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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------659号--2012.06.24------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「食品照射」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 こんなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 先週のメルマガを見て思ったことがあります。食中毒シーズンに
突入しましたが、食中毒のニュースはよほど大きい被害が出たとき
は別ですが、騒がれないのに対し、放射能汚染はさほど被害が出て
いないのに大事として騒ぐのはなぜなのでしょうか? 理解できま
せん。

 福島原電の事故で犠牲者はひとりも出ていません。一方食中毒は
場合によっては、犠牲者が出ることだってあります。まぁメディア
の捉え方の癖はいまに始まったことではありませんが。

 食中毒を出すと、その店は社会的信用を落とすのです。最悪倒産
ということにもなりかねません。放射能の危険を云々する前に、食
中毒を問題にするべきだと思います。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 放射能の問題と食中毒とでは単純には比較できないでしょうが、
確かに食中毒に関しての報道は真剣さが足りないですよね。

 食中毒が原因でチェーン店を運営していた会社がつぶれてしまっ
たというのに、「生レバーさよならセール」などというのをやって
いるのは、本当に何を考えているのかと思います。

 この件については、「フードウォッチジャパン」の齋藤さんから
いただいたメールを紹介したいと思います。毎週送られてくるもの
で、今回は「生レバーの話」でした。許可をいただきましたので、
長文ですが全文掲載します。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 テレビ、新聞等が伝えているように、7月1日から、生食用牛肝臓
の販売が禁止されることとなりました。O157などの腸管出血性大腸
菌が牛肝臓内部に入り込むことがわかり、「牛肝臓を安全に生で食
べるための有効な予防対策は見い出せていない」ために決定したこ
とです。

 ご承知のとおり、O157などの腸管出血性大腸菌による感染症は、
重篤で致死的な合併症を起こし得るものです。出血性大腸炎を起こ
した場合、症状のある人の6〜7%が、初発症状から数日ないし2週
間以内に溶血性尿毒症症侯群(HUS)や脳症などの重症合併症を発
症すると言われています。

 しかも、ヒトを発症させる菌数はO157では10〜1000個などと言わ
れ、サルモネラが10万〜10億個の菌数を要するのに比べると、感染
しやすさは破格のものと言えます。

 それだけの極めて高いリスクがあることがわかったと行政が伝え
ているわけですから、禁止発効前のカケコミ需要を取り込む「さよ
ならキャンペーン」などは、ワルノリでは済まないゾッとするよう
な話です。

 もしも事故が起きたらどうするのでしょうか。人の命にかかわる
お話です。また、昨年のユッケによる悲惨な食中毒事件でもわかる
とおり、この種の事故が起これば、食肉の消費を深刻なレベルで冷
やし、市場を縮ませます。焼肉店の客数はやっと戻してきたところ
ですから、ここは慎重になるべきではないでしょうか。

 むしろ、店のほうからお客に提供できない理由をしっかりと伝え、
他のメニューを推奨するほうが、今、この段階では、プロがこの仕
事を守ることになるのではないでしょうか。

 「今、この段階では」と条件を付けてお話するのには、理由があ
ります。行政の「牛肝臓を安全に生で食べるための有効な予防対策
は見い出せていない」という説明には、多少の疑問があるからです。
少なくとも、説明が足りないでしょう。

 生肉の菌数を抑える、あるいは病原菌を死滅させ、食肉の生食を
可能にできるかもしれない技術は、あるのです。

 食品照射です。

 食品照射とは、ある目的をもって食品に放射線を照射することで
す。目的とは、農作物の発芽抑制、熟度調整、食品の殺虫・殺菌な
どです。

 東京電力福島第一原子力発電所事故による環境や食品の放射能汚
染が問題になっている中、何を言い出すのかという向きもあるでし
ょう。しかし、そのような今であるからこそ、消費者、食品産業、
行政を挙げて、この方法のさらなる研究と理解に力を入れるべきだ
と考えるのです。

 食品安全委員会は、6月14日、「平成22年度『食品安全委員会が
自ら行う食品健康影響評価の案件候補』に係るファクトシート」を
公表しました。これは、食品安全委員会が自ら食品健康影響評価を
行う(自ら評価)案件の選定過程で、案件候補とされた6つの物質
等について科学的知見に基づく概要書を作成したものです。食品安
全確保総合調査(2010年度、2011年度)によって専門家の協力を得
て収集・整理された、毒性関係の知見、海外のリスク評価結果、国
内外のリスク管理状況等に関する情報が含まれています。

