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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------468号--2008.10.26------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「ニュースから」「トリハロメタン」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 畝山さんの「食品安全情報blog」で、「ミニカップゼリー」につ
いて、こんな記事がありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

リスクコミュニケーションの失敗

 昨日いつもいきつけのスーパーマーケットに買い物に行ったとこ
ろ、蒟蒻畑の定位置だった場所に蒟蒻畑は無く、その代わりにあっ
たのが「フルーツゼリー」という商品でした。成分は増粘多糖類。
一口サイズで警告や注意表示も無く、まさしく「欧米や韓国で禁止
されている」商品です。それを見てタイトルのように思いました。

 この会社の担当者はコンニャクが入っていなければいいと考えた
のでしょう。でもリスクが大きいのは

「ミニカップで、吸い込むようにして食べて、口の中である程度の
硬さを保持するもの」

です。

 コンニャクかどうかは本質的な問題ではなく、寒天でも同じです。
各種増粘多糖類は使い方次第でいろいろな硬さのゲル状のものを作
れます。ゼラチンで作った「ゼリー」は、冷やさないと固まりませ
んから、冷蔵品でしか存在できません。だから口の中で簡単に溶け
ると考えられて規制されていません。室温である程度の硬さを保持
していないとミニカップゼリーという商品にはなりませんから、規
制されているのは「ミニカップゼリー」です。

 マンナンライフの蒟蒻畑は、その吸い込むようにして食べるとい
うリスクを小さくするために大きく押し出すように改良し、さらに
お年寄りや子どもは食べないようにという警告表示もしたリスク削
減対策を執った商品でした。

 それを問題の本質をよく理解していないと思われる拙速な対応に
より排除した結果が、よりリスクの高い商品の販売という事態に帰
結したわけです。

 この時点では消費者の選択肢が奪われ、比較的真面目な企業が苦
境に立たされ、消費者のリスクが高くなるという最悪の結果になっ
ています。

 残念ながら今回の「コンニャクゼリー」騒動は、問題点がどこに
あって、何を注意すべきなのかが適切に伝わっていないということ
がもたらす害の一例になってしまったようです。

http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20081019
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 マスコミや官僚、大臣の拙速な批判が、本当の危険を見逃してし
まっているということです。

 どうでもよい失言や、ホテルのバーが高級かどうかなどと言って
いるヒマがあれば、結果として国民のリスクを高めた、野田大臣の
バカな対応を批判してほしいものだと思います。

 こんなニュースもありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 大手食品メーカー「伊藤ハム」(兵庫県西宮市)は25日、同社
東京工場(千葉県柏市)でくみ上げ、製品加工過程に使用した地下
水から基準(1リットル当たり0.01ミリグラム以下)の倍の0.
02〜0.03ミリグラムのシアン化合物を検出したと発表した。
同社は「あらびきグルメウインナー」など、沖縄を除く全国46都
道府県に出荷した13商品計約267万袋のうち、賞味期限内の1
94万袋の自主回収を始めた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081025-00000018-maip-soci
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 食品を「地下水」で作るのは危険が大きいので、水道水を使うべ
きなのです。

 ところが「地下水」を「天然水」と言い換えると、何かよいもの
のように思ってしまうのですよね。某メーカーが「天然水でつくっ
た」などと言っているのがとても気になります。

 つぎはこんなものです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 「カップヌードル」など日清食品製の即席カップめんを食べた人が
相次いで異臭などを訴えた問題で、同社は24日会見し、4月以降、
同様の苦情が多数寄せられ、うち21件から防虫剤成分のパラジクロ
ロベンゼンなどが検出されていたことを明らかにした。同社は「防虫
剤のそばに保管し、昇華した成分が容器を通過してうつった可能性が
ある」との見解を示した。

 この問題では、カップヌードルを食べた神奈川県藤沢市の女性(6
7)が吐き気を訴えたほか、大阪市西淀川区の男性(63)ら家族3
人が薬品臭を訴え、いずれの商品からもパラジクロロベンゼンが検出
された。また、同社が日本生活協同組合連合会を通じて神奈川県横須
賀市などで販売した「CO・OPカップラーメン」など5品目からも
パラジクロロベンゼンやナフタレンが検出されており、同連合会には
今年3〜9月に29件の苦情が寄せられていたが、いずれも公表され
ていなかった。

 日清食品によると、同社に寄せられた苦情のうち、保健所が検査中
の藤沢市の商品を除き21件で防虫剤成分を検出した。うち2件の濃
度は18〜92ppmで、大阪市のケースを含む残り19件はごく微
量で数値が出なかった。同社は健康被害を訴えている人がいないこと
を強調し、「健康に影響はないレベルの濃度」としている。

