安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>61号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------61号--2001.01.07------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     化学調味料(いただいたメール)
     アルカリイオン水(Q&A)
     「そば」(その2)

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 ひきつづき、化学調味料についてのお便りです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 現在海外に住んでいますが、こちらでは、中華料理(MSGを多
く使ったもの)を食べると鼻水がとまらなくなるといったりします。
(ということはこれも噂ですネ)私自信MSGについて何も知識が
ない為よくない噂を余計に気にかけていました。

 貴殿のご説明から、たいへん大まかにかいつまんで、昆布のうま
みもだしの素のうまみも同じケミカル成分をそのうちに含むといっ
た理解でよいのでしょうか?

 いづれにせよ、我々にとってはおいしいうまみ調味料であること
には変わりなさそうですね。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 昆布ダシのうまみ成分と味の素のうまみ成分は同じものです。と
いうより、昆布ダシの有効成分を発見し、それを人工的に生産する
ようになったものですので、これはあたりまえのことになります。

 このうまみ成分は「グルタミン酸」というアミノ酸です。必須ア
ミノ酸には分類されませんが、これは体内で他のアミノ酸から変換
できるためで、身体をつくる上で必要なアミノ酸には違いありませ
ん。

 また、脳内での情報伝達物質としてもグルタミン酸は使われてい
ます。このため、昔は「味の素を食べると頭がよくなる」といった
りしたものです。また、「中華料理症候群」もこのことと関連して
出たウワサです。

 もちろん、どちらも根拠はなく、単なるウワサにしかすぎません。

 グルタミン酸は2つのカルボキシル基(酸)と1つのアミノ基
(アルカリ)を持っています。したがって、酸性を示しますので、
名前に「酸」がついています。化学調味料としては、グルタミン酸
の1ナトリウム塩といって、2つの酸性基のうちのひとつにナトリ
ウムがついたものの結晶が市販されています。

 私はこれが一番うま味が強いからだと思っていましたが、うま味
を持っているのは、この塩ではなく、グルタミン酸そのものなんだ
そうです。

ということで、グルタミン酸の分子モデルの図を掲載します。ご覧
ください。

http://www.kenji.ne.jp/food/msg.jpg

 図で赤が酸素、青が窒素、白が水素、灰色が炭素です。赤いボー
ルが2箇あるところが、カルボキシル基、青いボールがあるところ
が、アミノ基です。下の、一つの炭素にアミノ基とカルボキシル基
がついている部分が、たんぱく質を構成するアミノ酸の共通部分で
す。

 たんぱく質はこのアミノ基とカルボキシル基が結合(ペプチド結
合)することによって、アミノ酸がたくさんつながってできていま
す。

 グルタミン酸のうま味は、この2つのカルボキシル基が、舌にあ
るうま味の受容体と結合することによって感じる、とものの本には
書いてありますが、私もどうもイメージがつかめません。まあそん
なものか、と思っておいてください。

 インドネシアで味の素に豚の成分が使われている、と事件になっ
ているそうですね。インドネシアがイスラム教国であしるのは知っ
ていましたが、そんなにイスラムの戒律を守っているとは知りませ
んでした。酒も飲まないのか?インドネシア人、という感じです。

 イスラム教では豚は不浄なもの、とされていますが、イスラムの
戒律では酒も禁止です。また、1ヶ月に及ぶ断食月というのもあり、
アラブ諸国ではかなり厳格に守られていますが、インドネシアを中
心とするアジアのイスラム諸国ではいい加減だ、というのが私の抱
いていたイメージだったからです。

 問題は醸造の過程で、豚由来の酵素を使用していた、ということ
らしいです。味の素は製品を回収し、今後は大豆からとった酵素を
使う、としていますが、いずれにせよ、最終製品とは関係のない部
分だと思います。

 こんなことが事件になるというのは、何らかの思惑があるのでし
ょうが、私にはよくわかりません。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.本日(1/4)の読売新聞を見ますと、アルカリイオン水にガン
の抑制効果があることが分かった。との報道がありました。