 その6つの物質等の1つとして扱われているのが、放射線照射食品
です。このファクトシートの概要によれば、以下のことがわかりま
す。

※平成22年度「食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件
候補」に係るファクトシートの作成について
http://tinyurl.com/832vpzn
(PDF:1250KB/URLをコピーしてブラウザのURL入力スペースに貼
り付けて実行するとダウンロードが始まります)

 食品に放射線を照射すると、放射線によって生成するフリーラジ
カル(ペアになっていない電子を持つ原子あるいは分子のこと)が
病原性細菌、腐敗菌、害虫、作物の生細胞のDNAに作用して細胞死
が起こります。これを利用して、食品の殺菌、殺虫、発芽防止など
を行うのが、食品照射です。

 フリーラジカルは、(トーストやフライなど)一般の調理でも生
成され、その場合の生成量は放射線照射の際よりも多いとされてい
ます。いずれの方法で生成したフリーラジカルも性質は同じで、短
時間に消滅します。また、定められたエネルギーレベルでは、食品
照射によって食品中に放射能を生じることはありません。

 この方法の重要なメリットは、食品の物理化学的な特性を大きく
変化させることのない低温処理であるという点にあります。そして、
乾燥食品、パッケージした後の食品にも処理を行うことができます。

 泉源には、コバルト60、セシウム137が放射するγ線、機器によ
って発生させる5MeV(メガ電子ボルト)以下のX線、機器によって
発生させる10MeV以下の電子線だけが使用できます。通常はコバル
ト60が利用されています(当ファクトシートに記述はありませんが、
国際食品照射諮問グループ=ICGFIによる冊子によると、セシウム
137は供給量が不明であることからγ線照射において将来性がない
とされています)。

 食品照射は、放射線が漏れることのない遮蔽された空間で行いま
す。崩壊した泉源は再生処理か保存のために供給元に返却され、放
射性廃棄物は発生しません。また、原子力をエネルギー源としない
X線や電子線では、放射性廃棄物とは無縁です。

 1997年までの世界各国での照射食品の健全性にかかる研究報告は
1200件以上あり、そのほとんどが、健全性に問題はないと結論づけ
ています。疑問を呈する報告については多くの追試が行われ、その
結果、問題とされた現象は見られず、測定誤差や不適切な実験設計
によるものと結論づけられています。

 国連食糧農業機関(FAO)/国際原子力機関(IAEA)/世界保健
機関(WHO)の合同研究グループ(1997年)は、「意図した技術上
の目的を達成するために適正な線量を照射した食品は、適正な栄養
を有し安全に摂取できる」と結論付けています。また、食品照射を
通常の加熱処理や缶詰加工と同等の処理とみなし(実質的同等性)、
食品中の病原微生物等は低減するが、新たに何らかの危害要因とな
る物理学的あるいは化学的なものを生成することはないとしていま
す。

 現在、世界では50カ国以上で食品照射が許可され、生鮮果物・野
菜、穀類、豆類、乾燥果物・野菜、魚介類、生の家禽肉・畜肉、香
辛料、はちみつ、宇宙食など、さまざまな食品で食品照射が行われ
ています。世界の食品照射処理量は、2005年に40万4804tにのぼり
ます。EUでは香辛料、穀物、果実、肉、魚介類に対して1万5060t、
米国では肉、果実、香辛料に対して9万2000t、中国ではニンニク、
香辛料、穀物に対して14万6000tが処理されています(いずれも2005
年)。

 食品照射は世界的には常識となっており、この処理を行った食品
は、日本にも輸入され、問題なく消費されています。

 食品照射は、長い研究の歴史と、世界的に行われてきた実績があ
ります。そして、核分裂反応を起こして莫大なエネルギーを取り出
すための原子力発電所とは違って制御できなくなるような原子力の
使い方ではなく、比較的安価な施設で、安全に管理が可能なもので
あるはずです。

 しかし、どうしたわけか、日本では食品照射は食品衛生法によっ
て原則禁止とされています。ただし、ジャガイモの芽止めの目的だ
けが例外とされ、8096tが処理されています(2005年)。

 ここにきて、どうしても食肉類の生食を継続・推進しようとする
のであれば、さらに、生肉だけでなく魚介類や農作物も含めた食品
の生食での食中毒事故を封じ込めたいという志があれば、この技術
に正面から向き合い、しっかりとした検証とすみやかな議論を経て、
法改正、実用へと進むべきではないでしょうか。このプロセスは、
原子力、放射性物質、放射能、放射線に関する国民の知識、リテラ
シーのレベルを引き上げ、ひいては今後の原子力の利用についての
国民的な議論も、合理的に、正確に行われていくでしょう。

