安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>25号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------25号--2000.04.23------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

    「有機農業」
    「かまぼこについて(おたより)」
    「鶏卵」その3(サルモネラの話)

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 「正しい農薬の知識を身につけるマガジン」というメールマガジ
ンが創刊されました。「正しい農薬の知識を身につけるページ」を
主宰されている、大阪の西田さんの発行です。ご本人は、本物の専
門家で、有機農業などにも理解のある方です。以下のURLで登録
できますので、ぜひ、ご覧ください。

http://member.nifty.ne.jp/TATEKI/PESTIC/KANKYOU.html

 以下は、そのメールマガジンへの私の投稿です。採用されるかど
うかわからないので、こちらにも掲載しておきます。

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 有機農業ということへの私の感想です。

 私は、20年以上前(1978年頃)から、野菜の産直ということで、
有機農業といわれる分野での活動をしてきました。当初は、素朴な
主婦と農家との間での、直接購買の仲立ち、という感じだったので
すが、消費者の声に押されて、「無農薬・有機肥料」という、いわ
ゆる有機農業を目指すようになっていきました。

 いきなり「完全無農薬」でやっている、入植者の団体とのつきあ
いもありましたが、中心は普通の農家で、できるだけ農薬の使用を
押さえていく、というやり方でした。

 最初の、「防除歴による防除はしない」というところは簡単にク
リアしたのですが、全く無農薬、というのは、なかなか難しかった
です。野菜に関しては、病気が出たらあきらめる、という原始的な
対応で、収穫が始まってからの農薬は使用しないようにしましたが、
最初から最後まで、無農薬でいける野菜は半分くらいだったと思い
ます。

 そのかわりとして、農薬散布時は、必ず報告してもらう、という
ことをしましたが、来ている報告を見ると、おおむね守られていた
ようです。その情報は消費者にそのまま流しましたので、「有機農
業」を目指しながら、農薬散布の情報が流れてくる、という状況で
したが、情報の正確さというか、正直さでは、なかなか画期的なこ
とだったと思います。

 その後、海外の有機農業の情報に接して、国際的には、誰も「完
全無農薬」などは目指していない、ということを知り、ショックを
受けました。有機農業の定義で、報道からはついも抜け落ちている
のですが、「無農薬」というのは、「使ってはいけない農薬を絶対
に使わない」ということなのです。

 ということは、「使ってもよい農薬」もあるわけで、天然物なら
まずこちらに分類される上、作物によっては、特例として認められ
る農薬もいろいろとあるようです。ピレスロイド系の農薬で、同じ
有効成分でも、天然由来であればOKで、合成品はだめ、というこ
とになります。

 海外の有機農業は基準や認証が厳しく、日本のものより信用があ
りますが、その裏には、不可能なことを要求しない、という合理精
神があるのです。

 このような意味で、「有機農産物の認証があるから、無農薬」だ
と日本人が思った場合、たぶん完全に無農薬と考えていると思いま
すので、これは誤解なのです。

 日本人は何事にも潔癖症で、今も「ダイオキシン0」とか「塩ビ
0」とかいっていますが、これは困った傾向だと思います。

 有機農業の面でも、建前としての完全無農薬と、現場との矛盾が
たいへん大きくなっています。一部、国際基準を取り入れている団
体もできてきていますが、そういうところでも、実際には農薬を使
用していることは、消費者には伝えたくないと考えていると思いま
す。

 国際基準の場合は、ちょっと調べればわかることですが、「日本
基準」の場合は、実態ははっきり言って不明です。

 不可能なことを現場に押しつけただけでは、結果として、現場に
裏切られることになります。私たちのとった方法は、いずれ国際基
準に発展していくべきことでしたが、残念ながらその職場から退職
してしまったので、その後はよくわかりません。

 どんな場合にでも、農薬の使用を認めない場合、農家の生活を保
証できないのですから、国際基準のような合理的な考え方を取り入
れるか、あくまで完全無農薬を主張して、現場の実態には目をつむ
るか、どちらかになるしかないと、私は思っています。(何だか、
核の持ち込みのような話ですが)

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--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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 前回の「かまぼこ」の話について、ご意見をいただきました。

---〔↓引用はじめ〕-----------------------------------------

 蒲鉾の原料に化学調味料を入れてましたが、添加物の方に入れる
べきです。
 それから、蒲鉾が細菌に汚染されていたらわかると書いてありま
すが、それは間違いです。
 私は、ケーキ屋ですが萩の月等のカスタードクリームが、包装が
不完全のために細菌に汚染され、酸っぱくなることがあります。と
ころが、消費者は味に敏感でないために、レモンの味がしておいし
いとよく言います。
 また、注意して商品を作っても、検査をすると細菌数が基準をオ
ーバーしやすいものです。たぶん、一般家庭で作られた料理を検査
したら、ほとんど基準をオーバーすると思います。

