安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>38号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------38号--2000.07.23------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     牛乳の返品について
     「牛乳」その3

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 牛乳の返品について、次のようなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 雪印やその他の牛乳メーカーが、返品された牛乳を加工乳に再利
用していることが悪いと言われておりますが、牛乳を返品すること
自体が問題だと思います。スーパーなどの大型店は、売れ残った商
品を返品しないで自己責任で処分すれば、このような問題は起きな
かったはずです。

 消費者も、天然水より牛乳が安い値段で売られていることに疑問
を持つべきであり、大型店が、納入業者をいじめていることと、マ
スコミの無知が問題だと思います。

 私も、食品関係の仕事をしてますが売れ残った商品を捨てると言
うことは、お金をどぶに捨てるようなものです。だから、大型店が
力任せに商品を返品して大量にゴミを出させながら、自分たちだけ
が環境に配慮しているふりをしているのが許せないのです。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 これは非常にもっともなご意見です。前にも書きましたが、私も
メーカーに返品を引き取ってもらえなかったりした立場でしたので、
おっしゃっていることはよくわかります。

 それと、再利用の問題については、インターネット上で、次のよ
うなニュースが出ていました。

http://www.nissyoku.co.jp/
「日本食糧新聞」7月14日号

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

     加工乳などの製品再使用で厚生省が見解

 厚生省生活衛生局乳肉衛生課は11日、「加工乳等の製品再使用」
について、「一定の要件を満たしたものは直ちに食品衛生法上問題
とならない」との見解を、都道府県・政令市・特別区の食品衛生主
管課と乳業界団体に示した。

 加工乳などへの再使用があたかも食品衛生法上問題と報道が相次
いでいるが、同省の見解は「一〇度C以下に保存されるなどの衛生
管理が徹底されており、かつ品質保持期限内のものであれば再利用
が直ちに食品衛生法上問題にはならない」としている。ただ、衛生
管理の状況が不明なものや品質保持期限切れのものの混入は、食品
衛生法に抵触する恐れがあるので、「再使用は厳に慎むよう」との
指導の徹底も促している。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 これはちょっと変な話です。厚生省のページ

http://wwwcl.mhw.go.jp/%7Ehourei/html/hourei/contents.html

で、「食品衛生」を選んで、さらに、「乳及び乳製品の成分規格等
に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)」を見
ると、次のように記載されています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 加工乳にあつては水、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂
乳、全粉乳、脱脂粉乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱
脂れん乳、クリーム並びに添加物を使用していないバター、バター
オイル、バターミルク及びバターミルクパウダー以外のものを使用
しないこと。   

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 加工乳の原料はこう規制されています(よけいなお世話ともいい
ますが・・)。自分たちで作った省令だから、適当に解釈しても良
い、というものではないでしょう。

 低脂肪牛乳は「部分脱脂乳」にあたる、とでもいうのでしょうが、
実際には他の原料と混合して製造された製品です。また、製品とし
て出荷されたものを使って良い、とはどう考えても読めないと思い
ます。

 ということで、牛乳・加工乳の製造に、いったん出荷された製品
を再使用するのは、食品衛生法に違反しています。

 また、HACCPの計画書には、何処にも「余剰の殺菌済み牛乳
を原料タンクに戻して使用する。」とか、「返品の牛乳も賞味期限
以内なららパックを開けてタンクに戻し、原料として使用する。」
と書かれていないはずです。

 いったい厚生省は何を考えているのでしょう。

 報道ではよく、「賞味期限切れ」などということを問題にしてい
ますが、温度管理の実態を明らかにできない以上、こんなことは意
味はないです。「賞味期限内なら良い」なんて、どうして言えるの
でしょうか。

 製品になっていなくても、殺菌した牛乳を殺菌前の原料乳タンク
に戻すだけでも、HACCPの衛生管理基準からすると、もっての
外だということも、何度も書いたとおりです。

(もうやめる、といっていたのに、また書いてしまって・・)
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--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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今回はおやすみです。メールお待ちしています。
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--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「牛乳」その3
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 今回は牛の飼育現場の話です。

