安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>3号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
---------------------------------------3号---1999.12.11-----
--〔今週の内容〕--------------------------------------------
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--〔話題〕--------------------------------------------------

 今回は「乳牛」の話です。

 商品としての「牛乳」の話は「食べ物情報」に譲って、実際に乳
牛を飼っている牧場の話です。

 あたりまえの話ですが、牛乳を出しているのはみんな雌の牛です。
でも、雌牛がみんな牛乳を出すわけではなくて、これもあたりまえ
の話ですが、子牛を出産して間も無い母牛だけが牛乳を出します。

 乳を搾る期間は出産後1年弱です。牛の妊娠期間もだいたい同じ
なので、健康な乳牛は、たいてい、搾乳しつつ、次の子牛を妊娠し
ているのです。

 産まれた子牛は、雌であればそのまま育てて、乳牛にします。雄
なら、昔は育てなかったりしたそうですが、今は肉牛として、育て
ます。

 なぜ、こんなことを書いているかというと、卵をどんどん産む鶏
や、一度に10頭前後の子を産む豚と違って、一生に数頭しか子を
産まない、牛という家畜については、どのようにして繁殖させるか
がとても重要なのです。

 妊娠させるのには、たいてい人工授精です。普通、乳牛の牧場に
は雄牛がいないのは、冷凍の精液が供給されているためです。最近
はそれどころでなくて、有力な血統の乳牛の受精卵や、肉牛にする
ために、和牛の受精卵を着床させたり、はては双子を産ませる研究
があったり、と結構やりたい放題です。

 経済動物である以上、文句をいっても始まらないかもしれません
が、なんだか気持ちのいい話ではありません。

 産まれた子は初乳だけは飲ませますが、あとは人工栄養です。ち
ょっと可愛そうですが、これはしかたありません。

 大都市近郊の場合、大人になって、乳牛になるまで、北海道の育
成牧場にあずけられたりすることが多いのですが、とにかく、乳牛
の子(雌)が乳牛になる、という関係は成立しています。

 牛乳は毎朝夕、真空搾乳機を使って搾ります。昔は手で搾ってバ
ケツに入れ、牛乳缶(ローソンの看板にあるやつです。)に入れて
運んでいたのですが、今ではそんなことをしているのは最低の牛乳
です。

 搾乳機からパイプを通って、冷蔵タンクに送られ、すぐに冷却さ
れることが、良い牛乳をつくる必要条件です。

 毎日、または隔日にメーカーの集乳車が集めにきます。工場に集
められた牛乳はだいたいその翌日に殺菌、パック詰めされ、出荷さ
れていきます。

 昔の本には1日に20リットルくらいの乳量が普通だと書いてい
ましたが、今は改良が進んだのと、経費がかかるようになったのと
で、30リットル前後にもなってきているようです。

 乳牛は乳房が傷みやすかったり、妊娠中だったりで、普通は放牧
というか、自由に外を歩いたりはさせません。つなぎっぱなしでか
わいそうですが、一番進んだところでは、ある程度の運動の機会の
あるところもあるようです。こんなところでは、搾乳はエサを食べ
にきたところでします。搾乳と食事とを同時にする場所に、牛が自
分で並んで、順番をまっているのは、ほほえましい光景です。

 牛は4つの胃を持つ「反芻動物」です。本来は草だけで生きてい
ける動物ですが、良い牛乳を出すためには、穀物もエサとして与え
ます。また、草も、充分な牧草地を確保できていないところでは、
輸入の干草を与えています。

 このエサの与えぐあいが難しく、穀物系の濃厚飼料が足りないと、
牛乳の品質が悪くなり、牧草系の粗飼料がたりないと、牛の健康を
保つのが難しくなるそうです。

 ちゃんと飼っているところでは、牛というのは人になつく動物で、
見学に行くと寄って来るのですが、とても大きいので、ちょっと怖
いです。

 牛のトラブルで一番多いのは、毎日の搾乳による「乳房炎」です。
清潔が一番なのですが、どうしてもダメなときは抗生物質を投与し
ます。もちろん、この場合は牛乳は出荷されません。