---〔↑引用おわり〕-----------------------------------------

 なるほど、というご意見です。

 かまぼこの腐敗の仕方ですが、わりと特殊な現象がおきます。か
まぼこは成形した後、加熱していますので、内部から腐敗すること
はなく、必ず外側から細菌が繁殖していきます。

 カビが生えることが多いのですが、その前に「ネト」という現象
がおきます。文字どおり、表面がネバネバしてくるもので、かまぼ
こ特有のものです。表面に細菌が繁殖して、そういう粘りけのある
ものができてくるのです。

 この段階では、内部はまだ食べられますので、昔はネトが出たか
まぼこは、表面をきれいにふいて、再包装したものだ、という乱暴
な話を聞いたことがあります。(今はまさかこんなことはしないと
思います。)

 というわけで、カビ・ネトなどの現象は目に見えるものですので、
かまぼこの腐敗は、見ればわかるだろう、と思っていました。

 ただし、細菌数の問題としては、ご意見の通りで、ネトが出る前
にでも、細菌数がかなり増えている、ということは考えられます。

 ちなみに、牛乳や生食用冷凍食品の場合、販売の基準は一般生菌
数で5万個/gです。1リットルの牛乳に5000万個の生きた細
菌がいる、という状態までが販売できる限界、ということになって
います。

 おっしゃるとおり、かまぼこの表面の細菌数が、この数字を越え
てしまう、というのはありそうな話です。また、家庭でつくった料
理が、この数字を越えることが多い、というのも、特に作ってから
時間がたてば、大いにありそうです。

 ただし、上記の数字は、販売時点でのものなので、購入後の経過
を考えて、低めの数字になっています。細菌数がこの何倍かになっ
ても、実際は別になんともないです。普通、1億個のオーダーにな
って、やっと腐敗している、という感じになると思います。
 
 貴重なご意見、ありがとうございました。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「鶏卵」その3
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 前2回は「養鶏場の話」としましたが、卵について、3回目にな
ります。

 そろそろ暖かくなって、食中毒が心配な季節です。卵について、
「サルモネラ菌」汚染の心配がある、という話を書きます。

 サルモネラ菌、というのは、チフス菌などの仲間ですが、一般的
にいって、腸の中に普通にいる細菌です。ところが、10年以上前に
なりますが、イギリスなどでサルモネラ菌の食中毒が多発し、多数
の死者まで出て、その原因が卵だった、という事件があたました。

 当時のイギリス政府の高官が、「全ての卵はサルモネラに汚染さ
れている」などと発言して、結果として、イギリスの養鶏業が壊滅
する、というショッキングなものでした。

 その後、イギリスだけでなく、ヨーロッパ・アメリカにこの食中
毒は広がっていき、日本でも、かなりのひろがりをみせています。

 サルモネラの中に、「サルモネラ・エンティリティディス」(以
下「S.E」と表記)という、毒性の強いものがあって、さらに近
年その中でも特に毒性の強いものが現れた、という、大腸菌のO−
157と同じような話です。

 日本では、食中毒といえば、「腸炎ビブリオ」が一番多いのです
が、患者数や死亡者などを見ると、実質的に一番こわいのが、サル
モネラによる食中毒です。そしてこの大部分に「鶏卵」(一部は鶏
肉も)が関係している、とされています。

 要するに、卵は要注意食品なのです。S.Eは鶏自身にとっては、
被害が出ませんので、保菌している鶏も、元気に、卵を生みつづけ
ます。その結果、一定の率でS.Eをもった卵が入ってくる可能性
があります。

 このS.Eがどこから来るかというと、保菌している親鶏から、
生まれた時点で受け継いでしまう、「垂直感染」と、養鶏場などで
持ち込まれる「水平感染」があります。

 このうち、「垂直感染」は、当初大問題になったのですが、欧米
では、親鶏の大規模な淘汰を行い、結果としてかなり改善されてき
ているようです。(日本の鶏は、すべて輸入の親鳥から生まれてい
ます。)

 上記のような対策で、S.Eを防げるという話もあったのですが、
結果としては、保菌していないはずの鶏群からも、やっぱりS.E
が検出されることがあります。養鶏場で持ち込まれているのですが、
感染の経路は不明です。何か一つの対策だけで、完全に防ぐことは
できないようです。

 養鶏場でそれを防ぐ話は別の機会にして、今回は家庭での対処方
法について。

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(1)新鮮な卵を使用しよう。:

