安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>34号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------34号--2000.06.25------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     「抗生物質」
     「ソース」
     「カニ」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

以下のようなメールをいただきました。ありがとうございます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

生マグロの水揚げ日本一は、宮城県の塩釜港です。今、水揚げされ
ているのは、黒マグロだと思います。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 先日も紹介した話ですが、NHKのホームページの掲示板にのっ
た意見で、抗生物質の話がありました。

 その人はどうも、抗生物質が食品添加物のように使われていると
思っているようで、これはとんでもない誤解というか無知というか、
まあ批判しても仕方のないことですが、抗生物質についてすこし書
いてみます。

 抗生物質といえば、私たちの世代ではペニシリン、とすぐ思い浮
かびます。私は昔盲腸炎と診断されたとき、どうしても手術が怖か
ったので、勝手に友人から入手したクロロマイシンを飲んでなおし
てしまった、アホな経験をもっています。(おかげで今も私の盲腸
は健在です。)

 現在でも純然たる人工の物質としての抗生物質は存在しません。
それではどうして生産されるのかというと、ご存じのようにカビな
どの微生物が生産するのを利用しているのです。

 このような物質は自然界では一般的に存在するものです。たとえ
ばほとんどの樹木は、その根元から一定の範囲では、他の種子の発
芽を妨げる物質を出していることが知られています。

 これは自分自身の種子であっても、あまり親の木の近くに落ちた
ものは発芽しないようになっているのだそうです。

 抗生物質は微生物には破壊的な作用を持っていますが、人間自身
には無害といっていいものです。これは抗生物質を生産する微生物
自身の利害関係によるので、要するに微生物から見れば人間を攻撃
しても意味はない、ということです。

 それでは食品に抗生物質が含まれていると、どういう問題がおこ
るかというと、まず第一には、人間の体内に棲息している微生物に
とって、重大な影響がある、ということがあげられます。

 体内、特に腸内には大量の微生物が棲息していて、それぞれに勢
力をあらそいながら、均衡を保っています。この腸内の細菌相は、
その人間の健康にとって、重大な影響力をもっています。

 不用意な抗生物質の服用は、この腸内の細菌を一掃してしまった
りすることがあります。このように外部の力で腸内の細菌相が乱れ
た場合、それまでおとなしくしていた微生物が突然暴れ出すことが
あります。また、一掃するほど大量でない場合は、体内で耐性菌が
登場することがあり、いざというときに抗生物質が効かない、とい
う可能性があるのです。

 このような理由で、あらゆる食品から、抗生物質は検出されては
いけないことになっています。抗生物質が使用されている恐れのあ
る食べ物としては、牛・豚・鶏という畜産物が考えられます。

 家畜に抗生物質を与える、というのは、当然病気を防ぐため、と
思っていたのですが、豚などでは、抗生物質をやった方が飼料の効
率が良い、つまり少ない餌でよく太る、ということがあるのだそう
です。

 一説には、抗生物質が細菌を抑えるため、腸内での細菌の活動が
弱まり、その結果、腸に対する刺激が弱くなって、腸の運動がゆっ
くりになり、栄養の吸収が良くなる、ということがあるそうです。
(ホントカナ・・)

 乳牛では、乳房炎の治療のために抗生物質が使われることがあり
ます。前にも書いたと思いますが、牛用の抗生物質には、色がつけ
てあり、抗生物質が牛乳に出てくると、牛乳に色がつくようになっ
ています。この色はいくら薄めてもわかるため、1頭でも抗生物質
が混じった牛乳があれば、その牧場の全部の牛乳が販売できなくな
ります。

 牛乳メーカーでは、当然ながら、抗生物質が検出された牛乳は買
い取りません。で、人間用の抗生物質を使えば良い、という手口で
不正を働く人がいる、という噂を聞いた事がありますが、まさか事
実としてはないと思います。

 抗生物質の問題点としては、もう一つ、耐性菌の登場ということ
があります。WHOでは、特定の種類の抗生物質は、耐性菌対策と
して、通常は使わないように、というように提案していますが、そ
の限定的使用という範疇に入るバンコマイシンが日本では売り上げ
の多い薬の表に堂々と顔を出しています。