 一方、成分混入のメカニズムについて同社が独自に実験したところ、
未開封の即席めんを防虫剤のそばに一定時間置くと、カップや袋を通
過して成分がうつったことが分かった。

 においについての苦情は、これまで年間数件ほどだったが、4月に
カップヌードルを含む主力商品の容器を発泡スチロール製から紙とポ
リエチレンの3層構造の「ECOカップ」に変えてから増えたという。
21件中5件がこの容器を使った即席めんで、同社は容器の改良を進
める方針。

 防虫剤成分が検出された商品はロットも生産工場もまちまちで、藤
沢市の女性のケースでは製造した工場の監視カメラを確認しても異常
はなく、混入はないとみている。

 成分がうつったとの説明について専門家は「パラジクロロベンゼン
は昇華しやすく、容器をつくる化学物質と構造が似ているなどの理由
で、ありうる現象。ただし、人がにおいを感じたり、食べておかしい
と思うほど高濃度になるかどうかは検証が必要」と指摘している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081024-00000025-maip-soci
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 臭いがついているというクレームは非常によくあるもので、原因
は様々です。食品を扱っている人からすると、いちいちニュースに
するほどのものではないと考えると思います。

 今は食品ネタがニュースになる流行ですから、業界も大変です。

 ただ、この件は容器の問題がからんでいるので、ちょっと考えさ
せられます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 日清食品が4月からカップヌードルの容器を発泡スチロールから
紙に変更する。71年の発売開始から初めてのリニューアルで、二
酸化炭素排出量を従来より22%削減できるという。紙はパルプ1
00%で、表面を高発泡ポリエチレンで覆って気密性や断熱性を持
たせた。対象はカレー、シーフード味などを含めた9品。税抜き希
望小売価格の170円は維持する。

http://www.asahi.com/business/update/0321/TKY200803210337.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 この直後からクレームが増えているというのは、やはり新開発の
容器が失敗だったということでしょう。うっかり「エコ」などとい
っているとこういう失敗もあるわけです。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回は休みます。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「トリハロメタン」
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 水道水について、よく「トリハロメタン」という言葉を聞きます。
これは物質名ではなく、メタンにハロゲン元素(塩素、臭素)が3
つ化合したものの総称です。

 その中で最も毒性が強いのは塩素が3つの「クロロホルム」とさ
れています。そのクロロホルムについて、中西準子先生のサイトに
こんな記事がありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

■水道水中の発がん性物質

 水道水中に発がん物質のクロロホルムが含まれていることが1970
年代のはじめに明らかにされて以来、発がん性のある塩素消毒副生
成物の問題は、世界的にも大きな問題であり続けた。

 その当時から40年近くが経過し、クロロホルムの発がん性に関し
て膨大な研究が行われ、発がんメカニズムについても、相当大きな
変更があった。今回は、このことをまとめておきたい。水道水中の
発がん性物質について、奇妙な商品との関係でデマが多いので、代
表的な物質であるクロロホルムについて、最近の研究結果について
整理しておくことに意味があると考えた。私が、トリハロメタンを
取りあげ始めた時とは、科学的な知見が相当違ってきている。

■WHOの水道水質ガイドライン値の変遷

表1.にWHOの水道水中に含まれるクロロホルムに関するガイドラ
イン値についての変遷を示した。

 水質ガイドライン
  (μg/リットル)  遺伝子損傷性  がん以外の有害性

1984年 30     あり:
        10万分の1の発ガンリスク

1993年 200     あり:
        10万分の1の発ガンリスク

2004年 200              軽度の肝障害


2006年 300              軽度の肝障害
                    (摂取量の変化)

 つまり、1984年に30μg/Lとしていたのを、93年には200μg/Lに
し、さらに04年には200μg/Lという数値は同じだが発がん性のメ
カニズムについて完全に修正し、06年には300μg/Lに変更してい
るのである。

 1993年までは、遺伝子損傷性のある発がんメカニズムを仮定し、
「閾値のない」用量反応関係(原点を通る直線関係)を仮定してい
たのだが、04年には、「閾値のある」用量反応関係として全く異な
る発がんメカニズムを認め、ガイドライン値を提案したのである。

 そのメカニズムについては、詳細リスク評価書15巻「クロロホル
ム」(丸善)に詳しく書かれているが、まとめれば7頁に書かれて
いるようになる。

 つまり、“クロロホルムによる発がん性の評価では,クロロホル
ムの遺伝毒性は陰性と判断し,持続的な細胞障害性とそれに続く細
胞増殖の増加のあることが多くの研究で明らかになっていることか
ら,閾値ありの評価が適切であると考えた.また,クロロホルムの
発がんメカニズムを考慮すると,非発がん影響に関して得られた
NOAELは,同時に発がん影響に対しても保護的であると考えられる
ので,発がん影響に関するNOAELとして非発がん影響に関するNOAEL
をそのまま用いることとした.”