 おもしろいのは、牛用の抗生物質には着色料が含まれていて、抗
生物質が残留しているうちは、牛乳に赤い色がついて出て来るので
す。この色はどんなに薄めてもわかりますので、1頭でも抗生物質
を投与された牛の乳が混じると、その牧場の牛乳全体が引き取って
もらえなくなるのです。

 何事にもわるい人がいるもので、牛用ではなく、人間用の抗生物
質を注射したりする人がいるという噂もあります。一応、工場では
抗生物質の検査はしていますので、全体としては問題となることは
ないとおもいますが・・。

こうして集められた牛乳は工場で殺菌・容器詰めされて出荷されて
いきます。殺菌と容器については、「食べ物情報」に書きます。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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例えば、パンについても、「イーストフード」という物が「イース
ト」とどう違う物なのか、とても気になっています。


 いただいたお便りから、「イースト」についての質問がありまし
たので、書いてみます。

 「イースト」というのは、日本語で「酵母」です。とても簡単で
すね。こんな簡単なことが何故疑問に思われるかというと、「天然
酵母」と「イースト菌」という対比を語る人がいるからだと思って
います。

 同じものをこのように言葉を変えることで、全く違うもののよう
な印象を与えるのです。

 この場合、「イースト菌」という言葉がさしているものは、市販
されている、純粋培養された酵母で、「天然酵母」という言葉がさ
しているものは、売っている本人が「天然」である、といっている
か、家庭で野生酵母(どこにでもいます。)を培養したものである
か、です。

 どちらにせよ、動物園の虎を「天然の虎」と言っているようなも
ので、間違いとも言い切れませんが、変な表現です。

 酵母というのは、カビの中で単細胞で生活しているものの総称で
す。同じ微生物でも、細菌よりずいぶん大きくて、生活スタイルも
ちがいます。

 主な働きは、糖分を食べて、二酸化炭素とエチルアルコールを発
生させることで、パンやお酒の醸造にはなくてはならないものです。
また、味噌、醤油、漬物など、あらゆる醸造物に一役買っている、
極めて有用な微生物です。

 また、どこにでもいるものですので、適当な培養地を作って、自
分で飼うこともできます。ただ、こういうふうにして育てた酵母は
いろんな種類が混ざっているため、醗酵の能力では純粋培養された
ものと比べると劣ります。

 逆にこの醗酵能力の低さを利用して、ゆっくり醗酵させたりする
技もあるようです。
 
 酵母の主食は先にも書きましたように糖分ですが、増殖するため
には、当然、ミネラル分などの微量成分もいります。「イーストフ
ード」というのは、言葉の本来の意味では、字義どおり、酵母のエ
サで、特にパン生地の醗酵用に、不足する酵母の栄養を補うための
ものです。(酒などのもろみは栄養豊富です。)

 ところが実際は、小麦粉の品質改良剤として使われています。パ
ン生地の醗酵状況を左右するのは、酵母の繁殖次第というより、小
麦粉の膨らむ能力の方だからです。

 かつては「臭素酸カリウム」が主役でしたが、今ではビタミンC
が主になっているものが多くなってきています。

 臭素酸カリウムは問題の多い添加物です。パンを焼く課程で分解
蒸発してしまうので、残留は少ないのですが、そうでなければ、は
っきりいって毒物です。今でも、輸入農産物に昆虫(の卵や幼虫)
が見つかった場合に「薫蒸」されるのですが、この臭素酸カリウム
も使われているようです。

 イーストフードは使わなくても、良い小麦粉を使って、きちんと
醗酵させれば、良いパンはできます。とくにアメリカ風の白くて柔
らかいものを求めなければ、別に問題はありません。ただ、大量生
産しているラインでは、イーストフードを使わない、というのは難
しい、と聞いたことがあります。(今は可能になっているかも知れ
ません。)

 「良い小麦粉」といった場合、国産小麦粉はまず失格です。残念
ながら、国産の小麦はパン用の適性は著しく劣ります。グルテンを
添加すれば、格好はつくようですが、カナダ、アメリカ、オースト
ラリア産のものにははるかに及びません。

 それでも国産小麦が良いか、輸入小麦にするのか、悩ましい選択
になります。小麦の話になってしまいましたが、この話はこれくら
いにします。

 パンの作り方については、別の機会にします。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「牛乳」その1
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 手始めとして、一番関心の高そうな、「殺菌」についてです。