 「わかった。君は原子力推進派だからそんなことを言うのだね」
と言われるのは本意ではないので、全く蛇足ながら付言します。私
個人としては、原子力発電所を減らし、全廃する方向へ微力でも力
を出したいと考えています。そのことと、食品照射解禁のアイデア
は矛盾しないと考えています。(齋藤)

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この話は下の欄に続けます。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@
kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「食品照射」
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 原発事故以来、「放射能」に関する話題には過敏な反応が多くな
ってきました。「放射脳」と揶揄される、過激な恐怖を煽る人たち
もたくさんいます。

 そのため、食品に放射線を照射する、というのは話題にもならな
いくらいですが、齋藤さんの話にもありましたように、そろそろ日
本も考えなければならない時期に来ていると思います。

 今回はそんな食品照射の現状についての報告を紹介します。少し
古いものですが、現状はほとんど変わっていないはずです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

発表場所 : 放射線と産業, 121号, pp. 38-41
著者名 : 伊藤 均
著者所属機関名 :元日本原子力研究所・現(独)農研機構・食品総
合研究所
発行年月日 : 2009 年 1月


食品照射を巡る最近の状況


1.輸入食品と放射線処理

 2008年9月に起きた事故米の飲食物への転用事件は消費者を不安
に落とし入れた。事故米は中国やベトナムなどから輸入されたもの
で、強い発癌性カビ毒であるアフラトキシンや農作物の殺虫に使用
される農薬のメタミドホスやアセタミプリドで汚染されていたとい
うものである。

 外米にカビ(糸状菌)が発生したとすればアフラトキシンばかり
でなくオクラトキシンやステリグマトシスチン等のカビ毒も産生さ
れている可能性がある。なぜなら、カビ毒を出す多くのカビ類が水
分含量15%以上で生育するのに対して、アフラトキシンを産生する
カビは水分含量が20%以上高くにならないと生育しないからである
(通常の貯蔵米の水分含量は11〜13%)。

 しかも、アフラトキシンなどのカビ毒を産生するカビ類の多くは
日本に分布しないものである。また、カビの発生は肉眼では見えな
い場合もあり、カビが産生する毒素はアフラトキシンのように強力
でなくとも発癌性や肝臓障害を引き起こすものが多い。このような
カビ発生は輸入米ばかりでなく輸入飼料原料や香辛料等でも起きて
おり、カビ毒で汚染している可能性がある。

 これらの乾燥食品原料は貯蔵・流通中に害虫防止のためホスフィ
ン(燐化水素)で燻蒸されているが(以前は殺虫効果の強い臭化メ
チルで燻蒸されていたが、オゾン層破壊物質のため2005年で使用が
禁止となった)、害虫の卵や蛹などへの殺虫効果は不十分であり、
水が米などに直接浸透しなくても貯蔵・流通中に害虫が発生すれば
害虫増殖による食害と温度上昇で水分含量が増加しカビも発生する
可能性がある。このため、確実で安全な殺虫法は放射線処理(殺虫
線量0.2〜0.5kGy)しかないであろう1)。

 米国では熱帯果実の他に大豆などの殺虫処理に放射線処理が一部
で導入されているようである。2007年にキッコーマン醤油が米国か
ら輸入した大豆を原料とした健康食品「ソイアクト」が放射線殺菌
されていた可能性があるとして自主回収されたが、実際には殺虫の
目的で大豆が放射線処理されていたのであろう。

 表-1に示すように、2000年から2008年に厚生労働省によって摘
発された違法照射された食品類は約14件に及び、照射されたアガリ
クス(キノコの一種)やハーブ、パプリカ、マカ(アブラナ科の根
菜)、赤トウガラシ、乾燥シイタケ等が中国、米国、ブラジル、ペ
ルー、ドイツなどから輸入されており、摘発を逃れた輸入照射食品
も多くあると思われる。また、2009年1月にもインドから輸入され
た香辛料が放射線殺菌されている可能性があるとして自主回収さ
れている。

