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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------619号--2011.09.18------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「ニュースから」「Q&A」「スチレン」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 こんなニュースがありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 中川正春文部科学相は13日の閣議後会見で、福島県の子どもの
尿の再検査で放射性セシウムが再び検出され、内部被ばくの恐れが
あるとした市民団体の指摘について「問題とするレベルの放射能濃
度ではないという見解を得ている」と述べた。

 中川文科相は、放射線医学総合研究所の見解として「ほぼ1ベク
レル以下と小さい上、横ばい、微増は測定誤差の範囲内」とした。
(2011/09/13-12:45)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201109/2011091300376&rel=&g=
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 何のことかよくわからないので調べてみたのですが、この話の原
因となった、「市民団体の指摘」についての元の記事は削除されて
いるようです。

 以下のところにその記事のコピーを見つけました。このサイトは
引用するのもはばかられる、デマの宝庫なんですが、この部分は新
聞記事を引用したものです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 市民団体「福島老朽原発を考える会」などは7日、尿検査で放射
性セシウムが検出された福島市などの子ども10人を2カ月後に再調
査したところ、他県に避難しなかった1人で数値が減少せず、微増
したと発表した。

 同会などは5月、フランスの放射線計測機関に依頼して6〜16歳の
男女10人の尿を検査し、全員からセシウムを検出。7月末に再調査
した結果、県外に避難した9人は数値が下がったり、検出されなく
なったりしたが、福島市に残った16歳の少年はセシウム137が1リ
ットル当たり0.78ベクレルから同0.87ベクレルに増えたという。

http://www.asyura2.com/11/lunchbreak50/msg/529.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 尿1リットルというのはすごい量ですね。たぶん1リットル換算
の値なのでしょうが、1ベクレル以下というのが気になります。

 ベクレルという単位は、1秒間に1回、原子核崩壊が起こるとい
うことを表します。放射性原子が崩壊する確率は半減期で表されま
すので、同じベクレル数でも、半減期の長い核種では多くの、短い
核種では少ない数の放射性原子が存在していることになります。

 原子は1個以下の数値で数えられるものではありません。したが
って1ベクレル以下の数値というのは違和感があります。

 以前、外国で福島の事故に由来する放射性物質を検出したという
ニュースがありましたが、そこでは「マイクロベクレル」という単
位が使われていました。百万分の1ベクレルというのはどういう意
味なのでしょうか。

 ベクレルは重さと時間に関連した単位ですので、2kgで1ベクレ
ルでしたら1kg換算で0.5ベクレルになります。このニュースの
場合、1リットル以上の尿で検査して、1リットルに換算したのか
と思いましたら、「1リットル以上の尿」というのは現実的ではな
いことに気づきました。

 たぶん正解はもう一つの要素である、時間の方なのでしょうね。
2秒間に1回、放射線を検出したら、1秒あたりに換算して0.5
ベクレルになるという計算です。(1マイクロベクレルだと百万秒
に1回です。でも百万秒というのは…)

 普通は検出限界以下となるところですが、さすがフランスの専門
機関で、うんと低い検出限界を設定しているのでしょう。しかしこ
ういう限界ぎりぎりの場面で、0.78と0.87という二つの数
値は、比較する意味がありません。(単なる誤差と考えた方がよい)

 「避難した人では下がったのに、避難していない人で上がった」
というのは気になる表現です。実際にそういうことがあってもおか
しくはないのですが、下がったというのがどの程度の数値なのかわ
からないと判断はできません。数値は全部公開されているのでしょ
うか、報道ではよくわかりませんでした。

 こういう話まで大臣が答えるというのもご苦労な話ですが、元ネ
タが本当に健康被害を心配してやっているのか、単に騒ぎを起こし
たいだけなのか、判断に苦しむところです。

 健康被害を心配するのなら、こんな少人数のサンプルをフランス
に送るのではなく、高感度でなくてもよいので、もっと大きなサン
プル数をとるべきだと思います。そういうのは政府の方でやってい
るのかもしれませんが。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@
kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.保育園に努めている調理師です。離乳食でパンがゆを、作るの
ですが、パンの材料の中に、蜂蜜が、入っているようなのですが、
パンで一度焼いて、離乳食で、トーストで焼き、野菜スープで、加
熱してから出しますが、微量に、蜂蜜が、入っていて加熱を、十分
にしていますが、乳児に出すことは、危険ですか?

