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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------36号--2000.07.09------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     雪印の食中毒事件(つづき)
     HACCP(その2)

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 大事件になってしまった、雪印食中毒事件についての続きです。

前回、つぎのように書きました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 今回の雪印乳業の事件では、

(1)加熱殺菌そのものに不備があった。

(2)加熱殺菌以前に加熱殺菌では取り除けない毒素の混入があっ
た。

(3)加熱殺菌以後に細菌汚染または毒素の混入があった。

の3つの可能性が考えられます。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 わかったことは、このうちの(2)だったことです。牛乳から細
菌が検出できていないようなので、たぶんそうだろうと思っていま
したが、黄色ぶどう球菌の毒素によるものと思って、間違いないよ
うです。

 例によって、パイプを洗浄していなかった、などということが取
り沙汰されていますが、私の評価を書いておきます。

(1)事件の最大の原因は、HACCPの不適切な適応です。その
背景には、余った牛乳の処分、という経済的な問題があります。

(2)パイプの洗浄や現場の手抜き、といったことは、問題の本質
ではありません。

(3)今後、雪印の全社、さらには乳業界全体に余波が及ぶ可能性
があります。

 HACCPでは、「重要点管理」といって、たとえば殺菌工程の
前に半端な殺菌をしても意味がない、と考えます。従って、現場で
は、殺菌工程の前の衛生管理は手抜きしていいと考えたと思います。

 しかしこれは誤解です。全般にわたる衛生管理の徹底は、HAC
CPの前提条件です。手抜きして良い理由にはなりません。

 ただ、この事件でHACCPに適応していないのは、この部分で
はありません。

A「殺菌後の牛乳を、殺菌前のタンクに戻した」

ということと、

B「HACCPのシステムに記載されていないパイプが存在した」

ということが最大の問題です。

 Aについてですが、これはとんでもないことです。絶対にしては
いけない、というか、こんなことをしている工場がHACCPに適
合するはずはありません。だからHACCPの設計からわざと外し
て、隠したのです。(理由は後で述べます。)

 取り外し可能な仮設パイプになっていたことが意識的に隠されて
いたことを証明しています。おそらく、検査が入った時には、取り
外して隠していたことでしょう。

 今回の件で、HACCPの認証は取り消されるようですが、これ
は当然のことです。大阪工場だけでなく、雪印全社で行われていた
はずです。徹底的な調査が必要です。

 こういう意識的な犯罪行為(虚偽のHACCP申請)に対して、
受け付ける側が見破るのは難しかったと思います。一応の立ち入り
検査はしても、意識して虚偽申請しているのであれば、当然隠して
しまうでしょうから。

 こんな場合、発覚後の処分になるのはある程度やむを得ないと思
います。そのペナルティは、その分、厳しくなるべきです。

 私は大阪工場の閉鎖だけでなく、雪印全社の商品に対して、永久
に安全性が保証できない、という宣言が必要と思っています。これ
は社会的には企業の死を意味しますが、それだけの犯罪性がある、
ということです。

 ということで、雪印の商品を買うのはやめましょう。

 他の乳業メーカーは大丈夫なんでしょうか?

 トップメーカーである雪印で行われていた、ということで、殺菌
した牛乳を戻す、というのは業界で広く行われている可能性があり
ます。以前、他の食品のときに、「トップメーカーの姿勢が業界全
体の品質レベルを左右する」といった意味のことを書いたと思いま
す。牛乳業界はどうも根本的な問題を抱えているようです。

 まさか市乳(普通の、加工乳でない牛乳です。)に殺菌済牛乳を
使用している、ということはないと思いますが、加工乳(低脂肪牛
乳、コーヒー牛乳など)には、こんな牛乳が使われているかもしれ
ません。

 昔の話ですが、売れ残った牛乳を引き取ってきて、パックをあけ
てタンクに戻し、コーヒー牛乳にするんだ、という話を聞いたこと
があります。本当かどうか確かめたわけではありませんが、今回の
事件の話を聞くと、こんなことまでも、ありそうなことと思います。

 そういうこともあって、低脂肪牛乳についての問い合わせがあっ
たときは、かれは加工乳だから、避けた方が良いですよ、と答えて
きましたが、はからずもそのことが証明された形です。

 他のメーカーのものでも、加工乳は避けた方が賢明です。低脂肪
牛乳はすべて加工乳ですから、「低脂肪」だから何となく良い、と
いうイメージは棄ててください。

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--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.話の中に『都合の良い商品』というのがありましたが、低脂肪
乳でアイスって作れないんですか?
脂肪分を抜き取ったあとの牛乳では、そういったものを作るのには
不向きなんでしょうか?

