安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>593号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------593号--2011.03.20------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「Q&A」「ヨウ素」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 震災発生から1週間たって、ようやく新聞の見出しも落ち着いて
きたようです。

 あれほどの大震災だったのに、震災そのものより福島の原発事故
の方が大きく報道されるという、変な状況になっていました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

日本の原子炉についての報道は、健全な科学のメルトダウンである

 9.0の地震と津波の連続被害により、日本は何千人という行方不
明者や怪我人の救助に懸命に取り組んでいる。多くの人が同時に福
島第一原子力発電所からの放射線放出についても心配している。し
かしこの放射線放出については、自らの政治的欲望を満たすために
事態を悪用しようとしている反核活動家により誇張されている。

 報道機関や反核プロパガンダが「メルトダウン」や「チェルノブ
イリ再び」といった言葉を乱発して、自然災害の悲劇が覆い隠され
てしまっている。多くの専門家はこの事故はチェルノブイリではな
く1979年のスリーマイル島事故に近いと結論し始めている。

 報道は真の悲劇や公衆衛生上の脅威に焦点を絞るべきだ。何千人
もの日本人が家を流され、食事も水もない状況におかれている。一
生に一度あるかないかという地震と津波を経験して、核施設が、傷
ついたとはいえまだ相当量の放射線を放出しないでいることは驚く
べきことで、原子力発電所の技術と安全性の高さの証拠である。

 (日本のメディアも1万人を超える犠牲者を重大ではないと思っ
てるみたいで悲しい。辛うじて避難できても物資不足でさらに犠牲
者が増えるかもしれないのに、放射性物質が付くことのほうが大事
らしい。)

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20110315#p10
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 最後のカッコ内は畝山さんの感想です。まことにそのとおりだと
思います。

 私は専門家ではありませんので、詳細は控えますが、今のところ
すでに事態は収拾されつつあるという判断でよいと考えています。

 ところで、その私のブログにこんなコメントがつきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

原子力発電所の技術と安全性の高さの証拠?
すいませんが、科学的リスクはそうかもしれませんが、
このような事態において電気系統がやられることは
京都大学の専門家が以前から政府と東電などに指摘していたとのこと。
これも安全性の高さの現れなんですかね・・・・

それと、東電のマスコミに対する対応はひどいのですが・・・

http://www.kenji.ne.jp/blog/index.php?itemid=788
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 確かに、津波にもっと着目していれば、こういう事態を防ぐ手段
をとっておくことは可能だったと思います。しかしそれを「原発の
安全性」と直結することは難しいです。

 たとえば、先日「スーパー堤防」なるものが過大な公共事業であ
るとして「仕分け」されていました。しかし、今回のような「千年
に一度」の大水害が発生した後では、この「仕分け」は猛烈に避難
されることになります。

 私たちが「安全」に対して配分できる資源は無限ではありません。
すべての「危険」にあらかじめ対応しておくことは不可能なのです。

 コストとリスクを秤にかけて、「できる範囲で」最善を期すこと
しかありません。起こってしまえば今回の地震に対応した対策がと
れなかったことは痛恨事です。しかしあとからの批判は誰にでもで
きます。必要なのは今後に活かすことでしょう。

 今回の震災で、ビルや道路、鉄道などは猛烈な地震にかなり耐え
ていて、神戸のときのような全面的な崩壊というのはありませんで
した。避難所になっている学校などもほとんど無傷でいるようです。

 これは神戸の教訓が活かされたということです。事故のあとに、
さも先見の明があったように吹聴している人より、真剣に反省し、
次の地震に備えた人が偉かったのだと思います。

 今回の原発事故は、最大級の震災の中で重大な事故になってしま
ったのは事実ですが、原子炉自体は無事に停止しており、日本が滅
亡しかねないようなマスコミ報道はあまりにも危機を煽るものであ
って容認できない、というのが引用した文意です。

