安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>532号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------532号--2010.01.17------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「食品による窒息事故」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 こんなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 さっそくですが、ビル・トッテン氏の主張する

「遺伝子組換え作物は危険」
http://www.ashisuto.co.jp/corporate/totten/column/1190489_629.html

 これは ビル・トッテン氏に共感する事の少なくない私にとって
少々ですがショッキングです。
 
 渡辺様の御意見を伺えたらありがたいと存じます。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 紹介されたサイトの記事を少し引用してみます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 5月19日、アメリカ環境医学会(AAEM)は、遺伝子組み換えされ
た食品は健康に悪影響を及ぼすので、即座に出荷を停止することを
求めるポジション・ペーパーを発表した。
(ビル・トッテン)

遺伝子組み換え食品

 この医師学会は、遺伝子組み換え作物の使用を禁止するよう勧告
したほか、

1. 長期的な安全試験を実施すること
2. 遺伝子組み換え食品のラベル表示を実施すること
3. 医師に対しては患者や医療業界に遺伝子組み換え食品を避け
るように教育すること
4. 遺伝子組み換え食品の人体への影響を調査研究するために、
第三者機関で科学的研究データを蓄積するべきだ

 という方針も示した。なぜなら、遺伝子組み換え作物を使って多
数の動物実験を行った結果、不妊症、免疫不全、老化促進、肝臓、
腎臓、脾臓、胃腸器官におけるさまざま分泌不全等々、その毒性が
認められたからである。

 しかしこのAAEMの発表を、日米の主流メディアは完全に黙殺した。
一般国民がこの危険性を知り、政府に規制を求めれば、それは遺伝
子組み換えを推進するバイオテクノロジーの巨大企業に大きな打撃
となるからであろう。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「遺伝子組み換えされた食品は健康に悪影響を及ぼす」証拠を提
示できるのなら、誰も無視したりしません。証拠も出せないのにい
くら悪口を言っても無視されるだけです。

 「遺伝子組み換え作物を使って多数の動物実験を行った結果、不
妊症、免疫不全、老化促進、肝臓、腎臓、脾臓、胃腸器官における
さまざま分泌不全等々、その毒性が認められたからである。」とい
う根拠を示せばすむのに、実験データの提示もできないのでしょう。

 とても相手にしてもらえない馬鹿なことを言っておいて、誰も相
手にしてくれないと、陰謀だ!と言うのです。

 ビル・トッテン氏という人がどんな人かは知りませんが、こうい
う低級な陰謀論を言っている点で、やはりまともな人とは思えませ
ん。いったいこの人の何に共感しているのでしょうか?ちょっと興
味があります。

 「アメリカ環境医学会」というのはいわゆる一つの「トンデモ団
体」のようですね。

 日本人でも、これを真に受けている人はいます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ビル・トッテンさんのコラム「アワー・ワールド」2009年08月07
日「No.886 遺伝子組み換え食品」をご覧下さい。

 この5月にアメリカ環境医学会が遺伝子組み換え食品の即時出荷
停止を求めるポジション・ペーパーを発表したことを伝えています。

 遺伝子組み換え作物を使って多数の動物実験を行った結果、不妊
症、免疫不全、老化促進、肝臓、腎臓、脾臓、胃腸器官におけるさ
まざま分泌不全等々、その毒性が認められたからであるとしていま
す。

http://www.yasudasetsuko.com/gmo/column/090816.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 自分の政治的主張に都合がよければ、何でもよいということだと
思います。

 もう一度書きますが、こういう「事実」があるのなら、出るとこ
ろに出て主張すればよいだけです。世界はそれを認めるでしょう。

 そうでないということは、そういう「事実」がそもそも存在しな
いからです。これは科学ではなくて妄想ですね。

 妄想といえば、こんな記事も見つけました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 遺伝子組み換え食品に関しては、既に、組み換えられた食品の遺
伝子が人間の腸内細菌に転移するケースが報告されている。

 害虫に抵抗出来るように、小麦自体が殺虫剤成分=毒物を分泌す
るように設計された遺伝子組み換え小麦を食べると、人間の腸内細
菌が人間の生きている間、継続的に腸内で猛毒の殺虫剤成分を生産
し続け、人間を病気、死に至らせる可能性がある。

