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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------420号--2007.11.25------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「ヘキサン・MSG(Q&A)」
「牛肉の格付け」

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ブログ毎日?更新中

http://www.kenji.ne.jp/blog/
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---〔話題〕-------------------------------------------------

 今回もいただいたメールを紹介します。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 白い恋人は生産再開にこぎつけましたが、その後さらに悪質な事
例が続出したため、あの程度なら大したことがなかったようにも感
じられます。それもちょっと良くない傾向なのでしょうが。

 それにしても船場吉兆は泥沼に入りそうです。パート従業員や納
入業者に責任転嫁などということは、たとえ本当であっても最初か
ら口に出すべきではなく、マスコミの叩き所を提供するばかりか、
社会の同情も徹底的に失う方向です。それがうそならさらに最悪の
事態に陥ります。周りに、そういったことはしないほうが良いと言
う助言をする人も居ないんでしょうね。それが一族経営の弱点でし
ょうが。

 賞味期限改竄はどうしようもありませんが、産地偽装の方はどう
でしょうか。鶏肉もかなり良いものを使っているようですし、牛肉
は佐賀や鹿児島で何が悪いのでしょう。

 あれだけの料理屋が原料の価値だけに頼らなければならないとい
うのも和食の技術と言うものがいかに浅いかと言う認識にならなけ
れば良いのですが。

 他の高級と言われる料亭、レストランの紹介を見ても、高い素材
であることばかりを強調することが多いように思います。どんな安
い材料を使っても美味しく作るんだという店があっても良さそうに
思いますが、それでは高い値段は取れないのでしょうか。

 まあ、店だけが悪いのではなく、食べに行く人、紹介する人すべ
ての責任なんでしょう。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 このごろは食品業界だけではなくて、他の業界でも、イメージ戦
略というのでしょうか、能書きだけで商売をするのが流行っている
ように思います。

 健康食品などの攻勢に対抗して、大衆薬も効能をうたったイメー
ジ宣伝を強化するのだとか。商売というのはいろいろと大変ですが、
そういう努力はある意味むなしい気がします。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.油を抽出する時の ヘキサンというのをよく耳にします。そし
てそういう抽出ではない油を購入するようにしています。でもその
詳しいことは知らないのです。油を抽出した後は、何かで中和する
ように聞きますが本当でしょうか?

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A.原料から油脂を取り出すのに、伝統的な方法は圧力をかけて搾
ることでした。搾り方にもいろいろありますが、搾る前に焙煎した
りして、搾りやすくするのが普通です。

 ナタネ油で、よく「一番搾り」といいますが、この方法でとった
油のことを言っています。搾り粕にはまだ油が残っているので、ヘ
キサンという溶媒で溶かして抽出します。これが「二番搾り」です。
大豆のように油脂の含有量が少ない原料では、最初から抽出法にな
ります。

 また反対にゴマなどではヘキサンによる抽出はおこなわれないよ
うです。風味が売り物の油ですし、油脂成分が多いのでほとんど搾
ってしまえるからだと思います。

 加熱してつぶした原料をヘキサンの中に入れると、油脂が溶けだ
してきます。ヘキサンは「有機溶媒」ですので、油をよく溶かすの
です。溶けた油脂を取り出すのは簡単で、ヘキサンの沸点は70度
くらいなので、この温度まで加熱すると、ヘキサンは蒸発してしま
い、油脂だけが残ります。

 蒸発したヘキサンは回収して、何度も使います。そういう意味で
はうまくできています。

 さて、このヘキサンというのはどんなものかというと、炭化水素
の一種です。「ヘキサ」というのは6のことです。化学の世界では
こういう数を表す接頭語をよく使います。「モノ、ジ、トリ、テト
ラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ、デカ」で1〜10で
す。

 「アン」という語尾がつくのはアルカンといって、飽和炭化水素
です。だから「ヘキサン」というのは炭素原子が6個つながり、そ
の周囲にもれなく水素がついているという構造です。C6H14と
いう化学式になります。

 アルカンというのは実はパラフィン=ロウの一族です。炭素数が
多くなると、固体になってロウそのものですが、炭素数が少ないと
メタンやエタンのように気体ですし、ヘキサンくらいだと常温で液
体になります。ヘキサンがちょうどよい融点と沸点なので、利用さ
れているわけです。

 油脂の抽出に使われるのは「ノルマルヘキサン」といって、炭素
が6個、直線的に並んでいるものです。他にもいろいろな種類があ
るそうですが、食品に使われるのはこれだけです。

 ヘキサンも一応食品添加物の一種なんですが、製品中には残留し
ないため、表示はしなくてもよいことになっています。

 そういうことですので、安全面からは別に問題はありません。原
理的に残留しませんし、低濃度で毒性があるというものでもないで
す。ただし、強力な有機溶媒ですので、うっかり手につくと皮脂が
とれてしまったりしますし、プラスチックやゴムなんかも溶けてし
まうそうです。また引火の危険や吸引すると麻酔性があるとか、製
造現場ではやっかいな物質です。でも、油脂を利用する立場からす
ると、直接触れるものではありませんので、心配はいりません。