 殺菌しない牛乳は食品として売ってはいけません。必ず、殺菌が
義務づけられています。「60度30分」というのが、有効な殺菌
温度のめやすで、これと同等以上の殺菌効果をもった方法をとらな
ければなりません。

 殺菌などは不必要だ、という意見もあるかとは思いますが、とり
あえず、上記の条件を前提にします。

 現在、主流になっているのは、135度2秒、といった、「UH
T殺菌」です。この方法は殺菌効果は極めて良いのですが、高温を
かけるため、調理臭がつくこと、たんぱく質の変性がおこることが
問題とされています。

 それ以外では、

殺菌温度を140度くらいまであげ、容器殺菌やアルミによる空気
の遮断などを取り入れ、常温での保存を可能にした「ロングライフ」、

75度前後で短時間(15秒くらい)で殺菌する、
「高温殺菌(HTST)」、

65度程度で30分保温する、
「低温殺菌(LTLT)」などがあります。

 低温殺菌以外は、蒸気との熱交換による過熱が主な方法です。い
きなり100度以上まで上げられませんから、予熱の時間も含めた
積算温度が熱変性にとって一番問題といわれています。

 熱変性といっても、別に栄養価が損なわれるわけではなく、栄養
の面からはどんな実験でも差がないことがわかっています。

 熱変性という面では、「LTLT」よりも「HTST」の方が有
利だという説もあります。

 低温殺菌で問題なのは、殺菌効率が低いため、原乳の細菌数が多
いと、どうしても製品の細菌数が多くなり、品質に問題が出ること
です。

 逆に、ある程度きれいな原乳でないと、低温殺菌で製品にできな
い、と考えれば、メリットでもあるわけです。

 製品では1ミリリットル中に5万個というのが基準値ですが、原
乳段階では数百万個、というものもあります。UHT殺菌ならば、
そんな牛乳でも、何とかなるのです。

 低温殺菌で商品化しようとすれば、せめて数十万個、できれば数
万個、の状態で工場まで届く必要があります。搾乳時の衛生管理と、
搾乳からの工場までの、温度と時間の管理が問題です。

(これらの細菌の個数は、顕微鏡で見て数えるのです。したがって、
生きているものと、死んだものとを区別できません。これに対して、
製品の「一般生菌数」というのは、培養して、元の菌数を推定しま
す。この場合は生きている菌だけを数えることになります。)


 かつて、日本の酪農の生産基盤が整備される以前に、UHT殺菌
が普及したため、原乳の細菌数を減らす努力が不徹底であった、と
いうふうに、私は考えています。


 製品中の細菌数でいうと、UHTとLTLTでは2ケタほどLT
LTの方が多くなります。その分、日持ちも悪いのはいたし方ない
ですね。

 LTLTの方が有用菌が多くて、逆に日持ちする、ということを
いう人がいますが、残念ながら、実験するとそのようなことは起こ
りません。

 だいたい、どんな殺菌方法でも、有用菌を残す、というような選
択的な殺菌ができるわけではありません。

 私なりの結論は、よい牧場で搾られた、品質の良い、きれいな原
乳を、低温殺菌したものが一番おすすめできます。低温殺菌ならば
何でもよい、というのは間違いです。もちろん、日持ちが悪いのは
覚悟の上です。

 UHTなども栄養的に問題はありませんので、衛生的には安心し
て利用できると思います。ある程度買い置きしたいときはこちらの
方が良いかも知れません。ただ、味が少し違うので、どちらかに統
一した方がかしこいと思います。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 3号をお届けします。いただいたメールから、やはり牛乳とか、
パンとかが関心が高いようでしたので、こういう内容になりました。

 本文にも書きましたが、「天然酵母」という言い方にすごく違和
感を持っています。「野生」や「自家培養」ならわかるのですが。

 自家培養するのはまだ「天然」といってもよいのかもしれません
が、「天然酵母」というものが市販されているのは、とても変です。

 ブランド名だと思えばよいのでしょうが、消費者をミスリードす
る意図があるような気がしています。

 これに関するご意見、情報がありましたら、ぜひ教えてください。

 (以下は宣伝です。ご存知の方はごめんなさい。)

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--発行--渡辺--宏------- URL http://www.kenji.ne.jp/food/
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