 別に東電や原発安全論に味方するものではありません。こうした
状況については、「絶対安全」などと嘘を言い続けてきた原発推進
側にもかなりの責任があると思います。

 しかし原発事故の現場では懸命の努力を続け、政府や会社幹部に
足を引っ張られつつも、危機を脱しつつあります。ようやく報道も
落ち着いて来ています。このあたりも反省の材料にしたいですね。
(特に毎日新聞さん…)

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@
kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.ドライフルーツのプルーンの袋入りを買って、冷暗所に入れて
いたのですが、先日袋がぱんぱんにいっぱいに破裂しそうなくらい
膨らんでいました。購入後1ヶ月くらいで、賞味期限は5月半ばで
す。原産国はチリで、添加物は、Potassium とSorbate Sorbic Acid
が、保存料として使われています。

 他に買っておいた、もうひとつの袋は膨らんでいませんし、今ま
で何度もプルーンは買いましたが、袋が膨らんだ事はなく不安です。

 ガスのようなものが発生したのでしょうか?食べないほうがいい
ですか?

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A.袋が膨らむというのはガスが発生したからです。どんなガスか
というと、通常は二酸化炭素です。

 元々果物についている酵母が働いて、糖を二酸化炭素とエタノー
ルに分解します。パンが膨らむのも、ビールの泡も、同様にしてで
きた二酸化炭素が原因です。

 食べてもたぶん害はないですが、こういう発酵したものは味も変
わっているはずですから、食べる意味はないです。

 「Potassium とSorbate Sorbic Acid」ではなくて、「Potassium
Sorbate」とSorbic Acid」で「ソルビン酸カリウム」と「ソル
ビン酸」が使われています。酵母にも効くはずなのですが、何かの
事情で、濃度が不足したのでしょうか。

-〔食べ物情報
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「ヨウ素」
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 こんなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

今回、こんな情報が届きました。

 無機ヨード錠と、食品としての海藻(これを有機ヨードと呼ぶの
でしょうか?)とは同じ効果があるのでしょうか?また、ほぼ同時
期にチェーンメールもどきも回ってきており、転送して良いものか
どうか案じています。朝日新聞にはヨード液を口径投与されている
少女の写真が、大きく掲載されていたので、迷っています。この、
吉村医師が被爆予防に昆布摂取を勧めていると…曲解するのはどう
なのでしょうか。教えていただけますでしょうか。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 以下はそれに対する私の返信です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ご質問のメールには、この問題に関する記事が引用されています
が、紹介はしません。(理由は以下を読んでいただければわかりま
す。)

 放射能とヨードについては、以下のサイトに非常に詳しい解説が
あります。

原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について
平成14年4月原子力安全委員会
http://www.nsc.go.jp/bousai/page3/houkoku02.pdf

 これによると、原子力災害が発生した場合、放射性ヨウ素が放出
され、それを体内に取り込むことによって、内部被曝が起こるとさ
れています。

 このときにヨード剤が有効なのは、ヨウ素は甲状腺に取り込まれ
るため、あらかじめヨウ素を摂取しておいて、放射性ヨウ素が体内
に滞留することを防ぐということです。

 だから、元々非常に限られた状態で有効なもので、そういう被害
に遭わない限り、ヨード剤の摂取は意味はありません。

 また、日本人は非常に大量のヨウ素を摂取しているため、元々そ
ういう場合でも、放射性ヨウ素の影響は少ないだろうとされていま
す。

 昆布はヨウ素の摂取には非常に有効で、日本人がヨウ素を大量に
摂取しているのも、昆布をはじめとする海藻類をよく食べるからで
す。

 しかし、非常時に昆布がヨード剤の代わりになるか?というと、
答えはNOらしいです。非常時には昆布では間に合わないのだそう
です。

 「被曝予防」というのはちょっとニュアンスが違っていて、被曝
時に緊急に大量のヨウ素を摂取することによって、体内被曝を少な
くするのが目的です。昆布を調理していたり、もぐもぐ噛むような
ことでは間に合わないというわけです。