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A.アイスクリームの美味しさは主に乳脂肪分によります。乳脂肪
の代りに、植物性油脂を使用したものは、アイスクリームではなく、
ラクトアイスなどと言いますが、やはり味は劣ります。

 せっかく牛乳からアイスクリームを作るのに、わざわざ乳脂肪分
の少ない牛乳を使うなんて、何を考えているのか、と思ったわけで
す。

 ついでに言えば、保育園で飲む牛乳が低脂肪牛乳というのも、ど
うかしています。何が良いと思って、低脂肪牛乳を選んだの、聞い
てみたいものです。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「HACCP」(その2)
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 HACCPの導入を大いに宣伝している業界に、建設業界があり
ます。

 これはHACCP導入にあたって、工場の配置が問題になること
が多いので、建設業界にとってはビジネスチャンスということにな
るのです。

 HACCPに適合させようとすると、工程の流れを常に意識する
必要があります。「重要管理点」を設けて、そこで全体を管理しよ
うということですから、製品は必ずこのポイントを通過することが
必要です。また、このポイントを通過したものが、それ以前に戻る
ということがあってもなりません。

 ということで、工場は基本的に一方通行の作りになります。大き
な冷蔵庫を作って、原料も製品も同じ場所に保管しているようでは
失格です。

 原料の入庫と反対側に出庫場所を設け、両サイドに入庫・出庫専
用の冷蔵庫を作るのが理想的です。

 人間の動きも同様で、作業室への出入りの手順はもちろん、作業
場所での動きなども細かく指定して、人間の動きによって、管理点
が攪乱されないように気づかっています。

 たとえば、私が見た養鶏場でHACCPを導入しているところで
は、鶏のいる場所に入れる人は個人的に決まっていて、その人は鶏
の世話をしますが、卵の選別場所には入りません。卵の選別をして
いる人は、隣の建物に大量に飼育されている鶏の顔をみたことがな
い、ということになります。

 そして鶏舎から選別場をつなぐものは、卵を運ぶベルトコンベア
だけで、ここが「ポイント・オブ・ノーリターン」になります。

 牛乳工場では殺菌機がすべてを支配しますので、殺菌機を中心に
未殺菌側と殺菌側に工場自体が別れているのが普通です。つまり、
殺菌機自身が「ポイント・オブ・ノーリターン」ということになり
ます。

 こういう意味で、殺菌した後の牛乳を、余ったからといって、元
に戻して他の製品に流用するということは、それだけで大きな問題
です。

 HACCPでは、主にチェックポイントを作って、そこで監視す
る、というのが主になりますが、そのためにも、このような工程の
流れは大変大事なことになります。

 そして実は、やってみると衛生的に優れたシステムは、作業性に
も優れているのです。ごちゃごちゃしていた動線が整理されるだけ
で、作業の能率が上がったりします。まあ、こうしたことは建設会
社のパンフレットに詳しいのですが、決してウソではないと思いま
す。

 重要管理点での監視は、連続的なものであることが望まれます。
たとえば冷蔵庫の温度管理では、定期的な温度計のチェックより、
自動記録タイプの温度計を使って、1日中の温度の動きを記録する
ことが望ましいのです。自動的にプリントアウトする温度計もあり
ますし、コンピュータにつないで、リアルタイムでデータを蓄積し
ていくタイプもあります。

 細菌検査は時間もかかるので、大変なのですが、簡易なものでは
ほとんど即座に細菌量を検出できる機械もあります。これはあくま
で簡易なものですので、最終的にはきちんとした培養検査が必要で
すが、現場でのチェックにはこの方が向いています。

 食品では金属探知機なども必須です。この程度はHACCP以前
に、使っていて当然なのですが、運用では実にいい加減なことが多
いのです。機械がただあるだけでは、一度に大量に通したり、通し
たことにして手抜きしたり、必ずします。

 製造の工程で、必ず一度は通り、しかも1個ずつ通せる場所(た
とえば箱詰めするためのコンベア上など)に、設置すると、別に手
をかけたり、精神論をぶったりしなくても、確実に検査機を通るよ
うになります。

 こうした一つ一つの工夫の組合せがHACCPの実際の運用形態
になります。そしてそれを文書に記述し、公開する、というのが、
HACCPの認証、ということです。

 できればその届け出先がお役所ではなく、民間の認証機関であれ
ば、よりよいのです。この辺、役人より商売人の方が信用できる、
というのが世界の常識のようですから。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 だんだんと騒ぎが大きくなってきてしまいました。 雪印の社長
もマスコミにもみくちゃにされて、それはそれで実に気の毒に思い
ます。

 でもやっぱり責任は社長にあるのでしょうね。偉い人というか、
高い地位というのも、大変なものだ、ということを改めて思いまし
た。

 私は子供のころに「出世をしない秘訣」という本を読んで、大変
感心し、その影響で間違っても出世だけはしないようにして今まで
やってきました。まわりからはいろいろ言われたりしますが、案外
正解だったような気がしています。

 前回、「これらは売れ残った牛乳の処分先になっているのは、公
然の秘密です。」と書いて、ちょっと言い過ぎじゃないか、という
ご意見をいただきました。

 つい書き過ぎてしまうのが私の良くない癖かなあ、という自覚は
少しあるのですが、今回は驚いたことに、雪印乳業が私の憶測を証
明してみせてくれました。

 あの「洗浄していなかったパイプ」が、売れ残った牛乳から加工
乳が作られていた何よりの証拠です。

 ホームページを少しリニューアルしています。今回はインデック
スのページを変えて、全部のページの一覧を表示するようにしまし
た。ぜひ御覧ください。

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