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--安心!?食べ物情報---Food-Review----------------------------
-------------------------------------105号--2001.11.11------
--〔今週の内容〕--------------------------------------------

「なれずし」「小麦粉・殺菌・豚肉(Q&A)」「牛肉」

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--〔話題〕--------------------------------------------------

 今回は紀州の「なれずし」の話を。

 寿司というと、どうしても江戸前のにぎり寿司、というイメージ
です。最近の話題は回転寿司で、狂牛病騒ぎ以来、回転寿司はどこ
も大はやりしているようです。

 この回転寿司は外国でも人気で、アメリカはむろんのこと、ヨー
ロッパにも進出して、賑わっているとか。

 寿司というのは、すし飯に魚の刺身をのせたもの、というのが今
の姿ですが、元々の寿司はそうではありませんでした。すし飯に酢
を使う、というのは近世になってからのことで、それまでは乳酸発
酵して酸っぱくなった飯を使っていたのです。

 代表的なのは滋賀県のふなずしですが、紀州のなれずしというの
も、その昔の姿をとどめた寿司です。作り方を見つけましたので、
紹介します。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

なれずし

材料 :さんま、鯖、鮎など一匹
 ご飯一膳(木箱に漬け込むために、多ければ美味しい)  

(1)はらわたを取り、背開きにしたさんまや鯖、鮎を2週間から
2ヶ月塩漬けにする。
 
(2)塩抜きした魚に冷めたご飯を詰め、姿ずしにする。

(3)木箱にこの姿寿しを敷き詰め、間にウラジロシダ(シダの一
種)を交互に敷く。重しは10kg必要。
 
(4)2週間ほど漬けこめばできあがり。漬け込むほど、乳酸菌に
よる発酵(なれ)が進む。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

 これが本格的な作り方ですが、発酵が進んで、独特の臭いがある
ので、食べやすいものではないです。そこで今では「早なれ」とい
って、普通のすし飯にしめサバをのせたものがよく売られています。

 紀州にはもう一つ、「柿の葉寿司」というのもあります。こちら
は北部の紀ノ川筋が中心で、一番有名な店は奈良県にあります。

 なれずしがアセの葉でつつむのに対し、文字通り柿の葉でつつん
でいます。田舎の家で実際に作っている方法は…

(1)しめサバを作る。

(2)甘めのすし飯を作る。

(3)すし飯を大きめに握り、しめサバをのせる。

(4)柿の葉でつつんで木箱に並べて入れる。

(5)蓋をし、重しを載せて、一晩でできあがり。

 発酵とまではいかないですが、押し寿司の原型のようなもので、
結構美味しいですよ。

 魚と飯を一緒に発酵させる、という場合、実は飯は発酵する元で、
飯が発酵してできた乳酸などの効果で、魚を美味しく、また保存が
できる状態にする、というのが本来の目的でした。

 魚だけで発酵させると、自己消化が進んで、液状になってしまう
のですが、飯と一緒だと、飯が先に乳酸発酵するので、その酸の効
果で、魚がしまって、美味しくなる、というしかけです。

 塩だけで、酸味まで作ってしまうのですから、なかなか高等なわ
ざですが、酢が普通に使えるようになって、そんな面倒なことはし
なくなり、簡単に酢で作るようになりました。

 また魚も、塩や酢で保存性を持たせたものから、生の魚を使うよ
うになって、現在の寿司ができた、というわけです。

--〔Q&A〕------------------------------------------------

 「安心!?食べ物情報」では、みなさんからの質問を常時受け付け
ています。質問の宛先は

why@kenji.ne.jp

です。いつでもどうぞ。

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Q.最近「低インシュリンダイエット」を紹介している雑誌が多い
ですが、その中でGI値が低い食品の紹介の中にパスタも入ってい
ます。しかし、パスタの中に「全粒粉」と書かれたパスタも別に載
っていて値が微妙に違うのです。普段私達が食べているパスタの原
材料には「デュラムセモリナ」としか書いてありませんよね。