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A.私は読売新聞は個人的な事情で読んでいません。(野球がらみ
・・)それで、その記事はよくわからないのですが、最近はその手
の話はあちこちで聞きますね。どうも私たちの廻りには、たくさん
の発ガン性物質と発ガン抑制物質が入り乱れて存在している、とい
うのが本当のところではないかと思っています。

 こういう話は基本的に実験結果ですので、その評価はともかく、
事実としてそういうことがあった、というのはたぶん本当でしょう。

 話はそれますが、今まで大腸ガン予防に効果がある、といわれて
きた食物繊維が、実験の結果、そうではなかった、という報道が昨
年ありました。これは大勢の人を食物繊維を多くとるグループと少
なくとるグループにわけて、長い期間の追跡調査で出た結果です。
こういう実験が最も直接的に人間に対する効果を実証できるのです。

 実験をやった人は、当然、「食物繊維が大腸ガン予防に効果があ
る」ことを立証するためにやったのですが、予想に反する結果に、
がっかりしていた、ということです。でも、その結果をちゃんと公
表するのですから、えらいものです。

 食物繊維をたくさんとっても、大腸ガンが防げるわけではないこ
とはこれでわかりましたが、食物繊維をとること自体は、他の効用
もありますので、また別の問題ということになります。

 さて、アルカリイオン水ですが、水に導電性の物質(塩など)を
少し溶かし、両端に電極を入れ、電圧をかけると、プラス極にはマ
イナスイオンが、マイナス極にはプラスイオンが集まってきます。
食塩の場合は、Na+とCl-がそれぞれに多くなります。

 このプラスイオンが多い部分がアルカリイオン水、マイナスイオ
ンが多い部分が酸性水ということです。普通の酸やアルカリの水溶
液とは成り立ちが違うのですが、同じように酸性やアルカリ性を示
します。

 食品衛生の世界では、この酸性水の殺菌効果を利用するという試
みがたくさんされています。酸性が強くなると、殺菌効果がありま
すが、あまり強い酸は後が大変なのです。ところがこの酸性水の場
合、電気的な偏りがあるだけですので、簡単に中性に戻るので、そ
のまま排水できる、という利点があります。

 家庭でも、このような装置が市販されています。そのうたい文句
は、「美味しくて健康に良いアルカリイオン水を飲んで、酸性水は
アストリンゼンとして使います。」などと書いています。(実際に
できたアルカリイオン水を飲んでみたことがありますが、私はあま
り美味しいとは思いませんでした。)

 ご指摘の実験の詳細がわからないのですが、たぶん先の食物繊維
のような実験ではないと思います。アルカリイオン水は不安定な物
質ですので、飲んで体内で効果を発揮する、というようなことはな
いと思いますが、特定のイオンをもたらすことはあるのかも知れま
せん。

 ガン細胞がアルカリイオン水の存在下では増殖しない、というよ
うなことでしたら、アルカリイオンがガン細胞の増殖を防ぐメカニ
ズムの追求が待たれます。また、実験動物にアルカリイオン水を飲
ませたところ、普通の水よりガンが少なくなった、ということでし
たら、案外有望かもしれません。

 この場合でも、そのメカニズムの追求と、追試などによる事実の
究明が要求されるところでしょう。

 科学者はときとして、研究費の確保などのため、先走った実験結
果の公表をしてしまうこともあります。また、新聞記者は基本的に
科学知識が不足しているため、公表された実験結果を評価する力を
持っていません。したがって、このような情報は、玉石混淆の状態
でたれ流されることになります。

 1回きりの情報だったとしたら、たぶん「石」の方だったのでし
ょうし、「玉」の方だったら、何度も繰り返し情報が登場し、だん
だんと信憑性が高まってくる、という感じでしょうか。

 いずれにせよ、今後に注目されます、とテレビのキャスターだっ
たら言うところです。(とりあえずは大したことのないニュースの
場合、こういうのが常套です。)

また詳しいことがわかったら、教えてください。

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--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「そば」(その2)
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【年越しそば】