 牧場というと、北海道などの大規模なものを想像しますが、近郊
の酪農では、意外と小さな牛小屋で飼育していることも多いのです。

 私が訪問した経験があるのは、兵庫県の丹波篠山あたりの産地、
淡路島、長野県の産地、といったところです。

 淡路、長野は北海道ほどではありませんが、かなりの産地なので、
農家の規模もそれなりに大きいようですが、篠山では、家の離れに
数頭飼っている、というところまで見たことがあります。

 そんなところでも、牛乳を冷蔵保存する「バルククーラー」を備
えるのが、メーカーが集乳する最低条件になっています。

 乳しぼり、というと例の手でしぼって、バケツで受けるというの
を想像しますが、今ではそんなことはしません。搾乳機というのが
あって、牛の乳首にカップみたいなものを取付け、ポンプで直接、
パイプの中に牛乳を送り込みます。このパイプは牛舎の中に設置さ
れていて、その先はバルククーラーにつながっています。

 牛乳は乳首から出た瞬間は無菌状態だと思いますが、直後から、
最近の繁殖がはじまります。できるだけ早く冷蔵することが一番の
ポイントです。

 牛の頭数が少ない場合は、集乳も1日おきになるので、クーラー
に入れてある、といっても最近は少しずつ増えてきます。数頭の牛
を、農作業の片手間に飼う、というスタイルは今急激になくなりつ
つありますが、私はこれは歓迎すべき変化だと思っています。

 牛というのは何もしなくても乳を出す、と思っている人もいたり
しますが、当たり前の話、赤ちゃんを生んで育てている期間しか乳
は出ません。

 牧場で見かける乳牛は、たいてい翌年に出産する赤ちゃんを妊娠
中です。人間では授乳期間には妊娠しませんから、そこは違うとこ
ろです。

 毎年、出産して7、8年も産み続ければ、たいへん優秀な牛なん
だそうです。普通は5、6産といったところです。限界まで飼って
処分するやり方が普通ですが、比較的若いうちに搾乳をやめて肥育
し、肉用に出荷する、という方法もあるそうです。でも、今では廃
れていると思います。

 牛の妊娠はほぼすべて人工受精です。種牛を飼っているところは
私は見た事がありませんが、冷凍の精液が売られていて、それを使
って妊娠させます。

 最近では、受精卵の着床、という技術も用いられるようになって
います。ホルスタイン種の牛から、和牛の赤ちゃんが生まれてきた
りするのです。

 和牛を生んでも、乳牛にはできませんので、乳牛用に、優秀な乳
牛の受精卵を使用する、ということもあります。

 アメリカから輸入された「スーパーカウ」という、優良種の乳牛
を見せてもらったことがありますが、姿からして普通の牛とは違い、
年間の産乳量10トン以上、というのもあるそうです。

 牛は一生に産む子供の数が少ないので、こういった優秀な牛がい
ても、なかなかその系統を増やすのは難しかったのですが、受精卵
を他の牛に着床させることで、早く品種改良を広めてしまおう、と
いうわけです。

 いずれにせよ、ちょっと神をも恐れぬ行為ですが、私はキリスト
教徒ではありませんので、感心して聞いてしまいました。

 牛の暮らし方ですが、小さな牛舎では、繋ぎっぱなしが普通です。
ある程度の規模になると、運動場を持っていたりしますが、基本は
やはり牛舎で繋いで飼うことです。更に規模が大きくなると、普段
は牛舎の外にいて、朝夕の搾乳時に、牛が自分で搾乳室へ入ってく
る、というのを見た事があります。

 搾乳室では、牛がエサを食べている間、機械で搾乳します。室全
体が回転するようになっていて、ぐるりと一回りすればおしまいで、
順番を待っていた次の牛が入ってくる、という仕掛けで、見ている
とじつに面白かったです。

 乳牛は大きな動物ですし、肉用のものと違って、年齢も高く、無
理に太らせるわけでもありませんから、あまり病気の心配はないよ
うです。ただ、毎日、搾乳するため、乳首が痛んでくる「乳房炎」
はよくある病気です。