「全粒粉」とは何かを教えてください。

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A.小麦を製粉するとき、ロールで圧力を加えて、徐々に粉砕して
いきます。このとき、砕けやすい胚乳の部分が先に出てきます。時
間とともに、だんだんと外皮の部分が混じり、製粉機からはいろん
な品質の粉が区分されて出てきます。

 この胚乳の比率が高いのが一等粉で、家庭用で販売されているの
は、今では一等粉ばかりになっています。

 二等粉というのは、胚乳の比率が下がり、真っ白ではなくなって
きます。等外になると、食用ではなく、工業用に使われることも多
いのです。

 「全粒粉」というのは、小麦から取れる粉を、全部均一に混ぜた
もので、小麦の持っている総ての成分が入っているものです。

 市販されている「全粒粉」では、あまり外皮の成分が多くならな
いようにしている、というものもあるようですが。

 一般に、「全粒粉」は栄養成分的には外皮を多量に含むので、良
い数字になりますが、はっきり言って美味しくないです。(本来は
等外になるべき部分も含まれていますので)

 デュラムセモリナというのは、原料が全く違います。デュラム小
麦という、普通の小麦とは系統の違う小麦が原料になります。

 この小麦は非常に硬く、製粉時に粗く壊れますので、その粗粒を
そのまま使用するのが「セモリナ」ということになります。

 「全粒粉」と似ていますが、微妙に違うものです。(原料は全く
違います。)

 ちなみに、パスタというのはデュラムセモリナで作ったもの以外
はそう呼べないことになっています。

 日本ではデュラム小麦は栽培していませんから、国産小麦使用と
か、全粒粉使用とかいうのは、厳密に言うとパスタではありません。

 これは食べてみると食感でわかります。デュラムセモリナを使っ
ていないものは、あの独特のコシの強さと歯切れの良さが感じられ
ません。

 わざわざ高くてまずい、ニセモノを買うことはないと思うのです
が…。

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Q.殺菌処理によって、たんぱく質の熱変性を避けることができて
いるみたいなのですが、それは短い時間の処理だからですか?殺菌
のみを特異的に行えるのですか?細菌自体にもたんぱく質が含まれ
ていると思うのですが、殺菌というのはどういうしくみなのですか?

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A.加熱調理してたんぱく質が熱変性してしまうような食品では、
同時に殺菌もされてしまいます。牛乳でも、沸騰させしてまえば、
殺菌は充分できています。でも、そこまで加熱すると、たんぱく質
が変性して、もう普通の牛乳としては売れません。

 そこで、細菌は死ぬが、まだたんぱく質は熱変性しない、という
加熱をすることになります。これが普通に言う「殺菌」ということ
です。

 生物が死ぬ、ということと、たんぱく質が熱変性する、というこ
とは同じではありません。

 たんぱく質というのは、アミノ酸が長くつながってできています。
ただ直線的につながっているだけではなくて、そのつながりが、た
がいにからみあって、立体的な構造をもっています。

 熱変性というのは、熱によってこの立体構造が壊れてしまうこと
をさしています。調理のときに加熱するのは、この熱変性をおこさ
せる、ということでもあります。たんぱく質は消化器官で分解され、
アミノ酸として吸収されますが、あらかじめ熱変性して、立体構造
をうしなっている方が、消化吸収には有利です。

 また、生物は熱によって死にますが、この温度はたんぱく質が熱
変性する温度よりかなり低いのです。これは生物がたくさんのたん
ぱく質からなり、さらに複雑なシステムをもっているからだと思い
ます。

 殺菌法というのは、この差を利用します。60℃30分、という
のがスタンダードの殺菌法です。この程度の加熱では、たんぱく質
の熱変性は少なく、有害な細菌はほとんど殺菌できる、ということ
になっています。(幸いなことに、病原性のある細菌は熱に弱いも
のが多いのです。)

 殺菌効果は温度と時間の関数ですので、温度をこれより高くし、
時間を短くした殺菌方法が普及しています。

 また、たんぱく質の熱変性の度合いも、同じく温度と時間により
違いますので、いろいろな方法が開発されています。

 最近では、温度を上げるのではなく、圧力をかけて、熱変性はお
こさせずに、細菌だけは死滅する、という加圧殺菌も実用化されて
います。

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Q.豚肉を生で食べてしまったのですが、大丈夫でしょうか?

