安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>44号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------44号--2000.09.03------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     「今年の米」
     「生?(Q&A)」
     「賞味期限」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」のホームページを見た人はご存じのことと
思いますが、私は「森羅情報サービス」というもう一つのホームペ
ージを持っています。(実はこちらの方がメインです・・)

 そこは宮沢賢治に関するサイトで、賢治の童話や詩が読めるよう
になっています。また、メールマガジン「宮沢賢治 Kenji Review」
の発行もしています。

 その関係で、花巻で行われた「宮沢賢治国際研究大会」に行って
きました。今年はずいぶん暑い夏だったので、東北地方は大豊作の
ようでした。

 もうかなり熟してきていて、稲刈りも早くなりそうです。例年は
9月の中旬以降の稲刈りも、もう始まっていることと思います。

 初めて家族連れで花巻に行ったのは、ちょうど同じ8月の下旬だ
ったのですが、1993年の、不作の年でした。その時は稲はみんなき
れいな緑色をしていたのを覚えています。今年と比べると、同じ時
期とは思えないです。

 宮沢賢治関係の本で読んだのですが、花巻近辺の土壌も、賢治が
肥料設計をしていた時代と、今とではずいぶんと違ってきているそ
うです。

 たった70年ほどなのですが、その間の稲作の努力が、土の状態を
変えていったのだと思います。そういう意味で、賢治の努力も無駄
にはならなかったし、賢治の夢見た、豊かな未来が到来したことは
事実だと思います。

 ところが皮肉なことに、今年も米の価格は早くも暴落していると
のこと。万年豊作貧乏の時代になってしまいました。アフリカのさ
る国でも、ようやく農業が復活し、飢えから解放されたとたんに、
豊作貧乏になってしまった、という話を聞いたことがあります。

 農業の誕生以来、この問題はずっとついてまわっていることです。
農業では、生産力のごく低い段階を過ぎると、必ず自分の食べる分
よりもたくさんの食糧ができてしまい、その消費者がいるのです。
私は古代における権力の発生はこのことと関係していると思ってい
ます。

 米の作り方もずいぶん変わって来ているようです。最近の特徴と
して、「一発除草」などをはじめとして、農薬の使用回数が減って
いる、ということがあります。

 これは一つには、高齢化による作業量の低減、ということもある
のでしょうが、消費者サイドからの農薬使用量を減らせ、という圧
力もやはりあるんだろうと思っています。

 ただ、詳しいことは私は理解していないのですが、「一発除草」
といって、稲作を通じて除草剤を一回しか使用しない、というやり
方も、良いことばかりではないんだそうです。

 一発で済ますために、効力の強い薬剤を用いたり、一つの薬剤に
複数の有効成分が含まれていたり、効果を長引かせるために製剤を
工夫したり、といろんな努力がされているようです。つまり2回、
除草剤をまくのと、1回で済ますのと、どちらが良いかは一概に言
えないということです。

 また、肥料も時代の変化もあって、食味重視という視点から、窒
素を減らす方向にあるようです。賢治の時代は(1930前後の話です)
硫安などの化学肥料がようやく一般的になってきた時代で、その後、
高い窒素濃度に耐える、多収系の品種が登場したこともあって、窒
素過多の傾向がずっと続いていました。

 窒素というのは、空気中に一番多くある元素ですが、植物は空気
中の窒素を利用することができず、アンモニアまたは硝酸などのイ
オンになったものを吸収します。

 マメ科の植物と共生する微生物で、空気中の窒素をこのような植
物の利用できる形にかえる力を持ったものがありますが、肥料成分
としては、窒素が常に制限因子になっていました。賢治は空中放電
によって窒素を含んだ雨を降らす、ということまで空想したりして
いますが、硫安などの化学肥料は、そういう意味では画期的なこと
でした。

 これはアンモニアを化学合成できるようになったことから実現し
たものです。(肥料の3要素のうち、カリはカリ鉱石、リン酸はリ
ン鉱石から作られています。リン鉱石で有名な南太平洋のナウルと
いう国では、島全体が海鳥の糞からできたリン鉱石からできている
そうです。)

 窒素というのはアミノ酸の成分ですので、たんぱく質を作るため
には必要なものです。米のたんぱく質も昔は貴重な栄養素だったの
ですが、最近では味が悪くなるといって、たんぱく質の多い米は嫌
われるようになりました。確かに、たんぱく質の含量と米の食味と
は関係があるようです。

