安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>574号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------574号--2010.11.07------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「米トレーサビリティ法とMA米」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 前回紹介しました、『食べモノの道理』(佐藤達夫著)について。

 私より前に妻が読みまして、すごく納得していました。私の書い
たものにはほとんど反応しないのですが、さすがジャーナリストの
書いたものは説得力があるようです。

 さて、その中で今回は中国の話を紹介します。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

(1)日本全体の「食の安全システム」と中国全体の「食の安全シ
ステム」では日本の方が優れている。

(2)中国の食品企業の食の安全レベルにはピンからキリまでがあ
り、日本の食品企業の食の安全レベルにもピンからキリまである。
ピンとキリの差は日本よりも中国の方がはるかに大きい。

(3)ただし、中国から日本へと輸出される食品の多くは、中国国
内における食の安全システムのトップレベルにある企業で生産され
ている。そのため、「中国から日本へと輸出される食品」に限って、
その安全性を「日本国内で生産される食品」と比べれば、その優劣
はつけがたい。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この本の中で、日本と中国の食品について、このようにまとめら
れています。

 ただし、(3)については私には異論があります。日本のレベル
のバラつきを5〜10とし、中国を1〜9とします。中国から日本
に入ってくる食品は8〜9程度のものです。

 5〜10と8〜9を比べて、「優劣つけがたい」というのは間違
ってはいないですが、より正確には「日本の食品の比較的良好なも
のと比べて優劣がつけがたい」であり、「日本の中の低位のものよ
りは優れている」というのが正しいと考えています。

 最高点を日本を10、中国を9としましたが、実は設備や工程に
差があるということではありません。

 同じような最高レベルの工場を作っても、その周りの環境に差が
あるのです。衛生レベルが周囲と差がありすぎる場合、環境や人は
相互に進入しますので、どうしても周囲に影響されるところが出て
きます。

 それを端的に表したのが、「冷凍ギョーザの中毒事件」でした。
結果としては従業員個人の犯行だったようですので、日本ではおこ
らないわけではありません。しかし、一般的に言うなら、周囲との
落差が大きいほどこの種の危険性は増すと考えられます。中西準子
さんはこの周囲との落差が激しい状態を「租界」と表現されていま
した。

 この租界状態が、周囲のレベルが上がってくることによって解消
される方向に進んでいくと思いますが、まだしばらく時間がかかる
のはやむを得ません。反日デモなんかしている場合ではないだろう、
中国人!というところです。



 中西準子さんの名前を書いたので思い出しましたが、先日、中西
さんは「文化功労者」として表彰されました。以下は先生のサイト
で公開されている、文化功労者の「選考理由」です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 環境リスク管理学の分野において、「人の損失余命」と「生物種
の絶滅確率」という人の健康と自然環境に対するリスク評価軸を提
案・確立するなど、定量的な環境リスク評価と環境リスクマネジメ
ントの研究において優れた業績を挙げ、斯学の発展に多大な貢献を
した。

 氏は、永年にわたって環境問題の解決を目指した実際的な研究を
行い、その成果を社会に対して提言し、かつ、実践してきた。氏の
幅広い見識に基づいた新しい提案は、次第に各方面から注目を集め
ることとなり、政府等の多くの審議会等を通じて政策立案に貢献し
ている。

 さらに、独立行政法人産業技術総合研究所化学物質リスク管理研
究センター長として、化学物質完全管理技術の開発、特にリスク評
価手法の開発および管理対策のリスク削減効果分析の技術開発に努
め、化学物質の広域大気濃度推定モデルの開発および化学物質のリ
スク評価書の作成、さらにリスク評価の概念普及を陣頭に立って指
導してきた。

 環境汚染物質などに対して、より適切な環境施策を選ぶには環境
への悪影響(リスク)の大きさを定量的に比較する必要がある。氏
は、このような環境リスク評価において、人の健康リスク評価に関
しては人の損失余命に換算することで、また、自然環境に対するリ
スク評価では生物種の絶滅確率の大きさに換算して統一的に評価す
る方法を独自に考案し、具体例を積み重ねてきた。

 これらの成功は、世界的にも新しい提案として注目を浴び、環境
リスク評価と環境リスクマネジメントに関する研究の推進に大きな
貢献をした。

 氏のこれらの研究と実践の成果は、化学物質環境リスク研究の国
家拠点の形成および様々な環境問題での政策立案に生かされてきた。
同時に、これら実践的な研究や経験に基づいて、新しい環境リスク
マネジメントの考え方ができる人材の育成にも熱心に取り組み、多
くの人材を社会に送り出してきた。

 これらの業績に対して、平成15年春紫綬褒章、同16年毎日出版文
化賞などが授与されている。以上のように、氏は、環境リスク管理
学の研究・教育に優れた業績を挙げ、その功績は誠に顕著である。

http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak536_540.html#zakkan539
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 文化功労者に支給される年金を使って、論文の英訳を進めるのだ
そうです。数年後にはノーベル賞も受賞するだろうというのが私の
予想です。どうもおめでとうございました。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@
kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「米トレーサビリティ法とMA米」
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 前にも書きましたが、「米トレーサビリティ法」が10月から施行
されています。10月から義務化されたのは、「取引等の記録の作成
・保存」です。

