安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>572号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------572号--2010.10.24------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「Q&A」「こうしてニュースは造られる」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 前回の記事について、こんなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 毎週楽しみに読ませていただいています。

 ヒスタミンの話題で、舌がぴりぴりと刺激を受けた時にはとあり
ましたが、やはり人間の味覚は毒素発見センサーの役割をはたして
いるようですね。ちょうど、直近の食品安全情報(化学物質)NO
21P14に松の実の苦み成分についてリスク分析をしたことが報
告されています。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ご紹介のサイトは以下のところにあります。
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2010/foodinfo201021c.pdf

 今中国にいて、このページを見ることができません。引用は省略
しますので、ご了承ください。

 さて、いつもいただいている笈川さんの「食品衛生レビュー」に
こんな記事がありましたので紹介します。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ここで紹介した事例のすべてで原因食品、原因物質は不明ですが、
飲食店で提供したメニューの中に「ヒラメの刺身あるいは寿司」が
入っていますので、ヒラメとの関係が深いものと推定されます。今
後、国立医薬品食品衛生研究所の調査研究で解明されると思います
が、細菌・ウイルスのような微生物ではなくてヒラメ体内で作られ
る毒と思います。

 原因物質不明なので、私たちの仲間のなかでは、とりあえずヒラ
メが関係した毒、「ヒラメトキシン(ヒラメ毒)」と呼んでいます。
調査報告書を読んでいないので、はっきりしたことは言えませんが、
いくつかの事例をさかのぼってみたところ、それらのヒラメは養殖
ものだったと聞きました。しかし、養殖ヒラメの流通量と比較して
食中毒発生の割合は極めて低いですので、養殖ヒラメと断定するこ
とはできなく、ヒラメトキシンを持っていても、その割合は極めて
少ないと考えられます。

 養殖ヒラメが毒を持つと仮定した場合、原因としては(1)エサ
(2)ストレス(3)海洋汚染----が考えられます。私の個人的な
推定ですが、養殖によるストレスにより、ヒラメの体内で人間に有
毒な物質(ポリペプチド:アミノ酸の結合体)を生成するのではな
いかと思います。また、食中毒発生事例を見ますと、そのほかの養
殖魚でも発生しているように見られます。

(略)

 ヒラメ養殖をしている方からお叱りを受けるかもしれませんが、
飲食店営業者は新聞などで原因不明の食中毒においてヒラメ料理が
提供されていないかを確認し、増えているようでしたら事故防止の
ために生食のヒラメの提供を止めることを考える必要があると思い
ます。これはあくまで私の個人的な意見ですが、いくら見栄えが良
くても、特に結婚式の披露宴などお祝いの宴では、生食のヒラメの
提供は控えるべきでしょう。結婚式の良い印象がなくなるばかりで
なく、残るのは悪い印象だけがだからです。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 養殖ヒラメの生食は危険、というわけです。個人で食べる分には
それほど危険ではありませんが、商売で出すにはリスクがあるよう
ですね。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@
kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.開栓前と後の保存方法を読み間違えてしまい、パスタ用トマト
ソース(瓶詰)の蓋と瓶上部に白いカビらしき物が生えてました。
トマトソース自体には無かったと思うのですが、今後も使える(食
べられる)でしょうか?まだ2回(前回からは2〜3日後)しか使
っておらず、大きな瓶のため9割がた残っているんですけど。

 また、カビ菌は煮沸消毒で殺菌できると他のサイトで見たのです
が、開栓後早急に全部処理出来ない場合、度々したほうがいいので
しょうか?そもそも「なるべく早くお使い下さい」ってどれ位の期
間の事を指しているのでしょうか?

