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食べ物情報(5)生鮮食品(畜産物)

牛乳


【殺菌温度】


 手始めとして、一番関心の高そうな、「殺菌」についてです。


 殺菌しない牛乳は食品として売ってはいけません。必ず、殺菌が 義務づけられています。「60度30分」というのが、有効な殺菌 温度のめやすで、これと同等以上の殺菌効果をもった方法をとらな ければなりません。

 殺菌などは不必要だ、という意見もあるかとは思いますが、とり あえず、上記の条件を前提にします。

 現在、主流になっているのは、135度2秒、といった、「UH T殺菌」です。この方法は殺菌効果は極めて良いのですが、高温を かけるため、調理臭がつくこと、たんぱく質の変性がおこることが 問題とされています。

     それ以外では、
  • 殺菌温度を140度くらいまであげ、容器殺菌やアルミによる空気 の遮断などを取り入れ、常温での保存を可能にした「ロングライフ」、
  • 75度前後で短時間(15秒くらい)で殺菌する、 「高温殺菌(HTST)」、
  • 65度程度で30分保温する、 「低温殺菌(LTLT)」などがあります。

 低温殺菌以外は、蒸気との熱交換による過熱が主な方法です。い きなり100度以上まで上げられませんから、予熱の時間も含めた 積算温度が熱変性にとって一番問題といわれています。

 熱変性といっても、別に栄養価が損なわれるわけではなく、栄養 の面からはどんな実験でも差がないことがわかっています。

 熱変性という面では、「LTLT」よりも「HTST」の方が有 利だという説もあります。

 低温殺菌で問題なのは、殺菌効率が低いため、原乳の細菌数が多 いと、どうしても製品の細菌数が多くなり、品質に問題が出ること です。

 逆に、ある程度きれいな原乳でないと、低温殺菌で製品にできな い、と考えれば、メリットでもあるわけです。

 製品では1ミリリットル中に5万個というのが基準値ですが、原 乳段階では数百万個、というものもあります。UHT殺菌ならば、 そんな牛乳でも、何とかなるのです。

 低温殺菌で商品化しようとすれば、せめて数十万個、できれば数 万個、の状態で工場まで届く必要があります。搾乳時の衛生管理と、 搾乳からの工場までの、温度と時間の管理が問題です。

(これらの細菌の個数は、顕微鏡で見て数えるのです。したがって、 生きているものと、死んだものとを区別できません。これに対して、 製品の「一般生菌数」というのは、培養して、元の菌数を推定しま す。この場合は生きている菌だけを数えることになります。)

 かつて、日本の酪農の生産基盤が整備される以前に、UHT殺菌 が普及したため、原乳の細菌数を減らす努力が不徹底であった、と いうふうに、私は考えています。

 製品中の細菌数でいうと、UHTとLTLTでは2ケタほどLT LTの方が多くなります。その分、日持ちも悪いのはいたし方ない ですね。

 LTLTの方が有用菌が多くて、逆に日持ちする、ということを いう人がいますが、残念ながら、実験するとそのようなことは起こ りません。

 だいたい、どんな殺菌方法でも、有用菌を残す、というような選 択的な殺菌ができるわけではありません。

 私なりの結論は、よい牧場で搾られた、品質の良い、きれいな原 乳を、低温殺菌したものが一番おすすめできます。低温殺菌ならば 何でもよい、というのは間違いです。もちろん、日持ちが悪いのは 覚悟の上です。

 UHTなども栄養的に問題はありませんので、衛生的には安心し て利用できると思います。ある程度買い置きしたいときはこちらの 方が良いかも知れません。ただ、味が少し違うので、どちらかに統 一した方がかしこいと思います。


 今回は成分について書きます。


 牛乳の成分表示を見ると、「乳脂肪分」と「無脂乳固形分」とい う項目があります。牛乳の規格を定めた「乳等省令」では、乳脂肪 分3%以上、無脂乳固形分8%以上、であることが求められていま す。

 実際に牛が出す乳はもう少し成分が濃いのですが、まあ最低基準 として決められたものです。20年前には、夏場はこの規格に達し ない牛乳も生産されていましたが、だんだんと生産者の淘汰が進ん で、そのような生産者はなくなってきています。