 これを受けて、来年7月からは「産地情報の伝達」が必要になり
ます。米を使った商品には、その産地情報を表示しなければいけな
くなるのです。

 一見よいことのようですが、実は困った問題が発生します。それ
は「ミニマムアクセス(MA)米」の存在です。

 しばらく前にMA米のうち、カビが生えたりした「事故米」が不
正流通した事件がありました。今回問題になるのは事故米ではなく、
ちゃんとした食品に使われているMA米です。

 今まではMA米を使っているのが常識であっても、それは業界内
だけのことで、一般には意識されることはありませんでした。

 それがこの法律で産地を表示したら、表面に出てきてしまうとい
うわけです。

 「ミニマムアクセス」ということの意味についてはここでは書き
ませんが、とにかく一定の量(70万トンくらい)が毎年輸入され
てきます。輸出元は「アメリカ、中国、タイ」がほとんどを占めて
います。オーストラリア産もありましたが近年は脱落気味のようで
す。

 アメリカ、中国は主食用に使われることが多く、加工品の原料は
タイ産が多いようです。

 そしてMA米を使うことが常識になっている商品としては、「味
噌」「米菓」があげられます。この他にも米を原料にしている食品
のほとんどが使っていると思います。

 昔、味噌メーカーの人に聞いたことがありますが、タイ産の米は
味噌の原料としては非常に優秀なのだそうです。品質を比べたら、
上記をタイ産米で作った味噌が占めるのは間違いないと言います。

 はじめは恐々始まったMA米の使用も、あっと言う間に広がり、
今では米味噌といえばタイ産米というのが常識となっています。

 同様に米菓の世界でも、あられ、おかきの原料はほとんどMA米
です。その表示をどうするか、以下の方法が考えられています。

(1)現状のままで生産を続け、「外国産」と表示する。

(2)国産の破砕米などと併用し、「国産・外国産」という表示に
する。

(3)国産の破砕米を使用し、「国産」表示に変更する。

 あと8ヶ月の猶予しかなくなり、業界ではまだまだ迷っていると
いう話を聞きました。もちろん、問題は国産米にすればコストが高
くなること、外国産と表示すれば売り上げが落ちるかもしれないこ
とです。

 実際にどのようなところがMA米を買っているかという情報があ
りました。

加工原材料用MA米6月定例販売(5月20日実施)の契約情報
http://www.syokuryo.maff.go.jp/notice/kakou-MA-teirei/keiyaku_220520.pdf

 ここに味噌、醤油、米菓などのメーカーや組合がずらりと並んで
います。これは今年6月の情報ですので、ここに出てこないところ
も他の月に買っているかもしれません。だいたい、どんな業界で使
われているかがよくわかります。


 MA米については、以下のような指摘もあり、財政的にも非常に
困ったことになっています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ミニマム・アクセス米の買入れから売渡しまでに係る一切の経理
は、一般会計と区分して、食糧管理特別会計によって行われている。
同特別会計は、食糧管理特別会計法(大正10年法律第37号)に
より、国内米管理、国内麦管理、輸入食糧管理(以下、この3勘定
を併せて「食糧管理3勘定」という。)、農産物等安定、輸入飼料、
業務及び調整の7勘定に区分されており、ミニマム・アクセス米に
係る経理は、飼料用を除く外国産麦に係る経理と併せて輸入食糧管
理勘定で行われている。

 そして、17年度における輸入食糧管理勘定では、表2のとおり、
578億円の利益が生じているが、ミニマム・アクセス米に係る損
益は、売上高から売上原価を差し引いた売買損益が22億円の損失
となっており、さらに売買損益から事業管理費及び一般管理費を差
し引いた損益が207億円の損失となっている。


 農林水産省では、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づ
き、国内における米穀の需給に関係なく、7年度から17年度まで
にミニマム・アクセス米651万t( 買入金額計4173億円)を
輸入している。このうち、426万t(売渡金額計4508億円)
を主食用、加工用等に販売しているものの、毎年度の売渡数量が買
入数量を下回っているため、17年度末現在、在庫数量は181万
tとなっている。その保管料は、17年度で170億円、7年度か
ら17年度までの総額は937億円と多額に上っている。そして、
新たな農業合意が得られるまでの間は、最低輸入量76.7万玄米
tを維持することとされている。

 ミニマム・アクセス米の売渡しに当たり、主食用途としては、現
在も国内産米の生産調整が行われていることから、国内産米の需給
にできるだけ影響を与えないように販売している現状を変えること
が困難な状況である。そして、加工用途については、毎年度20万
t程度の売渡数量で推移しており、需要量の減少傾向にある中では
今後大幅な売渡数量の増加が見込めず、また、援助用途についても、
被援助国等からの要望等に基づいて決定されることなどから売渡数
量の増加が必ずしも望める状況とはなっていない。