 「うがい薬やのどスプレーなどにもヨードが使われているので、
大量の水で薄めて飲む」ということも勧めているようですが、こん
なことをしても危険なだけで、意味はないと書かれています。ご指
摘の記事は単なる素人の思い込みのようですね。

 最後に、この資料では、40歳を超えると、ほとんど甲状腺にヨ
ウ素を取り込まなくなるので、ヨード剤の摂取は無意味なんだそう
です。子どもや若者限定の話だってのですね。これは私も知りませ
んでした。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 放射線被曝とヨウ素の関係は、紹介した原子力安全委員会の文書
で語り尽くされています。

 ところで、「食塩にヨウ素を添加」している国は結構たくさんあ
ります。そういう国では国民の栄養摂取量として、ヨウ素の摂取が
不足しているのですね。

 中国もそうした国の一つで、食塩にヨウ素を添加することが義務
づけられています。

 そんな中、今回の原発事故報道の影響でこんな事件が起きている
そうです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

福島原発事故で中国が塩パニック、食塩のヨウ素が被ばく防ぐとデ


【3月19日 AFP】中国で、福島第1原子力発電所から漏れた放射能に
よる被ばくを防ぐにはヨウ素が有効との風評が広がり、人びとが食
塩の買いだめに走っている。ヨウ素欠乏症を防止する国家政策によ
り、中国では、ほとんどの食塩にヨウ素が添加されているからだ。

 仏小売大手カルフールの上海店舗では17日、開店から30分で塩が
売り切れた。同店を訪れた客の話では、塩の価格を6倍につりあげ
た店もあるという。

 南部・広州のスーパーでも、塩の需要が急増したため、1人当た
り2袋までの購入制限を設けた。

 海を隔てた隣国の日本で起きた原発事故が、中国で人体に影響す
ることはないと中国政府は強調しているが、放射能汚染に対する国
民の不安はおさまっていない。ヨウ素添加塩を摂取することで、少
しでも放射能被害を食い止めようと必死だ。

 だが、国営ラジオによると、食塩に含まれたヨウ素は1キロあた
り20から30マイクログラム程度で、放射能汚染予防には何の効果も
ないという。

http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2791206/6971192
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 中国人はあの劣悪な環境の中で平然と暮らしている人々…という
イメージがありますが、実はかなり健康問題には過敏なところがあ
ります。感染症にしても、何か報道される度にパニックを起こして
いたりします。

 「塩の価格を6倍に」というのもいかにも中国らしい話ですが、
こうした商売に騙されてしまうのもやはり中国人なんです。

・日本の原発事故で中国人に健康被害が出る可能性はない。

・ヨウ素剤を飲んでも意味はないのに、ヨウ素添加塩を食べてもも
っと意味はない。

・塩は食べすぎてはいけないでしょう。

 解説するのも馬鹿らしいですが、人ごとと思えばニヤリとしてし
まいますね。騙されたり間違ったりしながらも懸命に生きているの
が中国人です。

 さて、今回の話題はそのヨウ素です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

ヨウ素(I)

 体内に約20〜30mgくらい存在します。

 甲状腺ホルモンの成分発育を促進・エネルギー産生を高めるなど
の働きをしています。

 人間には必須成分で、1日0.014から0.033mgが必要量とされ、体
の中のヨウ素の半分が甲状腺に集まっていて、甲状腺ホルモンのチ
ロキシンとトリヨードチロニンを作る材料になります。

 これらのホルモンは 交感神経を刺激して 蛋白質や脂質・糖質
の代謝を促進します。

 不足すると体がだるい・鈍いなどの症状が現れたり子供では発育
が遅くなったりします。

 ヨウ素が欠乏すると甲状腺機能低下が起こり、発育障害、小人病、
脈拍低下、体のむくみなどが現れます。又、性的興奮減退、不妊、
肥満などが起こり髪、皮膚や爪につやがなくなり活力がなくなりま
す。