 ところが、この基準を悪用して、乳脂肪分3%無脂乳固形分8% という基準ぎりぎりの商品が売られていました。これが悪名高い雪 印の「サンパチ牛乳」です。要するに、水で薄めては牛乳として売 れないので、成分の低い粗悪な牛乳とブレンドするか、脂肪分など を抜き取って使っていたのだと思います。もちろん雪印だけではな く、他のメーカーも作っていましたが、トップメーカーの姿勢が業 界を左右する、という意味で、雪印の責任である、と言っておきま す。

 まあ、こういうものが市販されていたおかげで、私などは生協で 牛乳の試飲などをしていましたので、大いに助かりました。敵が弱 体なので、いつも私の持参した牛乳が味で圧勝だったのです。

 これに対して、「成分無調整」という牛乳が登場してきました。 私が扱っていたのも、もちろんそうでした。原乳に対して、クラリ ファイヤー(異物を取り除く)、ホモゲナイジング(脂肪球を細か くして均質化する)、殺菌という基本的な操作以外はしないように したものです。

 この場合、牛の出す乳の成分がそのまま製品の成分になりますの で、基準を下回るような牛乳は使用できません。こういった粗悪な 牛乳しか生産できない生産者には退場してもらうしかない、という のが私たちの理解です。

 この20年ほどの間に、牛乳の品質はかなり改善されてきていま す。乳脂肪分3.7%くらいの牛乳はどこでも見かけますし、高品 質をうたったものでは4%を越えるものもあるようです。

 牛乳の美味しさは基本的に乳脂肪分に左右されますので、これは 牛乳が美味しくなったことを意味しています。実際、最近飲んだ、 さるコンビニのオリジナルブランドの牛乳はびっくりするくらい、 美味しかったです。○○ソン恐るべし、と改めて思いました。

 成分の高い牛乳を作るには、まず牛の品種改良、環境の改善、と いう基本的なことをクリアしていきます。そして決め手はやはりエ サで、濃厚飼料の適切な投与、ということが問題になります。

 粗飼料と濃厚飼料の案配、というのが牛を飼うときにはいつも問 題になることです。

 粗飼料というのは、要するに草です。生の草はいろいろと問題が あるので、普通は干草を与えます。稲ワラなどでも良いし、北海道 などでは畑で牧草を作っていたりしますが、それ以外の土地では、 実際問題として、牧草を育てていたのでは採算がとれません。干し た牧草を固めてブロック状にしたものが大量に輸入されていて、こ れが粗飼料ということになります。

 濃厚飼料というのは要するに穀物です。これも輸入のトウモロコ シなどが主です。

 牛は反芻動物で、巨大な第一胃で微生物による発酵をおこなって います。これによって、哺乳動物では消化できない、セルロースな どの食物繊維もエネルギー源として利用できるようになります。

 この第一胃での発酵を維持するためには、繊維をたっぷり含んだ 粗飼料の投与が大切です。濃厚飼料だけでは異常発酵がおこりやす くなるので、だめなのです。

 牛の健康を維持するための粗飼料と、牛乳の品質を高めるための 濃厚飼料を適切な割合で与える、というのが基本です。ただ単に牛 をある程度の頭数飼っていれば、結構な収入になった時代は去り、 このような努力を積み重ねてきた酪農家だけが生き残る時代になっ てきています。

 乳業メーカーでは、結構シビアな酪農家に対する評価を持ってい て、自分の集乳範囲で最も優秀な酪農家の乳だけを原料にして、付 加価値の高い、美味しい牛乳を製品化する、という動きもあります。

 現在のところ、こうした努力はなかなか消費者に浸透していない のが実情で、販売の方は苦戦しているようです。もし、スーパーで 牛乳を買われているのでしたら、少し値段は高くなりますが、この ような生産者限定ものを試してみてはいかがでしょうか。

 無脂乳固形分というのは、脂肪と水以外のすべての成分で、たん ぱく質もミネラルも、すべてこちらに入ります。最近では、乳脂肪 分が同じでも、美味しさに差があることから、美味しい牛乳を作る ためには、無脂乳固形分も大切である、ということになってきてい るようです。