 牛に抗生物質を使用する、などというのはたいていこれです。予
防が一番で、乳首を清潔にすれば防げるのですが、衛生管理の良い
ところと悪いところでは、かなり差があるようです。この辺は牛乳
の中の細菌数にも関係してきて、重要なところなのですが、残念な
がら、そんなことには無関心な、「白ければ良い」派の農家も現実
には存在します。

 もちろん、だんだんとそんなところは減っていているのだ、と思
います。良い牛乳を作る農家だけが生き残っていけるような、そん
な仕組みが必要だ、と私などは思います。

 こうして朝夕、搾られた牛乳は、バルククーラーに入れられ、メ
ーカーの集乳を待ちます。集乳車は国道などで良く見かける、タン
クローリー車の小型のもので、牛乳を入れる部分は魔法瓶と同じよ
うな構造をもっています。従って、クーラーで冷却していない牛乳
は引き取ってもらえません。

 集乳の際、簡単なテストをして合格した牛乳だけを積んでいきま
す。工場についたときに、もう一度工場の受入検査をして、原料タ
ンクに納まることになります。受入検査で不合格の場合は、1台の
集乳車に積まれた牛乳全体が不合格になり、多大な損害を与えます
ので、不良な牛乳(抗生物質などの使用・細菌数が多すぎる・成分
が低すぎる・・)を出してはいけない、というプレッシャーはある
のだ、と農家の人は言っていました。

 その後の殺菌などについては、「その1」の時に書きました。少
し前の「サンデー毎日」に、UHT殺菌牛乳にアレルギーの原因物
質が含まれている、という記事が載っていました。毎度同じのデマ
攻撃で、以前は「発癌物質」といっていたのが、そんなデータはど
こにもありませんので、さすがに嘘をつき通せなくなって、より反
証の難しい「アレルギー物質」にかわったのでしょう。手口は一緒
です。

 ただ、今回の雪印事件の反省として、優秀すぎるUHT殺菌機の
存在がいい加減な牛乳の管理を支えていた、ということができると
思います。そういう意味で、殺菌効率が悪く、いい加減な管理や、
程度の低い牛乳では、事故を起こすに決まっている、低温殺菌とい
う方法を見直す、いうのは大いに考えられます。

 ただ、低温殺菌牛乳の方が、事故を起こす可能性はうんと高いの
で、今の時点では、ある程度の自己責任をもって、低温殺菌牛乳を
選択しなければなりません。

 毎日、集乳に来るところでは、搾乳から集乳まで24時間以内、
集乳から製品化まで24時間以内、流通にもう24時間、というこ
とで、搾ってから72時間程度で消費者の手に渡る、というのが最
短のコースになります。

 北海道の牛乳は他の産地よりもひょうか高いのですが、こういう
ところに弱点があります。最近では北海道で作った牛乳を関東方面
どころか、関西まで運んで来るようになっています。また、メーカ
ーでも、近郊酪農の衰退にともない、北海道からの原乳の導入を真
剣に考えている、ということでした。距離のハンデさえなければ、
北海道の産地の圧勝になるのでしょうが、それ以外の産地の動向や
いかに、というところです。

 いずれにせよ、品質が全てを決める、と私は考えています。「近
郊酪農の保護」などということを言っている人がいますが、余計な
お世話、と私は思っています。
 
--〔後記〕--------------------------------------------------

 牛乳についてはこのメールマガジンが始まってすぐに書いたので、
もう済んだ、と思っていたのですが、改めて見直してみると、まだ
まだ書き足りないことがいっぱいです。

 それで「その3」まで書きましたが、これ以降は読者の皆さんか
らの質問に答える、という形にしたいと思います。疑問に思ってい
ることなどありましたら、メールしてください。

 食中毒事件については、もう書かないつもりだったのですが、冒
頭の厚生省の通達?に怒ってしまって、つい書いてしまいました。

 こんなことこそ、取り上げて問題にすべきなのに、マスコミはい
ったいどうしているのでしょうか?

 厚生省の「記者クラブ」が機能していないのだろうな、というこ
とはこんなことでも想像がつきます。こんなところにも、「日本と
いうシステム」の欠陥が現れているのだと思います。

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