安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>443号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------443号--2008.05.04------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「オレンジ・ピーナッツ・とうもろこし粉
(Q&A)」「トランス型脂肪酸」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 前回の「ナタネ」の話で、メールをいただいた方から再度いただ
きました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 重イオンの件で投稿したものです。環境省に同様の質問をしたと
ころ、返事が来ました。読んだ感じでは、飼料用のナタネの選別は
していないようですね

 「環境美化」に精を出しているお年寄りは休耕田や川沿いに花を
咲かせようということでせっせと種をまいています。花が咲けば環
境美化、という価値観に対する是非はさておき、その面積はかなり
広く、毎年播いているそうです。

 在来種を駆逐することはない、とのことですがナタネは交雑しや
すいという話もあり、少し心配なのですが、どうなのでしょう。

 以前北海道でGMO大豆の法令遵守内での栽培に行政がらみで反対
運動が起きたことがありますが、今回のナタネの方が問題ではない
かと個人的には思います。

 ちなみに私のGMOの安全性に対するスタンスは食用<環境<種の
多様性、といった感じでしょうか。

 専門家でないので、なかなか勉強が追いつきませんが。

以下引用です___________________

 日頃より環境行政に御理解賜り、お礼申し上げます。さて、お問
い合わせいただいた遺伝子組換えナタネの件について、以下の通り
回答させていただきます。

 遺伝子組換え生物等の使用に当たっては、「遺伝子組換え生物等
の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づき、
野生動植物への影響の防止するため、事前の影響評価を行っており、
影響が生じるおそれがないとされたものについて、流通や栽培が承
認されます。

 現在、国内で流通が承認されているナタネは、食用や飼料用のも
のが栽培された場合でも在来種を駆逐するような影響が生じるおそ
れはないと判断されております。

 よろしくお願いいたします。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 国内で承認されているのは、以下のようなものですね。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 農林水産省・環境省は、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを定め
たカルタヘナ法に基づき、大手種子企業から申請のあった遺伝子組
み換えセイヨウナタネの栽培・加工・保管・運搬及び廃棄並びにこ
れらに付随する行為など開放的環境での使用を平成18年3月10
日に承認した(下表参照)。

 この遺伝子組み換えセイヨウナタネの使用等については、生物多
様性影響に関する専門の学識経験者によって、交雑性、野生動植物
への影響など多くの項目が検討された。

 とくに、最近、海外から輸入されたナタネ種子が国内で運搬され
る際にこぼれ落ち、遺伝子組み換えナタネを含むこれらナタネの一
部が、湾岸周辺などで生育していることが報告されている。このた
め、この遺伝子組み換えセイヨウナタネの使用等について検討され
る際、従来のナタネと遺伝子組み換えセイヨウナタネの生育性や交
雑性について詳細に検討された。

 学識経験者らは、これについて、従来のナタネ及び遺伝子組み換
えセイヨウナタネの特性などから、今回申請された遺伝子組み換え
セイヨウナタネが自然環境下で生育する可能性は低く、交雑による
生物多様性への影響が生ずるおそれはないとしている。

http://www.biotech-house.jp/news/news_310.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 申請者はいつも悪口を言っているモンサント社です。わざわざ申
請しているのですから、この種子はモンサント社から買う必要があ
ります。不法に入手すれば訴えられたりするわけです。

 当然、価格も他よりは高いです。そういうものをわざわざ買って
きて播いているのではないでしょう?

 「開放的環境での使用」というのは、あくまで一般の畑での栽培
を意味しています。その畑にまく種子に、モンサント社のものを選
ぶかどうかは利益が出るかどうかという、経済的な判断によります。

 ご質問のような場合では、よほど遺伝子組み換えナタネが一般的
になって、それしか手に入らないようにでもならない限り、使うこ
とはないはずです。

 よく病院で「抗生物質耐性菌」が問題になります。一般の環境で
もはびこったら大問題だと考えがちですが、実は一般の環境ではそ
ういう菌がはびこることはありません。

 抗生物質のないところでは、耐性を持たない菌に負けてしまうの
です。耐性を持つということが、その必要がない環境ではお荷物に
なります。だから、耐性菌は普通、抗生物質の圧力にさらされる環
境、つまり病院にしかいないのです。

 ナタネも同様で、遺伝子組み換えナタネが本領を発揮するのは、
畑の中でしかありません。畑の外では野生のたくましいやつに勝て
るわけがない…。

 より慎重に、という意見は正しいと思いますが、起こりそうもな
い心配をするのもつまらないものです。このあたりは微妙ですね。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.妊娠初期(3ヶ月)に、輸入オレンジを皮ごと煮たものを刻んで
ケーキにしたものを食べてしまったのですが、調理する前にオレン
ジを塩洗いしたそうなのですが、残留農薬が残っている可能性があ
ると聞き心配になってしまいました。ケーキに使ったオレンジの量
は一個です。食べたケーキは半分です。胎児の成長に影響はないで
しょうか

