安心!?食べ物情報>メールマガジンバックナンバー>15号


-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
--------------------------------------15号--2000.02.13------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

     「チョコレート」
     「Q&A:黒砂糖」
     「脂肪」

------------------------------------------------------------
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--〔話題〕--------------------------------------------------
【本物のチョコレート?】

 2月8日の毎日新聞に、チョコレートの記事が載っていました。

 ベルギーで今年1月、カカオ豆を砕いたカカオマスとカカオバタ
ー、砂糖のみで作ったものしか、チョコレートと認めない、という
ことが決まった、という記事です。

 この基準でいくと、日本で売られているチョコレートは、みんな
チョコレートではない、ということになります。

 実はEU内部でも、ベルギー、フランスなど一部の国の主張で、
EU全体としては5%までなら植物油脂の混入を認める、という線
で調整中ということですが、まだもめそうです。

 この手の基準は、その国の文化との関係で、なかなかむずかしく、
いつも国際的にもめる原因になります。

 そういえば、少し前に、日本と韓国で、「キムチ」の基準でもめ
ていました。キムチといえば韓国のもの、と思っていましたが、輸
出量では日本の方が多く、韓国側からいわせると、あんなものはニ
セモノだ、ということになるのです。

 ドイツではビールは麦芽100%のものしか認めないとか、フラ
ンスではワインに補糖は認めないとかいう話は以前にしましたが、
この手のこだわりは、それぞれの国にあるものです。

 日本なら、日本酒の原料は米以外は認めない、といえば格好いい
のですが、なかなかそういう風にならないのは、何が原因なのでし
ょうか?

 でも、外国の話を真に受けて、「ビールはモルツに限る」などと
いうのも、文化に対する理解が低いと思います。私たちの国には私
たちの文化、でいいのではないでしょうか?

【カカオバター】

 チョコレートが甘いのは単に砂糖を入れているからです。チョコ
レートの食感といえば、カリッと噛んだあと、口の中で溶けてくる
のが一番の特徴ですが、そこにカカオバターの秘密があります。

 脂肪の融点は構成する脂肪酸の種類によって決まります。一般に、
炭素数の少ない、「短い」脂肪酸は融点がひくく、常温で液体にな
り、炭素数の多い、「長い」脂肪酸は常温で固体です。(詳しくは
「食べ物情報」の欄に書きます。)

 一般に、植物油脂はほとんどが常温で液体、牛や豚などの脂肪は
個体であるのは、ご存知のとおりです。実際の溶け方は油脂の種類
によって、様々です。

 カカオバターの脂肪酸の組成は、常温(28度くらいまで)では
個体ですが、人間の体温ですぐに溶けていく、というシャープな融
点を持つことが特徴です。

 日本では、もう少し溶けやすくするために、植物油脂を加えるこ
とが多いということです。

 実は、カカオバターとそっくり同じ溶け方をするような脂肪酸組
成の人工的に作ることは可能になっているらしいです。風味の問題
までは無理なのでしょうが、普通の植物油脂を原料にして、チョコ
レートを作るのは十分可能ということです。

 カレールウなどの「粘り気」の正体も、以前は小麦粉をいためた
「ルウ」でしたが、今は牛脂などの、高温ではじめて溶ける脂肪が
主になっています。熱いご飯にかけて、ふうふう言いながら食べる
温度で、ちょうど良い粘りになるのです。

【その他の話題】

 それから、今人気の「生チョコレート」というのは、純粋のチョ
コレートではなく、チョコレートと生クリームを混ぜたもので、こ
れこそベルギー人から見れば、「チョコレートではない」というこ
とになるそうです。

 しかし、「生」とつけば、こちらこそ本物のチョコレートという
気がしませんか?「生クリームチョコ」ではなく、「生チョコレー
ト」という名前はだれがつけたのでしょうかね。ちょっと看板に偽
りありです。

 しばらく前の話ですが、チョコレートに含まれる「ポリフェノー
ル」が話題になったことがありました。チョコレートに関する学会
での報告でしたが、ちょっと業界の陰謀のようなところもあります
が、別にでっち上げ、というわけではないようです。

 同じ学会で、チョコレートのカロリーが思われていたよりも低い、
という話がありました。チョコレートの脂肪の、かなりの部分が、
消化されずに、体内を通過してしまうから、というのです。

 消化、吸収されない脂肪、というのは、嘘のような話ですが、作
り話という感じではなかったので、今後に注目、です。最近、「肥
らない油」というのが市販されていますが、同様の研究から生まれ
たものなのでしょう。

 メーカーの気持ちもわかりますが、こういった研究の成果を、す
ぐに商品にしてしまうのは、何だか急ぎすぎのように思います。し
ばらくしてから、思っていたほどの効果がでなかったり、副作用が
あったり、しなければ良いのですが。

 今まで、こういったことがあって、消費者の不信をかったことが
あるのではないでしょうか?