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A.蜂蜜は一歳未満の乳児に与えてはいけないことになっています。
稀にボツリヌス菌に汚染されていることがあるからです。蜂蜜中で
は中毒を起こすほど増殖できないので、大人なら問題ないのですが、
乳児では体内で増殖する可能性があるのだそうです。

 ただし、これは蜂蜜を「生」で与えてはいけない、ということで
す。普通蜂蜜は生というかそのまま食べますので、特に言わないわ
けですが、ご質問のようにパンに入っているときは、蜂蜜を入れた
のがパンを焼く前か後かで話が変わってきます。

 ご質問では蜂蜜を入れてからパンを焼いているようなので、問題
はないと思います。パンを焼く温度は200度前後で、缶詰の殺菌
温度(120度程度)よりかなり高温ですので、ボツリヌス菌を死
滅させるのには充分と思います。

 ボツリヌス菌(の芽胞)は100度程度では死なないので、普通
に調理する加熱だけではたぶんダメです。したがって、加熱調理す
るものでも、普通は蜂蜜は使わない方がよいでしょうね。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「スチレン」
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 今中国に来ています。中国では日本のブログサイトはほとんど遮
断されていて見ることができないのですが、hatenaは例外的に見る
ことができます。

 ということで、いつもお世話になっている「食品安全情報blog」
は見ることができるわけです。今回はここから以下のような話を引
用してみます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

照準線上のスチレン:競合する基準が一般の人々や規制担当者を混
乱させる

STATS
Styrene in the Crosshairs: Competing Standards Confuse Public,
RegulatorsBy Jon Entine, September 14, 2011

http://www.stats.org/stories/2011/styrene_crosshairs_sept14_11.html

 科学対政治−良くある化学物質が規制対象になるとき、常に議論
が避けられない。十字軍と擁護者が角をつき合わせ、ヒステリーが
うまれ、心は霧に覆われ、規制者はあわてふためき、たちの悪い規
制ができて意味のある規制は棚上げされ、一般の人々の利益は失わ
れる。

 最新の事例はスチレンである。これは天然にも存在するが合成も
ある。多くの製品に含まれ、食品容器にも使われている。6月にNTP
がスチレンを「合理的にヒト発がん物質と推定できる」物質と分類
した。市民団体NRDCの科学者がスチレンは「アイスクリームやキャ
ンディに入っている合成香料」と書いているがこれは天然にも多く
の食品に微量含まれる。

 NTPの科学者はリストにいれたことはその物質がどんな微量であ
ってもがんになるという意味ではないと述べている。NRDCやその他
の消費者団体は「子ども達がスチレンに脅かされている」と主張し、
「予防原則に則って」対応するよう要求している。さらの環境保護
主義者達がポリスチレンがしばしば海岸などのゴミになるため、騒
動に参加して食品容器への使用禁止を求めている。

 特定の化学物質に「有毒」または「発がん性の可能性がある」と
いうレッテルを貼ることには意味がない。毒性があるかどうかは暴
露量による。人々にとって本当にリスクがあるものと化学物質恐怖
症によるものとを区別するのはますます難しくなっている。

 禁止や規制に意味があるのはそれによって健康や環境に利益があ
る場合のみである。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20110916#p15
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 冒頭の放射能の話でもそうですが、「意味のある規制」というの
は案外難しいものです。「食品安全情報blog」でも、畝山さんがい
つも「無駄な規制をして、意味のある規制はしない」と日本の規制
の実態を批判しています。

 さて、このスチレンの件ですが、今年になって発ガン性物質のリ
ストでグループ3からグループ2Bに変更されたのだそうです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 発泡素材のコーヒーカップや食品容器に使用される化学物質スチ
レンstyreneが、ヒトに対する発癌(がん)性を有する可能性のあ
る化学物質のリストに追加されたと米国政府が報告した。