 また、窒素が多いとどうしても成長が良くなりすぎて、稲刈り前
に倒伏しやすくなったり、病気にかかりやすくなったりします。そ
ういう意味で、化学肥料の過剰使用と農薬の使用とは関係があると
言えます。

 このように、米作りに関しても現場ではいろんな努力がされてい
ます。そんな風にしてせっかく作った米が余って困る、というのも
因果な話ですが、今年も豊作間違いなしとのことですので、やっぱ
りそうなるのでしょう。

 私の見るところ、米の価格維持政策も破局は近いようです。頼み
は北朝鮮への援助?米といったところでしょうが、それもどうなり
ますやら。

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--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.最近『生』っと、言う言葉が流行っているように思いますが、
生の定義というものはあるのですか?

 たとえば、 生ジャム、生茶、生蜂蜜、生パン粉、生麺、生とい
うと何か新鮮な感じがしますが。。。

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A.別に決まった定義はないと思います。「生ビール」というのが
はしりだったと思いますが、一番多い使い方は、加熱殺菌していな
い、という意味です。ご質問のままに並べてみると、

 「生ジャム」ジャムは加熱調理して作りますから、これは形容矛
盾です。ジャムができたそのままの状態で販売している、というこ
とかもしれません。でも、へんな言葉です。

 「生茶」これはたぶん「緑茶」と同義でしょう。生の茶の葉は、
ほっておくと紅茶になってしまいますので、緑茶は収穫後、すぐに
加熱しますから、生の茶の葉というものは流通していません。これ
も実に変なことばです。

 「生蜂蜜」これは蜂蜜を加熱していない、ということなのでしょ
うね。蜂蜜は殺菌はしないと思いますが、そのままではどろどろし
ていることもあって、製造時(容器に詰めるまで)に加熱して、な
がれやすくして、ゴミをとったり、混ぜあわせたりします。それを
していない、産地直送という意味があるのでしょうか。

 「生パン粉」これは昔からある分類で、乾燥パン粉との対比で言
います。しっとりとした水分の多いパン粉で、美味しいのですが、
保存性は悪い、というやつです。家庭でパンを粉にしたものに近い、
ということはできますが、開封後は日持ちしないので、消費量の少
ない私の家では使っていません。

 「生麺」これも正統的な分類です。麺は「生麺」「ゆで麺」「乾
燥麺」に分類されることは、以前にメールマガジンで紹介したとお
りです。

 消費者に一定の効果を与えるための言葉でしょうが、意味すると
ころは物によってさまざまです。まだ「天然」や「有機」よりは罪
が少ない、とは思います。

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--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「賞味期限」
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 しばらく前に、食品の製造年月日表示が賞味期限表示に変更にな
りました。

 これは主に外国との関係で、国際的な習慣に合わせた、というこ
となのですが、外国からの要求として、製造年月日表示ではどうし
ても輸入品は不利になる、ということがあると思います。

 インドから輸入した紅茶(ダージリンやアッサム)を扱ったとき、
「商品が古い」というクレームがときどきありました。製造日から
半年以上たっている、というのですが、実は日本に入ってきた時点
で、製造から数ヶ月たっているのです。(当たり前の話ですが)

 日本のメーカーの商品も、中身は輸入の紅茶です。だから、紅茶
自身の製造からはずいぶん経っているのですが、商品としての製造
年月日は最終的にそのパッケージができたときの日付、ということ
になります。

 紅茶自身を比較した場合、「製造年月日」から半年たった輸入の
紅茶よりも、ほんの数日前の日付の国内メーカーの紅茶の方が、実
は古い、ということが普通です。

 このようなことは他にもたくさんあって、「製造年月日」が最終
商品の製造時につけるものである以上、避けられない矛盾です。メ
ーカーではこのことから、実際の製造時に直接パッケージせず、半
製品の状態にしておいて、在庫をみながら、すこしずつ、最終商品
にする、というテクニックはよく使われています。

 中身は全部できていても、一番外側の袋に入れていなければ、ま
だ製品ではない、ということですが、このことからも「製造年月日」
というものがいかにあてにならないかわかります。

 そういうこともあって、「賞味期限」表示に変わったことは、私
は別に悪いことではないと思いますが、ここでも同じような問題は
あります。

 まず、賞味期限というのは、「製造日からの日数」をあらかじめ
決めて、製造日+賞味期限日数で、期限の日付を決めますが、この
起点になる「製造日」は前述のとおり、かなり恣意的に変えられる、
ということがあります。

