安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>470号


-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------470号--2008.11.09------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「井戸水の記事」「トルエン」

-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
------------------------------------------------------------
ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
------------------------------------------------------------
---〔話題〕-------------------------------------------------

 今回は紹介するメールがなかったので、新聞記事から。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 伊藤ハム東京工場(千葉県柏市)の井戸水から基準値を超えるシ
アン化合物が検出された問題で、かつて同工場の約300メートル
東に旧日本軍の「毒ガス室」と呼ばれた施設が存在したことが28
日、分かった。環境省が全国の旧日本軍施設の管理状態を調べる中
で、平成18年に明らかになった。施設跡から漏れたシアン化合物
が、井戸水から検出された可能性があり、柏市保健所などが関係を
調べる。

 環境省によると、旧日本軍が開発した毒ガス弾の一つに、青酸ガ
ス(シアン化水素)を瓶詰めしたものがあるという。同省は平成1
5年に茨城県神栖町(現神栖市)で地中に旧日本軍の毒ガス成分が
染み出し、近隣の井戸水を飲んだ周辺住民に健康被害が出た問題を
受け、各地で調査していた。

 同省の資料や当時の部隊関係者によると、工場東側の一帯は終戦
まで軍用地で、兵舎や弾薬庫などがあった。駐留部隊の少尉だった
男性が作成した見取図にも「毒ガス室」の存在が記載され、部隊で
勤務した男性(83)は取材に、「『ガス講堂』と呼ばれ、ごく一
部の兵が攻撃や防御の教育を受けるための施設があった」と証言し
た。

 シアン化合物はメッキ工場の工程で使用されるケースもあるが、
伊藤ハムや柏市保健所は、現在まで周辺にシアン化合物を用いた工
場は確認していない。同社は「工場は昭和43年にできたが、周辺
の『毒ガス室』は初耳」(広報・IR部)としている。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081029/crm0810290106001-n1.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 伊藤ハムの問題についての記事ですが、どうも困ったトンデモ記
事です。

 いつも言うように、ある程度以上の注目を集めているニュースに
関連して、こういうトンデモな報道が混じってきます。

 旧軍の施設があったことは本当なのでしょうが、今回の事件と関
係があるとは思えません。何より問題なのは、神栖町の事件につい
て、完全な間違いを書いていることです。

 この事件については、以下のブログで要領よくまとめてくれてい
るので、紹介しておきます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 神栖町の周辺の井戸水を利用している人たちにヒ素中毒被害が発
生して、原因が不明でした。

 それで、旧軍の毒ガスだということなって国が大々的に掘り返し
たのですが証拠がない。

 それが、2005年1月に砂利の採取穴に投棄されたコンクリー
トの固まりが汚染源であり、1993年製造の空き缶がコンクリー
トの中から出てきたから、投棄がそれ以後だと確認されてしまった。

 これの何が問題か?というとお役所仕事のすごいところを見せて
いるところで、たまたま裁判を応援している中西準子先生が折に触
れて報告されています。

1. 雑感245-2004.2.5「神栖町井戸水ヒ素汚染−汚染源ほぼ確定か?
―もしこれが正しいなら、茨城県の責任は大きい−」
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak241_245.html#zakkan245

2. 雑感249-2004.3.2「環境省が、神栖町の井戸水砒素汚染、汚染
源について発表―あたふたと開かれた住民説明会―」
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak246_250.html#zakkan249

3. 雑感291-2005.1.31「有機ヒ素化合物、不法投棄か−神栖町 井
戸水ヒ素汚染」
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak291_295.html#zakkan291

4. 雑感299-2005.4.12「環境省頑張れ! 神栖井戸水ヒ素汚染」
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak296_300.html#zakkan299

5. 雑感340-2006.3.28「まだ解決していないのか?−県と国のどち
らが責任?神栖、井戸水ヒ素汚染−」
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak336_340.html#zakkan340

 当初は旧軍の毒ガス以外にないから国の責任だとして、非常に広
範囲に科学的な根拠無く調べ回った。

 どういう意味なのかというと結局は予算取りの問題ではないか?
となるわけです。

 そこで大学の先生が疫学的な見解などから、広範囲の汚染ではな
くてどこかに汚染源があるのではないか?という観点から調査を始
めるのですが、一旦「毒ガスだ」と走り始めたものだから新たな見
解は無視されたわけです。

 ところがコンクリートの固まりが出てきて話がひっくり返ってし
まった。

http://youzo.cocolog-nifty.com/data/2006/10/post_3059.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 事件の原因が、地元住民が水道水を使わずに、井戸水を飲んでい
たことから始まっています。水道代を払わずにいて、事故が起こっ
てから行政に賠償を請求するなんて、ひどい話です。

