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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------35号--2000.07.02------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     雪印の食中毒?事件
     HACCP

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--〔話題〕--------------------------------------------------

【食中毒?事件】

 前回、HACCPの話を少し出したら、牛乳で食中毒事件がもち
あがっています。

 というのは、大手メーカーの工場は、ほとんどこのHACCPの
考えに基づく衛生対策をとっているはずだからです。それなのに、
食中毒事件をおこし、その上事後の対策にまで批判が及んでいる、
というのは大事件と思います。

 まず事件についてですが、報道によると、「雪印の低脂肪乳」に
より、広範囲に食中毒と思われる被害が出ているということです。
個別の被害は嘔吐、腹痛などで、致命的なものではないようです。
また、牛乳を飲んで3時間くらいしてから症状がでていますので、
毒物の混入、ということでもないと思います。

 ということで、食中毒事件、と判断されていますが、今のところ
まだ原因が不明です。これだけ大量のサンプルがありながら、まだ
どこのテストでも原因と思われるものが発見されていません。黄色
ブドウ球菌が疑われていますが、まだ決めつけるのは早すぎます。

【牛乳工場とHACCP】

 牛乳は必ず殺菌してから、販売されています。しかもその工場は
だんだんと集中が進み、ちゃんとした設備の整った工場がほとんど
になっています。

 そんな中、数年前から、大手のメーカーではHACCPの衛生基
準を確立し、厚生省に届け出ているはずです。これはHACCPの
導入を進めたかった厚生省にとって、最もコントロールしやすい業
界として、牛乳業界に強く要請がありましたので、例によって足並
みを揃えて導入したものです。

 しかし、このようなお上からの通達による導入がいかに魂のない
ものかは、この事件を見ればわかります。HACCPの内容につい
ては、別項に譲りますが、事後の対策を見れば、それはわかります。

 HACCPシステムにとって、事故(製品による健康被害)は常
に起こりうるものとして想定されます。これは衛生基準の徹底によ
って、100%事故を防いでいこう、という従来の考えの対極にあ
るものです。

 従って、事故が起こったときの対策は、HACCPシステムにと
って、必須のものです。またこの対策は絶対的なもので、経営者の
思惑などで左右されることはあってはなりません。企業にとって、
致命的な事故であっても、企業の存続よりも消費者に健康被害を出
さないことを第一に運用されることが求められます。

【事後の対策】

 事故の第一報が入ったときの対策が遅かった、という批判ですが、
遅かったかどうかは単に時間的な問題ではありません。上記の対策
がマニュアル化されているはずなのに、それが自動的に発動せず、
上部の判断にゆだねられていたようなのが、何よりも問題です。

 経営者は当然、いろんな情報を集め、企業にとって最善の選択を
する義務があります。判断するためにちょっと待ってほしい、とい
うことは当然、あり得ることです。

 しかし、HACCPシステムは、そんな思惑とは別に、いつでも
必ず無条件に発動されなければ意味がありません。たとえそのため
に会社が倒産しようとも、です。

 雪印乳業の事故対策マニュアルとしては、すみやかな製品の回収
と原因の究明、広く消費者に対しての警告の発信、などが定められ
ていたはずです。

 HACCPに限らず、ISO9000シリーズや14000シリ
ーズの認定を取得している企業が多くなっていますが、いずれも、
システムとして機能している限り、このような対策があらかじめ立
てられていて、事故があった場合、それが「無条件に」適用される
ことになっているはずです。

 原則を決めておきながら、それがそのとおりに運用されていない、
いかにも日本的な現象です。この事件によって、日本ではHACC
PやISOの基準を持っている、といっても実は信用できない、と
いう印象を外国の関係者は持ったと思います。

【マスコミ報道】

 被害自体は大した事はありません。問題にすべきはこれまでに述
べたことのはずです。この事件でも、マスコミの勉強不足は明らか
で、相変わらずのセンセーショナリズムに走っているのが現状です。

 私に言わせれば、このマスコミのセンセーショナリズムが企業の
対策を誤らせているのですが、この場合、罪はあくまで事故をおこ
した企業の側にあります。でも、記者会見で鬼の首をとったように
追求している、マスコミ関係者も同罪というか、事件の本質を見誤
らせるために動いている、ということが言えます。

 私はテレビも新聞も、基本的に好きなのですが、最近のマスコミ
関係者の頽廃ぶりは、実に目を覆うものがあります。

【都合のよい商品】

 ところで、事件の報道の中で、被害者の中で、保育園でアイスク
リームを作って食べた、というものがありました。低脂肪牛乳でア
イスクリームを作るなんて、奇想天外です。かわった保育園もある
ものだと感心しました。

 低脂肪牛乳というのは、要するに加工乳です。通常の加工乳では
脂肪分を補うために、無塩バターなどで脂肪分を補給するのですが、
脂肪を抜き取ったあとの牛乳を商品として売れる、というメーカー
にとってはたいへん都合の良い商品です。