欠乏症 甲状腺腫・甲状腺機能低下症

過剰症 甲状腺腫・甲状腺ホルモンの生成低下症(2mg/日)

推奨量 18〜29歳男性150μg 18〜29歳女性150μg
上限量 18歳以上3000μg

 われわれ日本人は何気なく塩分を口にしており、島国日本の食卓
には海産物が数多く並んでいる。栄養所要量については骨粗鬆症の
原因となるカルシウム摂取不足を除けば、ほとんどの日本人の間で
不足している栄養素が無いことは非常に幸せなことである。

 しかし、世界中の多くの国々においてこの私たちの何気ない塩分
・海産物に関する食生活が困難なために本来救えるはずの命を落と
している数多くの人々がいる。その代表として挙げられるのがヨー
ド欠乏症である。

世界の大きな課題《ヨード欠乏症》

 ヨード欠乏症とはその名のごとく、生体内の微量元素であるヨー
ド(ヨウ素)の摂取が不足している状態による全ての影響を意味して
いる。ヨード欠乏症は甲状腺腫、死産、流産、新生児と思春期の甲
状腺機能低下症、低身長症、知能障害、聾唖、痙性筋脱力と麻痺、
およびこれまでに挙げたものよりは軽度の身体機能障害と知能障害
を包含するものである。

 特に生命予後の非常にに欠かすことができない甲状腺ホルモンの
不可欠な構成成分であるために、甲状腺ホルモンの産生が障害され
ることに由来する。

 ヨード欠乏症は西欧諸国ではヨード添加塩の利用、食品の加工技
術、流通の革新による食物へのヨードの添加含有量の増加によりお
おむね消滅した。

 また、日本においてはヨードが海産物の中に少量ずつ含まれてお
り、海藻や魚を口にすることによって私たちの体内では知らず知ら
ずのうちに必要なヨードが満たされている。しかし、山岳地帯のヨ
ード不足地域に住む人々(特に開発途上国)は海産物もそれ以外もヨ
ードを摂取する機会に恵まれていない。

 1990年の世界保健機関(WHO)による推計によれば、開発途上国に
住む約十億人もの人々がヨード欠乏症となる危険性にさらされてお
り、そのうち少なくとも2000万人はヨード欠乏が原因で脳障害を被
っている。

 また、少なくとも2から3億人は甲状腺肥大症ないしは何らかのヨ
ード欠乏症による障害をもち、また最低でも600万人のクレチン症
が存在すると推定されている。

 ヨード欠乏症が多発するのは、土壌ヨード含有量の低い内陸部高
地(例:ネパールヒマラヤ、アンデス、ヨーロッパアルプス、中国
の山岳地帯)や、洪水が多発して土地が痩せている地域(例:ガン
ジス河流域)などである。

http://www.nattoukin.jp/i%20%20yoso.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 日本人がヨウ素を過剰に摂取しているというのは有名な話で、よ
くそれで障害が出ないものだと感心されていたりします。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 2009年10月から、オーストラリアとニュージーランドのほとんど
のパンにヨウ素が添加されることになりました。これにより1日約
50μgのヨウ素の摂取増加を目指しています。

(略)

 ニュージーランドでは1800年代後期から1900年代初頭までヨウ素
欠乏症があり、甲状腺腫は普通に見られる病気でした。原因として
はオーストラリア・ニュージーランド地方の土壌はもともとヨウ素
含量が少なく、日常的にその土地の食品のみを摂っていると必然的
にヨウ素欠乏症になる、ということです。いわゆる風土病だったわ
けです。