 この遺伝子転移が腸内細菌全てに対して連鎖して起これば、必ず
人間は死ぬ。

 単位面積あたり大量の実を結ぶトマトの品種と甘いトマトの遺伝
子を組み合わせ、甘いトマトが大量に生産出来る遺伝子組み換えト
マトを作ると、甘いトマトの甘さを出す遺伝子と同時に、赤い色の
遺伝子が転移する事があり、このトマトを食べた人間の腸内細菌は
糖質を自己生産し、人間に糖分の過剰摂取を起こし、さらに赤色遺
伝子が人間の遺伝子に転移すれば、トマト色の肌の人間が生まれる
可能性がある。

http://alternativereport1.seesaa.net/article/56417926.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 何ともすごいですね。もはや言うこともありません。

 「トマト色の肌の人間」に至ってはSFマンガでもそこまではや
らない世界です。こういう話に差別意識が紛れ込むなどということ
には無自覚なのです。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@
kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「食品による窒息事故」
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 しばらく前に話題になった、こんにゃくゼリーによる窒息事故に
関連して、食品安全委員会からリスク評価が出たというニュースが
ありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

<食品安全委>こんにゃくゼリー「事故頻度はあめと同程度」

1月13日19時29分配信 毎日新聞

 のどに詰まらせる事故の多い食品の安全性を審議している国の食
品安全委員会の作業班は13日、こんにゃくゼリーについて「一口
あたりの窒息事故頻度は、あめ類と同程度と推測する」との見解を
まとめた。作業班は今後、事故を減らすための提言をまとめる。

 作業班は、国内外の窒息事故の統計情報や、個々の食品の物理的
特徴などを分析。食品ごとに一口あたりの相対的な窒息事故頻度を
はじき出した。その結果、餅が最も事故の頻度が高く、あめ類、パ
ン、肉類、魚介類、果実類、米飯類と続いた。

 食品安全委員会によると、こんにゃくゼリーが原因の死亡事故は
95年から08年7月まで22件報告されている。作業班は「リス
クを科学的に評価することは困難」としながらも、事故件数などを
踏まえ、危険性はあめ類と同程度と推測できると結論付けた。

 また、作業班は、15〜64歳の窒息事故が極めて少ないことに
注目。事故を起こすかどうかの鍵として、摂食機能が発達途中の小
児や、かむ力が低下した高齢者など、「事故の大きな要因は年齢に
ある」と指摘した。事故防止には、食べる際に一口の量を減らすこ
とが重要としている。【江口一】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100113-00000086-mai-soci
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 まあそんなものだろうな、と納得していたのですが、同じ発表が
全く違う内容のニュースになっていました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

こんにゃく入りゼリー「餅に次ぐ窒息事故頻度」

1月13日20時36分配信 読売新聞

 子供の窒息事故が相次いだこんにゃく入りゼリーの危険性につい
て、科学的データをもとに検討していた内閣府・食品安全委員会の
作業部会は13日、「(こんにゃく入りゼリーは)様々な食品の中
でも餅に次いで窒息事故の頻度が高い」とする評価報告書を公表し
た。

 作業部会には、小児科医や口腔学の専門家らが参加。こんにゃく
入りゼリーを1億人が一口分ずつ食べた場合、死亡事故が発生する
頻度(人数)を計算し、その結果、0・16〜0・33人で、餅
(6・8〜7・6人)に比べると低いが、肉など他の食べ物よりも
2倍以上高い数値であることがわかった。

 また、こんにゃく入りゼリーを物理的にも検証し、「一般のゼリ
ーに比べて倍以上の固さがあるうえ、冷やして食べると固さが増し
て口の中でかみ切りにくくなり、のどに詰まりやすくなる」とも指
摘した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100113-00001198-yom-soci
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 こちらは数値も入っていますが、「飴類と同程度」ではなく、
「餅に継ぐ高い数値」と書かれています。記事の印象が大きく違い
ます。そこで調べてみることにしました。

 食品安全委員会のサイトに発表の資料がありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 摂食機会の程度について考慮することなく、窒息事故症例数の多
寡のみをもって、窒息事故が発生しやすい食品かどうかの判断を下
すことは困難である。そこで、窒息事故の原因となった主な食品
(群)について、食品(群)別の摂取量及び一口量を加味した、一
口あたり窒息事故頻度を算出し、相対的な比較を行った。その結果、
餅が最も高く、次いでミニカップゼリー、飴類、パン、肉類、魚介
類、果実類、米飯類の順であった。

http://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/chi_wg-dai6/chi_wg6-siryou1-1.pdf
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 例によって、印刷物の画像をPDFファイルにするというお粗末
な掲載方法です。仕方ないので、私がテキスト化しています。