 年末に知り合いの人から電話をもらい、そばをいただきました。
この人はスープ屋さんなのですが、実家が麺を作る工場をやってい
て、そこで作ったそば、ということです。

 知人が自分の畑で作ったそばを、石臼で挽いて、すぐに作った、
まさしく特別製のそばです。そば粉が新しいと、何といっても香り
が違う、というのが自画自賛のことばでしたが、確かに美味しかっ
たです。

 我が家では、毎年、年越し蕎麦は私が作っています。今年もその
ために、生そばを買ってあったのですが、それは置いておいて、い
ただいたそばを使ったのです。つゆも一緒にもらいまして、これも
美味しかったです。

 そばつゆ、というのはうどんなどのつゆとは少し違う部分があり
ます。基本的な味は似たように思いますが、そばつゆには「かえし」
といって、醤油・味醂などを原料とした、味の強い成分を入れるの
がポイントだそうです。

 これは醤油・味醂などを混ぜて、長期間保存しておくものです。
よく老舗のそば屋さんなんかでは、土間のカメに入っている、とい
うやつです。

 そばは麺自体が味が強いので、それに負けないように、強い味の
つゆがいるんだ、というのがそのスープ屋さんの意見です。

 もちろん、昆布、かつお節などの風味原料から直接作りますので、
化学調味料をはじめ、いわゆる調味料類は全く使っていません。濃
縮しないまま、袋に入れています。味や香りを保ったまま、ある程
度の保存に耐えるようなものを作るのが技術なんだ、といって威張
っていました。

 彼の話だと、そばでもラーメンでも、店で食べて美味しいからと
いって、持ち帰って食べても美味しいわけではない、というのです。
これは作った鍋から直接食べるのと、保存するのとでは、スープの
状態が違ってくるから、その違った状態を想定して味を作っておか
ねばならない、というのです。

 何事につけても、自分の専門の分野では、職人というのはいろい
ろとやかましいものです。まあ、専門家の云うことですので、説得
力もあり、おもわずなるほど!と思ってしまいました。

 よく家庭での手作りが一番、と言いますが、一番なのは愛情とい
うか、家庭の雰囲気なのであって、どんな料理でも、専門家が作っ
たものと味の点で張り合うのは難しいものです。一生懸命作ったも
のより、その辺で安直に買ってきたものの方が美味しかったりする
と、ムッとしますが、やっぱり専門家というのは、素人とはずいぶ
ん違うのだな、ということを改めて感じました。

【脱酸素剤】

 ところで、買ってきておいてあった方のそばを開けてみると、中
に「脱酸素剤」と「酸素感知剤」が入っていました。脱酸素剤はよ
く見るものですが、酸素感知剤の方は珍しいもので、思わず袋をあ
けて手にとって見ました。

 市販の薬と同じような錠剤で、酸素に触れると色が変わる仕掛け
になっているようです。私が見たときは紫色でしたが、きっと酸素
にふれるまでは青かったのでしょう。

 脱酸素剤を使った食品のクレームとして、最も多いのが、ピンホ
ールといって、袋に微細な穴が開いていて、中に空気が入って来て、
その効果がなくなってしまう、というものです。酸素感知剤を仕込
んでおくと、袋を開けずに、そのような状態になっていないことを
確認できます。

 当たり前の話ですが、その場合、袋は透明なものを使います。袋
には空気を通さないタイプのものを使うのも、当然のことです。

 脱酸素剤は、要するに「使い捨てカイロ」と同じような仕組みの
ものです。鉄は酸素と化合しやすい(「サビ」るわけです。)ので、
鉄と触媒になるものとを仕込んでおくと、空気中の酸素と化合して
結果として包装の内部の酸素を奪ってしまう、という仕掛けです。

 使い捨てカイロでは、このとき発生する熱を利用するのですが、
脱酸素剤では、酸素がなくなってしまう、という結果を利用します。
酸素は空気の2割ほどを占めますので、脱酸素剤をいれてある食品
の包装は、少しへこんだような状態になります。

