安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>412号


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--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------412号--2007.09.30------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「マーキュロクロム液・天然だし(Q&A)」
「亜硝酸塩」

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ブログ毎日?更新中

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---〔話題〕-------------------------------------------------

 まず、前回の「ポジティブリスト制」の話題について、コメント
をいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 いつも科学的な知見でトンデモ学説を論破しているのを楽しく拝
見しております。ところで、若干不安となった先生のコメントがあ
りましたので、確認させてください。

 不安となったコメントは以下です。

 ご指摘の「よく食べるものの方が基準値が高い」というのはその
矛盾の最たるものですね。よく使われ、食べる量も多い野菜の方が
基準値が高くなるというのは明らかに矛盾しています。

 これはADIの範囲内で農薬の残留基準値を作物に割り当てている
ためで、単なる計算上の問題です。

 農薬である以上、A農薬はある作物(A作)を加害する害虫(A害
虫)に効果を示す必要があります。よって、A農薬はA作物に残留し
てもよい数値を設定しているのです(作物残留試験を実施しADIを
割り振っている)。

 B作物をA害虫が加害しなければA農薬を使用する必要が無いので、
B作物に対しA農薬を使用する必要はないし、A農薬の残留基準値も
必要ありません(よって暫定・一律基準値が割りるられる)。

 また一方、A作物(茶)は日本国内で栽培されていて重要な作物
であるが欧州では栽培されていない、反対にB[作物(ホップ)は
欧州で栽培されて日本ではほtんんど栽培されていないとすると、
A作物は日本で残留基準値は存在するが、欧州ではA作物(茶)の
残留基準値は存在せず基本的には一律基準値となります。(その
反対もあります)

 また、B作物(ホップ)は欧州の重要な作物であり、B農薬がよく
効くB害虫が加害するとするとします。欧州ではB害虫に効果の高い
B農薬を使用するためB農薬の残留基準値があります。B作物は日本
でも栽培されていますがB害虫でなく、気候や昆虫層が異なるため
A害虫が問題害虫である場合もあり、A農薬を使用せざるを得ない状
況もあります。よって、日本ではB農薬の残留基準値は無く(暫定
基準値又は一律基準値を設定)、A農薬の残留基準値が存在するこ
とになる。

 説明が下手で申し訳ございませんが、ご理解のほど宜しくお願い
申し上げます。

 ポジティブリスト制度は現在ある中で最も理解できる公平が制度
と思います。ただ問題は、残留基準値を設定する際の試験で、現場
の栽培体系を無視した栽培体系で農薬残留値を決める部分がある点
です。

 残留基準値をオーバーしたところで、(何重もの安全係数が掛か
っているので)人体に影響はでないと推察されますが、数字となっ
た以上厳守する必要があります。

 その数字(残留基準値)を設定する段階で現場栽培無視が、今後
の行政と産地破滅を導く要因にならないか不安です。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 基準値の設定方法についてはおっしゃるとおりです。また、私も
「残留基準値を設定する段階での現場栽培無視」についてやはり問
題だと思っています。

 ポジティブリスト制がいけないというのではなく、基準値の決め
方には問題があり、まだまだ改善しなければいけないというのが私
の意見です。

 ご指摘ありがとうございました。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.1歳の子供がマーキュロクロム液(赤チン)を誤飲してしまい
ました。赤チンにはメチル水銀が含まていると後になってから知り、
子供の成長に障害がでないか心配です。今は元気にしていますが、
皮膚に湿疹がでています。自然に体から排泄されるものなのでしょ
うか?

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A.私の方で健康相談は受けかねます。心配があるようなら、医者
に診てもらうようにしてください。

 ただ、一般論としては「済んでしまったものは仕方ない」です。
誤飲はあくまで一過性のものです。この場合は急性毒性が問題にな
りますが、よほど大量に飲まない限り、急性毒性が出るようなこと
はないと思います。

 身の回りのもので、ちょっと間違って飲んでしまったら、致命的
な毒性があるようなものはほとんどないです。

 だから問題は慢性毒性ということになりますが、これは一回限り
の摂取でどうこうということはないと思います。

 水銀にしろ、毎日ごく微量には摂取しています。一生分の摂取量
から考えて、この誤飲で摂取した分は誤差程度のものでしょう。

 よく髪の毛で水銀を検査するといいます。これは水銀が髪の毛の
中に移行するからです。髪の毛の中に排出しているということもで
きます。

 用心は大切ですが、あまり心配しすぎないようにしてください。

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Q.天然だしには何故、植物タンパク、酵母、コーンスターチが入
っているのですか?