 06年には、同じメカニズムでありながら、ガイドライン値をさら
に300μg/Lと緩和しているのは、水道水以外からのクロロホルムの
摂取量が少ないということが分かったからとしている。
 
■クロロホルムの発がんメカニズムが精力的に研究された理由

 クロロホルムの発がんのメカニズムが世界的な規模で精力的に研
究され、WHOが矢継ぎ早にガイドライン値を緩和していったのは、
ペルーの事件があり、ペルーと同様のことが起こりかねない状況だ
ったからである。ペルーの事件は、1991年に起きた。

 ペルーでは、水道水が原因でコレラ蔓延、約80万人が罹患、7000
人近くが死亡した。その原因が、水道水の塩素消毒をやめたことだ
った。やめた理由は、米国環境保護局が、塩素処理により生成する
発がん性物質の規制をすることを知ったペルー政府が、発がん性物
質によるリスクをゼロにしようと考えたことだった。

 発がんリスクは、何よりも大きなリスクと間違ってしまったよう
だ。非常に馬鹿げたことだったが、発がんリスクというものを、異
常に大きなリスクと間違って考え、塩素消毒の強度を弱くしようと
考える国が多かったがために、WHOは矢継ぎ早に改訂していったの
である。ガイドライン値の説明には、いかなる理由があっても、発
がんリスクを減らす目的で塩素消毒を弱めてはいけないということ
が書かれてはいたが、そういう恐れがあったのである。

 ただし、WHOの場合には、規制はクロロホルム単独に行うのでは
なく、トリハロメタンとして行うことを前提にしていることはつけ
加えておきたい。

■日本では

 日本でも、クロロホルムの発がんメカニズムの変更は認めている
のだが、クロロホルムについての水道水質の基準値には変更はなく、
ずっと、60μg/Lである。新しい知見に伴い、変えるという姿勢が
あってもいいように思う。

 我が国の場合に、基準値を緩和する意味がないのは分かるが、そ
うであれば、そういう説明があってもいいように思う。少なくとも、
リスクは小さいということが証明されつつあるということを、皆に
知らせた方がいいと思う。相当ひどい水商売がある現状を考えると。

http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak446_450.html#zakkan449
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 クロロホルムの毒性評価から、「発ガン性」は消えているのです
ね。

 要するに、クロロホルム(トリハロメタンでも同じ)の毒性は昔
に考えられていたほどは強くないので、積極的に水道水への塩素投
入をおこなえ、とWHOは言っているのです。

 そのためにガイドラインの数値を緩和しています。日本では昔は
WHOの基準より緩いものでしたが、現在では逆に厳しい基準にな
っています。

 実際には日本の水道水に含まれるトリハロメタンは、基準値を大
幅に下回っているので、WHOの数値が変わったからといって、日
本でも規制をゆるめる意味はなく、そのままになっています。

 ところが、今でも「水商売(水道水が危険だなどと言って高価な
浄水器などを売る詐欺的商売)」の世界では、日本の基準は緩くて
安心できないことになっています。

 比較の対象は昔のWHOの数値だったり、ドイツの特殊な法律の
数値だったりします。まあネットの世界ではウソはつき放題なんで
すが。

 中西先生はこの点を指摘して、トリハロメタンについて、新しい
知見にもとづいた情報を広めるように提案しているわけです。その
ためには思い切って基準値をWHOのガイドラインに従って変更す
るという方法もあります。

 現在のお役人の体質から考えて、とてもそんなことはできないと
思いますが、できるだけ情報を広める努力くらいはしてほしいもの
です。

■水道水のトリハロメタンに関するリスクは無視できる。

 これがWHOが出した結論です。もちろん基準値が守られている
ことが前提ですが、日本でそんな心配はありません。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 中西先生の記事にあった、「ペルーの事件」は世界的に有名な大
失敗です。世の中には善かれと思って失敗してしまうことは非常に
多いのです。だから感情的な反発ではなく、冷静な評価が必要なの
だと改めて思いました。

 マスコミの問題点を指摘する声は多いのですが、冷静にその原因
をマスコミ人自身が考察した本があります。

『誤解だらけの「危ない話」』
(小島正美 著 エネルギーフォーラム 刊)

ブログにも書きましたが、関係者はぜひ読んでほしいものだと思っ
ています。
http://www.kenji.ne.jp/blog/index.php?itemid=459

 でも、小島氏は毎日新聞の記者で、責任のある立場の人です。自
分のところが一番ひどいんじゃないか?というツッコミもあるので
すけれどね。

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