 都合が良い、といえばコーヒー牛乳やフルーツ牛乳といったもの
も同様です。これらは売れ残った牛乳の処分先になっているのは、
公然の秘密です。

【今後の見通し】

 少し前、全酪乳業の工場で、洗浄のさいに出る牛乳を生産ライン
に戻していた、というインチキ事件が発覚したことがあります。私
はこのような事件を起こした企業が存続できること自体、不思議だ
と思っています。しかし日本では、お上の温情、というものがあっ
て、普段からお上の意向に従順にしておけば、いざというときには
お上の温情に縋れる、というよき伝統があります。

 今回もきっとそうなるでしょうが、私の意見は、このような事故
を起こし、自発的な対策もとれなかった以上、そのメーカーが現状
のままで生き延びることは許されない、というものです。

【ハムのO−157騒動】

 話は変わりますが、1週間ほど前、「ハムからO−157検出」
という事件があって、報道されましたが、あれは検査のミスだった
ということが発覚しています。

 誤りを認めた埼玉県の姿勢は評価されますが、被害をうけた企業
側は100億円規模の賠償を求める、ということです。これは当然
の要求ですから、県は税金でもって、この金を払うことになるでし
ょう。

 私もハムから大腸菌、というのは許せない話だと思っていたので
すが、こんな被害をうけた企業が黙っていて良いはずがありません。

 県民は知事と県幹部の辞職、ミスを犯した検査機関の廃止と職員
の解雇を要求すべきでしょうね。数百億円の被害に対しては、それ
くらいが当たり前です。

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--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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 今回はQ&Aではなくて、お便り紹介、ということで・・。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

まぐろ漁港三崎の近くの人間です。

北海道の日本海でも生の鮪が揚がっています。スーパーに生まぐろ
と明示されて販売されています。生鮪の解体ショーも、スーパーや
回転寿司などで時々イベントとしてやっています。

そういうイベントで買うと、生だからか、急いで切るからか、断面
がぎザギザのことが多いです。

最近は、生鮪でも、それほど高くないのが店頭に並んでいるので、
近海モノではなくて、ハワイなどの遠洋から空路、チルドで運んで
ると想像してるのですが、どうでしょう?

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 マグロの航空輸送ですか。私は船で運んでいる、と思っています
が、案外そういうこともあるのかもしれません。

 マグロの解体ショーなどは、冷凍のものが普通ですが、生のまま
のものも、もちろんあるのでしょうね。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

カニですが、ロシアでは政府のお金がなくて、充分な取り締まりも
出来ずにいて、決められた数量以上のカニが捕獲、日本に(根室花
咲)に輸入されてるようです。北海道で過去に報道されていました。

カニは、一度資源が枯渇すると回復までに時間がかかるようなので、
パクパク食べられるのも、今のうちなんでしょうか?

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 これはおっしゃるとおりです。漁獲量を守らないことでは日本も
定評がありますが、その結果は必ず帰ってきます。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「HACCP」(その1)
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 HACCPというのは、「hazard analysis and critical cont-
rol point」の略で、日本語に訳すと「危害分析と重要管理点」と
なります。

 インターネットで私が見つけた限りでは、東京都立衛生研究所

http://www.tokyo-eiken.go.jp/shokuhin/topics/haccp/haccp.html 

に簡潔な解説が載っていました。参照してください。

 少し引用しますと、

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 営業者は、通常、製造した食品が安全であることを確認するため、
できあがった製品について微生物などの検査を実施しています。こ
の方法では、食品が安全に製造されていたことをより確かにするた
めに検査する最終製品の数をふやす必要がありますが、同時に検査
にかかる費用や時間が増加することや検査しなかった製品の安全を
必ずしも保証するものではないという限界があります。

 一方、HACCPシステムによる衛生管理は、勘や経験に頼る部
分の多かった従来の衛生管理の方法とは異なり、食品の安全性につ
いて危害を予測し、その危害を管理することができる工程を重要管
理点として特定し、重点的に管理することにより、工程全般を通じ
て食中毒などによる危害の発生を予防し、製品の安全確保を図ると
いうものです。

 具体的には、次のような手順で行います。

1 食品の原材料の生産から、できあがった製品が消費者に消費さ
れるまでのすべての過程において、食品の安全を損なうおそれのあ
る微生物や化学物質、異物にはどのようなものがあるのかを明らか
にします。さらに、それらの危害を取り除く方法を決定します。

2 明らかにした危害の中から、食中毒等の発生を防ぐ上で、極め
て重要な管理点(CCP)を決定します。

3 次に、管理点ごとに管理が適正に行われているときに守られる
べき基準(温度、pH、加熱時間等)を定めます。

4 さらに、基準が守られているかどうか、どのようにモニタリン
グ(監視)するのか、又決められた基準からはずれたときは、どの
ような対策をとればよいのかといった対応方法を決めます。

5 各工程上の作業については、標準作業手順書として文書化して
おかなければなりません。これをみることでだれが作業する場合で
も間違わないようになります。

6 モニタリングの結果などは、記録し保管しておくことで、HA
CCPに基づいて安全に製造されていることの証拠となります。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 一般的な解説としては、こんなものです。よくNASA(アメリ
カ航空宇宙局)の開発、と言われますが、宇宙飛行士の食事を作る
際、求められる安全率は非常に高いので、通常の方法では、製造し
た食品のほとんどを検査しなければならない、ということから出発
しています。

