安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>346号


-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--安心!?食べ物情報--Food-Review-----------------------------
-------------------------------------346号--2006.06.25------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「いただいたメール」「サプリメント・プラスチック(Q&A)」
「牛乳」

-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--〔話題〕--------------------------------------------------

 こんなメールをいただきました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 マーガリンやショートニング等の製造時に含まれるトランス脂肪
酸についてお尋ねします。不飽和脂肪酸で、LDLコレステロールを
増加させ、大量摂取により動脈硬化や心臓疾患にリスクを高めると
のことですが、諸外国と比較して日本は、その摂取量が少ないとさ
れてます。WHO/FAOの合同専門会合では、トランス脂肪酸の
摂取量は、最大でも一日当りの総エネルギー摂取量の1%未満とす
るよう勧告しているそうです。

1.実際に流通されているマーガリンやサラダ油、ラード等の身近
な食品にはどの程度のリスクがあるのでしょうか?

2.国内の食用油脂メーカーでは、不飽和脂肪酸でもシス型への切
替え等、技術的・コスト的に検討されているのでしょうか?(日清
オイリオあたりは既に準備を終えているとのことですが・・・)

3.これらの油脂を原料として利用し、食品を製造販売されている
企業(菓子メーカー・フライ冷凍食品メーカー・フライドチキン・
ドーナツ等のチェーン等)にとって、今後大きな取組み課題となる
のでしょうか?

 業務上、フライオイルとしてサラダ油を使用しており、サラダ油
自体を飲食チェーンへ供給しており、ユーザーからの問合せに答え
を持っておきたい思いお問合せします。ご多忙とは存じますが、よ
ろしくお願いします。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 こういうことを私に聞くのは、お門違いというものです。実際の
商品を扱っておられるようですから、調べて教えてほしいくらいで
すね。

 まずおこなうべきことは、情報の収集でしょう。一般的な情報は
お持ちのようですから、実際の商品のトランス酸の含有量を調べ、
どう評価すべきかを検討してみたらよいと思います。

 私はこの件ではあまり心配していませんが、メーカーがこういう
問題に取り組むことはよいことだと思います。注意しておかなけれ
ばいけないのは、あまりに過激な手段に走って、かえってリスクを
高めてしまうことでしょうね。トランス酸を減らした結果、有害な
物質が発生してしまったというのでは、笑い話にもなりません。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

------------------------------------------------------------

Q.昨日サプリメント(L-カルニチン)を病院で買いました。購入
後それには甘味料としてアスパルテーム・L-フェニルアラニン化合
物が入っているのに気づきました。それで渡辺先生の過去の記事で
アスパルテームを取り上げているのを読み、それほど気にしなくて
もいいのかなとは思ったのですが、一応どのような感じか再度お伺
いしたくメールしました。以前は精子に影響があるやらないやらで
結局その後どうなんでしょうか?アスパルテームが仮に精子に影響
を与えるなら卵子に影響も与えるのかなとか、妊娠中は摂らないほ
うがいいのかなとか思っていました。気になるなら購入したサプリ
メントを中止すればいいのですが、私にとってかなり高額だったの
で(L-カルニチン1か月分7700円)捨てることはできないし。どう
しようか迷っています。どうかアドバイスお願いいたします。

------------------------------------------------------------

A.L-フェニルアラニンというと何だか怖そうですが、実はタンパ
ク質ならどこにでも含まれている、ありふれたアミノ酸です。毒性
などは一切ありません。

 「L-」とつくのは、厳密にいうとアミノ酸には2種類の立体異性
体があるからです。事実上は「L-」しか存在しませんから、普通は
省略します。わざわざつけるのは、厳密を期したい場合か、単なる
こけおどしです。

 唯一、フェニルケトン尿症という先天性の病気を持って生まれて
きた赤ちゃんの場合のみ、フェニルアラニンは避けるべきだとされ
ています。産科の病院では必ずこの検査はしますので、何も言われ
なければ心配することはありません。

 アスパルテームはフェニルアラニンを含む化合物です。タンパク
質なら含んでいて当然と考えられますが、甘味料ですので、あらか
じめ含まれていることを記載しておくわけです。しかしフェニルケ
トン尿症の赤ちゃんがアスパルテーム入りの食べ物をとる可能性は
まずありませんから、余計なお世話だという気はします。

 というわけで、アスパルテームについては心配することはありま
せん。しかしこのサプリメント自体はどうなのでしょうか。

 カルニチンが欠乏すると脂肪の代謝が阻害されるそうですが、余
分にとったからといって、脂肪を余分に分解してくれるものなので
しょうかね。気分の問題だからどうでもよいのですが、それにして
も高価なものです。こんなものを病院で売るというのは、いかがな
ものなのでしょうか。私はこの病院の信頼性を疑った方がよいと思
います。

------------------------------------------------------------

Q.今までにも同じような質問があったのですが、不安なので質問
させてください。夕飯に残り物のたこ焼きを食べたのですが、プラ
スチックの容器ごと電子レンジで加熱してしまい、レンジから取り
出すと容器に穴があいていました。しかし、最初から開いていた穴
だと思い、そのままたこ焼きをたべてしまいました。しかも、たこ
焼きにはマヨネーズとチーズをかけて加熱し、食べてしまいました。
溶けたチーズに溶けたプラスチックが混じっていたかもしれません。
ダイオキシンなどの有害物質は脂質に溶けやすいらしいですし、とて
も心配です。病院に行った方がいいのでしょうか?