 抗生物質に対する耐性は、いままで思われていた以上に簡単に獲
得することができるようです。実験では、抗生物質にさらされてい
る環境に、耐性を持った菌をいれてやると、すぐに他の、今まで耐
性のなかった菌まで、耐性を持つようになるということです。

 これは細菌同士で、耐性を司る遺伝子をやり取りしているため、
ということで、どうして遺伝子がそんなに簡単に出入りするのか、
またどうして他の細菌に、耐性を持っていることを伝えるのか、ま
ったく不思議な話です。

 でも、せっかく獲得した抗生物質に対する耐性ですが、耐性菌を
撃退するのは、実は簡単なのだそうです。というのは、耐性を持つ
こと自体が、細菌にとっては負担なので、抗生物質にさらされてい
ない環境では、耐性を持った菌は耐性を持たない菌との競争に負け
て、勝手に滅んでいきます。

 これが耐性菌が病院の中でだけ問題になる、原因です。使えば必
ず耐性菌が登場する、使わなければ耐性菌は姿を消す、という実に
明快な仕組みになっています。

 食品の安全性を確保するには、このような微生物の動向を、どの
ようにして制御するのか、という問題があります。何しろ目に見え
ない相手なので、なかなか大変なのです。アニメでも、いかにも強
そうな巨大な敵より、微生物などの形をとった敵の方が対処しにく
い、というのがありましたが、まさしくそのとおりです。

 その目に見えないものを見、まだ食べていないものの安全性を保
証していく、というのが、HACCPと呼ばれるシステムです。こ
れは私に云わせればきわめて合理的な考えに基づいたもので、反対
する理由などはないはずなのですが、なぜか目の敵にしている人も
あるようです。

 HACCPというのは、いなるものか、という話はまた次回に持
ち越します。ご意見や情報があれば、お寄せください。

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--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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 今週は休みます。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「ソース」
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 ソースといえばウスターソースというイメージがあります。洋風
の醤油として、食卓に置いている家はいまでも多いのではないかと
思います。

 ウスターソースが黒いのは、実は醤油の色が関係しています。ウ
スターソースの原料として、野菜、香辛料とともに、醸造酢、醤油
は欠かせないものです。

 ずいぶん昔になりますが、ウスターソースを作ってもらったとき
の話です。御多分に洩れず、化学調味料なしで作ってみよう、とい
うことで作ってもらいました。

 ウスターソースの主原料は野菜、果物を煮詰めて作ります。そこ
に香辛料を加えるとき、化学調味料なしだとどうしても「カド」が
たち、私などは美味しいと思うのですが、子供たちには不評でした。

 熟成に力を入れて、なんとか美味しいものにしようと努力したと
聞いていますが、限界はあったようです。

 もちろん、原料のコストの関係はありますので、コストを気にせ
ずに作れば、また違ったのでしょうが、市販のものより安い価格を
目指そうとしていたのです。

 同時につくったとんかつソースは、わりと好評でした。だいたい
ウスターソース1に対してとんかつソース2の割合だったと思いま
す。

 とんかつソースというのは、基本的にはウスターソースと変わら
ないのですが、甘口にして、とろみをつけています。

 甘口というのは単に砂糖が多いだけですが、とろみをつけるのに
はコーンスターチなどの澱粉を使います。その分、ウスターソース
ではカドがたった、ソースの辛味が緩和され、子供たちにも好評だ
ったようです。

 時代が下って、何倍かの値段になるのですが、もっとリッチなタ
イプのソースがたくさん出てきたとき、時代の流れを感じたもので
した。野菜、果物などの原料をふんだんに使ったものは、確かに美
味しいものですが、化学調味料の助けは相変わらずいるように思い
ます。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「カニ」
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 今ごろカニの話というのも変ですが、カナダ、アラスカ方面では
今、カニ漁の季節だと思います。

 しばらく前にカニすきが流行したことがありますが、冷凍のカニ
がカナダ、アラスカからたくさん入ってきたことがその背景にはあ
ります。

 日本海の冬の味覚と思われているカニですが、普通の旅館などで
食べるカニは、実はこうして冷凍で輸入されてきたものです。

 本当の日本海産のカニを食べられるお金持ちは、そんなにいない
でしょう。日本海産のカニが必ず美味しい、という保証があるわけ
ではありませんので、別にうらやましくはないですが。