 行政も責任逃れで、旧軍のせいにして、国に賠償金を払わせよう
としたのです。

 ところが真面目な科学者が調査したとたん、単なる不法投棄事件
と判明してしまいました。これはもう議論の余地がない事実です。

 紹介した記事を書いた産経新聞の記者は、事件の発生を報道した
記事を読んだ記憶があっても、事件の最終的な顛末を知らなかった
のでしょう。

 まことに馬鹿な記者ですが、その記事が紙面に掲載され、ネット
でも公開されてしまうというのは実に情けない話です。私が読んで
いる関係で、いつも毎日新聞の悪口を言っていますが、産経もひど
いものですね。

 ということで、もう一度書いておきます。

■神栖町の井戸水ヒ素事件は、近年不法投棄されたものが原因で、
 軍や毒ガスとは全く関係はありません。

 もちろん、伊藤ハムの事件にも関係ないでしょう。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 千葉県柏市は、伊藤ハム東京工場(同市)内と周辺の計7本の井
戸から、シアン化物イオンと塩化シアンは検出されなかったと発表
した。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081029/crm0810291148009-n1.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 つまり、汚染は一過性のものであったということです。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

------------------------------------------------------------

今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「トルエン」
------------------------------------------------------------

 先日、こんなニュースがありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 中国国家品質監督検査検疫総局は30日、ウェブサイトを通じ、
日本から輸入したしょうゆなどからトルエンと酢酸エチルが検出さ
れた、と発表した。日本の3社が生産したもので、社名は明らかで
ないが、店頭からの撤去を始めた。広東省の検疫当局の調べで、ト
ルエンが最大0.0053ppm、酢酸エチルが0.537ppm
検出されたという。

http://www.asahi.com/national/update/1031/TKY200810300503.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 中国で日本製品が違反とされるのはよくあることです。腐敗して
いることで有名な中国政府も、ときどき思い出したように真面目に
仕事をするのかと思っていたら、どうも裏がありそうです。

 これは実は次のような事件に対する意趣返しなんですね。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 マルワ食品(静岡県磐田市)が中国から輸入した「つぶあん」を
食べた人が目まいなどを訴えた問題で、静岡県は17日、同社が自
主回収した製品からも、有害物質のトルエンと酢酸エチルが検出さ
れたと発表した。

 県によると、いずれも微量で、直ちに健康被害が出る恐れはない
という。また輸入後の製品の流通、保管状況も調査した結果、「国
内での混入の可能性は極めて低い」としている。

 県が検査した5検体から、最高でトルエンが0・044PPM、
酢酸エチルが0・94PPM検出された。

 同社はこれまでに中国河北省の食品会社から粒あんなどを約21
0トン輸入し、愛知県内の業者などに出荷。被害発覚後に13トン
を回収したという。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081017/biz0810171330007-n1.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 中国で検出された方が一桁低いのはほほえましいですが、要する
に日本側が先に言いがかりをつけたのです。

 ちょうど「冷凍インゲン」の事件があった直後なので、この餡の
事件?も大きく報道されました。その結果、中国産の餡からトルエ
ンが検出されたというのです。

 厚生労働省のサイトでも、この件は掲載されています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

つぶあんからのトルエン、酢酸エチルの検出について

 本日、別紙(PDF:34KB)のとおり、名古屋市において公表されたの
でお知らせします。

 なお、トルエンと酢酸エチルが検出された製品の同一ロット品に
ついては、輸入者が自主回収を行っています。

 本事案の発生を踏まえ、厚生労働省としては次の対応をとったと
ころです。

1 当該製造者からのあんについて、本日以降、輸入手続を保留

2 都道府県等に対し、同様の事案があった場合には直ちに報告す
るよう要請

3 当該品は日本国内において加工されておらず、未開封で流通し
ていたことから、中国政府に対し、製造段階における異物混入の有
無等について確認を要請

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1007-4.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 厚生労働省は中国に抗議しているのですね。しかしppbレベルの
トルエンで、安全性に問題があると考えるのは全くどうかしていま
す。

 トルエンというと、シンナーと同類で、中毒の危険がある有毒物
質というのが普通のイメージです。中学生や高校生がトルエンを吸
ってラリったりする事件はよくありました。

 確かに有毒には違いないのですが、食品で問題になるようなもの
ではないのです。

トルエンMSDS
http://www.jpca.or.jp/61msds/j7cb07.htm

 ここにはトルエンを扱う際の注意などが書かれています。そのほ
とんどが空気中のトルエンを吸引したときのものです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ヒトでは 100 ppm で一過性の刺激、200 ppm で上気道の刺激、
倦怠感、知覚異常、共同運動障害、400 ppm で目の刺激、流涙、興
奮、600 ppm で倦怠感、興奮、軽度の吐気、800 ppm で鼻汁、金属
臭、眠気、頭痛、倦怠感、吐気、平衡失調が認められる。さらに高
濃度では知覚異常、視力障害、めまい、吐気、意識消失、虚脱が認
められることがある。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 案外高い濃度で問題となっています。トルエン遊びをするには、
かなりの濃度にしないといけません。そしてトルエンは揮発性の物
質で、臭いとして感知されますので、故意に吸引するときは別とし
て、そんな濃度になるまで気がつかないはずはありません。