------------------------------------------------------------

A.プラスチックというものについて、いろいろと誤解があるよう
ですね。食品用に使われるプラスチックには、いろいろな種類があ
ります。また、食品用としての衛生基準もあります。毎日使ってい
て、有害な成分が溶けて出てこないことを見ているのです。

 プラスチックは巨大な分子(高分子)です。こういうものは私た
ちの体内に入っても、まったく消化吸収されないので、生理的には
意味はありません。つまり、毒でも薬でもないのです。

 高分子にならない、単体の物質の毒性はいろいろですが、最も多
く使われているポリエチレンやポリプロピレンの単体分子は極めて
低毒性で、無害なものであることが知られています。一般に、食品
用のプラスチックは、食べても無害であると思って間違いないです。

 もちろん、食べるものではありませんし、加熱による変質なども
考えると、レンジで穴をあけたりしたものは食べない方がよいので
す。しかし、そのこととすぐに被害があるように思うのとは違いま
す。

 いったい、どのような被害が現実に起こり得ると考えておられる
のでしょうか?このあたりが私にはわかりません。単に気持ち悪い
ということなのでしょうか?

 私たちは日々、いろいろなものを取り入れ、外部からも影響を受
けつつ暮らしています。複雑にからみあったそれらの要素が、どの
ような結果を招くのかは人知の及ぶところではありません。しかし
案外平然と暮らしているわけですから、よっぽどのことがない限り、
別に心配しなくてもよいのです。

 そういう心配を昔の人は杞憂と呼んでいます。これは杞という国
の人が天が落ちてくることを心配していたという話から、心配して
も仕方ないことを心配するという意味です。心配しても仕方ないと
いうことには二つの意味があり、一つには実際にはまずおこらない
こと、もう一つはたとえおこったとしてもどうしようもないことで
す。

 私にはご心配の件は、まさしく「杞憂」と考えるべきものだと思
われます。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「牛乳」
------------------------------------------------------------

 2年間連載記事を書いていた「食生活」という雑誌から、原稿の
依頼が来ています。牛乳について書くことになっています。きっか
けは今年の春におこった、牛乳の廃棄事件です。意外とマスコミは
センセーショナルにやりませんでしたが、衝撃的な事件ではあった
と思います。

 牛乳が余った原因は二つあります。一つは生産の増加で、もう一
つは消費の減少です。この二つがそろえば、当然余って困ることに
なります。その典型が「米」なのですが、穀物は貯蔵がきくため、
とりあえずはしのげます。

 余った米を北朝鮮に送ったということもありました。50万トン
の米を、政府の財政負担で処分してもらったのですから、米の関係
者は助かりました。

 牛乳も、加工品にして貯蔵すればよいのでは?という声が聞こえ
てきそうですが、実はとっくにやっていて、その加工品の在庫負担
が大きくなりすぎたから、廃棄せざるを得なくなったわけです。

 また、こんなこともやっています。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 農林水産省は20日、牛乳の余剰対策の一環として、脱脂粉乳を
ウズベキスタンに援助する方針を明らかにした。同国で栄養不足に
なっている子供が対象。NGOの申請に基づいて外務省が審査して
おり、2、3週間で承認される見通し。国内で余った牛乳を途上国
への緊急援助に回す考えは、4月に中川昭一農相が表明していた。

http://cobs.mycom.co.jp/news/2006/06/20/eco/1817023.html
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 脱脂粉乳といえば私たちの世代では学校給食を思い出します。あ
れもアメリカからの援助物資でした。

 さて、牛乳の生産が増えた背景には、牛肉生産の活況ということ
があります。アメリカ産牛肉の輸入禁止はようやく解除されるよう
ですが、この結果、国内産の牛肉が儲かるようになり、子牛が高く
売れるようになったのです。

 案外知らない人もいたりしますが、乳牛は子牛を生んだ後でない
と乳を出しません。これは当たり前ですが、人間と違って、乳を出
している間に、次の子牛を妊娠しているのですね。これを数回、繰
り返します。

 生まれた子牛は雄か雌かどちらかです。雌牛の場合は乳牛に育て
ますが、昔は雄牛は処分していました。北海道の開拓時代、雌牛が
多く生まれるとやっていけたが、雄牛が多いと廃業せざるを得ない、
などという話が伝わっていました。

 その雄牛を、肉用に飼育することがはじまって、かなり様相が変
ってきました。雄牛でも利益をあげられるようになったのです。そ
の利益が大きくなってきたのですから、どうしても増産圧力がかか
ってしまったのです。

 もちろん現実はそんなに単純ではありませんが、こういう要素は
確かにあります。アメリカのBSEが日本で牛乳を余らせたという
のは、風が吹けば桶屋が儲かるような話ですね。