 できた油脂の面から見ると、ナタネのように一番搾り、二番搾り
とやる油脂では、当然ながら抽出法のものが品質は劣ります。普通
は適当にブレンドして出荷するのですが、高品質をうたって一番搾
りのみのものも商品化されています。もちろん、安いものでは二番
搾りだけというものもあります。

 いろんな油脂のいろんな特性の中で、こういう要素もあると知っ
ていれば充分だと思います。

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Q.私は、長い間アメリカに住んでいるて、最近日本に戻りました。
MSGを使っているレストランで食事をすると頭痛がしたり、おな
かが膨張したような状態となり、ゲップがたくさん出たりします。
多くのアメリカの友人も同じような症状が出るようです。最近では、
店に入ると、MSGを使っているかたずねるようにしていますし、
店のほうでも、NO MSGと店先に出しているレストランが多く
なってきました。健康に関心があるアメリカ人は、MSGをとろう
としません。すべての人に同じ症状が出るわけではありませんが、
私はMSGを使っている食事を取ると、頭痛が始まるのですぐにわ
かるのです。それでも、本当に健康に無害と言い切れるのでしょう
か?

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A.この件は科学的には決着がついています。おっしゃるような症
状の人に目隠しテストをしてみると、全く再現性がないことがわか
っています。

 また、レストランで聞いても実はあまり意味がありません。中華
料理では調理場にMSGが砂糖や塩と同じように置いてあるところ
が多いのですが、それ以外の調理場でMSGをそのまま使っている
ところはあまりないと思います。

 それならば使っていないのかというと、それが結構微妙なのです。
調理場ではいろんな調味料を使いますので、そのすべてに全くMS
Gが含まれていないということはたぶんないと思います。

 また、調味にトマトを使ったりすることも多いですが、そういう
天然物由来のMSGなら必ず含まれているはずです。天然物であれ
ばOKで、化学合成のものはダメという人もいますが、厳密に言う
とすべてのMSGは天然物由来です。

 グルタミン酸は簡単な化合物です。化学式が同じであれば、由来
を問わず同じ物質であるというのは化学の前提です。イスラム教で
は豚からとった酵素を使ったといってMSGを非難したことがあり
ますが、あれは化学の話ではなく、宗教の話です。

 したがって、化学と医学の常識を前提とする限り、MSGで症状
が出るという話には信憑性がないと考えています。

 ただし、個人的な話は別ですので、ご質問の症状については何と
も答えることができません。上記は一般的な話としてご了解くださ
い。症状がひどいようなら、専門的な診察を受けることをおすすめ
します。MSGのせいだというより、違う原因が見つかる可能性も
あるのではないでしょうか。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「牛肉の格付け」
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 こんなニュースがありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 高級料亭の船場吉兆(大阪市)が九州産牛肉を「但馬牛」などと
偽装表示し販売したとされる事件に絡み、佐賀県の古川康知事は2
2日の定例会見で「佐賀牛が但馬牛より品質が劣っているとの誤解
を与え、佐賀牛のブランドが傷つけられた」と述べ、同社の湯木正
徳社長に抗議する方針を明らかにした。23日に県担当幹部が湯木
社長に文書を手渡すという。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/saga/20071122/20071122_009.shtml
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 「佐賀牛」のブランドは品質を満たしたものだけが認定されるシ
ステムになっていて、「但馬牛」とは違うのだそうです。但馬牛は
血統的には和牛の総本山として有名ですが、兵庫県と九州の産地と
しての姿勢の差は確かにあると思います。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

「佐賀牛」とは…

 全国に約150程ある「○○牛」といった牛の銘柄の中で、全国
トップクラスの高品質の牛肉として安定的に供給できる産地がJA
グループ佐賀です。

 そのJAグループ佐賀管内肥育農家で飼育された黒毛和種であっ
て、(社)日本食肉格付協会の定める牛取引規格の最高の肉質であ
る「5」等級および「4」等級のBMS「No.7」以上を「佐賀
牛」と呼び、それ以下を「佐賀産和牛」と分けてブランド化してお
ります。

http://www.sagagyu.jp/
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 基準のはっきりしない「但馬牛」と違い、「佐賀牛」は基準を決
めて出荷しているという主張です。ここで牛肉の格付けの話が出て
きます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 牛肉の格付けは、(社)日本食肉格付協会が全国の主要なと畜場
において、食肉の規格取引のため、全国の食肉卸売市場などで実施
しています。