 食べたときの毒性については、こんなことが書いてあります。 

経口  LD50  ラット    636 mg/kg

 そんなに高い毒性ではありません。被害が出るほどの濃度になれ
ば、強烈な臭いでとても食べられないはずです。

 こういう揮発性の物質は、被害が出る濃度になればとても食べる
ことはできませんから、食品の安全性を考える上では、普通は無視
されています。

 だから発ガン性が問題になっているベンゼンでも、問題になるの
は大気中の濃度だけなんですね。

 トルエンはベンゼン核にメタン基メチル基が 三つ一つ(読者からの指摘により訂正)
ついたものです。ベンゼ
ンにしても、トルエンにしても、食品中に極微量なら存在しても不
思議ではない、簡単な物質です。

 以上をまとめると、以下のようになると思います。

(1)餡で気分が悪くなったという件と、検出されたトルエンとは
関係ありません。こんな低濃度で問題がおこるはずがない。

(2)それにも係わらず、日本政府がこれを問題として中国側に通
報した。

(3)中国側は食品問題では弱い立場なので、この件については聞
き置くしかなかった。

(4)しかし、日本で餡からトルエンを検出できたように、醤油の
ように複雑な化学組成をもつ物質からトルエンを検出することはで
きるので、中国側が意趣返しとして発表し、市場から撤去する嫌が
らせを実行した。


 なんか子どものケンカのような話ですが、この件については日本
側が悪いです。中国も大人げないとは言えますが、これくらいの反
撃はするのが普通でしょう。

 嫌がらせの対象になった日本の醤油メーカーはお気の毒なことで
す。でも、先に中国のメーカーがいじめられているので、お互いさ
まというところでしょうか。厚生労働省に謝罪と賠償を求めたいと
ころですね。

 ところで、しょうゆ情報センターというところで、この件に関し
て、こんなことを言っています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 日本のしょうゆからトルエンと酢酸エチルが検出されたとの記事
が公表されましたが、以下のようにいずれも微量であり、人の健康
に影響を及ぼすとは考えられません。

ご理解賜りますようお願い申し上げます。

1)記事内容概要

「中国国家品質監督検査検疫総局は、広東省の輸出入検査検疫機関
によると、トルエンが最大で0.0053ppm、酢酸エチルが最大で0.537
ppm 検出されたと公表」

2)上記検出レベルに対する考察

トルエン

 トルエンは麦類の天然成分として、またブランデー中に含有する
との報告はあるが、そこには定量的な記載はない。
J.Agric..Food.Chem.,19,182(1971)

○ 日本の水道水の水質管理目標値 0.2mg/L(ppm)以下
○ WHO 水質基準ガイドライン値 0.7mg/L(ppm)以下

上記の0.0053ppmは、水道水に設定された値に比較し十分に低いレ
ベルである。

酢酸エチル

 醸造物中には酢酸エチルが香気成分として含まれる。酵母によっ
て生成されたエチルアルコールと原料由来あるいは酢酸菌や乳酸菌
などによって生成された酢酸から酢酸エチルが生成される。

醸造物中の酢酸エチルの濃度(ppm) 文献名:省略

しょうゆ(15)、清酒(12〜45)、米焼酎(25)、高粱酒(中国酒)
(1280)、茅台酒(中国酒)(1390)、ビール(10〜20)、赤ワイ
ン(95〜174)、白ワイン(46〜98)

 上記の0.537ppmは、一般に醸造物中に含まれる量に比較し低いレ
ベルである。

以上

http://www.soysauce.or.jp/news/files/20081031-01.pdf
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 これは全くそのとおりで、中国側の発表をまともに受け取る必要
はありません。でも、何度も言いますが、日本の厚生労働省にもこ
のことを教えてあげた方がよいのではないかと思います。

 水道水の基準値より低い濃度で、食品中のトルエンを問題にすれ
ば、いかに温厚な中国政府といえど、怒ってしまうのは無理もあり
ません。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 今週の中西準子先生のサイトでトルエンについて書かれていて、
それが元ネタになっています。でも今回は引用にせず、自分で調べ
て書いたものです。

 「餡からトルエン」という記事について、すぐにおかしいと思わ
なかったのは反省ですね。やっぱり有害物質が出たか、というよう
に思ってしまったのは、やはり偏見というものでしょう。

------------------------------------------------------------
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
-470号----------------- e-mail why@kenji.ne.jp -------------
--発行--渡辺--宏------- URL http://food.kenji.ne.jp/
------------------------------------------------------------
「宮沢賢治の童話と詩 森羅情報サービス」
http://why.kenji.ne.jp/
------------------------------------------------------------
 購読者数4536名です。ご購読ありがとうございます。
------------------------------------------------------------
私あてのメールのあて先は、
why@kenji.ne.jp
私のホームページ(「安心!?食べ物情報」)は
http://food.kenji.ne.jp/ です。
バックナンバーもすべて、このページで読めます。
【まぐまぐ】
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
マガジンIDは21668です。
このメールマガジンの登録や解除は
http://food.kenji.ne.jp/food2.html へ。
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/