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A.開封後は冷蔵の必要があったのですね。トマトソースの方にカ
ビが生えたのなら、残念ながらカビの生えた食品は食べないのが原
則です。あきらめた方がよいです。

 しかしご質問では「蓋と瓶上部」なので、この部分を拭き取って
冷蔵すればまだ使えるかもしれません。

 ただし、目に見えなくともトマトソースも影響を受けている可能
性があります。味や臭いなど、慎重に確かめた方がよいです。少し
でもおかしく感じたら、使用をやめましょう。

 別に煮沸などしなくても、栓をして冷蔵庫に入れておけば、そん
なにカビは生えないと思います。それでもやがて生えてきたり、色
や臭いが変わってきたりしますが、そのときはあきらめてください。

 「なるべく早く」の時間的な意味は、そうした状態になる前に使
い切ってしまえということです。この時間は保存状態(冷蔵庫の温
度とか)によりますので、一概に言えません。開封後は自分の責任
で、食べられるかどうか確かめながら使うしかありません。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「こうしてニュースは造られる」
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 先週書きましたが、小島正美氏の『こうしてニュースは造られる』
を紹介します。以下はプレスリリースの内容です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 新聞・雑誌の記事やテレビのニュース、中でも危険性を訴える
「リスク報道」は、そもそも、どこまで信じてよいものなのだろう
か。マスコミ報道に携わる記者の一人として、最近は、マスコミ情
報を読み解く技術が情報の受け手側に必要なのではと思うようにな
った。ことに何々が危ないという食品や医薬品などのリスク情報に
接するときは、情報を見抜くリスク眼力が必要だ。

 活字にしろ、映像にしろ、ニュースはどんな場合でも、ある一面
しか伝えていない。これをまず知る必要がある。ニュースは必ず
「切り取られた事実」だということだ。そして、何かしら社会問題
が存在するからといって、それが必ず報道されるとは限らないとい
うことも知っておく必要がある。

 世の中でいろいろなことが起きていても、それがすべて報道され
ているわけではない。報道されるのは「記者のメガネ」にかなった
ものだけだ。つまり、ある社会問題が存在するからといって、どん
なことでも報道されるかというと、そんなことはない。つまり、社
会の出来事でも、報道されるものと報道されないものがある。

 その結果、報道されることが社会の関心を集める。社会問題がニ
ュースになるのではなく、ニュースが社会問題になるのである。さ
らに、報道された内容は記者のフィルターを通っているので、その
情報には記者の主観、価値観、場合によっては偏見など感情的な要
素もまじっている。

 これがニュースの本質だ。リスク報道の場合は、このことが特に
顕著だ。だから、「報道されている」事実だけを見ていても、世の
中を理解することはできない。重要なのは、何が「報道されていな
い」か、である。何か問題が起きた場合、それがニュース性に乏し
ければ、記者のフィルターにひっかからない。物語性に欠けても、
ニュースや記事にはなりにくい。世間でタブー視されることも、ニ
ュースにはなりにくい。逆に国民が喜びそうなことは報道されやす
い。報道されるかどうかの判断基準は、それが真実かどうか、では
ない。記者たちのメガネにかなう内容かどうかである。

【目次】

<こうしてニュースは造られる―情報を読み解く力―』目次>

第1章 リスク情報のバイアスはいかに生じるか
− 感情(不安、恐怖)がメディアを動かす−

第2章 記者たちのバイアスは問題意識から生じる
−具体的な例でバイアスを検証する−

第3章  情報社会を生き抜く「言葉の力」
−安全情報をどう伝えるか−

第4章 国民はどんなとき、不安になるか?
−不安増幅マニュアルの手引き−

第5章 記者の思考パターンと紋切型世論
−記事はキーワードとストーリーが命−

第6章 食品の自主回収ラッシュの裏にある妖怪とは?
−欧米型リスク分析の限界−

第7章 医療報道ガイドラインと第三者機関の設置
−メディア・パトロールも動き出した

8章 いま記者に必要なリスク観は何か
−科学が勝てない時代はいつまで続くかー

http://pressworld.sblo.jp/article/41037789.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この中にはこんなことも書いてあります。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 各地で起きている原爆症の認定訴訟(原爆症裁判)でも、詳しく
は報道されない事実がある。訴訟では、老人性白内障ふ骨粗鬆症、
糖尿病、脳梗塞の症状をもつ高齢者が原告に加わり、勝訴している
例が多い。厚生労働省は、白内障や骨粗鬆症などは主に加齢や生活
習慣によって起きる病気であり、科学的な観点から見て、放射線と
の関連は明確になっていないと裁判で主張している。しかし、裁判
では厚労省が大半で負けている。