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

------------------------------------------------------------

Q.おばが奄美の出身でよく黒砂糖を送ってくれるのですが、、、。
おやつがわりに黒砂糖をたべると疲れも取れるんだそうですが、
なんか根拠があるのでしょうか?

------------------------------------------------------------

A.砂糖は疲れたときには、良い食べ物です。体がエネルギー不足
に陥っているときは、甘いものが一番。要するに糖分の補給なので
すが、砂糖はすばやく吸収されるので、特に良いのです。

 ただ、砂糖をそのまま食べたり、砂糖水、などというのも、もう
一つ気が進みません。黒砂糖はそのまま食べて美味しいものですか
ら、たしかに、おばさんのおっしゃることはあたっていると思いま
す。

 だからといって、料理にも黒砂糖を使うのはやり過ぎです。黒砂
糖が適した料理もあるのでしょうが、ごくまれです。

 黒砂糖は日本独特の砂糖で、近代的な製糖法が伝わる以前に、先
人が苦労して開発したものだという話です。サトウキビから砂糖を
作るのは、それほど簡単ではないのです。

 黒砂糖の特徴は、製造時に、かなりの「石灰」を投入することで
す。あの独特のアクはこの石灰に由来する、アルカリではないかと
思います。(確かではありません。)

 黒砂糖の成分を見て、カルシウムが豊富だ、とか、白砂糖はカル
シウムを取り除いている、とかいう人がいますが、誤解です。

 もともとなかった、カルシウムが、石灰という形で投入されたも
のだからです。石灰岩の石灰ですので、人間にとって、栄養価値が
あるものとは思えません。

 黒砂糖は日本の特産であり、甘くて美味しいお菓子です。疲れた
ときにかじると、とても美味しいし、疲れをとる効果もあります。

 それで十分ではありませんか?

 蛇足ですが、白砂糖が悪くて、黒砂糖にしなさい、というのは、
信仰の問題なら、ご自由に、ですが、事実の問題としては、単なる
デマです。あちらこちらで良くみかけるのは、デマが自己増殖して
いるだけで、何等根拠のあるものではありません。


--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「脂肪」その1
------------------------------------------------------------

 脂肪、といったり、食用油脂といったり、中性脂肪といったりし
ますが、みな同じものです。

 たんぱく質、炭水化物とともに、三大栄養素の一つですが、どう
も最近は嫌われ者です。

 脂肪というのは、「脂肪酸」が三つ、「グリセリン」と結合した
「トリグリセリド」という構造をとっています。グリセリンは3価
のアルコールといって、アルコール基(−OH)を3個もっていま
す。そのそれぞれに、脂肪酸のカルボキシル基(−COOH)がエ
ステル結合しています。グリセリンの分子量は僅かですので、この
脂肪酸が主な栄養源になります。

 食べた後、脂肪分解酵素によって、脂肪酸とグリセリンに分解さ
れ、吸収されますが、胃ではほとんど消化されず、少しずつ胃から
排出されて、十二指腸で胆汁とまざり、小腸で膵臓から分泌される
リパーゼによって、やっと消化されます。

 このため、脂肪を含む食べ物は胃に滞留する時間が長くなり、人
によってはおなかがもたれる感じがするのです。

 食生活の変化で、日本でも摂取カロリーの中に占める脂肪の率が
あがってきています。味の面でも、アミノ酸一辺倒だった日本人の
味の好みが、脂肪を多用した味に移ってきているそうです。醤油か
らマヨネーズ、味噌汁からスープ、せんべいからフライドポテト、
といった感じでしょうか。

 もちろん、脂肪の取り過ぎは控えた方がいいです。でも、必須の
栄養源でもありますので、脂肪をとらない、というのはダメです。
細かいことは気にせず、脂肪の多いものは控え目にして、総カロリ
ーをオーバーしないようにしてください。

 脂肪酸というのは、炭化水素にカルボキシル基のついたものです。
炭素がつながったものが骨格になり、そのまわりに水素が結合して
います。(等幅フォントで見てください。)

   H H H H H H H
   | | | | | | |
 H−C−C−C−C−C−C−C−COOH
   | | | | | | |
   H H H H H H H

 教科書でよく見る表現では、こんな書き方をします。この炭素の
数と、「不飽和結合」の位置と数で、脂肪酸の性質が変わってきま
す。

 一般に、炭素の数が多くなると、分子は「重く」なり、常温で固
体になります。また、同じ炭素の数でも、「不飽和結合」が多いと、
融点が下がります。「不飽和結合」というのは、下の「=」の部分
のように、炭素が「二重結合」している部分で、ここに水素が結合
する余地があるので、「不飽和」と呼ばれるのです。

   H H H H H H H
   | | | | | | |
 H−C−C−C=C−C−C−C−COOH
   | |     | | |
   H H     H H H


 普通は上図のように、二重結合の両側で、同じ位置に水素がつき、
ここで分子は折れ曲がります。(\C=C/こんな感じです。)こ
れを「シス型」といいますが、逆位置についた「トランス型」とい
うもの(/C=C/)もあります。