 米国保健社会福祉省(HHS)の専門家らは、スチレンのほか、カ
プタホール、コバルト含有炭化タングステン(粉末または硬質金属)、
吸入されうる一部のグラスウール繊維、o-ニトロトルエンおよびリ
デリインの5種類の化学物質について、発癌性が「合理的に予測さ
れる(reasonably anticipated)」240種類の物質のリストに追加
した。ただし、同報告によれば、スチレン曝露は圧倒的に喫煙によ
るものが大きいという

 スチレンは広く使用される物質で、米環境有害物質・特定疾病対
策庁(ATSDR)によると、断熱材、グラスファイバー、プラスチッ
ク管、自動車部品、コップなどの食品容器、カーペットの裏地など
に用いられる。複数の研究から、スチレン曝露が白血病およびリン
パ腫などのリンパ造血系癌のリスクを増大させることが示されてい
る。米国立衛生研究所(NIH)の国家毒性プログラム(NTP)による
今回の「発癌物質報告書(Report on Carcinogens)」では、スチ
レン曝露により食道癌および膵癌リスクが増加することも報告さ
れている。

 このほか、ホルムアルデヒドおよび植物性物質であるアリストロ
キア酸も、「既知の発癌物質(known carcinogen)」のリストに追
加された。アリストロキア酸は特に関節炎、痛風、炎症の治療に用
いるハーブ製品に含まれており、腎疾患のある人が摂取すると高い
比率で膀胱癌または上部尿路癌を引き起こすという。ホルムアルデ
ヒドは、動物の研究で鼻腔癌リスク増大が認められており、長く発
癌性が「合理的に予測される」物質リストに入っていたが、その後
ヒトを対象とした追加研究により、鼻咽頭癌、副鼻腔癌および骨髄
性白血病などのリスクを増大させることが示された。

 業界の代表者らはホルムアルデヒドおよびスチレンのリスト追加
に反論し、「労働者や工場周辺の住民の不安をあおり、新製品の開
発を委縮させる。雇用や地域経済が損なわれる可能性がある」と米
ニューヨークタイムズ紙に語っている。一方、NTPのJohn Bucher氏
は「癌を発症するかどうかは量、曝露期間、個人の感受性などの因
子の影響を受けるとし、リストに記載される物質について過剰に反
応すべきではない」とブルームバーグ・ニュースBloomberg Newsに
対するコメントで述べている。(HealthDay News 6月10日)

http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=3131&Itemid=37
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この記事ではアメリカの機関の報告となっていて、WHOの機関
である、国際がん研究機関(IARC)とは違いますが、実質的には同
じで、IARCでもグループ2Bに変更されています。

 IARCの分類については、以下のところにリストがあります。あま
りに数が多くて、しかも何だかよくわからないものも多いです。こ
れを見て、私のように脱力してしまう人と、何だか怖いと感じてし
まう人がいるというのは確かなようです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

IARC発がん性リスク一覧

 グループ1
「ヒトに対する発癌性が認められる(Carcinogenic)」、

 グループ2A
「ヒトに対する発癌性がおそらくある (Probably Carcinogenic)」

 グループ2B
「ヒトに対する発癌性が疑われる(Possibly Carcinogenic)」

 グループ3
「ヒトに対する発癌性が分類できない(Not Classifiable as to
its Carcinogenic)」

 グループ4
「ヒトに対する発癌性がおそらくない(Probably Not Carcinogenic)」

http://ja.wikipedia.org/wiki/IARC発がん性リスク一覧
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 スチレンやホルムアルデヒドがこのリストのグループ3からグル
ープ2Bに「昇格」したわけです。