 窒素封入という方法もあり、これは空気を追い出して純粋の窒素
を袋に充填する、というものです。こっちの方の袋はパンパンの状
態になっています。削り節なんかの袋でよく使われます。こちらの
方が効果が高いのでしょうが、脱酸素剤はその簡易版といったとこ
ろです。

 脱酸素剤の効果は、食品の酸化を防ぐ、というところにあります。
食品の変質には、空気中の酸素と結びつく、という化学的な変化が
大いに関係があるのです。

 細菌には酸素を必要とするものと必要としないものとがあります。
腐敗菌には嫌気性といって、空気を必要としないどころか、酸素が
あると繁殖できないタイプも多いので、細菌にはあまり効果がない、
つまり防腐作用はないと思わないといけません。

 こういうこともあって、生である程度乾燥しているものには、脱
酸素剤を使いますが、ケーキやカステラといった水分の多いもので
は、カビを防ぐために、「アルコール剤」を使うことが多いのです。

 アルコール剤は文字通り、粉末のアルコールが入っています。袋
から徐々にアルコールが蒸発してきた、食品の包装の中に一定のア
ルコール蒸気が充満しています。こうなると、カビはアルコールに
弱いので、繁殖してこない、というわけです。

 クリスマス用にスポンジケーキを作ってもらったとき、すべてを
直前に、というわけにはいかないので、1週間くらい前から、作っ
ておきます。このとき、脱酸素剤とアルコール剤との併用が最強の
コンビで、本体は全く無添加なのですが、そういう工夫で2週間以
上は美味しく食べられるものにできるのです。

 一度保存テストして、どのくらいの賞味期限を設定できるか試し
てみよう、という話もあったのですが、クリスマスケーキ用のもの
が、1月まで日持ちしても意味はない、と却下になり、便宜的に年
内いっぱいを賞味期限にしました。ほんとうはもっともつのですが、
賞味期限というのは、こういう使用の側の事情で決められているこ
とも多いのです。

 生麺を使用したラーメンのセットなんかでは、一番多いクレーム
は、「スープに黒い変なものが浮いている」というものです。これ
はもちろん、脱酸素剤をスープの添加用の香辛料かなんかと間違え
て、袋を開けて入れてしまったものです。食品を製造販売する、と
いうのは、こういうクレームにも、真面目に対応しなければならな
い、ということでもあります。

 直接、お宅に伺って、目の前で再現してみると、当然ひどく恐縮
されるのですが、顧客サービスというのは、こういうことでもあり
ます。クレームが来たら、消費者と直接に話し合うチャンスと思え、
と若い人には教えていたのですが、大企業のトップから、末端の配
達員まで、案外と難しいことではあります。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年のお
正月はいかがでしたか?

 ケーブルテレビへ申し込んでおいたら、さっそく担当の人がきて、
ハンコをついてしまいました。来週には工事に来るそうで、インタ
ーネットへ常時接続することができるようになります。

 ついでなので、無線LANの装置も取り寄せています。今までの
電話線につないでいたのとは、大分違った環境になります。近所で
アパートを借りている上の息子に、帰ってきたらケーブルテレビに
インターネット見放題、といって自慢しておきましたが、どうなり
ますやら。

 それから、新たに10MBのホームページ領域と、メールアドレ
スもついてくるそうです。こんなもの、あんまり増えても仕方ない
のですが、どうしようか、と思っているところです。

 今回掲載したグルタミン酸の分子モデル、ご覧いただけましたか?
いろいろと取り上げられるグルタミン酸ですが、このように分子の
姿は初めて見た人も多いと思います。あの図は chimeというフリー
ソフトのもので、私は講談社ブルーバックスの「動く分子辞典」と
いうのについていた付録で手に入れましたが、インターネット上か
らダウンロードできます。また、分子モデルのデータも、たくさん
あります。下記へ行ってみてください。

http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/home.html
「生活環境化学の部屋」

 分子モデルで遊んでいたら、受験勉強中の下の子に、馬鹿にされ
てしまいました。でも、なかなか面白いですよ。

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--61号--------------- e-mail why@kenji.ne.jp -------------
--発行--渡辺--宏------- URL http://www.kenji.ne.jp/food/
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