 これらの輸入食品の多くは香辛料や健康食品類であり、殺菌を目
的として放射線処理されたものが多く、食品衛生法違反ではあるが
健康への悪影響は考えられない。

 以前、筆者がメキシコでの食品照射の国際会議に出席したおり、
メキシコの業者が「照射香辛料を日本に輸出しようとしたら拒否さ
れた」と会議の場で発言していたが、日本のような先進国が照射食
品の輸入を認めないのはおかしいという思いが海外の食品取り扱い
業者等の間にあるようである。このように、照射食品の国内への流
入は今後も増加していくものと思われる。


2.米国での照射食品の許可状況

 2007年の国際原子力機関の報告によると62カ国でなんらかの照射
食品が許可されているという。この中で最も許可品目が多い国は米
国であろう。米国では1963年に小麦の放射線による殺虫、1965年に
馬鈴薯の発芽防止を許可している。一方、1963年に軍用食のベーコ
ンやハムの放射線による完全殺菌処理も許可になっていたが、1968
年に安全性を証明するデータが不十分という理由で許可が取り消さ
れた。

 その後、1980年代初期に照射食品類の安全性を証明するデータが
出そろってきたため、食品医薬品局(FDA)は表-2に示すように
米国内に流通している多くの食品類についても照射の許可を出すよ
うになった。すなわち、1985年に豚肉の寄生虫の殺虫処理を許可し、
1986年には上限30kGyでの香辛料や乾燥薬味料、乾燥野菜調味料の
殺菌、上限1kGyでの生鮮果実や野菜、穀類等の殺虫処理が許可とな
った。

 そして、1990年には食鳥肉、1997年には肉類のサルモネラや腸管
出血性大腸菌O157等の食中毒菌の殺菌処理が許可となった。また、
1995年には飼料の殺菌が許可となり、2005年には貝類やエビなどの
殺菌も許可になった。昨年、2008年には生鮮野菜の玉レタスやホウ
レンソウの殺菌も許可となった。その他、宇宙食や軍用食としての
肉類等の完全殺菌処理も許可となっている。ただし、米国ではFD
Aが許可しても直ちに商業照射が可能というわけでなく、農務省の
規格基準が作成されてから実用化が可能となるのが通例である。

 米国などでは生鮮野菜の玉レタスやホウレンソウなどにサルモネ
ラや腸管出血性大腸菌O157等の病原菌が汚染している可能性があり、
生鮮野菜が原因したとなった食中毒も多発している。

 通常、生鮮野菜は次亜塩素酸ナトリウムで処理されているが、野
菜内部までは十分に殺菌されない。これらの病原菌は放射線で0.5
〜4kGyの照射で検出限界以下にまで殺菌され、野菜の品質や栄養価
はほとんど低下しないと報告されている4,5)。すなわち、FDAの
報告では照射後の玉レタスやホウレンソウのビタミンAやビタミンK
などは4kGyでも減少せず、多くの照射済み野菜や果実による動物飼
育による毒性試験では安全性に問題がなく、2-アルキルシクロブタ
ノン類には毒性がないと述べている。また、放射線分解生成物とし
て極微量に生成する可能性のあるフランはビタミンC(アスコルビ
ン酸)や糖の分解生成物であり弱い変異原性があるが、加熱や冷蔵
保存でも生成するため問題にする必要がないと述べている。なお、
2005年に許可された貝類等の魚介類の放射線処理は腸炎ビブリオ菌
などの殺菌を目的とするものである。

 米国では香辛料や肉類、生鮮果実類などの商業照射が行われてい
るが、馬鈴薯等の発芽防止は実用化されていない。しかし、ポテト
チップ等での発芽防止剤の残留基準が欧州連合なみに厳しくなって
きたため、放射線処理しようとする動きも出ているようである。ま
た、FDAは放射線処理した一般消費者向けの滅菌済み調理食品の
許可も検討しているようである。


3.わが国での食品照射を巡る状況

 2006年10月に原子力委員会は「食品照射は食品衛生を確保する手
段として有用である」として、関係政府機関に食品照射技術の推進
を勧告した6)。また、(独)農林水産消費安全技術センターはIS
O/TC34の食品照射国際規格作成に参加し、専門家に意見を求め
た。一方、2000年に全日本スパイス協会が旧厚生省に許可要請した
香辛料類の放射線処理については今もって許可となっていない。

 食品安全委員会は食品照射について独自に外国文献などの収集・
翻訳などを行っているが、厚生労働省からの要請がないため具体的
な行動には至っていない。

 一方、厚生労働省は原子力委員会からの勧告を受け省内で食品照
射の検討を行った。しかし、厚生労働省内には原子力委員会の勧告
は総説を中心に結論したものであり、実際の学術論文からの結論で
はないとの意見もあるようである。