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A.生肉はやっぱりまずかったですね。肉は新鮮なものでも、生で
食べるのは無理だと思います。

 牛肉なんかでは、表面を焼いて「たたき」みたいにして食べるこ
ともありますし、昔は鶏肉を自分でさばいて、ささみを生で食べた
りしたものです。

 でも、豚肉というのは生でたべてはいけないことになっています。
寄生虫の恐れがあるからです。イスラムで豚肉を禁止しているのは、
そのためだ、という説もあります。

 生肉はかなりの量の細菌がついているものです。今回は単にそれ
の影響で、お腹の具合が悪くなっただけだと思います。時間がたっ
ておさまってくれば、それでよし、いつまでも苦しかったら、ぜひ
お医者さんに行ってください。

 寄生虫はそれほど心配することはないと思いますが、調子が悪い
ようでしたら、やっぱり診てもらった方が良いでしょうね。

 おどかすようですが、その寄生虫の情報を…。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

有鉤条虫症

症状 : 腹痛、下痢などの消化器障害が主、皮下に寄生すると指先
大のコブが出来る。

潜伏期 : 約3ヶ月

分布 : 韓国、中国、モンゴル、インド、タイ、中近東、ロシア、
東欧諸国、中南米

予防法 : 豚が感染源で、生や加熱不足の豚肉を食べることによっ
て感染が成立します。流行地では豚肉は要注意。

http://www.forth.go.jp/tourist/worldinfo/f15_item/h25_para.html
より
--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

日本は流行地に入っていませんので、大丈夫とは思いますが。

--〔食べ物情報〕--------------------------------------------
「牛肉」
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 狂牛病騒ぎもややネタ切れになってきました。このまま落ち着い
てくれればよいのですが、まだまだ油断はできないです。

 さて、問題の牛の食肉処理ですが、日本では歴史的な経緯もあっ
て、常に差別問題にさらされてきました。業界の体質も、旧態依然
のところがあり、近代化ということがまだまだ課題になっていると
私は思っています。

 最近では食肉センター(と畜場+一次処理場)が近代的な設備で
全国的に整備されてきています。流通業者としては、自分の仕入れ
る肉が、どこのセンターで処理されたものか、意識せざるを得ない
時代になってきました。

 結局、衛生的にも優れた、きちんとした処理ができるところだけ
が生き残る、ということになるのだと思います。

 解体の手順はだいたい以下のようなものです。(「屠場文化」創
土社 より)

(1)ノッキングペン

 牛の額にピストルをあて、「ペン」を打ち込む。牛は脳しんとう
をおこして倒れる。その穴に棒を差し込み、神経を完全に麻痺させ
る。

 頸動脈を切り、レールから逆さに吊るして放血させる。

(2)頭落し

 頭の皮を剥ぎ、首の骨を切って頭を落とす。(ツラ、タンなどは
この部分にあります。また、狂牛病の検査もこの部分が対象になる
はずです。)

(3)皮剥ぎ

  ナイフで皮をはぎ、皮は原皮処理場へ。肛門を縛り、肉の汚染
を防ぐ。

(4)内臓おろし

 腹、胸を切って内臓お落とす。腎臓以外の内臓はこれ以降、牛肉
とは別に流通する。肝臓は検査にかける。

(5)背割り

 電動のこぎりで背骨の部分から半分に割る。これで1頭の牛から
2本の枝肉ができる。(この「背割り」が狂牛病の関係では問題に
なっいます。背骨を割る前に、脊髄を抜き取ることが求められてい
ますが、たぶんまだ未対応です。)