 このような需要状況の中、毎年現在と同じ数量のミニマム・アク
セス米を輸入すれば、今後も在庫数量が増加することにより、港頭
倉庫の収容余力がひっ迫し、また、保管料が増こうすることが予測
される。そして、主食用又は加工用の需要が見込めないミニマム・
アクセス米については、年度末の在庫評価に当たり、援助用等の評
価単価で評価するため、買入単価を大幅に下回り、評価損が発生す
ることになる。しかも、17年度には評価損を考慮しなくても多額
の損失が生じている状況である。また、18年7月から飼料用に3
0万tを販売することとしていることから、在庫縮減策の一つとし
て効果を発現して在庫数量の増加に歯止めがかかることも期待され
るが、損益上の課題は残ることになる。このように、ミニマム・ア
クセス米については、今後も多額の保管料を負担し、新たに評価損
が生じることなどにより、損益の悪化が懸念される。

http://report.jbaudit.go.jp/org/h17/2005-h17-0842-0.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 これは会計検査院の報告ですので、お金の動きについて詳しい情
報が記載されています。

 次はもう少し具体的なMA米についての説明です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■解決済みの質問

 近年のミニマムアクセス米の発生量に関するデータの出所を教え
て下さい。

■ベストアンサーに選ばれた回答

 ミニマムアクセス米というのは、世界153か国により構成され
る世界貿易機関(WTO)の協定に基づき、毎年輸入している米のこ
とで、「発生する」というような性格のものじゃないです。

 1999年以降、ミニマムアクセス輸入枠は、年間76万7千ト
ンに固定されています。もっとも、穀物価格の高騰や事故米騒ぎの
影響で、一昨年以降はこれを下回る実績になっていますけどね。今
は農水省のHPがメンテナンス中でリンクが張れませんけど、農水省
のHPに資料はあります。

 事故米というのは、輸送途中で水をかぶったり、輸入後の倉庫保
管中にカビが生えたりしたもので、事故米の発生比率は、ミニマム
アクセス米輸入量全体からすれば1%未満です。

 76万7千トンのうち、10万トンはSBS輸入方式で輸入され
ており、この10万トンのうちの一部だけが主食用として市場に供
給されます。

 残りの66万7千トンは、横流しできないように破砕米に加工さ
れてから、米菓などの原料用限定で売り渡されています。ただ、米
菓などの原料用需要は30〜40万トン程度なので、半分くらいは
倉庫に保管されたままの在庫米になっています。

http://www.nca.or.jp/shinbun/20080523/noukai080523_02.html

 ミニマムアクセス義務というのは、本来は、「一定数量までは、
低率の関税で民間が自由に輸入できるようにする」という義務なの
ですが、それをしてしまうと主食用米ばかりが輸入されてしまって、
減反を強化しなければならなくなってしまうため、国が一元的に輸
入して、主食用には供給されないように妨害しているのです。

 SBS輸入されている10万トン分についても、年間10万トン
以上の国産米を海外援助用に輸出することによって、ミニマムアク
セス米の輸入が国産米の需要量に影響しないように配慮されていま
す。

 つまり、国によるミニマムアクセス米の輸入というのは、国内米
作農家保護のための政策なんです。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1133171241
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 回答者はどうも農水省のお役人のようですね。

 こういう状況の中で、「お得意様」として需要を支えてくれてい
る業界を、表示問題で追い詰めているのですから、政策としては馬
鹿としか言いようがありません。

 馬鹿といえば民主党、と条件反射してしまいそうですが、この法
律が成立したのは2009年4月です。自民党政権の時代ですね。

 来年7月までに味噌や米菓の表示が変わるわけですが、どのよう
になるか注目です。

 もちろん平然と「外国産」表示をおこない、国民がそれを受容す
るということができれば何も問題はありません。

 そうなれば、今まで消費者の目を意識してやってきた不自然なや
り方も解消され、よりよい状態で食品の品質を語れるようになると
思います。

 偏狭な「国産農産物」のキャンペーンも、自分の首を締めること
になると気づいてほしいものです。私は「ミニマムアクセス」を廃
止して輸入自由化する方が正しい道と思いますが、国産キャンペー
ンをやっている人たちがそう考えているわけでもないでしょう。

 MA米を今までどおり加工原料として使っていくためには、何を
しなければいけないのか、よく考えてほしいと思います。

 私は食品に関する排外主義をやめ、「自給率」キャンペーンもや
めて、日本の国内市場を公正で開かれたものにしていく道しかない
と考えています。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 文化功労者の顕彰式の写真があります。中西先生は着物で出席さ
れています。
http://www.aist.go.jp/aist_j/topics/to2010/to20101104/to20101104.html
 文化功労者の紹介記事を読んでいて気づいたのですが、中西先生
は大連生まれなのですね。お父様が満鉄の社員だったということで、
当然とはいえ驚きました。私はこのところ毎月大連に行っているも
ので。

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