 サンプルの数から、求められる安全率は、統計学の手法で計算で
きるのですが、安全率を高く取るためには、サンプル数を増やすし
かありません。1000個作って、999個を検査して、異常がな
ければ、残る1個の安全性はかなり高い、ということになります。

 もちろん、こんな方法は実際的ではありません。どこに問題があ
るかというと、食品の検査というのが、「破壊的」な検査だからで
す。「非破壊的」検査が食品について可能であれば、全品検査終了
後、出荷すれば良いだけのことです。

 いつの日か、こんなことが可能になる時代が来るのかも知れませ
ん。でも、今のところは別の方法を考える必要があります。

 検査に頼らずに安全性を保障するには、製造工程自身を検証する
しかありません。それがHACCPの考え方です。

 よく誤解されるのは、HACCPが衛生管理の徹底を意味する、
と思われてることです。「HACCPになると殺菌剤などの使用が
増える」と主張している人もいますが、的外れです。

 衛生管理の徹底は、HACCPにとっては当然の前提です。その
上で、どこに重要管理点を設け、どのようにそれをコントロールす
るのか、ということがHACCPなのです。

 たとえば製造工程の中に「加熱殺菌」というのがあったとします。
その工程の前に殺菌を部分的にしたり、防腐剤を使用したりするの
は無駄な努力で、加熱殺菌工程そのものがどのように実施されたか
を監視し続ける、というのがHACCPの考え方です。

 加熱殺菌時の管理項目としては、加熱温度と時間、サンプリング
による製品の内部温度の確認などです。これらを全部、記録として
とっておきます。

 そして加熱殺菌工程以後は、無菌状態で推移する必要があります。
したがって、「加熱殺菌→包装」でなく、「包装→加熱殺菌」とい
う工程が正しいのです。

 牛乳などでは、加熱殺菌後に容器に充填されますので、その充填
機器周辺の衛生管理が大問題になります。

 70度以上の高温をたもったまま、充填されるのが理想で、ジュ
ース類はそうしています。牛乳では高温による変質、という問題が
あって、加熱殺菌以後は急速に冷却してしまいますので、充填の工
程ではすでに冷たくなっています。そこが苦しいところです。

 今回の雪印乳業の事件では、

(1)加熱殺菌そのものに不備があった。

(2)加熱殺菌以前に加熱殺菌では取り除けない毒素の混入があっ
た。

(3)加熱殺菌以後に細菌汚染または毒素の混入があった。

の3つの可能性が考えられます。

 もちろん、この3つの可能性を想定し、その対策をあらかじめ講
じていないHACCPシステムというのは考えられません。

 もし、(2)に該当する現象が起こっていて、その現象ないし対
象毒物がまったく未知のものであった場合、工場の責任は免責され
ることになります。どんなに被害をもたらしても、この場合は「責
任はない」のです。

 そのためにも、それ以外の可能性を消す、製造工程の監視記録が
完全に残っていることが必要になります。この監視記録は、公開し
て原因の究明に貢献させるためのものです。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 今回はめずらしく時事ネタになりました。

 というのも、日付が変わって、日曜日になるまで、この記事を書
いていなかったので、思わず新聞の記事からひろってしまいました。

 私が「ハムから大腸菌」が許せない、といったのは、ハムの製造
工程から考えて、大腸菌が出るはずがないからです。別にO−15
7でなくても、大腸菌が検出されるようなハムはそれだけで商品と
しては失格です。即刻、工場に操業停止を求めるべき事態です。

 という重要なことだと認識していれば、被害が出ていない段階で、
追試の結果を待たずに公表してしまった、というのはわからない話
です。一つの検査の結果が、工場をつぶし、その職員の職を失わせ
ることもある、という事実はたいへん重いものです。

 私はHACCPの通信講座を受講した経験があります。半年間、
毎月テキストが送られてきて、レポートを返信する、という通信講
座の普通のパターンでしたが、あれはなかなか手ごわかったです。

 細菌などに関する生物学的な知識のところはおもしろかったので
すが、製造機械についてや、仕入れ先の管理について、などは難し
かったです。

 HACCPについて勉強したときに改めて思ったのですが、こう
いう欧米風の合理主義、というものの思考方法が日本的なものと全
く違う、ということがあります。

 「絶対的な安全性」を要求するのが、日本的思考方法で、「ダイ
オキシン0運動」などがその典型です。

 HACCPなどに代表される思考方法は、事実を率直に評価し、
利益と被害を検証して、実施可能な方策を策定する、というあたり
まえのことを要求します。そしてその方法の公開と第三者による検
証が何より大事だ、と考えるのです。

 日本的方法では、要求された側は事実を隠す方に走りがちです。
優劣は明らかですので、私も含め、日本的な思考方法=建前での潔
癖主義と当事者としての事なかれ主義は思い切って排除していく必
要があると思います。

 うう、今回は思い切り硬くなってしまった・・。

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