 私も確かに厚労省の言う通りだろうと思う。しかし、被爆国の日
本で被爆者に向かって、「骨粗鬆症は加齢や生活習慣との関係が深
い。放射線と関係ないなら、国に医療特別手当(毎月約14万円)を
求めるのは無理がある」とは言いにくい。原爆症裁判の報道では、
国の科学的な主張はほとんど出てこない。そうした結果、厚労省健
康局予算の約2950億円のうち、半分以上の約1550億円が被爆者対策
関連予算になってしまった。これは異常なことだと厚労省の関係者
は訴える。しかし、いくら科学的におかしいと言われても、相手が
被爆者だと,いまの報道もやむを得ないかという心境に私でさえな
ってしまう。難しい問題だ。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 本の記述では一貫してこういう「空気」に支配される日本の特殊
事情を、「戦艦大和の出撃」という比喩を使って書いています。

 ニュースを作るの記者であり、記者がそういう空気に支配されて、
偏向した記事を書いてしまうことをどう防ぐのか?というのが本書
の問題意識です。

 その中で、今回は「食品の回収」について、取り上げてみます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 戦艦大和の出撃から、60年以上も経過した。しかし、戦後民主主
義のもとで育った我々は、「あれは過去の出来事だ」と当時の『空
気』を笑えるだろうか。

 笑えないはずだ。

 なぜなら、いまも、あの空気が健在だからだ。

 その空気とは、食品の自主回収ラッシュである。

 いま、日本では企業による食品の自主回収、廃棄処分が大流行し
ている。自主回収は2007年から急激に増え、毎年700〜800件もある。
自主回収の理由は「賞味期限の誤表示」「微量農薬の残留」「産地
表示の偽装」「意図せざる化学物質などの混入」などいろいろだ。

 2008年におきた中国産冷凍ギョーザの中毒事件で見られたように、
農薬の意図的な混入事件を別にすれば、多くは健康に悪影響のない
ケースばかりだ。そのことは自主回収にあたっている企業が新聞に
掲載している社告を見ればよく分かる。

 ほとんどは「健康への影響は全くございませんが、回収させてい
ただきます」の文言ばかり。これはいったいどういうことなのだろ
うか。何事にも合理的な思考を働かせる欧米人が聞けば、不思議な
顔をするに違いない。

 「健康への影響がないなら、なぜ回収までして捨てるのですか?」
と。

 現に欧米では、たとえ農薬の残留濃度が法的な基準値を超えてい
ても、よほど毒性の強い農薬でない限り、たいていの場合は生産者
への注意で終わり、回収まではしていない。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 お察しのとおり、実際にこういう事件が起こっています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

農薬:白菜から基準超える成分−−JAあがつま /群馬

毎日新聞 10月14日(木)12時41分配信

 JAあがつまは13日、西部営農経済センターから出荷された白
菜1検体から基準を超える農薬成分を検出したと発表した。自主検
査でフルフェノクスロンと呼ばれる農薬成分が0・6ppm検出さ
れ、食品衛生法で定めた基準値(0・5ppm)を上回った。4〜
7日に1490ケース(12キロ入り1315ケース、15キロ入
り175ケース)が出荷され、自主回収に乗り出した。健康に影響
はないという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101014-00000101-mailo-l10
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 0.5ppmが基準のところ、0.6ppm検出したので回収というのは、ま
さに信じがたいですね。検出誤差を考えれば意味のないことです。