 この問題を解決するため、1924年に食卓塩にヨウ素を添加するこ
とになりました。WHOの推奨している食卓塩への添加量としては 20
-40ppm(塩1kg当たり20-40mg)です。食卓塩への20ppmの添加ですと、
1日10gの食卓塩を使ったとすると200 μgの摂取量になります。し
かしこの効果は小さく、1938年にはヨウ素の濃度を40-80ppmに増や
しました。ヨウ素添加食卓塩が導入された際には、ヨウ素添加塩を
家庭で使用することの利益を広報するためのキャンペーンが行われ
ましたが、ヨウ素が添加されていない塩も常に入手可能でした。

 そして最近の調査ではニュージーランド人のヨウ素状態は介入が
必要なレベルまで低下してしまっています。食塩の摂り過ぎが問題
になっていて食卓塩の使用が減っていること、ヨウ素を含む消毒薬
などの使用も減っていることなどが原因として挙げられています。
そして04年ころからさらなるヨウ素不足対策として主食であるパン
への添加が検討されたわけです。実際にはパンを作るときに使う塩
にヨウ素添加塩を使うという方法のようです。

 このような方法を用いる理由は、ヨウ素不足が国民の特定集団に
のみ見られることではなく幅広くほぼ全員の問題であること、ヨウ
素は必要量と過剰量の範囲が狭いためサプリメントのような形での
摂取には過剰摂取になるなどの問題が大きい可能性があることなど
が挙げられます。

 世界的にはヨウ素欠乏が問題である地域の方が圧倒的に多く、ヨ
ウ素添加塩を採用している国が多いです。国際線の飛行機に乗った
ことがある人ならば、機内食の塩の小袋に「iodized salt」と書い
てあるのを見たことがあるかもしれません。

 ところが逆にヨウ素摂取量が多すぎる国もあります。代表的なの
が日本です。日本人のデータは先のWHOの報告書には掲載されてい
ないのですが、07年に発表された東京の小学生654人の調査結果で
はヨウ素の尿中濃度はメジアン(中央値)で281.6μg/L、1000μg/L
を超えるケースも16%もあった、とのことです。つまり先のWHOの
基準に当てはめると摂り過ぎによる健康被害(自己免疫性甲状腺疾
患や甲状腺機能亢進症)が出るレベルにあるということなのです。
とはいえ、日本で食品からのヨウ素の過剰摂取による健康被害が多
いというデータはないようです。詳細に調べれば何かあるのかもし
れませんが、過剰摂取者が多い割には目立って問題になっているよ
うなことはないようです。

 日本人のヨウ素摂取量の多さは海藻、特に昆布によるものです。
昆布は1g当たり1-4mgのヨウ素を含み、日本人は昆布そのものも食
べますし、だしとして使った料理を日常的に食べるためにヨウ素を
ふんだんに摂っているのです。

 一方、日本人とは違って日常的にヨウ素が欠乏している人が、急
にたくさんのヨウ素を摂ったような場合には、有害影響が出やすく
なります。そのためヨウ素の上限摂取量というものが設定されてい
ますが、欧米での値は1日当たり0.5-0.9mgといった数値です。ドイ
ツではヨウ素含量が 20mg/kgを超える乾燥海藻製品には健康リスク
があるため市販されるべきではないと考えられており、乾燥昆布は
基準値を数百倍も上回る「危険な食品」とされています。食品の流
通が世界的に広がる中で、しばしば昆布製品がヨーロッパの緊急警
報システムで回収対象になっています。

 日本ではこの値は非現実的で、ヨウ素の上限摂取量も3mgと欧米
より高い値になっています。それでもこれを超えて摂っている場合
が頻繁にあると考えられます。特に最近一部で話題になっている
「(とろろ)昆布ダイエット」のような極端なダイエット方法を実
践するとヨウ素のとり過ぎによる健康被害の可能性があります。
「伝統的食品だから安全」では決してありませんので、注意が必要
です。

