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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------62号--2001.01.14------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     インドネシアの味の素事件
     食品の包装

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 インドネシアの味の素の事件はどうやら収束に向かいつつあるよ
うです。どんな事件だったか、振り返ってみます。

 インドネシアは世界最大のイスラム教国で、2億の国民の9割ほ
どがイスラム教徒だと言われています。イスラムの戒律では、豚は
不浄なものとして、絶対に食べてはいけないことになっているのが
ことの前提になります。

 そんなことをいえば、仏教徒は全ての肉類を食べてはいけないこ
とになってしまいますが、その辺が仏教とイスラム教の違いという
ことにしておきましょう。特に日本では、昔、「妻帯肉食」などと
いうことを実行した偉い坊さんが出たりして、「不殺生戒」という
こともほとんど言わなくなっています。

 インドネシアもイスラム教国としてはあまり厳しくない方で、ア
ラブ諸国へ行くと、海外旅行者も酒を入手しにくい、という話です
が、インドネシアではそんなことはないと聞いていました。

 ただ、戒律を無視しているわけではなかったことが今回の事件で
わかりました。インドネシアで売られている食品には、イスラムの
戒律に適合している、ということを表示するマークがついているの
ですが、「味の素」にこのマークがついていたことが問題でした。

 要するに、戒律に違反していることが問題なのではなく、虚偽表
示にあたることが問題だ、というのが当局の見解だったようです。
これは当然で、イスラム教徒でないものをイスラムの戒律で裁くわ
けにはいきませんが、不当な表示をしているというのは、立派な犯
罪だということになります。

 さて、実態の方はどうかというと、こちらはちょっと味の素が気
の毒な面があります。毎日新聞の記事によると、豚の膵臓から取り
出した酵素を使っていたのは、味の素の工場自体ではなかったとい
うのです。

 グルタミン酸ソーダ(MSG)を製造するのは、サトウキビの搾
汁から砂糖の原料を取り出したあとの廃液(廃糖蜜といいます)に、
グルタミン酸生成菌を繁殖させて、グルタミン酸を作らせるのです
が、このグルタミン酸生成菌を培養、保管して、随時使えるように
しておく必要があります。

 その菌の保管工程で、菌の栄養となる物質が当然いるわけですが、
それは大豆などの栄養素を酵素で分解したものが用いられています。
その酵素が豚の膵臓から抽出したものを使っていた、ということで、
アメリカの工場で生産され、味の素のインドネシア工場が購入して
いた、ということでした。

 基本的には、豚の酵素自体は味の素の工場には入っていなくて、
できた菌の栄養剤(?)だけが来ているわけです。さらに味の素の
生産工程に入れるときは、菌だけが投入されます。できたグルタミ
ン酸はさらに精製工程を経て製品になりますので、最終製品に豚の
酵素が混入している可能性は全くないと思います。

 事が安全性などの話なら、ここまでわかれば一件落着なんですが、
宗教がらみというと、そうもいかなかったようです。事情はともか
く、今回は不当表示という点で、味の素の側に非がある、というこ
とになると思います。たいした罪にはならないでしょうが。

 でも、新聞に味の素の製造工程の図解が大々的に載ったりしまし
たので、今度こそ「味の素は石油から合成されている」などという
ウワサはなくなるのではないか、という気がします。味の素にとっ
ては、禍転じて福となる、方針をとってもらいたいところです。

 そもそも、上記のようなウワサがあとを絶たないのは、メーカー
が説明責任を充分果たしていない、ということがあると思います。
「サトウキビから味の素」といったイメージCMは流していても、
きちんと製造工程を市民に説明してこなかったのは、やっぱり良く
ないことです。メーカー側のこういう態度が、デマ宣伝の得意な一
部の煽動家たちを利していたことは否定できないと思います。

 私は化学調味料の安易な使用には批判的です。ただ、批判する側
が「石油から合成・・」といったレベルでは、何をかいわんや、と
いうことです。こういう話をなくしてしまうためにも、メーカーが
積極的に、本当のことを公開する、というのが当たり前になってほ
しいものです。