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A.輸入のオレンジにはカビ防止剤が使われていることが多いので、
そのように言われているのだと思います。検査をすれば検出される
ことはよくありますが、全部のオレンジから検出されるわけでも、
検出値が危険なほど多いわけでもありません。

 輸入オレンジを避ける、という判断が間違っているとは言いませ
んが、要するに「気分の問題」です。食べたからといって、被害が
出るわけではありません。

 「毒性」というのは食べた量と回数と関係する、「計測可能な」
ものです。ごくわずかでも触れただけで病気になるような、「魔法」
の類ではありません。

「カビ防止剤に毒性がある」

「オレンジに残留しているカビ防止剤で被害が出る」

 この二つを結びつけるためには、この「量」と「回数」を無視し
て論理を組み立てる必要があります。そういう論理は「魔法」の論
理であって、「科学」の論理ではないのです。

 魔法の論理を信ずるのなら、「呪い」とかの方が怖そうですね。 
だから、あまり心配せずに落ち着いて暮らしていただきたいと思い
ます。

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Q.昨年収穫したピーナッツを乾燥させて殻ごと保存していたので
すが、その中のいくつかにカビが生えていました。たぶん、乾燥が
足りず湿気たんだと思いますが、これがアフラトキシンというカビ
なのでしょうか?かびていないものは、食べても大丈夫でしょうか?
熱してもカビには効果はないようですが、手に付いたカビは洗えば
落ちるのでしょうか。

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A.アフラトキシンは猛毒として知られています。主に熱帯地方の
カビのつくる毒素で、カビそのものではありません。

 日本国内ではアフラトキシンをつくるカビはいないとされていま
す。ですので、とりあえずアフラトキシンについては大丈夫と思い
ます。

 そうは言っても、カビの生えたものは食べないのが原則です。カ
ビがたくさん出ているのなら、一見カビが生えていないように見え
るものも食べない方がよいと思います。カビは目に見えるとは限ら
ないからです。

 これはあくまで念のためというか、安全性を確保するためです。
カビの胞子なんかは空気中にたくさんいますので、体内にも普通に
入ってきます。免疫不全でもない限り、別にどうということはあり
ません。

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Q.一年一ヶ月前に賞味期限の切れた「自然食」「無添加」と記載
のあるとうもろこし粉を、クレープにして食べてしまいました。味
に特別変わったところはなく、見た限りではカビなどが生えている
様子はありません。母が賞味期限のうちに冷凍していたものだそう
です。大丈夫でしょうか?私は食べて数時間後に気持ち悪くなりま
したがすぐにおさまり、母はなんともありません。

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A.ご質問を読んで、「冷凍していた」というところでコケました。
粉ものは冷凍庫に入れておけば、かなり長期に保存できますよね。

 「無添加」「自然食」という表示はおまじないの類です。一般の
ものと比べて特に保存しにくいとかいうことはないはずです。

 結局、別に何ということもなかったのでしょう?食べてしまって
から心配してもはじまりません。

 私からのおすすめサイトは、以下のところです。とてもマネので
きないツワモノが、賞味期限の限界に挑戦しています。それと比べ
ると、ご質問の内容などはかわいいものです。

賞味期限をぶっとばせ! 保管庫(予定)
http://milky.geocities.jp/food_71/

臭覚・視覚・味覚そして第六感を総動員せよ! 今こそ見極めろ!
食えるものは食え!

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「トランス脂肪酸」
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 こんなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 日本経済新聞に「トランス脂肪酸」の記事が出ています。一読し
ても、よくわかりません。渡辺さまのお考えをお教えいただければ
幸せです。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 何度も書いたことがあるのですが、自分で書いたことを忘れてし
まうのがこのメールマガジンの特徴ですので、また書いてみます。

 まず「トランス脂肪酸」とは何か?です。

 その前に「脂肪酸」とは何か?ということについて。有機化合物
というのは、基本的に炭素が骨格となった比較的高分子の化合物で
す。

 その中でも、炭素が一つながりの鎖のような状態になり、その回
りに水素が結合しているのが基本の姿になります。これは「炭化水
素」で要するにロウ(パラフィン)です。

 この末端の炭素が水酸基(OH)に置き換わったものがアルコー
ル、カルボキシル基(COOH)に置き換わったものが脂肪酸です。
宮沢賢治が「雲はたよりないカルボン酸」とうたったカルボン酸で
す。

 脂肪酸は脂肪の主成分です。グリセリンという三価のアルコール
と3つの脂肪酸がエステル結合したものが「脂肪」またの名を「ト
リグリセリド」です。

 グリセリンは分子量の小さな化合物ですので、脂肪=脂肪酸と考
えよいくらいのものです。脂肪酸にはたくさんの種類があります。

 基本的には炭素の鎖の長さによって性質が変わります。長いもの
ほど重く、常温で固体となる牛脂のようなものはそういうものが主
成分になります。

 代表的な脂肪酸は以下のようなものです。これらは「飽和脂肪酸」
とも呼ばれます。

16:0 パルミチン酸
18:0 ステアリン酸
20:0 アラキジン酸

 ところが同じ長さの脂肪酸でも、常温で液体であるものもありま
す。これは「不飽和脂肪酸」といって、水素の数が足りない化合物
です。

 水素が足りないときは、炭素を化合する「腕」が余るので、隣の
炭素原子と「二重結合」します。二重結合の数と場所により、いろ
んな種類の脂肪酸があります。有名どころは以下のようなものです。