 このトランス型の二重結合を持った脂肪酸は、栄養的にはあまり
価値がなく、それどころか害になる、という説があります。自然で
もこのトランス型の脂肪酸は存在しているのですが、マーガリンな
どのように、「水素添加」して、人工的に脂肪酸の性質を変えたと
きには、どうしてもできてしまいます。

 それで、マーガリンなどの水素添加をした油脂は良くない、とい
う話なのです。(水素添加というのは二重結合に水素を化合させて、
単結合にするので、いわゆる「添加物」ではありません。)

 トランス型脂肪酸は必須脂肪酸と拮抗するので、体に必要な必須
脂肪酸の摂取を妨げる、というのがその根拠らしいです。

 WHOなどの報告では、十分な量の必須脂肪酸を摂取している限
り、問題ではない、とされていますので、心配にはおよびませんが、
必須脂肪酸の摂取が大事である、ということと、脂肪酸をいじると
このような問題もある、ということは強調しておきます。

 必須脂肪酸というのは、主にリノール酸で、これは別にリノール
酸が体に良い、といった類の話ではありません。脂肪というと、油、
という連想から、単なるカロリー源のように思いがちですが、実は
私たちの体を構成している細胞の細胞膜は、脂肪酸を必須の要素に
しています。ブロック塀のブロックにあたるのか、セメントにあた
るのか、よく知らないのですが、とにかくリノール酸などの不飽和
結合を持って、折れ曲がった脂肪酸がないと、細胞膜の構築ができ
ないのだそうです。

 一般に、不飽和結合は動物の体内では作れませんので、一部の不
飽和結合を持った脂肪酸はどうしても食品として摂取しなければな
りません。この脂肪酸を「必須脂肪酸」と呼びます。

 脂肪分はあらゆる食べ物に含まれていますので、脂肪分をとって
いないつもりの食生活をしていても、欠乏することは稀ですが、脂
肪もまた、とらないと生きていけない大事な栄養素です。

 必須脂肪酸を多く含む脂肪は、先述のように、常温で液体のもの
です。ほとんどの植物油脂がそうです。魚の油もいろんな不飽和脂
肪酸を含むことで注目されています。

 意外ですが、鶏肉の脂肪も、実は常温で液体です。植物油によく
似たものです。鶏肉のからあげなどをしますと、鶏肉の脂肪が揚げ
油に移行してきて、知らないうちに揚げ油のなかに鶏油が多くなっ
てきます。もちろん、そのまま使って差し支え有りません。

 脂肪酸には、その炭素数と不飽和結合の数と場所によって、いろ
んな名前がついています。リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、
ステアリン酸、パルミチン酸、などなどです。

 この個別の話はいずれまた・・・。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 新聞で面白い記事を見つけたのですが、よく考えたら、バレンタ
インデー関連記事だったんですねえ・・。

 後半は何だか固い話になってしまいました。反省。専門家の方か
らのフォローをお願いします。

 ときどき、「低脂肪牛乳」についての質問を受けますが、あんな
ものを飲む気がしれませんねえ、と答えています。牛乳からバター
を抜き取って、その残りを「健康」イメージで売るなんて、阿漕な
ものです。

 総カロリー中の脂肪の率が70%を超えるアメリカ人には、脂肪
の制限は切実な問題ですが、50%以下の日本人にとっては、注意
事項、といった程度と思います。過度の肥満や、膵臓疾患などがな
い限り、それほど神経質になる必要はないと思います。

 牛乳中の脂肪分は3〜4%、低脂肪牛乳はその半分くらいですか
ら、低脂肪牛乳1リットルを飲むと、2グラム弱の脂肪摂取を減ら
した、と言えますし、逆に2グラム弱の脂肪を摂取した、とも言え
ます。脂肪1グラムで7キロカロリーですので、どちらにせよ、
10キロカロリーほどの幅の話です。

 牛乳の味の決め手は脂肪分ですので、たったそれだけのことで、
あんなまずいものを飲むなんて・・という次第です。

------------------------------------------------------------
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/
--15号----------------- e-mail why@kenji.ne.jp -----------
--発行--渡辺--宏------- URL http://www.kenji.ne.jp/food/
------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------
 購読者数866名です。ご購読ありがとうございます。
(まぐまぐ807名+Macky!59名)
------------------------------------------------------------
私あてのメールのあて先は、

why@kenji.ne.jp

私のホームページ(「安心!?食べ物情報」)は

http://www.kenji.ne.jp/food/ です。

バックナンバーもすべて、このページで読めます。

【まぐまぐ】
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
マガジンIDは21668です。

このメールマガジンの登録や解除は
http://www.kenji.ne.jp/food/food2.html へ。

【Macky!】
@niftyのメールマガジンサービス「Macky!」でも配信しています。
登録は
http://macky.nifty.ne.jp/servlet/FreeMailServlet/mem/mail_start?2000
解除は
http://macky.nifty.ne.jp/servlet/FreeMailServlet/mem/mail_stop?2000
-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=-=/=--=/=-=/=-=/