(6)検査

 腎臓・肉を検査。合格すると印が押される。(腎臓は以降も牛肉
と一緒に流通します。牛肉についてくる「牛脂」は、この腎臓の周
りの脂肪です。)

(7)水洗い

 洗浄した枝肉はレールで運ばれて冷蔵庫へ。

 といった具合です。レールというのは、処理場の天井に取り付け
られていて、そこらつり下げられたフックに、牛の後ろ足の、アキ
レス腱の部分を引っかけるようになっています。

 あの大きな牛の体を、骨とアキレス腱の間に差し込んだフックで
つり下げるのですから、その丈夫なことには感心します。

 最新の食肉センターでは、隣接して一次加工場が設けられていま
す。以前は枝肉のまま、流通していたのですが、最近は人手の問題
もあって、食肉センターで部分肉までしてから、流通することが多
くなっています。

 と畜場と加工場では、経営母体が違うことが多いので、隣接して
いるとはいっても、建物は別々です。ところが、レールはつながっ
ていて、1mもないような隙間を通って、枝肉は加工場に入ってき
ます。

 加工場でも、枝肉はレールにつり下げたまま、順に解体していき
ます。逆さにつり下げていますので、牛の前の方から順に、解体し
ていくわけです。

 部分ごとに切取り、骨を外すのが主な作業です。一番面倒そうな
のは、アバラ骨を一本ずつ切り離すところです。

 できた部分肉は、真空包装され、段ボール箱に入れられて、冷蔵
車で消費地に送られます。消費地でこれを最終処理して、パックに
詰められた牛肉になるわけです。

 すべての牛肉がこうした流通にのってしまえば、食肉への信頼は
ずいぶん高くなるのですが、まだまだそうでない部分を残している
と思います。しばらく前に、病死した牛の肉を、不正に流通させた、
という事件がありましたが、ああいうことが起る可能性はまだまだ
あり得る、と私は思います。

 肉骨粉を禁止する、というのが、緊急避難としては理解できるの
ですが、恒常的にそうすることが良いとは思えないのは、こうした
理由によります。

 処理過程での廃棄物や、牛肉でできなかった牛の遺体を再利用す
る、こうしたシステムを滅ぼすのは、廃棄物による汚染の問題と、
不正流通の問題を、もう一度呼び起こすでしょう。

 リサイクルにはリスクがつきもので。リサイクルを万能だと思う
のは間違っていますが、少しのリスクのためにリサイクルそのもの
を放棄してしまうのも、やっぱり困るのではないか、と私は思って
います。

--〔後記〕--------------------------------------------------

 冷凍保管されている牛肉は全国で1万3千トンあるとか。はじめ
はほとぼりが冷めてから、知らん顔をして売るつもりだったらしい
ですが、さすがにそれは政治家にとめられたようです。

 肉骨粉も大量に余ってしまっていますが、セメント業界が受け入
れを表明したとか。牛肉がセメントになるのは不思議ですが、焼却
して残ったカルウシム分を利用するのだとか。そんな温度で焼けば
さすがのプリオンもなくなってしまうでしょうから、安全性では良
い方法ですね。でもコストはどうなるのでしょうか。

 徳島の食肉センターで殺人事件、という報道もありました。狂牛
病騒ぎの処理で揉めたらしいです。実は私はここのセンターには何
度か行ったことがあります。最初に行ったときは古い施設で、ちょ
っとすごい情景を見せてもらいましたが、その後設備を一新して、
とても良い設備になっていました。

 でも、やっている人は旧態依然だった、ということなのでしょう
か…。

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--発行--渡辺--宏------- URL http://www.kenji.ne.jp/food/
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