 事態が収束してからで良いですから、ぜひこの間の事情の説明と、
正確な製造工程の公開をお願いしたいと思います。メーカーの技術
者は素人に説明してもわからない、と思っているかもしれませんが、
それこそが間違いの元であると、私は思います。確かに、理解する
人は少ないかも知れませんが、公開する、説明する、という姿勢が
とても大事なのです。

 その説明が公開された場合、批判する側はその説明を踏まえて批
判する責任があると思います。説明された内容を批判するのは自由
ですし、ぜひ批判すれば良いのですが、それは知らぬふりをして、
素人の無知に付け込む、今のやり方を続けていては、やがて自滅し
ていく他ありません。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回はお休みです。みなさんからのメールをお待ちしています。

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--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「食品の包装」
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 前回、「脱酸素剤」の話を書きましたので、その他の食品の包装
についての話を書きます。

 食品の劣化には、いくつかの要素があります。

(1)微生物の繁殖による腐敗
(2)空気中の酸素による酸化
(3)自分の持っている酵素による自己消化
(4)自分の持っている物質自身の化学的変化

などが主なところです。このうち、(1)(2)については、食品
の包装でかなり防ぐことができます。

 代表的なものに、「真空パック」というものがあります。ハムな
どで、中身にぴったり張りついたパックがありますが、あれがそう
です。

 真空パックはよくレトルトパウチと混同されますが、全く違うも
のです。レトルトパウチの説明は前に書きましたが、要するに缶詰
のようなものです。それに対して、真空パックは、中身の製造とは
関係なく、製品を最終的に包装する時に、特殊な機械で包装するだ
けのものです。

 プラスチックの袋に食品を入れて、商品として販売するというの
は、普通にされていますが、このとき、普通はヒートシールといっ
て、鉄板を電熱で熱したもので袋を押さえ、袋の材質であるプラス
チック同士を接着します。連続式のものでは、この後、少し幅広く
接着し、その真ん中を切断し、切断部分の上が次の袋の底になる、
ということを繰り返します。

 真空パックの機械では、この接着させる部分に仕掛けがあります。
機械自体は台の上に大きな蓋がついていて、台の上に真空パックの
袋に商品を入れたものを並べます。このとき、開口部を接着部分に
載せ、上から蓋をおろします。接着部分は基本的にヒートシールな
んですが、空気を吸い込む溝がついていて、まず袋の中の空気を吸
い出してから接着します。

 袋は当然、気体を通さないタイプのものです。普通の袋より、ご
つい感じがするのはご存じのとおりです。

 真空パックの利点としては、空気を抜いているので、食品の酸化
を防げること、外部からの微生物の侵入に極めて強いこと、があり
ます。欠点としては、空気を吸引する圧力がかかりますので、物に
よっては味が劣化することです。

 昔、無添加のかまぼこを作ったとき、保存上の理由から、真空パ
ックにしてもらったのですが、どうしても真空パックしないものよ
り味が劣りました。これは、吸引の圧力によって、表面に特定の成
分が出てくるためのようです。

 そこで、さらに工夫されて、空気を抜く代りに、窒素ガスを入れ
る、ということが行われています。ハムなどで、トレー状になって
いたり、袋がふくらんでいたりするものに、こういう包装のものが
多く出回っています。

 機械としては真空パックと基本的に同じものですが、空気を抜く
口と並んで、窒素ガスを噴き出す口がついています。ガスは圧縮し
てボンベで供給されます。これは真空パックの利点を活かし、欠点
を補う工夫であるといえます。

 真空パックは商品の包装にも使われますが、肉などで、枝肉を解
体して、部分肉(ロースやモモなどのかたまりにしたもの)にした
とき、いったん真空パックにすることも普通に行われています。

 輸入肉などでも、冷凍ではなく、冷蔵のまま輸入されてくる肉が
多くなっていますが、それらも基本的には真空パックになっている
と思います。生の肉は細胞組織が強いので、上記の真空パックの欠
点もほとんど問題にならないようです。(スライスした肉を真空パ
ックにするのは、さすがに良くないようで、あまり見ません。)

 昔は枝肉のまま、普通のトラックの荷台に載せて運んでいました
が、部分肉にして、真空パックし、さらにダンボール函に入れて、
冷蔵トラックで運送するようになり、品質は飛躍的に向上していま
す。