 漁協関係では、北海道の漁協が輸入して、全国のカニの消費地に
分配する、という流通ルートができているという話です。

 日本でもカニは獲れないわけではないのでしょうが、価格、品質
の点からは輸入品に頼らざるを得ないという事情があるのです。

 産地では割当量が決まっていて、豊漁の年はその年の量をほんの
何日かで獲ってしまうこともあるそうです。そういう場合、冷凍処
理の設備の能力を越えてしまい、せっかく獲ってきたカニの処理が
遅れ、品質が落ちて却って困るということです。

 特にカナダでは、カニは生きているうちに処理しなければならな
いそうで、漁獲量の管理や冷凍処理の管理に関しては、きちんと運
営されているようです。

 近年はおなじみのズワイガニよりも、もう一廻り大きい、タラバ
ガニが出回っています。カニもタラバガニほど大型になると、蜘蛛
の仲間だというのが実感として感じさせられます。

 このタラバガニは主にロシアの太平洋岸が産地です。長い間、手
つかずの資源だったので、今は豊富にありますが、資源の管理がき
ちんとされているわけではないので、いずれ手に入らなくなる性質
の食べ物だと思います。
 
 カニは生きたままの姿で冷凍されてきますが、普通は国内でいっ
たん解凍した後、食べやすいようにカットしてから市販されていま
す。

 ところがこのとき、普通に処理すると困った事がおきます。カニ、
エビのたぐいに共通の問題なのですが、「黒変」ということがあり
ます。

 冷凍のカニを自然解凍して、しばらく置いておくと、だんだんと
黒くなってきます。特に関節の部分がひどいのですが、真っ黒にな
ったのはちょっと気持ち悪い感じです。

 本で調べたことがあるのですが、この黒変のメカニズムはまだよ
くわかっていないようでした。

 そこで、「黒変防止剤」というものが登場します。実態は単なる
亜硫酸塩ですが、亜硫酸塩を付けておくと、なぜか黒変が防止でき
るのです。カニの加工場のマニュアルでは、一定以上の濃度の亜硫
酸が残留するように求められています。

 亜硫酸処理は実は産地の一次加工(冷凍処理)の時点ですでにさ
れているようです。しかしその時は大した濃度ではないので、国内
での加工時に、もう一度亜硫酸処理をすることがほとんどです。

 亜硫酸塩といえば、ワインに使われていることで有名です。フラ
ンス領ニューカレドニアで、現地で生産されているエビに亜硫酸塩
を使わないように頼んだら、そんなものはワインにたっぷり入って
いる、とけげんな顔をされてしまいました。

 たしかに毒性の面からいえば、別に問題のあるようなものではな
いので、日本人の潔癖症といわれてしまえば、たしかにそのとおり
のことではあります。

 ビタミンCで同じように処理できるという話もありますが、亜硫
酸がダメでビタミンCなら良い、というのも変なものです。

 冷凍のカニを解凍するとき、このような理由で、ゆっくり解凍し
てはいけません。調理するまで冷凍しておいて、直前に流水にさら
して急速に解凍してください。黒変そのものは腐敗とは関係ないの
で、気にしないのなら、それで結構ですが。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 ニューカレドニアの水産研究所には、フランス人の研究者がたく
さんいました。彼らの話は(もちろん通訳つきですが)じつに論理
的に明快なもので、同行した日本人の感性とは、なかなか合わなか
ったのを覚えています。

 ちかごろの日本サッカー協会のどたばたを見ていると、トルシェ
さんもやっぱりあのフランス人と同じだなあ、という感想を持って
います。

 サッカー協会の日本人はちょっと情けない、と私は思うのですが、
それも日本の国民性というものかもしれません。

 今回ちょっと言及したHACCPというのは、はやりのISOシ
リーズ(9000とか14000とかいうやつ)と同じ考えの元に
組み立てられた、論理的に実に明快なものです。

 そういう明快さをきらう心が私たちの中にあるのかもしれない、
などと思うこのごろです。

 今回はちょっと不調で、とりとめのない話になってしまいました。
皆さんのご支援のメール、お待ちしています。

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