 両方の成分をあわせると、12%ほどになります。水分は88% ということですから、これはたいていの野菜などより少ないのです。

 のどが渇いたときに牛乳を飲んでも、さっぱり渇きがとれないの はこのためです。乳児に牛乳を与えるのはあまり感心しませんが、 必ず水分を補給しないと、すぐに水分不足になります。人間の母乳 はとても薄いのです。

 といっても、牛乳も他の動物から比べると、かなり薄い方です。 一般に、母乳が薄い動物は、成長期間が長く、母子の関係も濃密で ある、と言われています。母乳が濃い動物は成長期間も、授乳期間 も短く、授乳期間中も、母子は別に行動することが多いそうです。

 身近な動物では、豚がたいへん濃い乳を出すことで知られていま す。そのため、いまでも豚はほとんど母乳で育てられます。人工乳 ではうまく育たないのだそうです。

 牛は生まれた直後の初乳は貰えますが、それ以降は人工乳を与え られます。本来、子牛の飲むはずだった乳は、横取りされて、私た ちの食べ物になる、というわけです。ちょっと申し訳ないですが、 これも運命と、あきらめてもらいましょう。


 今回は牛の飼育現場の話です。


 牧場というと、北海道などの大規模なものを想像しますが、近郊 の酪農では、意外と小さな牛小屋で飼育していることも多いのです。

 私が訪問した経験があるのは、兵庫県の丹波篠山あたりの産地、 淡路島、長野県の産地、といったところです。

 淡路、長野は北海道ほどではありませんが、かなりの産地なので、 農家の規模もそれなりに大きいようですが、篠山では、家の離れに 数頭飼っている、というところまで見たことがあります。

 そんなところでも、牛乳を冷蔵保存する「バルククーラー」を備 えるのが、メーカーが集乳する最低条件になっています。

 乳しぼり、というと例の手でしぼって、バケツで受けるというの を想像しますが、今ではそんなことはしません。搾乳機というのが あって、牛の乳首にカップみたいなものを取付け、ポンプで直接、 パイプの中に牛乳を送り込みます。このパイプは牛舎の中に設置さ れていて、その先はバルククーラーにつながっています。

 牛乳は乳首から出た瞬間は無菌状態だと思いますが、直後から、 最近の繁殖がはじまります。できるだけ早く冷蔵することが一番の ポイントです。

 牛の頭数が少ない場合は、集乳も1日おきになるので、クーラー に入れてある、といっても最近は少しずつ増えてきます。数頭の牛 を、農作業の片手間に飼う、というスタイルは今急激になくなりつ つありますが、私はこれは歓迎すべき変化だと思っています。

 牛というのは何もしなくても乳を出す、と思っている人もいたり しますが、当たり前の話、赤ちゃんを生んで育てている期間しか乳 は出ません。

 牧場で見かける乳牛は、たいてい翌年に出産する赤ちゃんを妊娠 中です。人間では授乳期間には妊娠しませんから、そこは違うとこ ろです。

 毎年、出産して7、8年も産み続ければ、たいへん優秀な牛なん だそうです。普通は5、6産といったところです。限界まで飼って 処分するやり方が普通ですが、比較的若いうちに搾乳をやめて肥育 し、肉用に出荷する、という方法もあるそうです。でも、今では廃 れていると思います。

 牛の妊娠はほぼすべて人工受精です。種牛を飼っているところは 私は見た事がありませんが、冷凍の精液が売られていて、それを使 って妊娠させます。

 最近では、受精卵の着床、という技術も用いられるようになって います。ホルスタイン種の牛から、和牛の赤ちゃんが生まれてきた りするのです。

 和牛を生んでも、乳牛にはできませんので、乳牛用に、優秀な乳 牛の受精卵を使用する、ということもあります。

 アメリカから輸入された「スーパーカウ」という、優良種の乳牛 を見せてもらったことがありますが、姿からして普通の牛とは違い、 年間の産乳量10トン以上、というのもあるそうです。

