安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>22号


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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------22号--2000.04.02------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     「有機肥料」
     「深層水」
     「鰹節・かつおタタキ」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 私の発行している、「宮沢賢治 Kenji Review」というメールマ
ガジンで、宮沢賢治が東北砕石工場で作られた石灰岩末を肥料とし
て販売してあるいた話を取り上げました。

 そこから引用します。

---〔↓引用はじめ〕-----------------------------------------

 肥料について。「砕石工場」の製品が肥料である、ということに
違和感をもたれる方もいると思います。

 実は、肥料というのは、元は石(岩石)なのです。空中の窒素を
固定する方法が開発されてからは、必ずしもそうではなくなったの
ですが、元来、窒素は「硝石」、カリは「カリ鉱石」、リン酸は
「燐鉱石」を粉末にしたものです。

 カルシウムは「窒素、燐酸、カリ」の三大肥料要素には入ってい
ませんが、それに次ぐものです。また日本に多い酸性土壌の中和に
も適しますので、東北地方に多い腐植質の酸性土壌の改良に、賢治
が石灰肥料の普及に努めたのには、正当な理由があったのです。

 石灰石そのままでは、肥料としては効果がありません。細かく砕
くことによって、炭酸カルシウムとして、土壌中で効果を発揮する
ことができるようになります。

 うんと小さく砕くと即効性の肥料になり、粒を大きくすると、ゆ
っくりと効果を発揮する、というふうに制御できます。いずれにせ
よ、砕石の技術は結構難しく、素人が考える、石を砕いている、と
いうだけではないようです。

 ついでに、「有機農業」などという言葉から連想して、有機物が
作物の肥料になると考えている人が多いのですが、実は間違ってい
ます。

 植物は必要な栄養素を「無機物」の形で取り入れます。硝酸、ア
ンモニア、燐酸、塩化カリ、などなどが実際に必要な肥料成分です。

 有機物中の有効元素は、土壌中で最終的に分解されて、はじめて
効果を発揮します。このため、有機物の分解が進みにくい寒冷な地
域や、すぐに分解して流亡してしまう熱帯多雨地域では、有機肥料
だけの栽培は難しいのです。

 岩石の粉末をまいて作物を育てる、農業とはこういうものです。
江戸時代には、山から草を刈って来て、田に敷き混んだりしていま
すが、これもカリなどを補給する効果があったようです。窒素、燐
酸は主に人糞に頼っていました。これらは有機肥料と言えますが、
今では使われることはありません。

 それなら、有機農業とはいったい何だ、ということになりますが、
この話は私の発行しているもう一つのメールマガジン「安心!?食べ
物情報」で扱いますので、そちらをごらんください。

---〔↑引用おわり〕-----------------------------------------

 ということで、こちらで引き取ります。

 有機農業、という言葉をよく聞きます。何となく良いもののよう
で、実態は定かでない部分もあるのですが、実は国際的には、はっ
きりした定義があります。その日本版として、「三年以上、農薬、
化学肥料を使用しない畑で栽培した農作物」というガイドラインが
あることは、ご存じの通りです。

 でも、ここからが問題なのですが、「農薬」とは何か、「化学肥
料」とは何か、という定義の問題があるのです。

 日本流の素朴な考えでは、「一切の農薬を使用しない」というふ
うに考えそうですが、世界はそんなに甘くありません。

 使っても良い農薬といけない農薬を区分し、「使用してはいけな
い」ものだけを「農薬」と定義し、その分は絶対に使用しない、と
いうことなのです。

 使用の有無だけではなく、購入して持っているだけで違反と見な
されるほど厳しいのですが、そういう厳しい基準が維持できるのも、
「全て禁止」という、完璧主義を持ち込んでいないからでもありま
す。

 日本では、完璧主義を持ち込んだが故に、建前と実際が違う、と
いうことが起こってしまっています。原発問題などでも、最近初め
て事故を想定した訓練が行われましたが、今までは「事故は起こら
ない」から、「事故を想定しない」、したがって、「事故に対する
対策をもたない」という「備えなければ憂いなし」という状態でし
た。

 「いかなる場合でも絶対に使用禁止」とやれば、現場ではこっそ
りと使用する、ということが必ず起こります。ダイオキシン騒動な
どでもいつも同じことですか、こういう完璧主義、というか、全体
を見ない考え方は、日本人に特有のものなのかなあ、と思うことが
よくあります。

 有機農産物の認定についても、民間の認定団体の動きはあるので
すが、全体にはやっぱり「お上」頼りの心もとないものです。自分
たちで自主的に基準を決め、自主的に運用する、という行動スタイ
ルがなかなか定着しないようです。

 ISO9000や14000のシリーズでも、認定は認定業者が
する、というスタイルなので、同じような農業に関するISO規格
が制定されれば、そういう業者が進出してくるのでしょうが、農業
者や消費者にどれだけそれを受け入れる素地があるかは疑問の多い
ところです。