18:1(9)    オレイン酸
18:2(9,12)   リノール酸
18:3(9,12,15) αリノレン酸
18:3(6,9,12)  γリノレン酸

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8

 最初の数字が炭素の数、二つ目が二重結合の数、カッコ内がその
場所を示しています。

 炭素の二重結合というのは不自然な結合の仕方をしていて、両側
の炭素原子が自由に動けなくなります。このため、この部分で構造
が固定されます。

 二重結合の両側の炭素原子が、同じ方向に向いているものを「シ
ス型」、違う方向を向いているものを「トランス型」と呼びます。

\_/  シス型


\_   トランス型
  \

 一般に、不飽和脂肪酸はシス型の構造を持つものです。

 不飽和脂肪酸は単にエネルギー源となるだけでなく、生物の体を
作るのに必須の成分です。この場合、シス型のみが私たちが利用で
きるもので、トランス型の不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸と似たような
性質を持ち、不飽和脂肪酸の本来の働きを妨げるといいます。

 実際、トランス型の不飽和脂肪酸(略して「トランス型脂肪酸」)
を過剰に摂取すると、心臓病のリスクが上昇する、などということ
が知られています。

 トランス型脂肪酸は自然にも存在しますが、主に脂肪酸を加工す
るときに副作用として発生します。

 マーガリンは常温で液体の植物性油脂から作ります。マーガリン
が液体では困りますので、常温では何とか固まっていてもらわない
といけません。

 一般に、飽和脂肪酸は融点が高く、不飽和脂肪酸は低いのです。
したがって、不飽和脂肪酸を多く含む植物性油脂は常温で液体で、
飽和脂肪酸を多く含む牛脂などは常温で固体です。

 だから、植物性油脂の不飽和脂肪酸を減らし、飽和脂肪酸を増や
すと、マーガリンとして、バターの代用になります。この処理は
「水素添加」と呼ばれ、足りない水素を補って、不飽和脂肪酸を飽
和脂肪酸に変えると、マーガリンができます。

 「添加」というと、食品添加物のようなものと思われがちですが、
そうではなく、脂肪酸の構造を変える化学反応です。このとき、一
定の割合で不飽和脂肪酸がシス型からトランス型に変り、マーガリ
ンなどではトランス型脂肪酸が多くなります。

 アメリカ人は一般に脂肪のとりすぎが警告されています。心臓病
のリスクもたいへん大きいのです。脂肪の摂取を減らすのはもちろ
ん、その中でも飽和脂肪酸やトランス型脂肪酸の摂取量を積極的に
減らす必要があると考えられていて、実際に対策も講じられていま
す。

 それに対して日本では、もともと脂肪摂取量そのものが少なく、
トランス型脂肪酸の過剰摂取が問題となる人はほとんどいないとさ
れるため、特に規制などの話は出ていません。

 私もそれで問題ないと考えています。ただ、メーカーの中にはこ
の問題をとりあげて商品の差別化をはかろうとする動きもあるよう
です。

 たとえばマーガリンでは、植物性油脂でありながら飽和脂肪酸が
多く、常温で固体であるパーム油脂などを原料にすることで、水素
添加をなくし、トランス型脂肪酸が少ないというものがあります。

 こういう関係で、「トランス型脂肪酸が少ないものは飽和脂肪酸
が多い」ということが成り立ちます。飽和脂肪酸の過剰摂取もやは
り問題ですので、問題が全くなくなるわけではありません。

 逆に日本人の普通の摂取量程度なら、トランス型脂肪酸がある程
度含まれている現在の食品でも、別に問題はおこらないともいえま
す。

 だからほっておけばよさそうなものですが、私の予想では今後こ
の問題をとりあげる報道が増え、それに対応して、「トランス型脂
肪酸の少ない」商品がたくさん出てくると思います。

 これは決して悪いことではないのですが、トランス型脂肪酸が少
しでも摂取してはいけない「毒物」であるかのような言い方になる
のは間違っています。

 トランス型脂肪酸の摂取によるリスクは、日本人にとっては決し
て高いとはいえません。しかし、こんな程度のことが問題となる環
境にはあるのでしょう。あまりに安全な環境は、よけいな不安を招
き入れるものだからです。

 社会における「不安」のネタがどうすれば減少するか、そのこと
をかんがえていかないといけませんね。個別の「不安の対象」につ
いて対応することではなく、「不安そのもの」がなくなる道です。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 連休はいかがお過ごしでしょうか。私は先日テレビで見た「カン
フーハッスル」にはまって、「少林サッカー」など借りてきて見て
います。中国の評判は最低になってしまいましたが、中国ものの映
画や小説は大好きなんですよね。素直に中国がんばれ!と言えない
のがちょっとつらいところです。

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