 牛は一生に産む子供の数が少ないので、こういった優秀な牛がい ても、なかなかその系統を増やすのは難しかったのですが、受精卵 を他の牛に着床させることで、早く品種改良を広めてしまおう、と いうわけです。

 いずれにせよ、ちょっと神をも恐れぬ行為ですが、私はキリスト 教徒ではありませんので、感心して聞いてしまいました。

 牛の暮らし方ですが、小さな牛舎では、繋ぎっぱなしが普通です。 ある程度の規模になると、運動場を持っていたりしますが、基本は やはり牛舎で繋いで飼うことです。更に規模が大きくなると、普段 は牛舎の外にいて、朝夕の搾乳時に、牛が自分で搾乳室へ入ってく る、というのを見た事があります。

 搾乳室では、牛がエサを食べている間、機械で搾乳します。室全 体が回転するようになっていて、ぐるりと一回りすればおしまいで、 順番を待っていた次の牛が入ってくる、という仕掛けで、見ている とじつに面白かったです。

 乳牛は大きな動物ですし、肉用のものと違って、年齢も高く、無 理に太らせるわけでもありませんから、あまり病気の心配はないよ うです。ただ、毎日、搾乳するため、乳首が痛んでくる「乳房炎」 はよくある病気です。

 牛に抗生物質を使用する、などというのはたいていこれです。予 防が一番で、乳首を清潔にすれば防げるのですが、衛生管理の良い ところと悪いところでは、かなり差があるようです。この辺は牛乳 の中の細菌数にも関係してきて、重要なところなのですが、残念な がら、そんなことには無関心な、「白ければ良い」派の農家も現実 には存在します。

 もちろん、だんだんとそんなところは減っていているのだ、と思 います。良い牛乳を作る農家だけが生き残っていけるような、そん な仕組みが必要だ、と私などは思います。

 こうして朝夕、搾られた牛乳は、バルククーラーに入れられ、メ ーカーの集乳を待ちます。集乳車は国道などで良く見かける、タン クローリー車の小型のもので、牛乳を入れる部分は魔法瓶と同じよ うな構造をもっています。従って、クーラーで冷却していない牛乳 は引き取ってもらえません。

 集乳の際、簡単なテストをして合格した牛乳だけを積んでいきま す。工場についたときに、もう一度工場の受入検査をして、原料タ ンクに納まることになります。受入検査で不合格の場合は、1台の 集乳車に積まれた牛乳全体が不合格になり、多大な損害を与えます ので、不良な牛乳(抗生物質などの使用・細菌数が多すぎる・成分 が低すぎる・・)を出してはいけない、というプレッシャーはある のだ、と農家の人は言っていました。

 その後の殺菌などについては、「その1」の時に書きました。少 し前の「サンデー毎日」に、UHT殺菌牛乳にアレルギーの原因物 質が含まれている、という記事が載っていました。毎度同じのデマ 攻撃で、以前は「発癌物質」といっていたのが、そんなデータはど こにもありませんので、さすがに嘘をつき通せなくなって、より反 証の難しい「アレルギー物質」にかわったのでしょう。手口は一緒 です。

 ただ、今回の雪印事件の反省として、優秀すぎるUHT殺菌機の 存在がいい加減な牛乳の管理を支えていた、ということができると 思います。そういう意味で、殺菌効率が悪く、いい加減な管理や、 程度の低い牛乳では、事故を起こすに決まっている、低温殺菌とい う方法を見直す、いうのは大いに考えられます。

 ただ、低温殺菌牛乳の方が、事故を起こす可能性はうんと高いの で、今の時点では、ある程度の自己責任をもって、低温殺菌牛乳を 選択しなければなりません。

 毎日、集乳に来るところでは、搾乳から集乳まで24時間以内、 集乳から製品化まで24時間以内、流通にもう24時間、というこ とで、搾ってから72時間程度で消費者の手に渡る、というのが最 短のコースになります。

 北海道の牛乳は他の産地よりもひょうか高いのですが、こういう ところに弱点があります。最近では北海道で作った牛乳を関東方面 どころか、関西まで運んで来るようになっています。また、メーカ ーでも、近郊酪農の衰退にともない、北海道からの原乳の導入を真 剣に考えている、ということでした。距離のハンデさえなければ、 北海道の産地の圧勝になるのでしょうが、それ以外の産地の動向や いかに、というところです。