 ここでは順序としては読売新聞の方が正しくて、数値としては毎
日新聞の言うように「飴類とミニカップゼリーは同程度」なんだろ
うな、と思ってしまいます。

 ところが、数値を見ると、どうもそうでもないのです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

食品(群)  一口あたり窒息事故頻度(×10*-8)

餅         6.8〜7.6
ミニカップゼリー  2.8〜5.9
飴類        1.0〜2.7
こんにゃく入り
ミニカップゼリー  0.16〜0.33
パン        0.11〜0.25
肉類        0.074〜0.15
魚介類       0.055〜0.11
果実類       0.053〜0.11
米飯類       0.046〜0.093

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ミニカップゼリーが2回、出てきます。上の方は、救急救命症例
というデータの、原因食品別数値で、ミニカップゼリーが原因とな
っている値で全窒息事故症例数を按分した値が使われています。

 下の方はこんにゃく入りミニカップゼリーが原因と判明している
症例だけを対象としたものです。

 読売新聞に出ている数値はこんにゃく入りの方のもので、この数
値を採用すれば、「餅に次ぐ高い数値」ではなく、「餅、飴類より
かなり少ない」にならないとおかしいです。

 読売新聞の方は誤報に近いと断定ですね。科学記事に弱いという
定評のある毎日新聞の方が正確に伝えているというのには驚きまし
た。

 毎日は普通に発表をそのまま記事にしたということです。読売の
方はまだミニカップゼリー悪者説に未練があるようです。

 ところで、この発表を見て、何だかおかしいなと思うことがあり
ます。

 比較している数値が、「一口あたり窒息事故頻度」なのです。

 事故の発生量だけを比べても、どの食品が危険かはわかりません。
当然ながら食べる量の多いものが事故の数も多くなるからです。

 だから、一定量あたりの事故頻度を比べるのが普通なのでしょう
が、一定量ではなく、「一口量」あたりで比べているのです。

 一口あたりの量を推定して、それを基準にするというアクロバテ
ィックなことをどうして思いついたのか、理解に苦しみます。

 「一回噛むごとのリスク」ということらしいですが、一回にどれ
だけ口に入れようが、勝手だと思うのです。窒息事故はたぶん、飲
み込める量以上に口に入れたときに起こりますので、そもそも意味
がないように思うのですが。

 発表でも「事故防止には、食べる際に一口の量を減らすことが重
要」と言っているのに…。

 推定された「一口量」は以下のとおりです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

食品(群)     一口量(g)

餅         9〜10
ミニカップゼリー  14〜29
飴類        3〜8
こんにゃく入り
ミニカップゼリー  14〜29
パン        4〜9
肉類        8〜16
魚介類       8〜16
果実類       8〜16
米飯類       11〜22

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 平均摂取量の方も出ています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

食品(群)     平均一日摂取量(g)

餅         3.10
ミニカップゼリー  0.38
飴類        0.45
こんにゃく入り
ミニカップゼリー  0.33
パン        39.90
肉類        77.93
魚介類       94.15
果実類       105.69
米飯類       355.54

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 問題の事故件数は以下のとおりです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

食品(群)     事故件数

餅         1075.3
ミニカップゼリー  35.1
飴類        70.2
こんにゃく入り
ミニカップゼリー  1.7
パン        509.1
肉類        329.2
魚介類       294.1
果実類       320.4
米飯類       684.7

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 件数を摂取量で割れば一定量あたりの件数が出ます。計算してみ
ましたが、以下のようになりました。

食品(群)     事故件数÷平均一日摂取量

餅         346.87
ミニカップゼリー  92.37
飴類        156.00
こんにゃく入り
ミニカップゼリー  5.15
パン        12.76
肉類        4.22
魚介類       3.12
果実類       3.03
米飯類       1.93

 まあそれほど違わないのですが、発表と比べて餅の数値が他との
比較で大きくなります。餅ばかりを悪者にするのを避けたのかな?
と勘繰るところです。

 こんにゃく入りミニカップゼリーは症例そのものが少ないので、
そもそもこんな発表のターゲットになるような存在ではない、とい
うのが私の感想です。

 それから、「小児科医や口腔学の専門家」がこの作業を行ったと
いうのもどうかしています。こういう作業は統計の方の専門家の出
番なのではないでしょうか?厳密に言うと、リスク評価の専門家と
いわねばなりませんが。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 前回紹介した中西先生の本『食のリスク学』を先生から贈呈して
いただきました。サイン入りです。発売日前にいただいたので、ま
た自慢のタネが増えました。

 さっそく読んでみましたが、感想などはまたの機会に書きます。

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