 このように欧米で設定される基準値が日本の実態から考えてふさ
わしくないように思われる事例は、ヨウ素以外にも水銀やヒ素やカ
ドミウムなど海産物に多いミネラルなどの場合によく見られます。
それらについては、国際基準の作成のためのしっかりした科学的根
拠となるようなデータが日本から提出されることが望ましいと思い
ます。場合によってはこれまで見逃されていたような僅かな影響が
分かることもあるかもしれません。科学への貢献はノーベル賞を取
った人が何人、ということだけではなく、リスク評価に寄与するこ
とによってもできるはずです。

 ヨウ素の話からは、もう1つ考えて欲しいことがあります。地球
上には天然資源が偏在しており、土地のミネラル組成などの性質は
様々です。地域ごとにある種のミネラルが多かったり少なかったり
することは良くあることです。必須ミネラルの不足している土地も
あれば有害重金属の多い土地もあるでしょう。昨今ブームとなって
いる「地産地消」ですが、地元経済の活性化のためのものではあっ
ても安全性という視点では決してベストではないことに留意してお
いて欲しいと思います。安全性の視点からは、世界中からあらゆる
食品を輸入している現在の日本の状況の方が、リスクの分散ができ
ているという意味で「より安全」と言えます。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama+nikkeibp/20081210
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 最後に書かれている「地産地消」は安全性の面からは推奨できな
い、というのは覚えておいて損はないですね。また、昆布が「危険
な食品」であるというのも、びっくりします。国によって基準はこ
うも変わるものであると理解したいです。

 最近は「減塩」ということも言われていて、ヨウ素の摂取をヨウ
素添加塩に頼っているアメリカでは、減塩とともにヨウ素欠乏が問
題になってきている、という報道もありました。

食塩消費量の減少によるヨウ素レベル低下を懸念
http://ccnews.at.webry.info/201007/article_9.html

 ヨウ素の話を紹介しましたが、やはり今の関心事は原発事故との
関係でしょう。以下に、原発事故との関連で、ヨウ素についてまと
めます。

(1)ヨード剤は非常に大量の放射能を浴び、放射性ヨウ素の体内
被曝が問題となる局面で使われる非常用の薬です。

(2)この場合でも特に重要なのは子どもに与えることで、40歳
以上に人には意味はありません。(20歳以上でもあまり意味はな
いそうです。)

(3)したがって、放射能が心配だからと言ってヨウ素を特別に摂
取する必要はありません。特に日本人ではヨウ素摂取量は過剰が心
配されるレベルです。

(4)今回の原発事故で、一般の日本人が健康被害が出るほどの放
射線を浴びる可能性はありません。

(5)うがい薬などのヨウ素を含む薬剤を飲むことは、危険ですの
で絶対にやめてください。

 最後の項目については、こんな警告も出ています。

「うがい薬を飲まないで」
放射線医学総合研究所、ネット上のデマに注意呼びかけ
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1103/15/news052.html

 読者のみなさんに、こんな話に騙される人はいないと思いますが、
世の中には結構そういうデマを信じている人がいるのでしょうね。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 現在の政府が無能なのは今に始まったことではありませんが、つ
い文句を言いたくなってしまいます。でも、そんなことより復興に
向けた取り組みをどうしていくかが問題です。少なくとも20兆円
かかるという話を聞きましたが、それくらいの力は日本にはあるは
ずです。

 直接被害を受けた地域意外の関東圏ではその後の電力供給が問題
です。なぜ東京が特別扱いされているのか?なぜ電車まで止めるの
か?なぜパチンコ屋が開業していのか?わからないことばかりです。
大口需要家である工場に、順次休業していってもらえば解決すると
思うのですが。

 逆に発電設備を持っている工場から電力を買い上げることはでき
ないのでしょうか。中国では電力危機はこの方法で回避しています。
怪しげな発電所がいっぱいできて、環境には悪いですが、とにかく
電力は集まっているようです。

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