 いずれにせよ、品質が全てを決める、と私は考えています。「近 郊酪農の保護」などということを言っている人がいますが、余計な お世話、と私は思っています。


【付録】

 以下は、文藝春秋2000年9月号に載った、「日本の牛乳は生鮮食品 ではない」という記事(平澤正夫著)についてのコメントです。

 加熱殺菌した牛乳は、「生鮮食品のように扱うべき食品」ですが、 本来の意味の生鮮食品ではありません。まあそのことはおいておい て、簡単にコメントをつけてみます。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 日本では、大手メーカーを始めとしてほとんどの牛乳は120度 〜130度で2秒という超高温殺菌を行う。ところが世界の牛乳は 大部分が63度で30分、または72度で15秒という低温殺菌で 処理する。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

◆こういうのを見てきたような嘘といいます。世界での殺菌温度の 分布について、本当にそうなら数字で示してほしいものです。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 超高温をかけるとカルシウムの吸収が悪くなる。再加熱すれば更 に悪くなる。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

◆これも実験データに基づかない、「憶測」です。もっともらしい 話ですが、データに基づいたものではないでしょう。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 パス乳は乳酸菌が生き残っているのでチーズの原料になるが、超 高温滅菌乳(UHT乳ともいう)はチーズにできない。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

◆パス乳(低温殺菌牛乳)に乳酸菌が生き残っているということを 言う根拠がわかりません。低温殺菌では、ある程度の菌数が残りま すが、乳酸菌だけを選択して残すことなどはできません。

 また、チーズにできるということと、乳酸菌云々の関係も意味不 明です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 つまり、皮肉なことに超高温滅菌した無菌状態の牛乳のパックで は、侵入した最近が猛烈に繁殖するのである。逆に、低温殺菌のパ ス乳の場合、病原菌は死滅していても、乳酸菌その他の細菌がある 程度残っていて、侵入してきた細菌と闘う。それで細菌の増殖のテ ンポのろくなる。結局、乳酸菌等が残っている低温殺菌乳のほうが、 無菌の超高温滅菌乳よりも腐敗しにくい、という逆説的な結果にな るのである。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

◆これは前に「賞味期限」のところで言ったとおりです。こんなこ とは残念ながら、著者の観念の中の世界でしかおこりません。

 「侵入してきた細菌と闘う」などという見てきたような書き方で すが、細菌同士が闘う、というのはどういうことなのでしょうか。

 微生物同士が影響しあう関係としては、「資源の奪い合い」と 「相互作用」が考えられます。

 資源というのは、水や栄養物や繁殖可能な場所などですが、人間 の腸の中のように、すでに微生物が満杯になっているところでは、 確かに外部から侵入してきて定着するのは難しいのです。

 相互作用というのは、抗生物質に代表されるように、直接他の細 菌の増殖を防ぐものもありますし、乳酸菌が繁殖して、乳酸が増え ると、酸に弱いものから順に死んでいく、とか、酵母のアルコール 発酵によって、他の微生物が繁殖できなくなる、とかいうこともあ ります。

 で、殺菌したての牛乳の場合、数億から数百億というオーダーの 微生物が生存可能な環境で、いくら乳酸菌が残っていても、侵入し てきた細菌が繁殖するのに何の不都合もありません。

 もし、侵入してきた細菌が繁殖できないほど、乳酸菌が存在して いたとしたら、それは乳酸菌によって腐敗している(または発酵し ている)と表現します。

 どのような実験をしたら、低温殺菌牛乳よりもUHT牛乳が早く 腐敗する、というデータをとれるのか、教えてほしいものです。 (もちろん、ちゃんとした実験で、そんなことがおこることはあり ません。)

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 ちなみに厚生省の定めた乳等省令では、原乳1ccあたり400万 以下であればよく、常温保温するLL(ロングライフ)牛乳の原料 乳で30万以下であればよしとしている。ところが、群馬県新田町 の東毛酪農のパス乳の原乳は、1ccあたりの細菌数が1万以下、と きには千を切ることもあるという。参考までに言うと、乳等省令で は、加熱後の牛乳で5万以下と規定している。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