 肉については、スライスしてからの商品を「ガスパック」する技
術も登場しています。今までの場合は窒素ガスでしたが、肉のパッ
クに入れるガスは窒素ではなく、酸素と二酸化炭素という組合せで
す。窒素は不活性ガスということですぐに納得できるのですが、酸
化を防ぐためのパックに、酸素を入れるというのは、何だか不思議
な話です。

 肉の色を良くするのは、酸素の働きなのですが、それは通常の空
気中の酸素で足りるはずです。どうも酸素と二酸化炭素しかない環
境で、微生物は最も繁殖しにくいということらしいのです。微生物
には好気性のものと嫌気性のものとがあり、酸素を必要とするかど
うかで分かれます。好気性のものには二酸化炭素が毒ですし、嫌気
性のものには酸素が毒なのだ、と勝手に解釈していますが、本当の
ところは私は知りません。

 かなりコストが高くなりますので、まだ普及していませんが、肉
をトレーに入れ、そのトレーが少し膨らんだしっかりとした袋に入
っています。これはかなり効果がありますので、お勧めなのですが、
そんなに日持ちかせてどうする?という批判もあるかと思います。

 包装した食品の日持ちを左右するのは、このように包装の中の環
境ということになります。空気や微生物を自由に通すような簡易な
包装では、食品自体の保存性がけが問題なのですが、ある程度の包
装をしてやると、本来の保存性より、かなり品質保持の期間を延長
できます。

 真空パックやガスパックでは、空気を取り除く、ということがポ
イントでしたが、それ以外にもいろんな方法があります。

 缶詰が長期間の保存に耐えるのは、高圧、高温の加熱によって、
ほぼ完全に殺菌することと、その高温のまま封をすることによって、
冷めたあと、内部が減圧状態になることがあります。このような効
果を狙ったのが、「ホットパック」というやり方です。これは商品
になってしまった後はわかりませんが、包装の封をするときの温度
にポイントがあります。

 一般に、微生物は普通70度以上の高温では生存できませんので、
このような高温を保ったまま、パックに入れれば、包装の中身はほ
ぼ無菌状態であると言えます。オレンジジュースなどが、別に保存
料を入れなくても保存性が良いのは、このホットパック技術を使っ
ているからです。

 意外なところでは、豆腐のパックもこのようにされていることが
多いのです。豆腐は固める工程では高温に加熱かれますが、その後、
水に入れて冷却し、適当な大きさにカットして包装されます。この
冷却水が細菌汚染の元凶となるので、ここを変更し、高温のままで
包装まで持ち込むのです。昔は買ったその日のうちに食べるしかな
かった豆腐が、何日かは生で食べられるようになったのは、実はこ
ういう技術があるからなのです。

 この温度管理が結構たいへんで、やけどしそうなほど熱いお湯に
豆腐がつかっています。機械の故障で温度が下がったり、ひどいの
は熱いのでわざと温度を下げたりすると、ちょうどいい湯加減にな
ったりします。これでは微生物を繁殖させているようなものなので、
すぐに腐敗してしまいます。実際、そういう事件もありました。

 もう一歩すすめて、包装してから加熱する、というのがあります。
ほとんどの食品が加熱されることによって加工されますが、この前
に包装しておけば、加工後の再汚染をシャットアウトできるという
わけです。

 豆腐では、充填豆腐というのがそれにあたります。普通の豆腐は
豆乳が凝固してから、包装しますが、これは豆乳をパックに入れ、
封をしてから凝固させます。この豆腐は驚異的に長持ちをします。

 こういうことができるのは、凝固剤が特別のものだからです。普
通、凝固剤を入れると、豆乳はすぐに固まりだしますが、この場合、
凝固剤を入れた時点では固まらないことが必要です。固まりだした
豆乳では、パックにきちんと入ってくれないからです。パックに隙
間ができていれば、充填豆腐の利点は全くなくなってしまいます。

 充填豆腐に使われる凝固剤はこの条件を満たすもので、グルコノ
デルタラクトンという物質です。これはブドウ糖の親類にあたるも
のですが、加熱すると酸性になり、凝固剤としての効力を発揮する
というものです。豆乳にグルコノデルタラクトンを入れた時点では
まったく変化せず、封入して後、加熱してはじめて凝固するという
わけです。