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A.こういうときはメーカーに直接聞くのがよいです。案外親切に
教えてくれたりします。

 というのは私が作っているわけではありませんので、「何故?」
と言われても困るのです。

 「天然だし」というと、スティック状や小袋に入った、粉末のだ
しのことでしょうか。「だし」の主成分はグルタミン酸をはじめと
したアミノ酸類です。

 植物たんぱく、酵母はたぶんだしの中のアミノ酸の原料なんだと
思います。普通は「たんぱく加水分解物」とか「酵母エキス」とか
書くのですが、酵母そのままとか、タンパク質そのままで使ってい
るのではないと思います。

 コーンスターチは味とはあまり関係なく、粉末状に保つために使
うのではないかと思います。ああいうサラサラした状態に保つのは
案外難しいので、そのためにいろんな原料を追加したりしているは
ずです。

-〔食べ物情報〕---------------------------------------------
「亜硝酸塩」
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 「亜硝酸塩」について、調べていただいた情報が入りましたので
紹介します。ことの発端は「エコノミスト」という雑誌に載った記
事について、抗議をしたというメールをいただいたことです。

 エコノミスト 2007.9.4号の「安全な食品の食べ方・選び方」
(西沢江美子)という記事への問題点の指摘のなかに、こんな一節
がありました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 「発色剤のなかにも、発がん性が疑われている物質がある」とあ
りますが、これはおそらく亜硝酸Naを指すものと考えます。

 亜硝酸Naは確かに発がん性を指摘されますが、

・野菜中に多く含まれる硝酸塩は、体内で亜硝酸塩に変化しますの
で、(添加物としてでなく)通常の食品から摂取される量がよほど
多いことが 知られています。

・ビタミンCとともに摂取することで、亜硝酸塩からの発がん性物
質生成が抑えられることが分かっています。事実、野菜を摂取する
ことが発ガンを促進するなどと言う事実はありません。

・亜硝酸塩は添加物として使用される以前から、ハム類に使われて
います。欧州でハム作りに使われていた岩塩に亜硝酸塩が含まれて
いたことが起源といわれています。岩塩由来だろうと、添加物だろ
うと健康への影響に違いはありません。

・亜硝酸塩はボツリヌス菌の繁殖を防ぐ効果も持っています。ボツ
リヌス菌の作り出す毒素は1gで100万人への殺傷能力を持つとされ
ています。どこかのコンビニがやっているような、「無添加ハム」
を使ったサンドイッチなど、その危険性こそが指摘されるべきでは
ないでしょうか。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 その他、いろいろな指摘もあるのですが、省略しておきます。

 エコノミストの記事も一緒に送ってくれていました。記事は「自
主的に全頭検査をしている県が出荷している国産牛を選びたい。」
(国が全頭検査をやめるのは来年の話で、現在は全国で全頭検査を
実施している)などというトンデモな内容なので、いちいちごもっ
ともの指摘でした。

 以下はそれに対する私の返信です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 エコノミストの記事の件については、基本的におっしゃるとおり
だと思います。

 ただ、発色剤とボツリヌス菌については、それほど効果がないの
ではないかと思っています。

 亜硝酸塩でボツリヌス菌を抑えるのは不可能ではないのでしょう
が、実際に使われている量ではどれほど効果があるものなのでしょ
うか。このあたりは疑問に思っています。

 記事を書かれたのは「農業ジャーナリスト」ということですから、
全農あたりの息がかかっているという印象を受けました。

 いつも思うのですが、国産品を売ろうとして、輸入品のネガティ
ブキャンペーンをやるのは、天に向かって唾をするというやつです。

 輸入品の悪口を言うほどに、自分たちの首も締めていることに気
付いてほしいものです。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 感想を書いただけなのですが、「亜硝酸塩」について、詳しく教
えていただきました。以下に紹介します。原文では単位がバラバラ
でしたので、( )内にppmで表示しています。(ppm)の部分は私
が加筆したものです。間違っていたらごめんなさい。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 亜硝酸塩の使用量が、ボツリヌス菌に効果のある量なのかという
ことですが、「食品微生物制御の化学」(幸書房)という書籍をも
とに調べてみました。また、社内でも意見を聞いてみました。

 亜硝酸ナトリウム(NaNO2、分子量69。亜硝酸根として46)の使
用基準は、食肉製品の場合、0.070g/kg(70ppm)です。

 書籍によるとベーコンにボツリヌス芽胞を低レベル(52/g)接種
した実験で、亜硝酸根が、30μg/g(30ppm)では効果がなく、60μ
g/g(60ppm)以上では毒化が抑制され、170μg/g(170ppm)以上で
は毒化ゼロ、という結果が紹介されています。

 同様に高レベル(4,300/g)では、30μ/g(30ppm)から抑制され
ています。

 別の、レバーソーセージでの実験では加熱と亜硝酸ナトリウムの
併用がボツリヌスの毒化に与える影響が調べられています。

 ほぼ同様の加熱条件で、残存亜硝酸根29.5ppmでは、17.1ppmより
保存日数が伸びています。

 また、別のページを引用しますと、「亜硝酸ナトリウムは、それ
自体の発癌性が疑われたこともあったが、その可能性は現状では否
定されている。しかし、亜硝酸は極めて反応性に富む物質であり、
特に塩基性のアミンやアミドとの反応によって形成される各種のニ
トロソアミンやニトロソアミド類は、実験動物に対して発癌性であ
ることが明らかにされたため、亜硝酸の代替え物の探索が精力的に
行われた。