 牛枝肉取引規格(枝肉は、頭部、脚、血液や皮などを除き、2分
割したもの)によると、牛肉の格付けには2つの等級が使われます。
1つは歩留まり等級、もう1つは肉質等級です。歩留まり等級はA、
B、Cの3段階に分かれており、Aが最も良く、このとき生体から
取れる枝肉の割合が大きいほど等級が良くなります。肉質等級は1
〜5の5段階に分かれ、5が最も良い等級となります。まず「脂肪
交雑」、「肉の色沢」、「肉のしまりときめ」、「脂肪の色沢と質」
の4項目について評価が行われます。そして、4項目の総合的な判
定から最終的に肉質等級が決定します。すなわち、歩留まり等級が
3段階、肉質等級が5段階ですから牛肉の等級は全部で15段階ある
ことになります。

http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/qa/alt/altqa030808.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ここで注意してほしいのは、これは肉の格付けであって、品種や
産地、育て方などは一切関係ないということです。どのような牛肉
であっても、同じ基準で格付けをするというのがルールです。

 ただし、最高級となるA−5ランクになると、実際には黒毛和種
の肉がほとんどになります。このあたりは品種の特性もありますし、
黒毛和種の牛は高級な肉を狙った生産をしているということでもあ
ります。

 ただし、黒毛和種であればみんなA−5ランクになるというよう
な甘い話ではありません。高級ランクに格付けされるためには、血
統と飼育方法の両方が優れていなければならないそうです。
 
 「「4」等級のBMS「No.7」以上」というのがよくわかり
ませんが、「BMS」というのは脂肪交雑基準ということだそうで
す。

 以下のページに写真付きで解説されていました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ビーフ・マーブリング・スタンダードは”脂肪交雑”を評価する
ための基準。赤身の肉にどれだけサシが入っているのかを絵で示し
たもので、簡単に言えば”霜降り度”。見た目を左右する重要ポイ
ントのため、格付けとは別にB.M.S.を気にするプロは多い。12ラン
クに設定されており、No.12が最良。なおNo.1が肉質等級1、No.2が
2、No.3から4が3、No.5から7が4、No.8以上が5となる。

B.M.S. No.7

肉質等級でいうと4にランクされる。肉質等級4は「やや良いもの」
と評価され、その中でB.M.S.7は特上ランク。百貨店で通常販売さ
れている牛肉はこのあたりまで。

B.M.S. No.8

これ以上のランクが肉質等級でいう5にランクされる。格付員が肉眼
で判断するため、No.8とNo.7の差は非常に微妙。「8とされていても
7に見えるものは多数ある」という。

B.M.S. No.9

肉質等級5は「かなり良いもの」という評価。B.M.S.が9くらいにな
ると、脂もたっぷりで、とても1人ステーキ1枚は食べられない(若
ければ余裕で食べられるだろうが)。

B.M.S. No.10

そもそもB.M.S.は脂肪交雑別頭数分布を調査し、No.3から4の流通量
が一番多くなるように設定されている。従って、No.10以上ともなる
と、なかなかお目にかかれない。

B.M.S. No.11

高級ステーキハウスなどの専門店や、高級百貨店で見ることができ
る最上級品がこのランク。流通量は極めて少ないため、価格もグー
ンと跳ね上がる。

B.M.S. No.12

見よ!!これこそ、本当の最上級品。いわゆるチャンピオン牛クラ
スの肉がこのランクに相当する。「肉の芸術品」という表現は、こ
のサシの細かさ、美しさから生まれた。

http://www.jiyujin.co.jp/shop/special/wagyu005.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 A−5だけでは厳しいので、A−4の中でそれに次ぐクラスであ
る、「BMS7」も入れています。解説にもありますように、区別
がつきにくいということもありそうです。

 年末を迎え、こうした高級和牛が出荷される時期になってきまし
た。高級品は値段も高いですが、確保するのも大変なのです。だか
ら本当に高級肉だけを扱おうと思ったら、よほど産地と強いつなが
りがあるか、産地を特定せずに扱うかどちらかになります。

 吉兆は実際は後者だったのに、前者のような振りをしていたわけ
です。但馬牛で高級なものを手配し続けるのは非常に困難なはずで
す。

 生協で配達をしていたとき、ある年の年末商品で、高級和牛でA
−5ランクのものが入ったことがあります。なかなかすごい肉で、
肉色が白っぽく見えるほどでした。でも若い人にはかえって人気が
なく、脂肪が多すぎるというクレームをいただいたりしたものです。
仕入れ値も高く、儲からない上にクレームまであって、担当者には
あまり高級な肉を仕入れるな、と文句を言ったものです。

 個人的な見解としては、A−5ランクの肉というのはもう病気の
世界です。私も歳をとって、そういう肉が美味しいということはわ
かるようになってきましたが、普通の人が高いお金を払って食べる
ものではないと今でも思っています。

 こういうことを言っていると今でも高級料理には縁がないことが
ばれてしまいますね。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 そろそろ業界では年末の準備に入っていると思います。生協時代
はこの時期というと、年末用の商品案内を準備するのに忙しくして
いたものでした。

 昔は年末の一週間だけで一カ月に近い注文があったのですが、こ
のごろではそういう極端なこともなくなっていると思います。正月
だからといってもそんなに普段とは違わなくなってしまいました。

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