 牛乳の処分に困っている背景には、国際的な理由があります。日
本の牛乳は品質・価格の両面で、国際的には通用しないのです。バ
ターなどはほぼ全面輸入禁止になっていますが、チーズはそういう
わけにいかずに輸入されています。このあたりの国際競争力がない
ため、余った牛乳はすぐに行き場をなくすのです。

 そこで「援助」という発想が出てきていますが、私は基本的によ
くない発想であると思っています。理由は以下のようなところです。

(1)援助や補助金付きの輸出は国際貿易の健全な発展を妨げる。

(2)物資の援助は被援助国の経済発展にとって、必ずしも助けに
はならない。(被援助国の都合にもよるが、援助は必要最小限に、
できるだけ現物を押しつけるのではないやり方が望ましい。)

(3)本質的には経済的な失敗であり、生産者が責任を負うべき性
質のものを、国が税金を使って助けるのは平等原則からはずれる。

 緊急避難的なものまで文句をつける気はありませんが、よくない
方法であるということは考えてほしいと思います。

 この脱脂粉乳の援助問題を検索していたら、こんなニュースも見
つかりました。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 北海道などで生産過剰に陥った生乳を、栄養不足や飢餓に苦しむ
国向けの緊急援助に充てるという中川昭一農相の提案に、援助団体
関係者から疑問の声が噴出している。

 農水省は生乳を加工した脱脂粉乳を送る方針だが、粉乳を溶かす
には清潔な水の確保が不可欠で、被援助国ではそうした水の確保が
難しいからだ。

 農水省は2004年のスマトラ沖地震の際も脱脂粉乳の援助を検
討したが、インドネシアなど各国政府から「水の確保が難しい」と
断られており、職員の間には「北海道出身大臣の地元向けアピール
だったのでは」と冷めた見方も。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060524-00000169-kyodo-soci
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 実際にこうした心配はあって、援助先があまり必要なさそうなウ
ズベキスタンに落ち着いたのはそうしたことも考えた上なのでしょ
う。

 しかしこうした話がおおっぴらに語られるのは困ったものだと思
います。

 このニュースでは、水のことを配慮しないという点で、農水省を
批判しているようです。しかし国民がきれいな水を飲めるように努
力するのはその国の努めなのではないでしょうか。批判すべきは安
全な水の確保もできないでいる、被援助国のように思います。

 スマトラ地震のときのことが話題になっていましたが、そういう
災害時はともかく、平時ならなぜ安全な水が確保できないのか?と
問うべきでしょう。

 安全な水の確保のために、援助が必要なら援助するのが正しいと
思います。しかし当事者であるその国の人たちの努力がなければ何
をしてもむなしいものです。現実におこっているのは、そうしたこ
とです。

 さてさて、牛乳が余ることのもう一つの原因である、消費の減少
の方はどうでしょうか。まず考えられるのは、食生活の多様化や高
齢化の進行でしょうね。

 牛乳が競合しているのは、ペットボトル入りのお茶や水なんかで
す。ほとんど同じような値段で売られていて、あちらはカロリーが
ないので食品とは言い難いものなのに、そういうものを選ぶ消費者
が増えています。

 実は牛乳は成分が濃すぎて、喉が渇いたときに飲むとかえってい
けません。赤ちゃんに牛乳を飲ませるときは、同じ量の水分をとら
せなさいと言われたことがあります。要するに牛乳は飲み物ではな
いのです。

 この「牛乳は飲み物ではない」ということをアピールしたいもの
です。でも、牛乳を飲む主力であった子供の数がどんどん減ってい
るのですから、やはり先行きは明るくありません。

 その上に、「牛乳有害説」というトンデモ理論が流行していると
いう話は前に書きました。踏んだり蹴ったりの牛乳生産者ですが、
やはり牛乳に関しては一番の当事者なのですから、何とか踏ん張っ
てほしいと思います。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 原稿の依頼を2つ、受けています。書くのはぞんなに気にしない
ので、気軽に受けていますが、そろそろ締め切りが…。締め切りが
近づかないとやる気にならないのは困ったものです。

 ふだんの仕事でもそうですが、私の方針は「明日でよいことは今
日するな」です。今日でないといけないことだけ、今日しようとい
うのです。おかげでこの文も、日曜日の朝になってから書いていま
す。

------------------------------------------------------------
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
-346号----------------- e-mail why@kenji.ne.jp -------------
--発行--渡辺--宏------- URL http://food.kenji.ne.jp/
------------------------------------------------------------
「宮沢賢治の童話と詩 森羅情報サービス」
http://why.kenji.ne.jp/
------------------------------------------------------------
 購読者数4887名です。ご購読ありがとうございます。
------------------------------------------------------------
私あてのメールのあて先は、
why@kenji.ne.jp
私のホームページ(「安心!?食べ物情報」)は
http://food.kenji.ne.jp/ です。
バックナンバーもすべて、このページで読めます。
【まぐまぐ】
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
マガジンIDは21668です。
このメールマガジンの登録や解除は
http://food.kenji.ne.jp/food2.html へ。
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/