 そして、厚生労働省は2008年に三菱総合研究所に「食品への放射
線照射についての科学的知見等についての取りまとめに関する調査
業務」を依託した。この依託では国内外の学術文献の収集、食品照
射のニーズについての関係団体からの意見聴取、世界各国の規制お
よび実用化状況等の調査が行われた。日本食品照射研究協議会や士
幌農協などは調査に協力したが、照射食品反対連絡会は形式的な調
査であるとして協力を拒否したようである。三菱総合研究所の調査
結果は厚生労働省に報告され薬事審議会にかけられた。そして、新
たに日本独自でのシクロブタノン類の動物実験による安全性試験が
実施されることになったようである。

 食品照射反対運動は最近になって照射食品の検知技術があること
は認めたようであるが(以前は検知技術がないということを反対の
理由の一つにしていた)、検知技術では線量が定量できないことと
か、シクロブタノン(2−アルキルシクロブタノン類)の安全性を
主に問題にしている。しかし、シクロブタノ類には変異原性がない
ことが明らかになっている7)。

 厚生労働省は2007年7月に香辛料の熱ルミネッセンス測定による
検知法を公定法として認めた。これは香辛料の放射線処理を認可す
るための前提条件として必要とされていたものと思われるが、認可
の方は遅々として進んでいない。

 士幌農協での馬鈴薯の照射事業は35年にわたって継続しているが、
2006年に小売での表示が義務づけられた時点で(以前は10kg詰めダ
ンボールにのみ表示されていた)、8千トンから3千トンにまで減少
した。これは、店頭での販売は法令に従い表示することを確約した
販売先に限定して生産者から供給することとした結果で、この方式
が現在も続けられている。

 照射馬鈴薯の出荷先は北関東、東北、中国地方などであり、群馬
県などでも4〜5月にかけて一部のスーパーの店頭で売られている。
消費者の一部には照射馬鈴薯は味が良く長期に保存できると評判が
良く、2008年には4千トン以上に回復したようであるが、消費者の
理解の広がりが課題であろう。

 欧州連合でも表示を厳格にしたため、照射食品の流通量が減少し、
カエル脚などを除いては外食産業など直接消費者の目にふれない用
途での利用が中心となっているのが現状である。一方、米国や中国、
東南アジア、中南米などでは食品照射の実用化は着実に進展してい
る。

 このように、食品照射を巡る安全性評価や実用化の動きは世界的
に見ると進展しているが、一般消費者の受け入れは思うように進展
していないのが実状であろう。

http://foodirra.jaea.go.jp/osirase/006001003077b.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「反対派」の意見も合わせて掲載しておきます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

原子力産業は食品にまで放射線を照射する気だ

 内閣府の原子力委員会と全日本スパイス協会は、野菜を含むスパ
イス94種類への放射線照射を認めるよう厚生労働省に働きかけて
きました。

 厚生労働省は民間の三菱総合研究所(以下、三菱総研)に約3千
万円(29925000円)を払って資料を集めさせていたのです
が、ようやく最近報告書ができ上がったようです。ところが、照射
食品に反対する消費者の意見が報告書には記載されていないのです。

 厚生労働省は三菱総研の報告書を基に薬事食品衛生審議会に諮る
ようです。消費者団体は厚生労働省と審議会に反対の申し入れをし
ましたが、照射食品が許可されるか、されないかの瀬戸際になりま
した。ぜひ皆さんも反対の声をあげてください。そして照射食品反
対連絡会の運動に参加してください。

照射すると新しい危険な物質ができる

 放射線を照射すると新しい化学物質ができるのが問題となります。
特に「シクロブタノン」と呼ばれる物質が問題になっています。ネ
ズミに半年間与えると大腸に急激に大きなガンがたくさんできるこ
とをフランスのパスツール大学が報告したからです。たった半年間
の短い実験ですから、きちんと慢性毒性をすればほかの臓器にもガ
ンを作る可能性があります。また、妊娠したネズミで子どもへの影
響も見る必要があります。

 こうした実験を厚生労働省に行うよう申し入れたのですが、厚生
労働省は食品安全委員会が必要といえば考えるというのです。でも、
現在の食品安全委員会は厚生労働省が準備した資料の範囲内で照射
食品の健康評価をするのですから、安全となってしまう可能性があ
ります。こうした欠陥資料で審議されてはたまりません。この欠陥
を承知しながら照射食品を諮問するかしないかを審議していくこと
に反対の声をあげる必要があります。

