所に併設の機関で、ふ
だんの一番多い仕事は、検便なんだ、と言っていました。

 食品を扱う営業所では、定期的に従業員の検便をするのですが、
一括してこういう検査機関に持ち込まれるわけです。

 毎日、同じようなことばりしていますので、私が変わったものを
持ち込むと、喜んでくれたものです。試薬をわざわざ取り寄せてく
れたりしました。

 検査は化学検査と生物検査があります。化学検査の方は、主に添
加物関係です。検査には、定性検査と定量検査があります。定性と
いうのは、量ではなく、あるかどうかだけを見ますので、簡単なの
ですが、普通は定量検査をして、どれだけ入っているかを確定しま
す。

 もちろん、検出限界というものがあります。検査の報告書には、
検査の方法、検出限界が必ず記載されています。この二つは大変重
要ですので、もしこれが書かれていない検査報告を見たら、インチ
キであると思って間違いありません。

 定量、といっても、別に秤で計れるわけではありませんので、実
はそんなに正確ではないと思います。だいたい、「○○×10の○乗」
などという形式で書かれていますので、この「○乗」の部分、要す
るにケタの部分だけを見ていれば良い、と思います。

 この手の検査で、一度、問題がありました。「無添加かまぼこ」
から、保存料のソルビン酸が検出されたのです。このときはびっく
りしましたが、検査した人の意見として、「保存料としての通常の
使用から考えると、検出濃度が低すぎるので、おそらく他からの混
入と思います。」ということがありました。

 保存料としての効果を発揮するためには、ある程度の濃度で存在
しなければなりません。また、使用しすぎても、使用基準にひっか
かりますので、正規の使用がされている場合、かなり正確に似たよ
うな濃度になるんだそうです。

 事実関係を調査したら、すり身を練る容器(石でできていて、プ
ラスチック製のすりこぎのようなもので、練り合わせます。)が他
の製品と共用のため、前に作った製品に入れてあったソルビン酸が
混入したものだったようです。

 毎日、製造終了後には徹底的に洗浄しますので、無添加のものに
ついては、毎朝、最初に作ってもらうことで、とりあえずは解決し
ました。

 ただ、同じ工場内で、無添加規格以外のものも作っている場合、
検出限界をもっと低くとれば、きっと出るんだと思います。「無添
加」という言葉が適応できるのは、どの検出限界では検出できない
場合か、はっきりさせておく必要があります。ここが決まっていれ
ば、それ以下の量が含まれていても、OKということになります。

 生物的な検査、というのは、要するに細菌検査です。細菌を調べ
る場合、顕微鏡で見る、というのは基本的にはできません。これは
細菌の世界をいったん破壊してしまいますので、もともと生きてい
たかどうか、わからなくなってしまうからです。

 牛乳で原乳の「総菌数」というときは、例外的にこの顕微鏡検査
を行います。牛乳の処理は急ぎの仕事になりますので、培養してい
る時間を節約するためと思います。この場合、生きているものも、
死んだものも、同列に数えますので、だいたい検査までの時間に、
菌数は比例することになります。近郊でとれて、すぐに処理施設に
持ち込まれる牛乳は、比較的この数字が低くでますが、時間のこと
を考えると、必ずしもきれいとは限らないので、注意が必要です。

 細菌は眼には見えませんので、培養検査をします。これは寒天な
どでできた培養地に、薄く検査物の溶液を塗って、培養するのです。
菌は分裂によって増えていきます。培養地の上では、菌は移動しま
せんので、元の菌があった場所のまわりに、だんだんと広がってい
き、肉眼で見える程度の固まりになっていきます。

 これを「コロニー」といい、コロニー一つを、元の細菌が一つあ
った(生きていた)証拠と考えます。こうして出された数字が「一
般生菌数」です。

 この数字も、検体1グラムあたり、10の何乗、というように表
します。○○×10の何乗、なんですが、最初の○○の部分には、
あまり意味はありません。

 牛乳の一般生菌数は10の5乗以下であることが求められます。
一般に、生で食べることのできる菌数としては、この10の5乗が
基準になるようです。(10の5乗=10万個です。)

 ずいぶんと多いように感じられると思いますが、細菌というもの
が、それほど小さいものである、と解釈しています。この程度だと、
通常の細菌では、それこそなんともありません。

 冷凍の魚介類でも、解凍して生だ食べるものは、この基準を満た
さねばなりません。ただ、冷凍している間は菌数は増えませんので、
全体にこの基準はあまり守られていないように思います。

 殺菌すれば、生菌数はほとんど0になりますが、生鮮食品では、
常にかなりの菌数があります。私のつきあいのあった肉の処理場で、
パック詰めした牛肉の菌数が10の3乗程度だったというので、検
査した保健所が驚いた、という話があります。どうも怪しいことを
していないか、疑われたようでもありますが、生肉で3乗程度、と
いうのは、驚異的にきれいなものである、ということがよくわかり
ます。

 野菜などでも同様です。検査機関では、生鮮食品の生菌数検査は
それ自体、意味はほとんどない、と言っていました。(たくさんあ
るに決まっているからです。)牛乳などで意味があるのは、いった
ん殺菌しているからです。この意味では牛乳はやはり生鮮食品では
ありません。

 生菌数以外には、「大腸菌群」「黄色ブドウ球菌」の検査をする
のが普通です。これらは培養地を工夫することで、該当する種類の
菌だけを培養して調べます。

 「大腸菌群」というのは、大腸菌の仲間、といった意味で、これ
らの菌は通常、自然界には存在しないものなのです。というのは、
動物の体内にいる菌で、外界に出ると、わりとすみやかに死んでし
まうからです。

 食品から大腸菌群が検出される、ということは、最近、動物の排
出物に触れた可能性が強い、と考えられます。大腸菌群自身は、普
通、別に害のあるものではありませんが、大腸菌群が検出されると
いうことは、伝染病などの病原菌が混じっている可能性がある、と
いうことなので、加熱殺菌された後の食品からは、検出されてはな
らないことになっています。

 これも、生鮮食品には当てはまりません。私は牛肉の大腸菌群検
査を研究所に依頼したことがありますが、出るに決まっているから、
やめておけ、と断られました。

 黄色ブドウ球菌は、人間の皮膚にいる菌で、キズが化膿するとき
の主役です。これもやはり、殺菌後の食品が汚染された指標菌とし
て検査されています。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 つっこみOK、と書いたら、さっそく鋭いツッコミが・・。

 もちろん大歓迎ですので、これからもよろしくお願いします。で
も、今回はちょっと恥ずかしかったです。あきれて見捨てないでく
ださいね。

 食品検査については、自前で検査体制を作る、という野望をもっ
ていまして、実は私は自分でやってみるつもりだったんです。

 子どものとき、理科の実験道具が欲しくて、通学路にあった、理
科の教材屋さんのショーケースをよく見ていたものです。結局、親
に買ってくれ、とも言えずに終ったのですが、ああいうものを手に
入れていたら、今頃は立派な化学者になっていたかも・・などと思
います。

 でも、生来の不器用のことを考えたら、やめておいて正解だった
んでしょうね。先日も、あまりに不器用で、手術後の縫合ができず、
何人も殺してしまった有名な外科医の話を聞いたところです。一生
懸命やっても、やはりむいていない人には、無理なことはあります
ね。

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--発行--渡辺--宏------- URL http://www.kenji.ne.jp/food/
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