 この話はシリーズとして続けます。ご意見をお寄せ下さい。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.(海洋深層水について)疑問だらけです。どなたかご存知の方
がいらっしゃたら、教えてほしいと思います。
(今回は私からの質問です。)

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---〔↓引用はじめ〕-----------------------------------------

A. 以前、話題に上っていた「深層水」について最近NIFTY
の化学フォーラムで話題になったので、その内容からコメントさせ
ていただきます。
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 深層水というのは科学的には深い海にある水塊のことを指すそう
です。水塊とは同じような成分を持った水の集まりのことを指しま
す。しかし、一般的には200mより深い海水のことを指すそうで
す。200mより深くなると太陽光がほとんど届かず、光合成する
生物は非常に少なくなります。このことが、微生物量の少なさにつ
ながります。よって、生物汚染が少なく、栄養塩類が多い水になっ
ています。ですから、この水を汲み上げて養魚場に入れると魚の養
殖に好影響を与えることがあるそうです。

 ちまたで出回っている深層水は四国の室戸岬沖の深度300mの
取水場からとっているそうです。これを浸透膜で脱塩して飲み水や
化粧品に利用されています。こうして得られた水は、普通の海水を
同じように処理した水とは物性が異なる部分もあるそうですが、そ
の理由などあまりよくわかっていないそうです。また、その違いが
健康や美容に役立つという科学的な論証も不十分で、今のところ特
に関係ないと見るべきだと思います。
ーーーーーーーーー

---〔↑引用おわり〕-----------------------------------------

 以上のようなメールをいただきました。ありがとうございます。

 海の水について、少し書きます。

 海での生物の活動は、太陽の光の届く範囲にかなり影響されます。
光合成をする植物性プランクトンが繁殖できるのは、日光が届く、
わずかの範囲だけです。これらの植物が必要とする、栄養塩は、主
に河川などからの流入水に頼っています。

 この植物性プランクトンから食物連鎖が始まるわけですが、すべ
ての段階で、その生物の死骸は、食用とならない限り、海の中を沈
んでいきます。

 ところが、海の水は、表層の水と深海の水は、直接混じり合うこ
とはありません。栄養塩はこうして、表層の水から失われ、深海に
沈んでいきます。

 夏の終わりに海水浴場にクラゲが現れるのは、この時期、表層の
海水が栄養不足に陥った結果です。温かい南の海は、すぐに栄養塩
を使い切ってしまうために、生産力が低くなります。私たちの抱い
ているイメージとは違って、寒い北の海の方が、生産力ははるかに
高くなります。

 表層水と深海水は、永久に交流しないのではありません。代表的
なものとして、北大西洋で表層水が深海に沈み、大西洋を南下、イ
ンド洋を横断し、南太平洋から北太平洋に至って、北太平洋で表層
に浮上する、海の大循環が知られています。

 この深海から上がってくる海水の流れを、「湧昇流」といい、か
つて深海に失われた栄養塩を大量に含む、豊かな海水を日光の届く
範囲にもたらします。

 このため、北太平洋と、支流の深海水が浮上するペルー沖が、世
界で最も豊かな漁場になっています。

 深海水と表層水が混じらない、という研究では、かつて日本政府
が原発から出る放射性廃棄物を南太平洋の深海に投棄しようとして、
研究したことがあります。

 その結果では、1万メートルの深海に沈めれば、ほぼ永久に表層
には浮上しない、ということでした。それほどではなくても、ほぼ
200メートルくらいのところで、海水の境界があるそうです。

 もちろんこの計画は、太平洋諸国から総スカンを喰って頓挫しま
した。

 その後、ロシアの原潜が日本海に沈んだというニュースのあった
とき、この研究結果からは安全なはずなのに、知らんふりをして日
本政府がロシアに抗議していたのは、ご都合主義というものでした。

 ということで、深層水の値打ちは、その栄養塩にあります。脱塩
した深層水に、どのような値打ちがあるかは、やっぱり?です。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「カツオ」その1
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 初ガツオの季節になってきました。

 「目に青葉山ホトトギス初ガツオ」と、初夏の風物とされていま
すが、これは東京あたりまでカツオが北上してくる季節に基づいて
います。

 今では、はるか南方の海上で漁獲していますので、冬の終わりか
ら春の始めが、カツオ漁の最盛期になります。

 カツオは主に1本釣りで、漁獲された船上で冷凍されます。水揚
げ港は鹿児島県の枕崎と静岡県の焼津の2ヶ所がほとんどです。

 和歌山県の那智勝浦港にも少し上がっていますが、これは冷凍せ
ず、生のままで水揚げされるもので、ここに行けば、生のカツオを
食べることができます。

 実際の生産量はよく知らないのですが、枕崎の鰹節、焼津の鰹タ
タキ、というイメージがあります。カツオは生の魚として食べられ
る以外に、この二つの食品の原料として、重要な魚です。