 しかし、亜硝酸は、肉の発色と固定、酸化防止とフレーバーの改
善、ボツリヌス菌を中心とした細菌発育の制御という3つの大きい
作用を持ち、一つの化合物を200ppm以下の微量添加するだけで、全
ての効果が達成できるようなものは、他にはほとんど存在しない。」
とのことです。

 ここで、私は「200ppm」に引っかかったのですが、亜硝酸ナトリ
ウムを肉に添加して加熱すると、平均して添加量の50〜60%が回収
される程度に減少する、分子量を考慮すると亜硝酸根は亜硝酸ナト
リウムの2/3、ということで、200ppm × 0.5 × 2/3 = 67ppmが残
ることになり、かろうじて使用基準内という計算になるようです。

 実際に食品に使用される量が現在どのくらいになっているのか、
知識を持ち合わせていないのですが、以上の記述からは、使用基準
内の亜硝酸ナトリウム使用でボツリヌスを完全に抑えることは難し
いかもしれないが、ある程度抑制はできるのだろうと考えています。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 ボツリヌス菌はご存じの最強の毒素を出す細菌です。幸い、日本
ではそれほど被害を出した例はないのですが、缶詰やレトルト食品
はこのボツリヌス菌をターゲットとして殺菌されています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ボツリヌス菌毒素は、最も毒性の高い毒素の一つとされています。
純粋な1グラムの分量は、100万人以上のヒトを殺す分量であるとさ
れています。ボツリヌス菌毒素の致死量はよくわかっていません。
ただし、サルの研究から、体重70kgのヒトの純粋なA型毒素の致死
量は、静脈注射あるいは筋肉注射で0.09-0.15マイクログラム、吸
入で0.70-0.90マイクログラム、経口摂取で70マイクログラムと推
測されています。ボツリヌス菌毒素は、傷口は別として、皮膚から
は侵入しません。ボツリヌス菌毒素の溶液は、無色でにおいも無く、
知られるかぎりでは味もないとのことです。ボツリヌス菌毒素は、
85度以上で5分間の加熱で不活化します。80度で30分間の加熱で不
活化します。

http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/infection_inf/botulism1.htm
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 毒素は加熱によって失活できるのですが、菌の殺菌が難物なので
す。芽胞を作る菌なので、通常の殺菌温度では殺菌しきれません。
缶詰やレトルト食品で140度という高い温度をかけるのは、ボツ
リヌス菌の芽胞を殺したいからです。

 ハム類の場合、それほどの加熱をすることはできません。ハムは
普通冷蔵庫から出して、そのまま食べることが多いと思いますが、
必ず「加熱して食べてください」と表示されています。これは食べ
る前に加熱することで、ボツリヌス菌中毒を防ぎたいからです。

 添加物の論議で、発色剤(亜硝酸塩)が取り上げられるとき、よ
く亜硝酸塩がボツリヌス菌を抑える、という話が出ます。そのこと
自体はウソではなくても、定量的に考えたときにどうなのか(実際
に使っている量で効果があるのか)ということに疑問を持っていま
した。

 このメールでの結論は、「ボツリヌスを完全に抑えることは難し
いかもしれないが、ある程度抑制はできる」ということでした。こ
れについては了解です。どうもありがとうございました。

 ただ、前提としての亜硝酸塩の使用量は、食品添加物の使用基準
よりかなり低いレベルです。抑制効果も期待されるより低くなるだ
ろうということは考えられます。

 逆に、ボツリヌス菌を完全に抑えるくらい大量に使えば、亜硝酸
塩自身の毒性が問題となります。

 ハムによるボツリヌス菌中毒を防ぐには、「加熱して食べる」こ
とが大切です。亜硝酸塩を使っているからといって安心することは
できません。また、亜硝酸塩の使用を擁護するためにボツリヌス菌
抑制効果を持ち出すのは、量的に考えたとき適当でないと思います。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 今回はいただいたメールを紹介するだけで、「人の褌」でした。
いつものことながら、ご協力ありがとうございます。

 民主党がBSE問題でこんな意見を出しているそうです。

 「看過できないのが、厚労省発信の文書において、二十カ月齢以
下の牛の安全性が食品安全委員会の答申によって担保されているか
のように記載されている点である。答申が示したのは検査技術の限
界についてであり、異常プリオンなどが二十カ月齢以下の牛にない
と断言できるわけではない。」
http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=11842

 これは前々回指摘した「破綻した論理」そのものです。誰も弱齢
牛に「異常プリオンなどがない」とは言っていません。検査しても
見つからないので無駄だからやめようと言っているのです。

 政府の言うことに何でも反対するのが使命で、考えることはほと
んど脊髄反射です。この件に関しては私は(珍しく)農水省支持で
すね。

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