 検査員のウデがよければ、ぎりぎり0.5ppmとすることもできたの
ではないでしょうか?1桁違わなければ確実に超えているとは言い
難いと教えてもらったように思うのですが。

 こういうことで回収して、どんどん捨てるというのはよいことで
はないと思います。この件では、検査を徹底して行い、原因を特定
した上で、その原因を作った生産者に「厳重注意」をしてすませる
のが適切です。

 その上で、商品は売ればよいのです。

 ポジティブリストでこの「フルフェノクスロン」の基準値は以下
のようになっています。(単位ppm)

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

はくさい         0.5
キャベツ         0.5
芽キャベツ        0.5
ケール          一律
こまつな         10
きょうな         10
チンゲンサイ       5
カリフラワー       一律
ブロッコリー       5
その他のあぶらな科野菜  5

http://www.fcg-r.co.jp/pesticide/linkpes.cgi?p256300.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「一律」となっているのは0.01です。一律になっている野菜は、
この農薬が実際には使われていないと考えられます。

 これを見ると、使用量の多いであろう、白菜・キャベツでは基準
値を下げ、菜っ葉類で基準値を上げているようです。そして10ppm
程度なら、健康に全く問題がないことも推測できます。

 この白菜の「0.5」に対して「0.6」が問題となったわけです。し
かも検体は1個と書かれていますので、全体の平均濃度がどうであ
ったかはわかりません。

 農薬の検査は「破壊検査」です。検査に使ったものはその後食べ
られません。商品として問題となるのは、あくまで全体の平均値で
す。

 それを1検体で超えていたから回収とは…。せめて1検体で基準
値をオーバーしたら、もっとたくさん検査して回収が必要かどうか
考えたりしないのでしょうか?

 あるいはそのような努力をしているのにも関わらず、記者には内
容が伝わらなかっただけなのでしょうか?小島記者には悪いですが、
毎日新聞掲載の記事なので、もう一つ信用できないところです。

 今回は「回収」の件を取り上げましたが、今後他の問題も取り上
げていきたいと思います。最後に印象的なエピソードを引用してお
きます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 最後にエピソード。2010年春、昭和大学病院に来た函館中学3年
の4人が修学旅行の学習で集中治療室などを見学した。心臓外科手
術(写真)を見たあと、人工呼吸器をつけた患者がベッドで静かに
横たわっている病室を訪れた。

 医師が「ここには収容限度いっぱいの14人の患者がいます」とい
うと、中学生が質問した。

 「15人以上の患者が来たら、どうするのですか」。

 医師は「それはよい質問ですね。15人目が来たら、症状の重さを
見て、優先度の低い患者を一般病棟に回します」。中学生は納得し
た。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 無制限の安全追求や環境保護は、意味がないどころか道徳的にも
悪である、と私がいつも言っていることです。

 われわれは有限の資源を使って生きているので、可能なのはその
資源の配分について、最適の優先順位をつけることだけなのです。

 この本でも指摘されているマスコミの問題は、マスコミが社会の
有限な情報資源を独占していながら、その自覚を持っていないとい
うところから発生していると考えています。

 でも、それをどう解決するかというのは本当に難しいです。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 18日から29日までの日程で中国は大連に来ています。私は黙って
いると中国人に見えるので、結構溶け込んで暮らしています。

 中国人の生活は来るたびに豊かになっているように思います。人
々が豊かになるのは基本的によいことなので、素直に喜びたいです
ね。

 土曜日は「京劇」を見てきました。なかなか本格的なもので、楽
しめました。先日、京都で歌舞伎を見ましたが、舞台の規模が違い
ます。歌舞伎は大がかりな興行なのに、京劇は小さな空間で演じる
もので、私的な空間で発展してきたもののようです。

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--発行--渡辺--宏------- URL http://food.kenji.ne.jp/
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