 グルコノデルタラクトンは凝固剤としては、上記の利点の他にも
極めて優秀で、歩留りと食感を両立させた豆腐を作ります。欠点は
酸性になりますので、豆腐をそのまま食べると、食味が劣ることで
す。充填豆腐を食べるときは、開封してから、少し水で洗い流すと
よいと思います。

 グルコノデルタラクトンの豆腐は、凝固のメカニズムがその他の
凝固剤とは違いますので、食感も微妙に違います。それと何だか怪
しげな名前ですので、嫌う人も多いのですが、保存用の豆腐として
は、悪くないものだと私は思っています。もちろん、毎日充填豆腐
を食べるというのもどうかとは思いますが。

 その他の食品でも、ホットパックと類似の技術はたくさんありま
す。煮物などの加工食品が袋入りになっているものがありますが、
あの中には、材料を生で袋に入れてから、加熱したものがあります。

 これは口で言うのは簡単ですが、たいへん難しい技術です。すで
に封をした袋の中の食品を、最善の状態に加熱しなければならない
のですから。

 いろんな食品が製造されていますが、その度に機械を調節しなけ
ればならないと思います。その詳細は私などにはよくわかりません
が、食品の保存ということに関して、添加物の使用以外にもいろん
な技術があり、いろんな努力がされていることは知っておいてほし
いと思います。

 私の経験の範囲では、かまぼこにもこのような技術を応用してい
るところがありました。かまぼこは魚すり身を成形した後、蒸しあ
げ、できあがってから包装されるのが普通です。そこでは成形後、
いったん包装した後、蒸し機にかけていました。この後、もう一度
簡易包装をして、表示などはそこにしています。このため、見た目
には普通のかまぼこに見えるのですが、食べようとすると、かまぼ
こにもう一枚、包装フィルムがはりついているのです。

 うっかりすると一緒に食べてしまいそうな、薄いものですが、効
果は絶大で、無添加でありながら、通常のかまぼこよりも日持ちが
良かったと思います。

 もちろん、このようないろんな工夫も、その前提に、工場そのも
の衛生管理ができていなければ、効果はあがりません。私の意見で
は、工場の清掃もきちんとできていないようなところで、無添加の
食品を作る、などということは、とんでもないことです。案外、そ
んなところもありますので、購入の際には注意が必要です。

 また、メーカーの人には、防腐剤などに頼らずとも、いろいろと
工夫の余地がありますので、ぜひ、衛生管理の向上とともに、この
ような工夫にも取り組んで欲しいと思っています。消費者の勝手な
要求なのですが、やっぱりある程度日持ちする食品はありがたいも
のですので。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 どうも新年からメールが不調で、いつもいただいていたメールの
数がぐっと減っています。今回はとうとうQ&Aの欄がお休みにな
ってしまいました。

 みなさんの暖かいご支援をよろしくお願いします。

 いよいよケーブルテレビがつきまして、テレビはチャンネルも多
く、きれいに映って良かったのですが、注文してあった無線LAN
の器具がまだ手に入らなくて、モデムは来たのですが、接続できな
いという間抜けな状態になっています。

 ノートパソコンと無線LANで、こたつに寝ころがりながら、ど
こでもインターネットという野望も、まだお預けのようです。

 ところで、私のノートパソコンは富士通の製品なのですが、キー
ボードが「親指シフト」というタイプのものです。これは今では珍
しいと思いますが、日本語入力に関しては、今まで作られた中では
最も優れているものと言っていいと思います。くわしくは、『親指
シフト・キーボードを普及させる会』というホームページをご覧く
ださい。作家の姫野カオルコさんが推薦文を書いたりしています。
(ちなみに私は彼女のデビュー当時からのファンなのです。)
http://www.oyayubi-user.gr.jp/index.htm

 また、今度、JISキーボードでも、親指シフト入力ができる日
本語変換ソフトが富士通から出るということです。これは、変換キ
ーを押さなくても自動的に候補が表示されたり、よく使う言葉は自
動的に登録してくれたり、入力した言葉の意味などを辞書から参照
してくれる、というすぐれものです。
http://www.fujitsu.co.jp/jp/soft/japanist/index.html

 ということで、頼まれたわけでもないのに宣伝してしまいました。

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--発行--渡辺--宏------- URL http://www.kenji.ne.jp/food/
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