 このリストは発ガン性に関する研究を整理したもので、一般的な
危険性とは必ずしも関係はありません。

 グループ1に入っていても、規制しても意味のないものはたくさ
んあります。私などはここに「アルコール飲料」が入っているのを
見て、脱力してしまうわけです。

 「受動的喫煙」までグループ1にありますので、せめてタバコの
規制くらいはしろ、と思います。

 話は変わりますが、今年になって、中国では公共の場所での喫煙
を原則禁止にしました。中国のことですので、100%守られてい
るというわけではありませんが、少なくとも日本よりは公共の場所
での喫煙は減ったように思います。

 初めて中国に来たときは、エレベーターの中でも吸っているのを
見て驚いたものですが、わずか数年で変わるものです。日本はいよ
いよ最低の喫煙国になってしまいますね。

 さて、スチレンというのはポリスチレンの原料になる物質です。
以前、カップヌードルの発泡スチロールからスチレンモノマー、ス
チレンダイマーが溶出するとかしないとか揉めていましたが、この
「スチレンモノマー」が化学物質としてのスチレンです。

 スチレンの発ガン性については、「食品安全情報blog」の過去の
記事で紹介されていました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■スチレンがヒトに発ガン性のある可能性Add Star

Indications that styrene has a tumorigenic effect in humans
31.08.2006

http://www.bfr.bund.de/cms5w/sixcms/detail.php/8285

 スチレンは主にプラスチックの生産に使用される液体で、吸入に
よりマウスの肺に腫瘍が発生する。肺組織の細胞の中で特定酵素に
よりスチレンオキシドが生じる。

 これまでこの酵素はラットには検出されておらず、マウスのよう
な腫瘍は発生しない。そのためヒトではスチレンをスチレンオキシ
ドに変換する酵素がないか腫瘍発生に充分な量を作ることができな
いと見なされていた。

 BfRが行った実験的研究では、この推定が間違っている可能性が
ある。ヒト肺組織にもスチレン変換酵素を検出することに成功し、
従ってヒトの肺でも発ガン性のあるスチレンオキシドが生じる可能
性がある。

 この研究は既存化学物質の健康影響再評価に重要である。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20060901#p2
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この研究が継続中なのか、ある程度の結論が出たのかはわかりま
せんが、こういう研究の上で、グループ3からグループ2Bへの
「昇格」が行われたのでしょう。

 ここで「吸入」となっていることに注意してください。最初の記
事で、「コーヒーカップや食品容器に使用される化学物質スチレン」
と紹介されていましたが、これはかなりのミスリードです。

 ポリスチレンとスチレンは同じではありませんし、スチレンが問
題とされているのは「吸入」によってであって、食べることではあ
りません。

 もう一つの「ホルムアルデヒド」の方があちこちでよく聞く物質
です。家の中で吸い込むこともあるそうですし、燻製や「木酢液」
などにも含まれています。

 そう思ってリストを見ていたら、グループ1に「中国式塩蔵魚」
というのがありました。これはいったいどうして作るものなのか、
気になって仕方ありません。

 今回の話のポイントは、以下のようなところです。

(1)「規制」を行うことは必ずしも社会の安全性を高めるこめに
はならない。

(2)規制して意味があるのは、それによって健康や環境に利益が
ある場合のみである。

(3)利益のない規制は利益がないのみではなく、本当に利益のあ
る規制を実行することの障害になるので、有害であると考えるべき
である。

(4)検査数値や一つの実験結果を強調しすぎることは、利益のあ
る規制を実行するためにマイナスの要因となる。

(5)日本の場合、最も利益のある規制が様々な要因により放置さ
れている。これはもちろん、喫煙、受動的喫煙の防止である。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 日本で喫茶店に入らなくなって、もう長い年月がたちました。も
ちろん、日本の喫茶店では隣でタバコを吸われたりするからです。
マクドナルドのコーヒーが美味しくて安く、おまけに禁煙なので好
きなのですが、どの店も混んでいて、あまり入る気はしませんし。

 中国の喫茶店に入っても、ほとんどタバコの問題がないというの
も驚きです。まだタバコを吸う人がなくなったわけではありません
が、店の人口密度が低いため、あまり気にならないのです。灰皿も
普段は置いていません。日本ダメじゃん…。

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