 鰹節は紀州に起源があるといわれています。カツオの燻製を乾燥
させたものですが、製法には独特のものがあります。

 カツオは大きな魚ですので、「5枚おろし」にします。普通の3
枚おろしの片身を、さらに背、腹の二つに分けます。背側を「雄節」
腹側を「雌節」といい、脂肪の少ない雄節の方が上等です。小さな
カツオを原料にしたときは、片身をそのまま使いますが、これは
「亀節」と称します。

 まずある程度乾燥させ、燻製にします。このとき、ハムなどと違
って、桜の木などではなく、山の雑木を適当に燃やした方が、美味
しい、という話を聞きました。

 ここまでで「荒節」になります。削り節などの原料になるのは、
荒節なのですが、実はここからさらに加工するのが本来の鰹節です。

 荒節の表面にカビを繁殖させ、カビの菌糸が鰹節の内部まで入る
と、鰹節の内部から、水分を吸収して、鰹節全体の乾燥がさらに進
み、独特の風味が増します。

 この工程を「かびつけ」といい、できたものを「本節」「枯節」
と云います。ここまでくると一本千円以上する、高級品です。

 私の知っている「だし屋」さんでは、この本節を、夜なべ仕事で
手で削っていましたが、ここまでやると本当に趣味のようなもので
す。でも、それからとっただしは、香り高く、本当に美味しいもの
です。

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 カツオのタタキは表面を焼いてコゲ目をつけ、内部は生のままで
食べるものです。スーパーなどでは普通に売られていますが、この
加工現場を見学したときの話です。

 原料のカツオは丸のまま(加工せずに)冷凍されています。この
カチカチに凍ったカツオを、解凍しないで加工するのがポイントに
なります。

 まるで製材所のような、電動ノコギリで、鰹節と同じように、5
枚おろしにし、内蔵の部分も削り取ります。

 その後、コンベアに乗せて、上下からバーナーで一気に焦げ目を
付けます。この時、表面はこげますが、内部の温度はマイナス18
度以下を保つようになっています。

 つまり、解凍しない範囲で、焦げ目だけをつけるわけです。

 味からいえば、生のカツオを炙って、すぐに食べる、本来のタタ
キが断然美味しいのですが、冷凍ものの場合、このように加工した
ものと、いったん解凍して、タタキ加工してから冷凍したものとは、
決定的に品質が違います。

 高知県の「土佐の一本釣り」漁船の基地である町の工場を見学し
たのですが、なんと原料の冷凍カツオは、焼津からのものでした。

 高知県の漁船も、焼津に水揚げするのだそうです。

 ここでは「タタキ」とは別に、「サシミ」用のカツオも加工して
いましたが、この原料のカツオは、石巻からのものです。

 「戻りカツオ」といって、春に黒潮に乗って北上したカツオは、
夏に北太平洋でたっぷり太って、脂肪がのった状態で戻ってきます。
東北地方で夏の終わりころにとれるカツオは、「トロカツオ」とい
い、サシミに適したカツオになります。春のカツオとは全く違った
味ですが、これはこれで美味しいものです。

 そういえば、サンマも、北海道ではたっぷり脂肪があったものが、
だんだん脂肪がとれて、熊野灘まで来ると、脂肪がほとんど落ちて
しまいます。このため、紀州では「サンマ寿司」といって、サンマ
の寿司を作りますが、これも北海道や東北のサンマでは想像のでき
ないことです。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 今年は桜の花はいつもより遅いようです。そういえば3月は寒か
ったですね。私の住んでいる和歌山では、今年は桜と桃の花見が同
時になりそうです。

 今回の「カツオタタキ」の工場は、高知県でしたので、和歌山か
らは近いようで遠いのです。和歌山から徳島行きのフェリーで2時
間かけて海を渡り、途中、高松に寄って、高速道路で高知まで。

 高知からさらに2時間ほど走って、目的の港町に着くのですが、
焼津からここまで、毎日のようにカツオを積んだトラックが走って
いるのかと思うと、改めて大変さを実感しました。

 工場を出て、足摺岬の方を回って、宇和島で一泊、翌日は八幡浜
のかまぼこ工場を見学して、松山、高松を経由して帰りました。

 四国をほぼ一周したわけです。

 一度は四国八十八カ所の巡礼に出たいと思っているのですが、と
りあえず、車で失礼しました。

 その車も昨年、長男にとられてしまい、代りにもらった原付も、
この春に原付免許をとった次男が乗る、といっていますので、私は
とうとう自転車に格下げです。

 「宮沢賢治 Kenji Review」については、下のURLを見て下さ
い。

http://why.kenji.ne.jp/

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