ニーズ調査の評価基準を明確にし、審議前に公表すること

 照射食品反対連絡会は、参加する消費者団体等が分担して5万人
に照射食品のアンケート用紙を配布しました。回収できたのは11,
700枚でした。「照射に反対しますか」という問に10,371
人(88・6%)が反対と回答しました。「反対しない」が182
人(1・56%)でした。多くの消費者は照射食品に反対していま
す。

 また、38県の学校給食で働く栄養士、調理員への調査では28
6人(栄養士145人、調理員125人 その他16人)が「食品
に照射することについてどう思いますか」の問に「使ってもよい」
と回答した人は0人でした。「使うべきではない」と回答した人は
235人(82・1%)でした。また、「食中毒防止にはどのよう
な方法がよいと思いますか」の問に「放射線照射」は1人(調理員)、
「殺菌・消毒剤、食品添加物などの薬剤使用」は16人(5・6%)、
「加熱やコールドチェーンなどの従来の方法の活用」が183人
(64%)、「ハサップ(照射しない宇宙食を作るために開発され
た方法)」が154人(54%)でした。このように学校給食現場
の人たちも照射食品に反対しています。

原子力産業だけが推進する照射食品

 2004年、世界の状況について食品安全委員会が調査していま
す。報告書は、「欧州では一時推進されたが、今は照射食品は減少
し、輸出用や外食産業など直接自国の消費者の目にふれないところ
で少し使われ、大手スーパーや食品産業も照射食品を使うことをさ
けている。照射食品拡大の見通しはたっていない」(要旨)と報告
しています。

 米国でも市場に出回っているのは、スパイスと冷凍牛ひき肉で
(その流通量は牛肉市場の1%以下)、それ以外の照射食品は現在
ほとんど流通していないと報告しています。

 米国食品医薬品庁(FDA)も「消費者は、照射食品に対して一
般的には否定的な見解を持っている」、農務省は「正直に言って、
米国内の消費者は照射食品に対して否定的な意識が強い」と受け入
れられていないことを報告しています。

 米国の消費者の反対は強く、ハンバーグ用のひき肉を照射してき
た会社(Surebeam社)は倒産しました。米国でも照射食品は受け入
れられていないのです。

 報告書は「スパイスの認可が発端になり、それから他の食品へ広
がっていった」と照射スパイスが拡大のきっかけを作る食品である
ことを指摘しています。スパイスはまさにトロイの木馬です。

日本に押し寄せる照射食品

 日本で照射食品が許可になるようだという動きの背後で、海外か
らは違法な照射食品が日本に入ってきています。昨年からすでに4
件も違反が起きています。キッコーマンが米国から輸入した健康食
品原料(ソイアクト:大豆イソフラボン)、ドイツの日本企業が輸
入したパプリカへの照射、大分の会社が中国から輸入した乾燥しい
たけ、名古屋の健康食品会社がペルーから輸入したマカへの照射が
判明しています。日本に輸出するとき照射して輸出すれば防腐や鮮
度保持ができるので利益が出るのです。

 また、食品にあてられた線量を測る方法がないため、ドイツ企業
のように「当該パプリカには照射していない」と全面否定するとい
う事態が起き、日本での摘発は宙に浮き、監視も管理もお手上げと
いう実態があります。

 表示をすれば消費者が選べると言うのは推進派です。これだけ食
品の偽装や不当表示が氾濫している状況では、まったく説得力はあ
りません。

 照射食品反対の声をあげてください。照射食品の推進の動きを止
めましょう!! 原子力の技術で生まれた照射食品に「NO!」と
言いましょう!!

https://sites.google.com/site/noshousha/torikumi
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 身内でやったアンケートを論拠にしていたり、「反対が多いから
反対だ」というのもおかしいですが、「大地を守る会」などではこ
ういう運動もしているようです。

 今回は長文の引用ばかりになってしまいましたが、今後の参考に
なればと思い、基本的なところを紹介しました。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 土曜日に帰国してすぐなので、何だか引用ばかりになってしまい
ました。今回は日曜日に出発して、土曜日に帰ってくるということ
で、前回も今回も自宅からの配信です。

 生レバーの「駆け込み需要」が起こっているそうです。危険だか
ら禁止と言われているのに、その危険なものを禁止する前に食べる
というのは、一体何を考えているのかと思います。「危険」の意味
を考えたりはしないのでしょうかね。

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