◆原料乳の中の細菌数は顕微鏡で数えています。このときには、生 きている細菌と死んだ細菌とは区別がつかないので、すべてをカウ ントします。

 したがって、搾ってから時間のたった牛乳では、既に死んだ細菌 の死骸も多くなりますので、どうしても数値が上がってきます。酪 農農協などの生産地に近接した施設で検査すると、この数字は低く なります。別に東毛酪農だけでなく、各地方のまじめにやっている 酪農農協では、似たような数字が出ているはずです。

 参考までに、といっている加熱後の規格は、こんどは「生菌数」 といって、培養検査をして、生きている細菌の数をカウントします。

 つまり、まったく根拠の違う数を、並べているのです。

 参考までに言いますと、この5万以下、という数字は、普通賞味 期限を定めるときの根拠になります。10度程度で保管して、生菌 数が5万を越える時点を賞味期限とするのが普通です。

--〔↓引用はじめ〕------------------------------------------

 コックスによれば、パス乳の寿命は3週間だという。3週間!そ うすると、超高温で滅菌し、品質保持期限1週間の、味も香りも劣 る日本のJ−UHT牛乳は、いったい何なんだろうか。

--〔↑引用おわり〕------------------------------------------

◆コックスという人がいった3週間という数字はどのような根拠が あるのでしょうか。著者はここでも確かめようとはせず、何年も前 からあちこちでこのようなことを言っています。

 5度で保管すれば1週間以上は必ずもちますし、2度くらいにす れば3週間以上も上記の生菌数5万以下の状態を保てます。

 また、生菌数5万というのは、実際には飲むのに影響が出るレベ ルよりはるかに下ですので、見た目や飲んでみて大丈夫、というこ とでしたら、生菌数5万を越えていても、まったく平気です。

 家庭で封をあけた牛乳を冷蔵庫にいれておいた場合、じつはすぐ にこのような状態になっているのですが、飲んで差し支えあるもの ではありません。

 UHT牛乳に関しては正規の賞味期限を適用し、低温殺菌牛乳に 対しては飲んで大丈夫という風聞に属する日数を適用しているので すから、比較の方法が間違っています。


 以上、簡単ではありますが、私のコメントを付けてみました。も ちろん、私の意見ですから、そうではない考えの人もいると思いま す。異論反論は歓迎しますので、ぜひコメントをお寄せください。


 いろいろと牛乳に関して書きましたが、誤解のないように言って おくと、私は低温殺菌牛乳推進派です。ただ、目的のためには嘘を 言っても良い、というこういう業界の人は許せないだけです。

 私が低温殺菌牛乳を推奨する理由は簡単で、良質な原乳からしか 低温殺菌牛乳はできないからです。低温殺菌牛乳が事故なく供給さ れている限り、原乳・製造過程ともに健全な状態にあると判断でき ます。

 UHT殺菌は殺菌効率が良すぎるため、今回の雪印の事件で明ら かになったように、本当に異常な事態が発生するまでは、少々の原 乳や製造過程での汚染を隠してしまう効果があります。

 食べ物としてのリスクは低温殺菌牛乳の方が高いのですが、食べ 物に少々のリスクはつきものです。あえてリスクの高い方を選んで、 もっと率は低くても危害のレベルの高いリスクを避ける、というの が、正しい選択だと思っています。

 ただ、店に適当な低温殺菌牛乳が売っていない場合は、できるだ け産地の明らかな普通の牛乳を買うようにしています。 


「乳糖不耐症」について等


 牛乳の成分としては、「乳脂肪」「乳たんぱく」「乳糖」が主な ものだと思います。

 牛乳は日本では昔は「薬」に近い、「滋養強壮」という目的で用 いられるものでした。戦後、学校給食(脱脂粉乳でしたが)の開始 とともに、牛乳の消費は拡大しました。長期的にみて、牛乳が国民 の栄養状態に寄与したことは疑いないと私は思っています。

 乳脂肪は、バターになる成分ですが、いわゆる動物性脂肪とは成 分が違います。他の動物性脂肪と同じく、飽和脂肪酸が多いのです が、炭素数の少ない、「軽い」脂肪酸が多いのです。