 賞味期限日数については、メーカーが独自に判断して良いことに
なっています。メーカーによっては、ちゃんとした保存テストをし
て、日数を算出しているところも多いのですが、多くは業界団体か
らのアナウンスによって、日数を決めています。

 つまり、そのメーカーの商品が本当にその賞味期限で良いのか、
という根拠はあいまいだ、ということです。業界団体では一応のテ
ストをしているのですが、商品の衛生状態はメーカーごとに違いま
すので、実際の商品でテストしないことには、厳密には意味がない
のです。

 実際のメーカーのテスト結果を見せてもらったことがあります。
無添加ウインナーのテストでしたが、無添加でも30日の賞味期限
を設定している根拠を示したものです。

 同じ製造日の商品をたくさん用意し、一定の間隔をあけて悪くな
っていないかを確認していくのです。昔の話ですので言ってもいい
と思いますが、30日目では事故率0、60日目でも0、90日目
あたりから徐々に事故品がでてきて、120日目でほぼ完全にダメ
になる、というようなテスト結果でした。

 この結果からすると、賞味期限を60日で設定しても充分だと思
ったのですが、実際には安全率はこれくらい見込むようです。

 もちろん保存状態にもよるのですが、私はこれを見てから、少々
の期限オーバーはあまり気にしなくなってしまいました。

 ただし、商品によっては、賞味期限内でもダメ、というひどいも
のもあります。あくまでメーカーによりますので、注意は必要です。

 低温殺菌牛乳の賞味期限設定のときのテストでは、保存温度によ
って、ずいぶん結果が違いました。5度以下で保存すれば、UHT
殺菌のものと遜色ない保存期限を設定できる、という結果が出たの
ですが、そんなものは当たり前だ、ということで、10度以下の結
果を見れば、やはり低温殺菌牛乳は2日ほど短くなるようです。

 これは初発の菌数が違うためで、保存期間中は同じように菌数は
増えていきますが、菌は分裂によって倍々と増えていきますので、
最初の菌数が多い方が早く限界に達するわけです。5度以下であま
り差が出ないのは、菌の増える速度が極端に遅くなるためです。
(当然、UHT殺菌の方は5度以下ではもっと日持ちします。)

 「文藝春秋」の牛乳に関する記事(以前ちょっと言及しました。)
で、低温殺菌牛乳は乳酸菌が残っているので、UHT殺菌のものよ
り保存性が良い、などと書いていましたが、たぶんこの著者はこん
なテストなんかはしたことがないのでしょう。

 どこからこんなウワサが発生したか知りませんが、低温殺菌で生
き残る菌が乳酸菌に限るわけではありません。また、乳酸菌がある
と腐敗しにくい、という事実もありません。(乳酸菌による腐敗は
乳酸がたまって酸性になるので、乳酸菌以外の菌による腐敗とは見
た目は違いますが、腐敗していることには違いありません。)

 ということで、上記のようなデマはあちこちで発生していますが、
真っ赤なウソですので、ご注意ください。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 花巻では2泊しましたが、最終日には種山ヶ原の山頂まで、バス
で連れて行ってもらいました。北上山地のちょうど中央部、隆起準
平原のなだらかな山地です。

 最近の地質学によると、日本列島の中でも、このあたりだけは、
地質の成因が違って、特に古い土地だという話です。

 山頂付近はすっかり秋で、高山植物の花がたくさん咲いていまし
た。それほどの高さではないのですが、風が強いので高い木は生え
ないということです。

 また、足もとにはきれいな芝が生えていましたが、これは天然の
もので、野生の野芝が繁殖する土地なんだそうです。こういう土地
ですので、昔から牛や馬の放牧地として利用されていました。東北
は昔から馬の産地として知られていましたが、今では牛ばかりにな
っています。

 牧草としては戦後、外国産の牧草の種をまいたそうで、そういう
意味では賢治の時代とは少し景観は違うはずだ、ということでした。

 何にしても、「風の又三郎」の世界を見てきたという思いです。

 この辺の話は以下のサイトで報告されていますので、ぜひ御覧く
ださい。

http://homepage2.nifty.com/polan/

 また、私のもう一つのサイトへもぜひどうぞ。

http://why.kenji.ne.jp/

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--発行--渡辺--宏------- URL http://www.kenji.ne.jp/food/
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