 S.Eを含んでいても、卵自身はその繁殖を押さえる力がありま
す。産卵後、新しいものでは、まだ食中毒を起こすほど、S.Eが
増えている可能性はほとんどありません。

 卵には、「賞味期限」を表示するようになったもの、このためで
す。賞味期限は普通、一週間程度で設定されていますので、逆算す
れば、産卵時期もわかります。賞味期限の表示のないものは、いく
ら安くても、避けた方が身のためです。

(2)必ず冷蔵庫で保管しよう:

 卵自身はわりと保存性の良いもので、必ずしも冷蔵庫でなくても、
すぐに悪くなったりしません。ただS.Eの繁殖と温度とは、関係
がありますので、食中毒を防ぐためには、冷蔵庫保管が必要です。

 冷蔵庫内でも、扉のポケットよりも,棚の奥の方が、温度は安定
しているので、パックのまま、棚に置いておくのが、一番良いよう
です。

(3)割ってから長く置かない:

 よく、中華料理店などで、ボールに卵をたくさん割って入れてあ
ったりしますが、あれはたいへん危険です。あの中に一個でも、
S.Eを含んだ卵があれば、一時間ほどで、全体が危険な状態にな
ります。家庭でも、卵は使用する直前に冷蔵庫から出して、割った
らすぐに調理しましょう。

 家庭で死者が出るのは、ほとんど割卵後、放置していた卵です。

(4)加熱は完全に:

 上記の中華料理店でも、普通は完全に加熱してから客に食べさせ
ますので、食中毒にはならないのです。S.Eは普通の加熱で死に
ますので、調理が完全だと、その時点でほぼ大丈夫です。

 生卵を食べる習慣が日本にはありますが、生卵はよほど新鮮なも
のでないと、おすすめできません。

 (5)調理後は早く食べる:

 加熱したからといって、すべての菌を殺すことはできません。わ
ずかでも残っていれば、無菌状態の料理の中では、すぐに繁殖を開
始します。卵料理を、保存しておくのは、やめておいた方が良いと
思います。

 同様の意味で、お弁当などに加熱の完全でない、卵料理を使うの
は心配があります。

(6)要注意な食べ方:

 以前にも書きましたが、「手作りマヨネーズ」は要注意です。市
販のものは、お酢の殺菌力で、無菌状態になっていますが、家庭で
は、あそこまでコロイド状に混ぜることはできません。中でS.E
が繁殖してくる可能性があります。

 目玉焼きで、黄身が流れてくる状態のものは、食べて美味しいの
ですが、加熱としてはしていないのと同じです。アメリカでは、目
玉焼きは、必ず裏返して、両面を焼くように、アピールしているそ
うです。見た目は非常に悪くなりますので、あまりおすすめしませ
んが、それほどリスクのあるものだ、ということは覚えておいてく
ださい。

 食中毒の原因が卵以外の食品であっても、S.E自身は卵に由来
していることがあります。これはまな板などの調理器具を介して、
汚染が広がるためです。汚染の元になった卵は、加熱して食中毒の
原因にならなかったとしても、生で食べる野菜や刺身などに汚染が
広がっていた場合、そちらの方で中毒がおこります。生で食べるも
のには、特に注意が必要です。

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 テレビで「サルモネラチェック済」という卵のCMをやっていま
す。あれと同じようなことをしている養鶏場を訪問したことがあり
ますが、なかなか大したものでした。

 「HACCP」という衛生管理システムを導入しているのですが、
その辺の話は別の機会にしたいと思います。

 食中毒は、5月ごろと10月ごろが要注意です。6〜8月の食中
毒シーズンに多いのは当たり前ですが、このころもあまり減ってい
ないのです。

 行楽シーズンです。お弁当などに、ご注意ください。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 ずいぶんと暖かくなってきました。食べ物に関する危険性も高ま
る季節です。

 食べ物の安全、というと、すぐに食品添加物や残留農薬というこ
とを思い浮かべますが、実際には食中毒が最も危険な因子であるこ
とを忘れてはいけません。

 今回とりあげたS.Eでは、毎年数人の死者が出ています。交通
事故で1万人ほどの死者を出すこの国で、数人の死者をどう評価す
るか、という問題ですが、やはり注意しなければ、と思います。

 法事などで仕出しを取ると、刺身のところには、小さな氷の入っ
た袋がついています。あんなもので効果があるのか、というと、あ
れのおかげで、腸炎ビブリオの食中毒がずいぶん減った、というこ
とです。

 また、わさびの有効成分を含んだシートを、お弁当の上にかぶせ
る、というのも、最近ではよく見かけます。今回紹介したメールを
いただいた方も含め、食品の製造現場では、日々、いろんな努力を
かさねています。

 もちろん、そうした努力をしない、不届きな業者もたくさんある
と思います。「無添加」をかかげながら、衛生管理は最低、といっ
たところまでありますので、私たちはその辺を見分ける必要がある
のでしょうね。

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