 どちらかというと、今盛んに宣伝している、「太らない油」に近 い感じではないかと思います。(中鎖脂肪酸というやつです。)

 乳たんぱくは「カゼイン」「ホエー」などというたんぱく質を含 んでいます。ヨーグルトなどを作ると、固まる部分がカゼイン、上 澄みの部分に含まれるのがホエーです。

 トータルとしては、牛乳のたんぱく質は、卵には劣りますが、他 の畜肉類にまけない、最上級の質を持ったたんぱく質です。

 一部に殺菌によってたんぱく質が変質する、という話があります が、たんぱく質はそのままで利用できるものではなく、吸収の前の 消化の段階で、胃酸によって固め、消化酵素によってアミノ酸まで 分解するものです。たんぱく質の変質というのは、アミノ酸レベル で変質するのではなく、温度やPHなどによって、たんぱく質の立 体構造が変わることを意味しています。

 たんぱく質はアミノ酸が長くつながったものですが、直線上にあ るのではなく、その長い鎖が折り畳まれて、立体的な構造をとって います。たんぱく質をアミノ酸に分解するためには、まずこの立体 構造をこわし、つぎにアミノ酸どうしのペプチド結合を切断すると いう手順をとるのです。

 したがって、たんぱく質の変質ということと、栄養が損なわれる ということとは、私は全然別の次元の問題と思います。

 乳糖は哺乳類の母乳に特有の糖分で、ブドウ糖とガラクトースが 結合した、二糖類です。乳糖も消化吸収するためには、やはりこの 結合を切って、ブドウ糖、ガラクトースという単糖類にしてから、 ということになります。

 この消化酵素は、あたりまえですが、赤ちゃんなら誰でも持って います。ただだんだんと少なくなって、ふだん牛乳を飲まない人の 体内にはほとんどなくなっています。

 このため、普段牛乳を飲んでいない大人が急に大量の牛乳を飲む と、乳糖が消化できず、下痢になったりします。このとき、乳糖は いわゆる植物繊維としてふるまうと思ってください。

 しかし、乳糖消化酵素を作ることができないわけではないので、 毎日飲んでいると、だんだんと消化できるようになっていきます。

 ただ、一部に、遺伝的に消化酵素を作れない人がいます。滅多に いないのですが、そういう人は本当に「乳糖不耐症」という症候に なるわけです。

 このように、「乳糖不耐症」といっても、本物の遺伝的なものと、 単に習慣的なものとがあると私は理解しています。

 こういう背景があることもあり、牛乳の栄養的な価値からいって も、牛乳は飲むのなら、習慣的に、毎日飲むのが良いのです。

 今の世の中で、牛乳を飲まないからといって、栄養的に不足する ことがあるとも思えませんが、全ての人が栄養過多に悩んでいるわ けでもありません。

 特に栄養摂取が不安定になりがちな、子供には、牛乳はお勧めの 食品です。何でもアレルギーにしてしまう一部の医者の診断を除け ば、本当の牛乳アレルギーなどというものは、うんと少ないもので す。

 人種的な差別は、言うのも恥ずかしいことですし、トータルの確 率の問題と、個人の問題は違います。

 一般に日本人は酒に弱いから、酒を飲むべきではない、などとい う言い方が正しくないことは理解できると思います。どこの人種に も酒に弱い人はいるでしょうし、日本人だって大酒飲みはいくらで もいます。

 ということで、私の意見は、

(1)乳糖不耐症という症状は現実にあります。

(2)これには、遺伝的なものと習慣的なものとがあります。

(3)習慣的なものは改善可能です。

(4)牛乳は栄養的には、優れた食べ物です。

(5)牛乳を無理に飲む必要も、避ける必要もありません。

(6)すべての食品と同じく、個人の食文化の問題として、自由に 選択していくものです。

 といったところです。ちなみに私自身は、いくら飲んでも平気な のですが、牛乳を飲んでも水分補給になりませんので、今はほとん ど飲んでいません。(1日2リットルの水分をとる、という個人的 な目標がありまして・・。)


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